最近、町内会などを通じて、市民に除染作業をさせる郡山市の姿勢が問題となっている。そのことで署名活動がおこっている。署名を求める文章を下記にあげておく。
2011年11月30日水曜日
【大拡散】福島県郡山市より「ずさんな除染に市民を巻き込まないで!」署名スタート
郡山よりSOSです☆
「ずさんな除染に市民を巻き込まないで!」
人口密集地では町内会にわずか50万円で除染を丸投げするかと思えば、人の住んでいない20キロ圏内の高線量地域は70億以上をかけてゼネコンや大企業に除染実験をさせるのだという。私たちは、キテレツで残酷なこの国のありようを目のあたりにしています。
避難をする・しない、内部被曝や低線量被爆の危険を認める・認めない、ずさんな除染をする・しない・・・・次から次へと、なんで被害者である市民が分断されなければならないのでしょうか。憎むべきは、加害者であるにもかかわらず、市民に踏み絵を押し付ける行政のやり方であり、本来的に責任があるはずの東電なのに。
郡山では、そうやって市民をずさんな除染に巻き込み、被曝を拡大させる除染を止めるための署名を集めています。添付しますので、みなさんどうぞご協力ください。
(http://papamama-zenkokusawakai.blogspot.com/2011/11/blog-post_7830.htmlより)
さらに、郡山市の現状が伝えられている。町内会・PTAなどを通じて、子連れの母親まで含めて、郡山市民が「動員」されて、除染活動にあたらされているというのである。そして、除染作業後、汚染された土壌は、その地域から撤去されず、公園に積み置かれているとのことである。
2011年12月3日土曜日
福島・郡山市「ずさんな除染に市民を巻き込まないで!」署名について
こちらの署名の投稿記事に関しまして、郡山の除染の実情を知りたい、といくつかのコメントをいただきましたので、実際に聞いた郡山のお母さんからの声のご紹介をこちらの投稿でお知らせさせていただきます。
~郡山のお母さんから聞いたお話~
まず市から町内会に除染をするように話がきます。
町内会で人が足りなければ学校のPTAに話が行きます。
小さなお子さんのいるお母さんが、
これからまだ赤ちゃんを産みたいお母さんが除染に行きたいでしょうか?
でもお父さんや家族の都合が悪ければ、お子さんを連れて除染に行くのだそうです。
行かなければ、協力的でないと後ろ指をさされます。
なのでお母さんはいくのだそうです。
除染された土は土嚢につめられ、それは通学路の脇の公園で、子どもが通っているときに
平然と土を掘り起こし、埋められ、土をかぶせられます。
そしてその公園は管理区域・・・とはならず子どもたちの遊び場に戻っていくのだそうです。
このお話をきいて、除染作業が子どもたちへも影響があることから「子どもたちを放射能から守りたい」という子ども全国ネットの主旨に当てはまっていると捉え、しかも、この署名を行っている団体が子ども全国ネットの賛同団体であるのでその取り組みを紹介していくという立場からも署名拡散をさせていただきました。
そしてこのお母さんたちをつなぐブログにおいては全国のお母さんの声を集め、拡散していくことを大きな役割と捉えていますので、郡山のお母さんの声を紹介させていただきました。
また別のブログですが
郡山のお母さんからの聞いた現状がつづられています。
ぜひ呼んでいただければと思います。
郡山からのSOS
皆さまのご理解とご協力よろしくお願いいたします。
(同上より)
この情報に接した際、非道い話だと思ったのだが、実際はどうなのか、なぜこんなことが起こっているのか理解できなかった。そこで、ネットで検索してみた。そこで、ある程度、私なりに理解したことをここで書いておこうと思う。もちろん、これは私なりの仮説でしかないことはご承知されたい。
町内会など住民自体に除染をさせること、これは郡山市だけの問題ではない。このような方針を打ち出したのは、福島県庁である。次の福島民友の記事をみておかれたい。50万円ずつ補助金をだして町内会などを通じて、地域住民に除染作業を行わせる方針を7月に決定したのである。
県、町内会除染に50万円助成 地域の体制確立へ(福島民友ニュース)
県は、通学路や公園の清掃など県内各地域の放射線量低減の取り組みを地域住民に委ねる方針を決めた。市町村を通して町内会などの地域団体に空間線量計や高圧洗浄機などの購入費として50万円を上限に助成、地域ぐるみの除染体制を確立する。6月補正予算案に関係予算36億円を盛り込んだ。夏休み中の除染開始を目指す。
助成対象は町内会のほか自治会、PTA、ボランティア団体など約6000団体を想定、助成額は30億円を見込んでいる。市町村に助成先の選定を依頼、県が作業手順などの活動指針を示し、小学校区単位で除染活動を実践してもらう。また、地域団体の活動で発生する放射性物質を帯びた落ち葉や汚泥などを一時保管するための施設整備を含め、市町村に全体で6億円を補助。
活動指針は、作業中の被ばく防止や側溝の土、雑草の処分などの注意事項をまとめる考えで、今月中旬までに作成し、夏休み前に市町村に助成策や手引きを説明する。
(2011年7月6日 福島民友ニュース)
(http://netwatch.24joy.net/index.php?itemid=2821&catid=136より転載)
この事業の正式名は、「線量低減化活動支援事業」という。福島県庁のホームページにその実施要領が掲載されている。
線量低減化活動支援事業実施要領
1 目的
県の将来を担う子どもたちが生活空間として過ごす時間が多い通学路、公園等における放射性物質による放射線量の低減を図るため、町内会、PTA、ボランティア等により、側溝の清掃や草刈りなどを行う場合、その活動を支援する。
2 事業の内容
(1) 補助事業の実施主体
事業の実施主体(以下「事業実施主体」という。)は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
ア 市町村における行政区、自治会、町内会等の地域的な共同活動を行っている地域住民団体
イ 各学校、幼稚園、保育所、放課後児童クラブ等において組織されたPTA等の保護者団体
ウ 地域づくり団体等の民間団体
エ ア、イ、ウの団体が新たに組織した協議会、実行委員会等
(2) 補助対象地域
補助対象地域は、県内全域とする。
(3) 補助対象期間
補助対象となる事業期間は、平成24年2月末までのものとする。
(4) 補助限度額
補助限度額は、1事業実施主体につき、50万円とする。
(5) 補助対象事業
補助対象事業は、通学路、側溝、公園など、子どもの生活空間における放射線量の測定調査及び清掃、草刈りなど子どもの生活空間における放射線量の低減のための活動とし、実施の際は、次により行うものとする。
ア 事業を実施する際は、別添「生活空間における放射線量低減化対策に係る手引き」に基づき実施すること。
イ 事業の効果を確認するため、事業実施前後の放射線量測定を行うこと。
ウ 事業実施にあたっては、必ずしも備品の購入を必要としないこと。既存機器の賃借等により有効利用を図ること。
なお、既に実施済みのものも補助対象とするが、事業実施前後の放射線量の測定値を確認できるものに限る。
3 市町村の役割
(1) 市町村の業務
各市町村は、事業実施にあたって次の業務を行う。
ア 事業実施主体が行う作業範囲の確認及び各実施主体間の調整
イ 事業により生じた刈草、落ち葉等の処分及び土砂等の保管、管理
(2) 市町村事務費
県は、市町村に対して当該事業によって生じる経費を交付するものとし、既に実施済みの事業も対象とする。
4 地方振興局の役割
各地方振興局は、事業実施にあたっての技術的助言を行うなど、当該事業に積極的に関与するものとする。
5 この要領に定めるもののほか、事業の執行に関し必要な事項については、別に定めるものとする。
附 則
この要領は、平成23年8月2日から施行する。
(http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24901より)
そして、7月15日に、福島県災害対策本部名で『生活空間における放射線量低減化対策に係る手引き』(http://www.pref.fukushima.jp/j/tebiki0715.pdf)というパンフレットを発行した。町内会などを通じて地域住民自身が除染作業を行うマニュアルといってよいだろう。まずは、放射線量をはかり、その上で、実際の作業として、作業の効率化および放射線被爆の低減化をはかるために班分けをし、清掃班が汚染されたゴミ・草・土壌などをとりのぞき、水洗浄班が高圧洗浄機などで水洗浄し、運搬班がとりのぞかれたゴミ・草・土壌などを運搬し、最後に拭き掃除班が子どもの手の触れそうなところを拭き掃除している。
これらの手順についても、専門家がみれば問題があるかもしれない。しかし、私のような非専門家でもわかることがある。それは、除染作業時の服装である。次に原文のままあげておこう。
(1)除染及び清掃活動を行うときの服装や個人装備
作業を行う全員に必要な装備と特定の作業に必要な装備については、以下の装備を参考に状況により判断する。(通常の場合、重装備は必要ない。土埃がたつ所ではジョーロで水まきし、心配であればマスクをする等、状況により判断する。)
①作業を行う人数分必要なもの(全員共通のもの)
長靴、布手袋(軍手等)、ゴム手袋、作業環境により、長袖、長ズボン、服の上にする腕カバーや足カバー、帽子、マスク(サージカルマスク、防塵マスク等)、タオル
②それぞれの作業を行う人数分必要なもの(行う作業の内容によって変わるもの)
ア 水を扱う作業を行う人
例)高圧水洗浄、ブラシ・タワシでの洗浄等
カッパ(高圧水洗浄作業は上下必須。その他は下だけでも可)、ゴーグル(めがね)
イ 高所で作業を行う人 例)雨樋、屋上で作業をする人(一緒に作業する人も含む)
ヘルメット、安全帯、脚立・はしご等
まず、必要装備が、長靴、布手袋、ゴム手袋、それだけである。肌の露出をさけるためには長袖・長ズボン・帽子の着用が必要であるはずだが、それも必須ではない。マスクも「心配ならば」ということで、必要装備ではない。このマニュアルによれば、Tシャツ・短パンでマスクなしでも、除染作業を行うことが可能となっている。
農薬散布でも、もっと着込んでいるはずだ。ほとんど、通常の草刈・清掃作業の服装である。たとえ、たいした放射線量ではないとしても、「不必要な被曝はさける」べきであろう。まして、地域の放射線量がもともと高いー以前このブログで紹介したように、福島県には避難区域ではなくても、放射線管理区域以上の放射性セシウムが付着している箇所が多い。そもそも、市民に無償にさせているーしかも、本来は東電や国が行うべき作業なのであり、被曝を最低限にすることが求められているといえるのに、逆行しているといえよう。
一ついえるのは、この作業は、夏休み中に行うものとして企画されており、酷暑の中の熱中症対策や作業効率を考慮してマニュアルは作成されたかもしれないということだ。しかし、それも本末転倒である。健康に被害があるから放射線量を下げるために除染作業するのであるから、作業時には放射線対策を重視すべきであり、熱中症対策は二の次のはずである。さらにいえば、作業に支障がある高温時に、このような作業を一般市民に無償で行わせるべきではないのだ。もしかすると、原発労働者は、常にこのような扱いをされてきたのかもしれないとも思う。
郡山市の除染マニュアルはほぼこれを踏襲している。10月1日付けの「郡山市放射性物質除染マニュアル(第一版)」http://www.city.koriyama.fukushima.jp/upload/1/3701_manual_zentai.pdf)の当該箇所をみておこう。
(1)除染作業を行うときの服装や個人装備
「作業を行う全員に必要な装備①」と「特定の作業に必要な装備②」については、以下の装備を参考にしてください。
なお、通常は重装備の必要はありませんが、土埃がたつ所では散水して土埃を防ぎ、マスクを着用するなど、状況により判断してください。
①作業を行う全員に必要な装備
長靴、布手袋(軍手等)、ゴム手袋。
作業環境により、長袖、長ズボン、腕カバーや足カバー、帽子、マスク(サージカルマスク、防塵マスク等)、タオル(首に巻きます。保冷剤等を入れると熱中症対策に効果的です。)等を着用してください。
このマニュアルでも、長袖、長ズボン、マスクは必要装備とされていなかったことに注目されたい。しかも、ご丁寧に、必要装備ではないが、熱中症対策として、タオルを首に巻くことを推奨している。放射線対策よりも熱中症対策のほうが、郡山市においては大事なのである。
8月26日に、国の原子力災害対策本部が「市町村による実施ガイドライン」(http://www.meti.go.jp/press/2011/08/20110826001/20110826001-6.pdf)を出すが、その際でも服装は、防塵マスク、ゴム手袋、ゴム長靴、長袖などの着用を義務付けられている。あたり前である。
たぶん、国にしたがってのことかと思うが、福島県では10月31日に『生活空間における放射線量低減化対策の手引き 要約版(第ニ版)』(http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=26515)を出し、その中で、基本装備として「動きやすく通気性の良い服装(長袖、長ズボン)、長靴、布手袋(軍手等)、ゴム手袋、帽子、マスク(サージカルマスク、防塵マスク等)、(作業環境により、服の上に腕カバーや足カバーを着用するとよい)」とし、その理由として「内部被ばくを防ぐため」と述べている。このように、さりげなく改定している。実は、要約版のほうが安全なのである。そして、つまり、7月のマニュアル時の服装規定では、内部被曝は防げないと告白しているも同然なのである。
まずは、ある意味では非常識で、後で改定せざるをえないような福島県のマニュアルにしたがって、郡山市の市民による除染作業は行われているのである。これは、国の基準にも、改定された県の基準にも違反している。そのことは確認しておかねばならない。郡山市に外部からきて安全意識が低いまま除染作業に携わるボランティアがいることが伝えられているが、そもそも郡山市のマニュアルが国や県の基準にも違反しており、マニュアルにしたがって作業せざるをえないボランティアたちが悪いのではない。マニュアルを作成し運用している郡山市役所こそ、安全意識が低いといわねばならないのである。
郡山市の除染の問題点は、まだまだある。次に、基本的には市が除染の責任を負い、町内会などには補助的な役割しか与えていない福島市との比較、さらに、郡山市による町内会などへの除染の「要請」の契機となった10月18日の野田首相の郡山訪問などについてみておこう。
付記:一応コメントしておくが、防護服や線量計のような装備をもたない一般市民が除染の主役になること自体が問題なのであり、そのことは福島市との比較で今後述べておきたい。通常の長袖・長ズボン・マスク着用ならばよいとする国などの見解もおかしい。しかし、まったく放射線防護を無視したような現行の郡山市のマニュアルはより問題である。
付記2:とりあえず、現状では、マスク・ゴーグル着用は指示されているらしい。下記ブログhttp://sakunary.blog134.fc2.com/を参照されたい。
でも、除染は市から町内会に「分担された仕事」として降りてきているそうです。
年配の町内会長は放射能のことがよくわかりません。
でも、「孫のためにがんばるか!」と張り切って作業しています。
市からの安全対策の指示は、ゴーグルを付けるのと、マスク(粉じん用ではなく普通の)を付けた方がいいという話ぐらい。だから、ちょっとした清掃作業と同じだと思っているようです。
Read Full Post »