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Archive for the ‘脱貧困’ Category

連日、新聞・テレビなどで話題になっている、広島・呉少女遺棄事件であるが、ここでは、犯罪自体ではなく、犯罪を起こしたと比定されている加害少女らの背景について、どのように報道しているか、それをみていくことにする。

まず、NEWSポストセブンが発信したものをみていこう。これは、元々『女性セブン』に載せられたものだ。まず、最初のところをみておこう。

広島遺棄事件の主犯格少女 ゲーセンで1万円豪遊し飲酒した
2013.08.02 07:00

 広島県呉市で起きた、16才の少女らによる死体遺棄事件は、無職・無就学の彼女たちが形成した、いびつな人間関係が背景にあった──。
〈A子とドンキ行ってー、プリクラ撮ってー 車で語りんしながら送ってもらった☆A子ありがとねー 大好きよ〉
 黒瀬恵利華さん(享年16)が、広島県呉市の山中で変わり果てた姿で発見されたのは、彼女がブログでこう綴ったわずか2か月後のことだった。
 7月12日、主犯格と見られるA子(16才)が母親に伴われて広島東署に出頭。当初は「1人でやった」と供述していたが、捜査を進めるなか、A子の遊び仲間6人が次々に逮捕された。そのなかにはLINEだけでつながり、事件当日まで恵利華さんともA子とも面識がなかった少女も2人含まれていた。
 仲間内でもとりわけ仲がよく、親友と呼び合っていたA子と恵利華さん。2人が仲良くなったきっかけは、恵利華さんが通っていた高等専修学校でいじめに遭い、不登校になったことだった。
http://www.news-postseven.com/archives/20130802_203328.html

ここでは、被害者と主犯格の少女が、高等専修学校でいじめにあったことがきっかけに、「親友」と呼び合う親しい関係になったことが語られている。

続いて語られていることは、この二人が「家出」をして、家賃4万2千円のワンルームマンションでともに暮らすようになり、年齢を偽って派遣マッサージによって月に100万円を稼ぐようになったことである。「裏稼業」で「あぶく銭」をかせぎ、ゲーセンや居酒屋で豪遊する毎日だったという、典型的な「非行少女の転落話」として語られている。

 

身体の悪い母親の肩を抱いて病院に連れて行くような、優しい子だったという恵利華さんは、やがてA子と一緒に行動し、家に帰らないようになる。A子の友人が借りる家賃4.2万円のワンルームマンションで、仲間たちとともに過ごすことが増えていったからだ。
「A子たちは年齢を偽って派遣マッサージの仕事をして、月に100万円もの収入があったと聞いたことがある。そのお金で共同でマンションを借り、共犯で逮捕された少年たちも含めて、常時3~4人が入り浸っていた」(A子の友人)
 彼女たちはいつもサンダル履きに、ジャージーを着、一様に髪の毛を染めていたという。近所の人が声を潜めて語った。
「見るのは日中ではなく、いつも夜中3時半とか、朝方。てっきり20才前後かと思っていたけど、まだ16才だったとは…」
 狭苦しいたまり部屋で、彼女たちはどんな生活をしていたのだろう。学生でもなければ社会人でもない。そんな現実と疎外感が重くのしかかるなか、裏稼業に手を染めながら、そのあぶく銭で、将来が見えない憂さを紛らわせていたのかもしれない。少女たちを乗せたことがあるというタクシー運転手が、ため息まじりに話す。
「深夜に繁華街まで乗せることがたびたびあった。話を聞いていると、『ゲーセンで1万円すった』とか平気で言っていて、普通のサラリーマンよりもはるかに金遣いが荒い。自分の子供時代にはとても考えられない感覚です」
 前出の友人によれば、彼女たちはゲームセンターのほか、居酒屋やカラオケで遊ぶことが多かったという。大人びていた少女たちが、大人から飲酒をとがめられることはなかった。
※女性セブン2013年8月15日号
http://www.news-postseven.com/archives/20130802_203328.html

他方、毎日新聞は、全く別の側面から、この加害少女たちを報道している。

広島・呉の少女遺棄:逮捕の1少女、虐待受け生活保護 1Kで共同生活
毎日新聞 2013年07月20日 大阪朝刊

 広島県呉市の灰ケ峰(はいがみね)の山中に若い女性の遺体が遺棄された事件で、死体遺棄容疑で逮捕された7人のうち、広島市中区の少女(16)が生活保護費を受給していたことが19日、捜査関係者への取材で分かった。親のネグレクト(育児放棄)が原因とみられるため、単身世帯として直接、受け取っていた。逮捕された未成年者6人の中には、少女以外にも児童虐待を受けていた者がいるとみられ、県警捜査本部は過酷な生活環境が事件の遠因になった可能性があるとみて調べている。【黄在龍、石川裕士、吉村周平、中里顕】

 ◇車から血液反応

 また、7人が被害者を山中に運んだ車の床から大量の血液反応が出たことも判明。捜査本部は、車内での暴行を裏付けるものとみている。

 生活保護の受給基準は年齢制限がなく、未成年者の単身世帯でも要件を満たせば生活保護費を受給できる。

 福祉や捜査の関係者によると、少女は今年に入り、月額約10万円の生活保護費を受給。周囲に「親からネグレクトされていた」と打ち明けていたという。

 少女は一時、鳥取県内の施設に保護されたこともあったが、その後は友人宅を転々として、今年4月中旬、広島市中区の6階建てマンションに入居した。部屋は6畳の洋室とキッチンなどがついた1Kタイプ。家賃は生活保護の中の住宅扶助費上限である月額4万2000円(広島市の場合)だった。

 マンションには交際相手の少年(16)=鳥取県米子市=ら今回の事件で逮捕された者が複数、出入りしていた。事実上、未成年者だけで共同生活を送っていたという。

 関係者によると、逮捕グループの中には、同様に、育児放棄のような児童虐待を受けるなど、家族との間で深刻な問題を抱えている者が複数いるという。

 少女は、14日に逮捕された広島市東区の少女(16)に誘われ、被害者とみられる高等専修学校の女子生徒(16)と一緒に接客業をしていた。その収入と生活保護費で生計を立てていたとみられる。

 捜査本部はこうした少女らの生活環境が事件に及ぼした影響についても調べる方針。
(後略)
http://mainichi.jp/area/news/20130720ddn041040013000c.html

まったく、違う報道といえる。主犯格の加害少女は、親から育児放棄され、一時期には施設にもいた。そして友人宅を転々とし、今年生活保護を受け、月額10万円の生活保護費を受け取るようになった。広島市の4万2千円のマンション家賃は、住宅扶助ぎりぎりだったという。それから、被害少女とともに「接客業」に従事し、「生活保護費」とともに生活費をあてていたという。そして、加害者の未成年の多くも、同様の児童虐待を受けていたようであると報道している。

かたや「ゲーセンで1万円豪遊」、かたや「生活保護」ということになる。

私が考えるに「ゲーセンで1万円豪遊」という報道も誤報とはいえないが、一面的な報道であるといえる。この事件の加害者は「見捨てられた子どもたち」といえる。もちろん、だから許されるというわけではない。ただ、結局、非行少女たちが「裏稼業」に手をそめて転落していったというものではない。彼女らは、親から見捨てられた生活困窮者たちだった。ゆえに、この広島のマンションを借りる際にも生活保護が必要だった。そして、いまだ、家庭で保護されるべき未成年者が、多少でも金を稼ぐためには、年齢を偽って「接客業」するしかなくなったのである。

たぶん、生活保護の濫給を主張する人たちは、これもまた不正受給というかもしれない。しかし、この場合、「接客業」で「月100万円」という生活のほうがおかしい。それを「自立した生活」というのだろうか。生活保護を前提として、自立した生活をめざすしかないだろう。そして、親が育児放棄している以上、社会が自立させていかねばならないのだ。

こういう報道の二面性は、生活保護を必要とする人びとをどう見るかということ全体に通じると思うのである。

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