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Posts Tagged ‘相沢金之丞’

今まで、1950~1960年代の福島県議会において、原発問題がいかに扱われてきたのかをみてきた。

1950~1960年代の福島県議会の基調は、地域発展のため原発誘致に積極的であるというものであったといえる。しかし、すでに本ブログで述べたように、1968年の初めには、自民党の県議会議員すら、原発の危険性や経済性への懸念を口にするようになっていた。

そして、いよいよ、1968年9月30日、福島県議会で、原発誘致を批判した質問が行われるようになった。この日、社会党県議相沢金之丞(相馬郡鹿島町出身)は、社会党の代表質問の中で、このように述べた。

 

次に原子力発電所の問題であります。原子力基本法の制定によりまして、原子力の平和利用という名によって、わが国においては各地にあらゆる型の原子炉による電力開発計画が進められ、当県においても双葉地方を主体として原子力センターの設立が低開発地帯の底上げと本県産業分野の新しい開発として一石二鳥の評価のもとに着々進められております。この原子力発電所発電所設置地域ではどこでも、この未知数の原子力に大きな潜在的危機感を持っておるのであります。この潜在的危機感は原子力発電所による災害時の汚染や発生するところの事故に対してであります。原子炉は安全だともいわれております。また一方危険だともいわれております。事故が発生した場合決定的な被害をこうむることを予想するとき、住民の健康と安全を守ることが政治の本来の任務であるときに、この原子力発電所設立は単なる工場や企業の誘致と同一視し、経済的観念からのみこれをとらえるということはあまりにも近視眼的な見方であります。問題の原子炉とは膨大なエネルギー源であり、臨界量以上の核分裂性物質と大量の死の灰が共存するものであります。他に類を見ないきわめて潜在的な危険性の大きい装置であります。(『福島県議会会議録』)

このように、相沢の趣意は、原発の危険性を見据え、その上で、原発の設立を単なる工場や企業の誘致と同一視して、経済的観念からのみ把握してはいけないとするものであった。

ただ、相沢は、この時点では、「原子力の平和利用」自体の可能性は否定していない。「原子力の平和利用」を肯定しつつ、住民の健康と安全を守る措置が必要なのだというのが、相沢の立場といえよう。

かく言う論旨は、特に県内に設立される原子力発電所が平和利用である限り絶対反対するものではなく、ただ住民の健康と安全を守る、このことを政治の責任の中で一そうこれを保持するというためのわれわれの提言であります(『福島県議会会議録』)。

そして、具体的には、相沢は三点の質問をしている、第一点は、原子炉等規制法には知事の権限が認められておらず、原発の運営について自治体は発言権を有さないが、自治体の発言権を有するような立法措置を政府に働きかけるつもりはないかということである。

第二点は、原発から公害が出た場合、県の公害防止条例は適用されるのかということである。

第三点については、現在重要な問題となっているので、相沢の言葉をそのまま引用する。

 

第三点は原子力災害が異常に巨大な天災地変、あるいは社会的動乱によって生じたとき、原子力事業者は損害賠償をしなくてもよろしいという規定がありますが、条文上の判断からいっても、かなり住民への災害が予想されるのでありますが、この災害への保障はどこで行われるのか、このことをお尋ね申し上げたというふうに思うのであります。(『福島県議会会議録』)

この当時、福島第一原発一号機は建設途中であった。しかし、その際より、事故時の損害賠償はどのようにするのかが、問題になっていたのである。

この質問に対して、木村守江福島県知事は、相沢が指摘した原発の危険性についてには直接答えなかった。そして、原子炉規制法等については、関係知事と協議し、知事の発言権を確保する方向で法改正を促したいとした。また、原発が公害を起こした場合、県の公害防止条例よりも国の規制法のほうが厳しいので、県の公害防止条例が適用されることはないと答えている。

そして、原発事故の際の損害賠償について、木村守江はこのように答えている。

 

次には原子力発電所は御承知のように最大の自然災害に対しましては絶対的な安全の度を確保いたしまして、しかる後に、この建設を許可されてまいっておるのでございます。しかしながら、これは特に特異な社会騒乱、あるいはその他の異変によりまして災害が起こった場合にはこの事業主は賠償することがないということになっておりまするが、これは特異な社会的事変、その件の事変という場合にはそのほかの部分にも大きな災害も起こることでございまして、これは災害補償法第十七条におきまして、国においてこれを対処することになっておりますことを御了承を願います。(『福島県議会会議録』)

つまり、木村は、まず自然災害は起こりえないとしつつ、社会的騒乱などで災害が起きた場合は、事業主ではなく国が対処するといしているのである。

この相沢の原発誘致批判質問は、それまで誘致基調であった福島県議会における、論調の大きな変化であるといえる。「原子力の平和利用」の枠内ではあるものの、原発の危険性を指摘し、経済成長からのみ誘致を検討してはならないと相沢は主張している。その上で、自治体が原発の運営について、より発言権をもつべきとしているのである。県公害防止条例の適用問題も、このようなことが背景となっているといえる。

現在問題となっている原発災害の損害賠償についても、すでにこの時期から問題になっているのである。

そして、この演説以降、社会党議員を中心に原発批判の発言が福島県議会でぼつぼつみられるようになるのである。

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