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Posts Tagged ‘低線量被ばく’

本ブログでは、雁屋哲作・花咲アキラ画「美味しんぼ」において鼻血など福島の人びとの健康状況をとりあげたことに対して閣僚や福島県知事などが批判したことについて、もともと、鼻血の有無も含めて、避難区域など除外した福島県民全体に対して十分健康診査をしていないことを述べた。

さて、5月19日に、福島の人びとの健康状況をとりあげた「美味しんぼ」の「福島の真実」編のクライマックスである第604話(『週刊ビックコミックスピリッツ』2014年6月2日号所載)の販売が開始された。そのことを伝える NHKのネット配信記事をまずみてほしい。

健康影響描写が議論「美味しんぼ」最新号
5月19日 16時36分

東京電力福島第一原子力発電所の事故による健康影響の描写が議論を呼んだ漫画「美味しんぼ」を連載する雑誌の最新号が19日に発売され、地元福島県では「不安に追い打ちをかけられた」と批判的な意見がある一方で、「原発事故の問題が風化してきているなかで発信することは大事だ」と理解を示す声も聞かれました。

「美味しんぼ」は、小学館の雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載されている人気漫画です。
先月28日の連載で、主人公が福島第一原子力発電所を取材したあとで鼻血を出し、実名で登場する福島県双葉町の前町長が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ」と語る場面などが描かれ、福島県や双葉町が「風評被害を助長する」などと批判していました。
最新号では、自治体からの批判や、有識者13人の賛否両論を載せた特集記事が組まれ、最後に「編集部の見解」が掲載されています。
この中で編集部は、一連の表現について「残留放射性物質や低線量被ばくの影響について、改めて問題提起したいという思いもあった」と説明したうえで、「さまざまなご意見が、私たちの未来を見定めるための穏当な議論へつながる一助となることをせつに願います」と締めくくっています。
これについて、福島県ではさまざまな意見が聞かれました。
このうち、福島県中島村の64歳の女性は「放射線量が下がってきて、食品もいろんな検査を通して落ち着いて生活できるようになってきたのに、3年目にして不安に追い打ちをかけられた気持ちです」と話していました。
本宮市に住む30歳の女性は「全体的に原発事故の問題が風化してきているので、このように発信することは大事だと思う。福島がこれから立ち上がっていこうとしているところをほかの人にも知ってほしいし、この問題を取り上げるのは勇気のいることではないか」と理解を示していました。

前双葉町長「住民と議論尽くすべき」
漫画「美味しんぼ」に実名で登場した福島県双葉町の前の町長の井戸川克隆氏は19日、NHKの取材に応じました。
このなかで井戸川前町長は、血が付いた紙を見せながら、みずからもいま毎日のように鼻血がでるとしたうえで、「鼻血が出ることについて、風評ということばで片付けられようとしているが、福島でどのように皆が苦しんでいるか、鼻血がどれくらい出ているか、実態を調べていない人が『ない』と言っている感じがする」と話しました。
そのうえで、「『安全だ』と言う人と『危険だ』と言う人の両方の意見を聞くべきだが、そうしたプロセスが取られずに、安全だとか、安心だという宣伝ばかりが先行しており、危険だという人の意見を小さくしている。避難にあたっての放射線の基準などについて、政府は一方的に考えを押しつけるのではなく、さまざまな考えを持つ住民と議論を尽くすべきだ」と述べました。

被ばく検査の医師「国民全体が放射線の知識を」
東京電力福島第一原子力発電所の事故による健康影響の描写が議論を呼んだ漫画「美味しんぼ」について、福島県南相馬市を拠点に住民の被ばく検査を行っている東京大学医科学研究所の坪倉正治医師は、放射線の影響を正しく判断できるよう、国民全体が放射線の知識を身につけることが重要だと訴えました。
坪倉医師は被ばくと鼻血の関連性について、「現在のさまざまな放射線量の測定では、被ばくが鼻血を引き起こすような高いレベルではない。被ばくによる鼻血は血小板の減少で出血するので、鼻血が少し出るという程度ではすまない」と指摘しました。
また、福島には住めないという表現について、「汚染が起きたことは確かだが、3年以上計測してきた住民の被ばく線量では、現在、人が住んでいる地域は安全性が担保される被ばく量に収まることが分かっている」と述べました。
そのうえで、「今回の件で福島の子どもたちが将来、差別を受けるきっかけを作ってしまったことは残念だ。差別や臆測に対して行われている放射線の検査や被ばく線量などを、福島の住民1人1人が自分のことばで説明できるようになってほしい。福島県外の人たちも福島の現状を正しく理解し、放射線を安全か危険かという二元論ではなく、どういうものかを小中学校できちんと議論して理解する機会を増やすべきだ」と訴えました。

「正しい情報提供を積極的に」
メディア論に詳しい学習院大学の遠藤薫教授は「放射能を不安に思っている人に対して『根拠がない。風評だ』とだけ言っても、実はもっと怖いことが隠されていると思ってしまい、事態が悪化する。不安に対していろいろな形で答えていくのが重要で、これまでの研究でも正しい情報を積極的に提供していくことで、根拠のないデマに惑わされなくなるというのがセオリーだ。委縮して声を出しにくい状況をつくるのではなく、いろいろな情報を出して議論する場をつくっていかなければいけない」と話しています。

被ばく医療専門家「血管だけ障害考えられない」
被ばく医療が専門の放射線医学総合研究所の明石真言理事は「全身に被ばくして骨髄に障害が起きて血小板が減り鼻血が出ることはありえるが、今回の事故では住民に骨髄に障害が起きるような被ばく線量になっていない。鼻の周辺に強い放射線が当たるような場合でも周辺の粘膜や皮膚組織にも障害が出るはずで、血管だけが障害を受けるということは考えられない。鼻血の症状を訴える頻度が増えているとしたら放射線以外のことを考えるべきで、さまざまな原因があり人によって違うと思う」と話しています。
そのうえで今回の問題については「人々の間に放射線への不安が完全には消えていないことと、専門家の話を心の底から信頼できていないことが大きいと思う。『また福島でこんなことが起きているの』と福島県外の人に思わせてしまったことは大きなマイナスで、こういうときにどうすべきかみんなで考えていくべきだと思う」と話しています。

「国は疑問解決のための調査を」
「美味しんぼ」の問題について、科学技術と社会の関係を研究している大阪大学コミュニケーションデザイン・センターの平川秀幸教授は、「放射能の影響を一面的に描くことで誤った情報が広まるおそれがあり、当然配慮が必要だったと言える。しかしこの一方で、多くの人が被ばくについて心配するなか、住民の不安な思いなどがかき消され、伝えられなくなるのは大きな問題だ」と指摘しています。
そのうえで、「国などは住民が放射能の影響について何を問題とし不安に思っているかきちんと向き合い、疑問を解決するための調査などを進めていく姿勢が求められる」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140519/k10014553891000.html

この記事は「美味しんぼ」における福島の人びとの健康状況の描写の是非について述べているが、「美味しんぼ」漫画全体では、何をメッセージとして訴えているのかについては全くふれていない。この「描写」についても、「メッセージ」と表裏一体の関係にあるはずだが、それは全く考慮されていないのである。

私自身は、19日に、この「美味しんぼ」が掲載されている『週刊ビックコミックスピリッツ』2014年6月2日号を入手した。漫画自体をコピペしたり、あらすじを詳細に述べてネタバレすることはさけつつ、『美味しんぼ』が発したメッセージをここで紹介しておこう。

一応、簡単に設定を紹介しておくと、この「美味しんぼ」第604話は、料理批評のライバルであり親子でもある山岡士郎と海原雄山が、取材チームをひきつれて、福島県内外において、福島第一原発事故による福島の人びとへの影響を2013年4月に取材するというものである。この取材過程で、主に山岡と海原がメッセージを述べているのである。

まず、この漫画の前のほうで、前号などにとりあげた井戸川克隆前双葉町長と荒木田岳福島大学准教授について触れながら、海原と山岡は、次のような対話をしている。

海原雄山:井戸川前双葉町長と福島大学の荒木田先生は、福島には住めないとおっしゃる…。
だが、放射能に対する認識、郷土愛、経済的な問題など、千差万別の事情で福島を離れられない人も大勢いる。
今の福島に住み続けて良いのか、われわれは外部の人間だが、自分たちの意見を言わねばなるまい。
山岡士郎:自分たちの意見を言わないことには、東電と国の無責任な対応で苦しんでいる福島の人たちに嘘をつくことになる。
海原:偽善は言えない。
山岡:真実を語るしかない。

ここで、「美味しんぼ」のメッセージのテーマが明確に提起されている。それは、福島に住みつづけることの是非について、外部の人間から「自分の意見」を言うことなのだ。これを言わないことについて、山岡と海原は「福島の人たちに嘘をつくこと」であり、「偽善」というのである。そして、山岡は「真実を語るしかない」という。

そして、この漫画の後のほうで、このテーマに対する答えが述べられている。まず、山岡は「原発事故は日本という国がいかに大事なものか思い知らせてくれた。福島を守ることは日本を守ることだ」といっている。その部分を紹介しておこう。

山岡:僕の根っこが福島だという父さんの言葉についてだけど、原発の事故がこのまま収まらず、拡大したら福島県は駄目になる。
それは福島にとどまらず日本全体を破壊する。
福島の未来は日本の未来だ。これからの日本を考えるのに、まず福島が前提になる。
海原:なるほど。だから福島は日本の一部ではなく、日本が福島の一部と前に言ったのだな。
山岡:世界のどこにいようと僕の根っこは日本だ。
原発事故は日本という国がいかに大事なものか思い知らせてくれた。
福島を守ることは日本を守ることだ。であれば、僕の根っこは福島だ。
海原:うむ。私の問いに対する答えとして、それでよかろう。

私自身の個人的な感覚では「福島を守ることは日本を守ることだ」というフレーズに違和感を感じなくもない。福島第一原発事故は、単に「日本」だけの問題ではなく、「世界」全体の問題になっていると考えているからである。ただ、いずれにせよ、福島を守るということは、福島以外を守るということでもあるということは確かなことだ。その意味で、福島の外部にいる者も「福島」の運命に結び付けられているのである。それを「美味しんぼ」はこの部分で確認している。

その上で、「美味しんぼ」では、福島県に住みつづけることの是非について、このように結論づける。

山岡:父さんは、福島の問題で、偽善は言えないと言ったね。
海原:福島に住んでいる人たちの心を傷つけるから、住むことの危険性については、言葉を控えることが良識とされている。
だが、それは偽善だろう。
医者は低線量の放射能の影響に対する知見はないと言うが、知見がないと、とはわからないということだ。
私は一人の人間として、福島の人たちに、危ないところから逃げる勇気をもってほしいと言いたいのだ。
特に子供たちの行く末を考えてほしい。
福島の復興は土地の復興ではなく、人間の復興だと思うからだ。
山岡ゆう子:人間の復興…それが一番大事だわ。
飛沢周一(別人かもしれない):では、われわれにできることは。
山岡:福島を出たいという人たちに対して、全力を挙げて協力することだ。
海原:住居、仕事、医療などすべての面で、個人では不可能なことを補償するように国に働きかけることだ。
岡星良三(別人かもしれない):そう働きかけることはわれわれの義務だ。

「美味しんぼ」は、福島の人たちへは「危ないところから逃げる勇気をもってほしい」とよびかけた。他方、福島の外部にいる「われわれ」に対しては「福島を出たいという人たちに対して、全力を挙げて協力することだ」「住居、仕事、医療などすべての面で、個人では不可能なことを補償するように国に働きかけることだ」と課題を提起し、それを「われわれの義務」とした。

「美味しんぼ」は、「医者は低線量の放射能の影響に対する知見はないと言うが、知見がないと、とはわからないということだ」と指摘している。これは、全く、その通りである。「美味しんぼ」について、非科学的などという批判が浴びせられた。しかし、他方で、だれも「低線量の放射能」が健康に影響しないと言い切ることはできない。そのような調査すらやっていないのである。

その上で指摘された「福島の復興は土地の復興ではなく、人間の復興だ」とする言葉は重い。復興の目的が「人間の復興」であるならば、健康に影響に影響があることが懸念される土地に住みつづけるということは、ありえないことなのである。結局、一般的に言われている「復興」とは「土地の復興」であって「人間の復興」ではないということなのである。別に放射線のことがなくても、国や地方自治体が進めていることは、所詮「土地の復興」であり「人間の復興」ではないのである。

このメッセージは、非常に勇気のあるものだ。個々の漫画叙述についてひっかかる人も、安倍政権の閣僚や福島県知事ではなくてもいるだろう。それでも、「美味しんぼ」のこのメッセージをうけとってほしいと思う。

もちろん、福島県に住み続けなくてならない人びともたくさんいる。その人びとにとって、このメッセージは意にそぐわないこともあるだろう。このメッセージは「理想」論であり、現実には実現できないという人もいるだろう。しかし、こう考えて欲しい。「現実」を多少とも我慢できるものとしていくためにも「理想」は必要なのであると。

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さて、雁屋哲原作の漫画「美味しんぼ」で、福島県において「鼻血」症状が出ていると描写し、福島県や安倍政権の閣僚たちが批判するという状態になっている。福島県で「鼻血」症状が多発しているというのは、ある方面ではポピュラーな話であった。しかし、このことを、低線量の放射線では、鼻血がでるような典型的な「急性放射線症」は発症しないといって、やっきになって福島県などは否定しようとしている。

しかし、ここでは、別な方面から考えてみよう。福島県は、鼻血の有無も含めて福島県民の現状の健康状態を把握しているのだろうか。つまり、「福島県民は健康である」という「科学的」根拠を把握したうえで「美味しんぼ」に反論しているのだろうか。そこで、ここでは、福島県の健康調査の実情について概観していくことにしたい

福島県のサイトをみると、全県民を対象にして「県民健康調査」というものを行っている。そのうち、もっとも重視しているのは「基本調査」というものだ。これは、全県民に福島第一原発事故時点の行動を「問診票」という形で答えてもらい、そこから被ばく線量を推計するというものだ。そして、本来であれば、この基本調査の結果を前提にして、「血算」検査(赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板数、白血球数、白血球分画)を含んだ「健康診査」を実施する予定にしていた。今いわれている「鼻血」についても、この「血算」検査で決着が着いたのではないかと思われる。この「健康診査」は、避難区域住民は全員対象となっている。たぶん、避難住民以外の県民は、被ばく線量の高低が「健康診査」を受ける基準となっていたのだろう

この基本調査は、いまの時点でも25%ほどしか完了していない。そして、このやり方自体も完璧なものとはいえない。そして、現時点では、年間1mSv未満の人が66.8%、1−2mSvの人が28.6%、2−3mSvの人が4.7%いるということになっている。そして、最高値は66mSvとなっている。原発関連でない人の最高値は25mSvである。もし、除染基準1mSvを基準とするならば、確かに高線量の人は少ないものの、30%以上の人々は、基準以上の放射線に被ばくしたということになるだろう。

この中間結果について、福島県では、「県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について」の中で、次のような判断を下している。

実効線量の推計結果に関しては、これまでと同様の傾向にあると言える。
これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない1)ことから、4ヶ月間の外部被ばく線量推計値ではあるが、「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価される。
参考文献
1)放射線の線源と影響 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 UNSCEAR2008年報告書[日本語版]第2巻 独立行政法人放射線医学総合研究所
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/51045.pdf

「基本調査」では年間100mSv以上の被ばく線量の県民はいなかった、ゆえに「放射線による健康影響があるとは考えにくい」としたのである。現実に健康に影響があるかどうかはお構いなしなのである。

そして、このような結論を出したことは、次のステップで行われるはずの「血算」検査を含んだ健康診査の進行計画に多大な影響をもらたした。福島県では、「これまでのモニタリング値や避難の状況、また、基本調査による推計値等から考えられる被ばく線量及び現在得られている低線量放射線の健康影響に関する知見を踏まえると、健康に影響を及ぼすリスクは、他の生活習慣と関連する健康リスクに比べ低いと予想される。」という見解を前提にして、 避難区域以外の住民に「健康診査」を実施するかいなかについて、次のような意見の対立があったとサイトの中でのべている。

3 必要と認める基準案

(第1案)
現状では科学的・論理的に詳細調査を必要と認める基準を設定することは困難ではあるが、既に実施されている詳細調査の対象者を拡大する基準線量を明示しないことは、基本調査から詳細調査へ移行するという当初の枠組みと一貫性を欠くこととなるため、これまで住民の安全を確保するために国が示した警戒区域等の線量基準、今回新たに当該区域の見直しのために示された線量基準等との整合性も鑑みた上で、基本調査での外部被ばく推計線量の結果が一定以上の者を、詳細調査が必要と認められた者とする。

(第 2 案)
現段階で得られている被ばく線量の情報からは、外部被ばく線量推計結果を特別な判断基準とした詳細調査を行う必要性は認められない。基準線量設定には科学的根拠が必要であるが、現状では明確な説明が困難である一方、国内外において生じる影響は非常に大きい。また、基準値を上回った住民の健康に対する必要以上の不安を招いたり、差別などが生じる懸念がある。更に、上記2(1)の見解との整合性もとれないことから、この低線量領域での推計線量の大小で区別して新たな対応をすることよりも、全県民対象とした定期的な検診等やがん登録の充実を図ることにより、長期間に渡ってフォローアップする枠組みを設計することが重要と考えられる。
なお、今後も続くことが予想される避難の状況、先行調査地域以外での外部被ばく線量の推計結果、他の検査や調査の結果等を総合的に判断することとし、今後の状況等の変化により必要が生じた場合には、当該状況等を考慮して改めて基準案を検討する。
第6回福島県「県民健康管理調査」検討委員会(平成24年4月26日開催)資料

クリックしてshiryou2.pdfにアクセス

第一案は、もともとの予定通り、一定の基準以上の推計線量の人たちを「血算」検査を含んだ「健康診査」の対象とするということであり、第二案は、低線量で健康に影響がないのであるから、「健康診査」を実施しないというものである。この両案の是非は判断されず「検討中」ということで先送りになったが、結局、現在まで避難区域の住民以外は実施されていないので、実質的には第二案になったということができる。ここで、避難区域以外の一般県民について、「血算」検査を含んだ「健康診査」は実施されないことになったのである。

そして、避難区域以外の県民には、「血算」検査を含まない形の「健康診査」が実施されるようになった。40歳以上は、市町村で一般的に成人病予防を目的とした「健康診査」サービスが提供されているが、福島県では、「健康診査」の対象年齢以下の19〜39歳に「健康診査」が受けられるようにしたのである。といっても、尿検査や血圧、血液生化学など、一般の「成人病」検査と同様なものでしかない。そして、前述したように、わざわざ「血算」検査を除外したのである。

他方、避難区域の住民については、「健康診査」は実施された。しかし、成人分については受診者数しか公表されていない。小児分については「まとめ」が公表されている。しかし…とりあえずあげておこう。

【まとめ】
0 歳から 15 歳までの小児について、男女とも、平成 23 年度に比較して平成 24 年度は、身長が高くなり、体重が減少する傾向がみられた。したがって、平成 24 年度は平成 23 年度に比較して、運動量が増加し食習慣が改善された可能性がある。しかし、全国に比較すると、平成 24 年度の女児において身長はほぼ同等であるが、体重がやや多い傾向があり、より一層の生活環境改善が望まれる。
平成23・24年度県民健康管理調査「小児健康診査」
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/51062.pdf

一読すれば理解できるように、「身長」と「体重」だけしか言及されていないのである。「血算」検査をしているはずだが、それにはまったく触れていない。

このような、福島県の県民健康管理調査のあり方から、二つのことが読み取れよう。まず、第一に、福島県では、年間100mSv未満の低線量被ばくでは健康に影響がないとして、避難区域住民は別として、放射線に関連した「健康診査」自体を中止したことである。確かに、今までよりも健康診査の機会は増えただろうが、放射線量との関連はあえて切断されているのである。この結果、低線量被ばくと、現実の健康被害との関連を検討することはできなくなったのである。低線量被ばくにおける健康への影響については定説がないが、そのことを科学的に「実証」しようということは放棄されている。

第二に、「血算」検査に対する福島県の忌避感が非常に強いことが読み取れよう。避難区域外の県民には、わざわざ「血算」検査をぬいて「健康診査」を提供している。また「血算」検査をしているはずの避難区域住民の「血算」検査結果は公表されていない。ある程度の検査結果は出ていると考えられるが、何もないーというか標準的な程度の結果であれば、公表したほうが県の立場としてもよいのではないかとも思う。現実の「血算」検査結果において、見のがし得ないほどの「問題」がおきているのではないかと思うのである。

このように、そもそも、福島県は「美味しんぼ」に対して、実証的な反論が可能なデータをもっているのかとも思う。福島県は、そもそも、県民全体の健康を考える立場にたって、「健康診査」をやり直すべきであろう。現状では、福島県で「鼻血」が多発しているかいなか(つまりなんらかの血液異常があるかどうか)、そして、それが放射線の影響によるものなのかどうかということを確定的に福島県の調査結果からいうことはできない。現実の福島県民の健康状態はどういうものなのか。そもそも、「100mSv未満は健康に影響がない」というドクトリンばかりなのであり、それですべての問いを封殺しているというのが福島県の姿勢なのである。

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さて、このブログで、河北新報記事に依拠して、福島県児童36万人を対象とした甲状腺検査で、すでに1名のがん患者が発生しており、さらに甲状腺異常が約42.1%、二次検査が必要な児童が0.5%発見されたことを伝えた。

このことを打ち消すかのごとく、2012年11月25日付朝日新聞朝刊は、一面トップで次のような記事をのせた。まず、ネット配信した分をみてみよう。

福島のがんリスク、明らかな増加見えず WHO予測報告

 【大岩ゆり】東京電力福島第一原発事故の被曝(ひばく)による住民の健康影響について、世界保健機関(WHO)が報告書をまとめた。がんなどの発生について、全体的には「(統計学的に)有意に増える可能性は低いとみられる」と結論づけた。ただし、福島県の一部地域の乳児では、事故後15年間で甲状腺がんや白血病が増える可能性があると予測した。報告書は近く公表される。

 福島第一原発事故による健康影響評価は初めて。100ミリシーベルト以下の低線量被曝の影響には不確かな要素があるため、原爆やチェルノブイリ原発事故などの知見を参考に、大まかな傾向を分析、予測した。

 WHOはまず、福島県内外の住民の事故による被曝線量を、事故当時1歳と10歳、20歳の男女で甲状腺と乳腺、大腸、骨髄について、生涯分と事故後15年間分を推計した。その線量から甲状腺がんと乳がん、大腸がんなどの固形がん、白血病になるリスクを生涯と事故後15年間で予測した。

 成人で生涯リスクが最も高かったのは福島県浪江町の20歳男女。甲状腺がんの発生率は被曝がない場合、女性が0.76%、男性は0.21%だが、被曝の影響により、それぞれ0.85%、0.23%へ1割程度増えると予測された。他のがんは1~3%の増加率だった。
http://www.asahi.com/special/energy/TKY201211240631.html

これだけみると、リスクが低いようにみえるだろう。しかし、これは、成人の場合に限られる。さらに、成人の場合でも、甲状腺がんの増加傾向は認めざるをえないのである。成人の場合については、朝日新聞本紙に掲載されたこの記事の続きで「福島県のほかの地区の成人の増加率は甲状腺以外はおおむね1%以下で、全体的には統計的有意に増加する可能性は低いとの結論になった。」としている。

しかし、浪江町だけ、それなりに影響を認めているのはなぜだろう。この予測に使った被曝線量について、朝日新聞はこのように報道している。

 

予測に使った被曝線量
 福島の原発事故による被曝線量推計の報告書(WHOが5月に公表)などをもとに、性別、年齢ごとに臓器別の線量を被爆後15年間と生涯で地域ごとに計算した。この結果、1歳児の甲状腺の生涯の被曝線量は、浪江町が122ミリシーベルト、飯舘村で74、葛尾村が49、南相馬市が48、福島市や伊達市、川俣町、楢葉町などは43などと推計された。
 国連によると、チェルノブイリ原発事故の避難民の甲状腺被曝は平均490ミリシーベルト。子どもを中心に約6千人が甲状腺がんになった。ただし、甲状腺がんの治療成績は良く、死亡は十数人にとどまる。

なんのことはない。浪江町の被曝線量は生涯で122mSvで、健康に影響があるとされる年間100mSvに近くなるのだ。「通説」に従った結果なのである。

そして、児童については、甲状腺がん・甲状腺異常が増加する傾向を認めざるを得なくなっているのである。朝日新聞は、このように伝えている。

 

一方、被曝の影響を受けやすい子どもでは地域によって増加率が高くなった。浪江町の1歳女児が16歳までに甲状腺がんになる可能性は0.004%から、被曝の影響で0.037%へと9.1倍になった。飯館村では5.9倍、福島市などで3.7倍に増えると予測された。浪江町の1歳男児の白血病は0.03%が1.8倍になるとされた。
 胎児のリスクは1歳児と同じ。県外の住民は全年齢で健康リスクは「無視できる」と評価された。
 また、低線量でも若い時期に甲状腺に被曝すると良性のしこりや嚢胞(液状の袋)ができる可能性が高まるとも指摘。「がん化の可能性は低いが、注意深く見守っていくことが重要」と指摘した。

これは、どういうことなのだろうか。浪江町女児1歳の場合、いくら元来甲状腺がんの発がんリスクは高くないとしても、それが9倍になるということは、放射線の影響がないとはいえないのではないか。また、放射線被曝によって児童の場合は、甲状腺異常が発生する可能性も増えているとしている。しかも、これは「予測」なのである。

もちろん、この WHOの予測自体が、低線量被曝は人体への影響が少ないという「通説」に依拠するものだと考えられる。それでも、さすがに、チェルノブイリ事故による小児甲状腺がんの多発により、甲状腺がんはそれなりにデータが得られており、低線量被曝でもがんリスクが増加することを認めざるを得ないというのが、この報告書なのだと考えられる。

しかし、朝日新聞では「がんリスク 福島原発事故の影響、明らかな増加見えず」と、少なくとも児童においてはあてはまらない見出しをつけている。

そして、三面の解説記事では、このように説明している。

 

世界保健機関(WHO)は、福島第一原発事故の被曝による健康影響について、全体的には、がんが「有意に増える可能性は低い」とした。
 これは、被曝でがんが発生がないという意味ではない。日本人の2人に1人は一生のうちにがんが見つかっており、福島県民約200万人のほぼ半数はもともとがんになる可能性がある。このため、仮に被曝で千人にがんが発生しても増加率が小さく、統計学的に探知できないということだ。
 一方で、小児の甲状腺がんのように患者数が少ないと、わずかな増加も目立つ。福島県浪江町の1歳女児が16歳までに甲状腺がんになる可能性は、0.004%が0.037%へ、約9倍に増えるとされた。これは、仮に浪江町に1歳女児が1万人いたら、甲状腺がんになるのは0.4人から3.7人に増える可能性があるということだ。

予測において統計的に有意の結果は出しにくいというのは事実だろう。しかし、人口の半数が被曝しなくてもがんになるから、放射線被曝の影響によるがん発生率がわからないというならば、調査しなくても同じになる。記者が書いているように、それこそ1000人が被曝によってがんになっても、統計的にはわからないということになる。もし、人口の50%ががんになるにせよ、それが、放射線被曝によって50.001%になるかいなかを調べることが必要とされているのではないか。

そして、小児甲状腺がんにおいては、予測ですらも、低線量被ばくでがん発生率は9〜3.7倍になっている。元来、小児甲状腺がんの発生率が低いとしても、それは大きな増加なのではなかろうか。

そして、このブログでも伝えているように、福島県の児童36万人を対象とした甲状腺検査で、甲状腺異常が約42.1%、二次検査の必要な児童が0.5%発見されている。もちろん、二次検査が必要な児童全員ががんになるわけではない。しかし、放射線被曝がない場合の甲状腺がんの発生率が0.004%というならば、最悪、その100倍が甲状腺がんとなったということになる。9倍などというものではないのである。

WHOなどが予測すること自体はよいだろう。そして、予測が、それまでの通説に基づいてたてるしかないことは了解できる。しかし、福島県の児童を対象とした甲状腺検査結果からみるならば、予測は「過小評価」でしないと考えて比較すべきなのだと思う。その上で、早急に対策をたてるべきなのだ。どうせ人口の半分はがんになるなどとして、何の対策もたてないということは、福島県民を棄民することであり、朝日新聞が「福島のがんリスク、明らかな増加見えず」などと報道することは、それに加担することなのだと思う。

追記:http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240911siryou2.pdfによって福島県の現時点における調査結果を確認した。いまだ、約9万6000人しか調査していないのだが、その調査での甲状腺異常は18119人(43.1%)、二次検査が必要な者が239人(0.6%)である。なお、この調査結果ではがん患者発生は認めていない。つまり、実際に甲状腺がんを発症していても、福島第一原発事故関係ではないと「判断」されてはじかれてしまっているのである。なお、誤解を招いてはいけないので、36万人を基準に検討した人数についての言及は削除させていただくことにした。

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最近、私自身も含めて、被災地の問題について考える機会が少なくなっている。しかし、2012年11月11日の永田町・霞ヶ関の反原発抗議行動の中で、文部科学省前に原爆やビキニ水爆実験で被ばく死した久保山愛吉などの遺影が安置され、「子どもを守れ」「福島の子供達を避難させて!」というプラカードが掲げられたことを本ブログで書いた。その時の写真を、もう一度再掲する。

文部科学省前抗議(2012年11月11日)

文部科学省前抗議(2012年11月11日)

さて、その後、福島県で実施されている18歳以下の児童(36万人)を対象にした甲状腺検査において、甲状腺がんの疑いのある児童が一人発見されたということが報道された。2012年11月19日、河北新報は、次のような記事をネット配信している。

甲状腺がん疑い 即時要2次検査は16~18歳の女子

 福島第1原発事故後に福島県が県内の18歳以下36万人を対象に実施している甲状腺検査で、甲状腺がんの疑いがあるとして即時2次検査が必要な「C判定」を受けた子どもが1人いた問題で、県の県民健康管理調査検討委員会は18日、判定を受けたのは16~18歳の女子だったことを明らかにした。
 検査を担当している福島県立医大によると、女子は甲状腺に結節が発見され現在、2次検査を受けている。福島市で18日あった委員会後の記者会見で、医大の鈴木真一教授は「原発事故による被ばく線量は低く因果関係は考えにくい」と話した。
 委員会をめぐり9月の前回会合後、議論の誘導が疑われる議事進行表を委員に事前送付するなど県の不適切な運営が発覚した。菅野裕之県保健福祉部長は18日の会合で「県民の皆さまに疑念を抱かせ、申し訳ない」と陳謝。(1)菅野部長が委員を辞任(2)新たに外部委員2人が参加(3)速やかな議事録作成-などの改善策を説明した。
 会合では2012年度分の9月までの甲状腺検査結果も公表。結節や嚢胞(のうほう)がない「A1」判定が57.3%、小さな結節などがある「A2」が42.1%、一定以上の大きさの結節などがあって2次検査が必要な「B」が0.5%だった。
2012年11月19日月曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/11/20121119t63011.htm

この報道自体が衝撃的である。しかし、それにもまして問題なことは、検査を実施した福島県立医大の鈴木真一教授のコメントである。1986年のチェルノブイリ事故においても児童の甲状腺がんが多発した。そのようなことをふまえて、福島第一原発事故後、福島県の児童に対して甲状腺検査が実施されている。つまり、そもそも福島第一原発事故による放射線被ばくがなんらかの形で児童の甲状腺がん多発につながることが懸念されているから甲状腺検査が実施されている。しかし、鈴木は「原発事故による被ばく線量は低く因果関係は考えにくい」と述べている。これでは、甲状腺検査をする意味はない。

鈴木のコメントは、結局、年間100mSv以下の「低線量」被ばくでは人体に影響をもたらさないという、日本の「原子力ムラ」で流通している「通説」の方を優先しているのである。この論理でいけば、どれほど甲状腺がん患者が出ていても、「低線量」しか被ばくしていないとして、結局、すべて福島第一原発事故の影響ではないということになる。実際には、「低線量」被ばくでも甲状腺がんは発生するという「実証」ともいえるものを、「低線量」被ばくであれば人体に影響がないという「通説」によって否認しているのである。

これは、もちろん、国や東京電力や福島県などによる「低線量」被ばくの影響を否認しようという政策が背景になっているといえる。このような論理は、水俣病において有機水銀が原因であることを認めなかった当時の対応とも共通しているといえる。しかし、より「科学」として考えなくてはならないことは、一般的に流通する「通説」によって「実証」を否認しているということである。これは、コペルニクスの「地動説」をそれまでの「通説」であったプトレマイオスの「天動説」で否認していることと同じだ。

さらに、「会合では2012年度分の9月までの甲状腺検査結果も公表。結節や嚢胞(のうほう)がない「A1」判定が57.3%、小さな結節などがある「A2」が42.1%、一定以上の大きさの結節などがあって2次検査が必要な「B」が0.5%だった。」としている。「小さな結節」が「致命的」であるかいなかは別として、福島の児童たちの約57%しか甲状腺の状態が正常ではない、42%以上の児童たちが甲状腺異常を抱えているということになる。これは、どうみても、異常事態であろう。甲状腺がん患者の疑いのある児童が1人発見されたというだけでなく、これ自体が大問題のはずである。

しかも、このことは、すでに9月の時点で報道されていた。河北新報のコルネット会員サービスを利用して検索してみると、「子ども1人、甲状腺がん 事故の影響否定 福島県検査」という記事が9月12日にネット配信されている。この記事でも、「福島第1原発事故後に福島県が県内の18歳以下の子どもを対象に実施している甲状腺検査で、甲状腺がんを発病しているケースが1例確認されたことが11日、分かった。甲状腺がんの発症例が確認されたのは初めて。」と、甲状腺がん発病者が1人いたことが伝えられている。この発病者が、11月19日の報道による患者と同一かいなかは明らかではない。ただ、もし他にいれば「2人」などと報道されると考えられるので、同一人物と思われる。

そして、この報道でも「検査担当の鈴木真一福島県立医大教授は「原発事故による被ばく線量は内部、外部被ばくとも低い。チェルノブイリ原発事故の例からも、事故による甲状腺がんが4年以内に発症することはないと考えている」と説明している。」としている。何があっても、コメントは同じなのである。

重要なことは、次のことである。

委員会では2012年度分の8月までの検査の結果も報告された。結節や嚢胞(のうほう)がない「A1」判定が56.3%(11年度は64.2%)、小さな結節などがある「A2」が43.1%(35.3%)、一定以上の大きさの結節などがあって2次検査が必要な「B」が0.6%(0.5%)だった。

つまり、2011年度と2012年度を比較すると、甲状腺が正常な児童の比率が64.2%から56.3%に減少し、甲状腺に小さな異常のある児童が 35.3%から43.1%に増加したことになる。11月の発表ではやや数字が違っているが、大枠は変わらない。つまり、福島県の児童の甲状腺異常は時間の経過につれて増えているのである。

このように、福島県の児童は異常事態の中にいる。一般的にみて甲状腺異常が見られる児童が福島県では40%以上存在しており、そのうち、約0.6%は甲状腺がんの疑いがあるのである。

そして、このことに対策をしたくない政府は、次のようなことを提起した。共同通信は2012年11月20日に次のような記事をネット配信した。

長崎でも子供の甲状腺検査 環境省、福島の結果と比較

 長浜博行環境相は20日、東京電力福島第1原発事故による福島県内の子どもの甲状腺への影響を確かめるため、比較材料として長崎県内の18歳以下の甲状腺検査を今月7日に始めたことを明らかにした。閣議後の記者会見で答えた。環境省によると、青森、山梨両県でも年内に調査を始める方向で調整している。

 子どもの甲状腺を大規模に調べる疫学的調査の前例がなく、原発事故の影響の有無を確かめる必要があるため、原発から離れた地域でも検査し福島県の結果と比較する。

 福島県は、事故発生時に18歳以下だった約36万人を対象に甲状腺検査を進めている。

2012/11/20 13:02 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201211/CN2012112001001429.html

もちろん、このような比較調査が全く意義がないということではない。そのような比較を行わなければ「疫学的知見」は得られない。しかし、これは、明らかに福島の児童に甲状腺異常が多く発生しているということを否認したい、少なくとも、実質的な対策を先送りしたいという意識から発しているといえる。

今、必要なことは、福島県の児童については、放射線被ばくによると仮説的に推定される甲状腺異常・甲状腺がんが多く発生しているということを認め、その線にそって避難や医療などの対策を進めることだといえるのではないか。そして、それが、原爆やビキニ水爆実験で被ばく死した人びとの思いにもこたえることになるのではなかろうかと思う。

追記:http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240911siryou2.pdfによって福島県の現時点における調査結果を確認した。いまだ、約9万6000人しか調査していないのだが、その調査での甲状腺異常は18119人(43.1%)、二次検査が必要な者が239人(0.6%)である。なお、この調査結果ではがん患者発生は認めていない。つまり、実際に甲状腺がんを発症していても、福島第一原発事故関係ではないと「判断」されてはじかれてしまっているのである。なお、誤解を招いてはいけないので、36万人を基準に検討した人数についての言及は削除・訂正させていただくことにした。

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