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さて、雁屋哲原作の漫画「美味しんぼ」で、福島県において「鼻血」症状が出ていると描写し、福島県や安倍政権の閣僚たちが批判するという状態になっている。福島県で「鼻血」症状が多発しているというのは、ある方面ではポピュラーな話であった。しかし、このことを、低線量の放射線では、鼻血がでるような典型的な「急性放射線症」は発症しないといって、やっきになって福島県などは否定しようとしている。

しかし、ここでは、別な方面から考えてみよう。福島県は、鼻血の有無も含めて福島県民の現状の健康状態を把握しているのだろうか。つまり、「福島県民は健康である」という「科学的」根拠を把握したうえで「美味しんぼ」に反論しているのだろうか。そこで、ここでは、福島県の健康調査の実情について概観していくことにしたい

福島県のサイトをみると、全県民を対象にして「県民健康調査」というものを行っている。そのうち、もっとも重視しているのは「基本調査」というものだ。これは、全県民に福島第一原発事故時点の行動を「問診票」という形で答えてもらい、そこから被ばく線量を推計するというものだ。そして、本来であれば、この基本調査の結果を前提にして、「血算」検査(赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン、血小板数、白血球数、白血球分画)を含んだ「健康診査」を実施する予定にしていた。今いわれている「鼻血」についても、この「血算」検査で決着が着いたのではないかと思われる。この「健康診査」は、避難区域住民は全員対象となっている。たぶん、避難住民以外の県民は、被ばく線量の高低が「健康診査」を受ける基準となっていたのだろう

この基本調査は、いまの時点でも25%ほどしか完了していない。そして、このやり方自体も完璧なものとはいえない。そして、現時点では、年間1mSv未満の人が66.8%、1−2mSvの人が28.6%、2−3mSvの人が4.7%いるということになっている。そして、最高値は66mSvとなっている。原発関連でない人の最高値は25mSvである。もし、除染基準1mSvを基準とするならば、確かに高線量の人は少ないものの、30%以上の人々は、基準以上の放射線に被ばくしたということになるだろう。

この中間結果について、福島県では、「県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について」の中で、次のような判断を下している。

実効線量の推計結果に関しては、これまでと同様の傾向にあると言える。
これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない1)ことから、4ヶ月間の外部被ばく線量推計値ではあるが、「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価される。
参考文献
1)放射線の線源と影響 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 UNSCEAR2008年報告書[日本語版]第2巻 独立行政法人放射線医学総合研究所
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/51045.pdf

「基本調査」では年間100mSv以上の被ばく線量の県民はいなかった、ゆえに「放射線による健康影響があるとは考えにくい」としたのである。現実に健康に影響があるかどうかはお構いなしなのである。

そして、このような結論を出したことは、次のステップで行われるはずの「血算」検査を含んだ健康診査の進行計画に多大な影響をもらたした。福島県では、「これまでのモニタリング値や避難の状況、また、基本調査による推計値等から考えられる被ばく線量及び現在得られている低線量放射線の健康影響に関する知見を踏まえると、健康に影響を及ぼすリスクは、他の生活習慣と関連する健康リスクに比べ低いと予想される。」という見解を前提にして、 避難区域以外の住民に「健康診査」を実施するかいなかについて、次のような意見の対立があったとサイトの中でのべている。

3 必要と認める基準案

(第1案)
現状では科学的・論理的に詳細調査を必要と認める基準を設定することは困難ではあるが、既に実施されている詳細調査の対象者を拡大する基準線量を明示しないことは、基本調査から詳細調査へ移行するという当初の枠組みと一貫性を欠くこととなるため、これまで住民の安全を確保するために国が示した警戒区域等の線量基準、今回新たに当該区域の見直しのために示された線量基準等との整合性も鑑みた上で、基本調査での外部被ばく推計線量の結果が一定以上の者を、詳細調査が必要と認められた者とする。

(第 2 案)
現段階で得られている被ばく線量の情報からは、外部被ばく線量推計結果を特別な判断基準とした詳細調査を行う必要性は認められない。基準線量設定には科学的根拠が必要であるが、現状では明確な説明が困難である一方、国内外において生じる影響は非常に大きい。また、基準値を上回った住民の健康に対する必要以上の不安を招いたり、差別などが生じる懸念がある。更に、上記2(1)の見解との整合性もとれないことから、この低線量領域での推計線量の大小で区別して新たな対応をすることよりも、全県民対象とした定期的な検診等やがん登録の充実を図ることにより、長期間に渡ってフォローアップする枠組みを設計することが重要と考えられる。
なお、今後も続くことが予想される避難の状況、先行調査地域以外での外部被ばく線量の推計結果、他の検査や調査の結果等を総合的に判断することとし、今後の状況等の変化により必要が生じた場合には、当該状況等を考慮して改めて基準案を検討する。
第6回福島県「県民健康管理調査」検討委員会(平成24年4月26日開催)資料
http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/shiryou2.pdf

第一案は、もともとの予定通り、一定の基準以上の推計線量の人たちを「血算」検査を含んだ「健康診査」の対象とするということであり、第二案は、低線量で健康に影響がないのであるから、「健康診査」を実施しないというものである。この両案の是非は判断されず「検討中」ということで先送りになったが、結局、現在まで避難区域の住民以外は実施されていないので、実質的には第二案になったということができる。ここで、避難区域以外の一般県民について、「血算」検査を含んだ「健康診査」は実施されないことになったのである。

そして、避難区域以外の県民には、「血算」検査を含まない形の「健康診査」が実施されるようになった。40歳以上は、市町村で一般的に成人病予防を目的とした「健康診査」サービスが提供されているが、福島県では、「健康診査」の対象年齢以下の19〜39歳に「健康診査」が受けられるようにしたのである。といっても、尿検査や血圧、血液生化学など、一般の「成人病」検査と同様なものでしかない。そして、前述したように、わざわざ「血算」検査を除外したのである。

他方、避難区域の住民については、「健康診査」は実施された。しかし、成人分については受診者数しか公表されていない。小児分については「まとめ」が公表されている。しかし…とりあえずあげておこう。

【まとめ】
0 歳から 15 歳までの小児について、男女とも、平成 23 年度に比較して平成 24 年度は、身長が高くなり、体重が減少する傾向がみられた。したがって、平成 24 年度は平成 23 年度に比較して、運動量が増加し食習慣が改善された可能性がある。しかし、全国に比較すると、平成 24 年度の女児において身長はほぼ同等であるが、体重がやや多い傾向があり、より一層の生活環境改善が望まれる。
平成23・24年度県民健康管理調査「小児健康診査」
http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/51062.pdf

一読すれば理解できるように、「身長」と「体重」だけしか言及されていないのである。「血算」検査をしているはずだが、それにはまったく触れていない。

このような、福島県の県民健康管理調査のあり方から、二つのことが読み取れよう。まず、第一に、福島県では、年間100mSv未満の低線量被ばくでは健康に影響がないとして、避難区域住民は別として、放射線に関連した「健康診査」自体を中止したことである。確かに、今までよりも健康診査の機会は増えただろうが、放射線量との関連はあえて切断されているのである。この結果、低線量被ばくと、現実の健康被害との関連を検討することはできなくなったのである。低線量被ばくにおける健康への影響については定説がないが、そのことを科学的に「実証」しようということは放棄されている。

第二に、「血算」検査に対する福島県の忌避感が非常に強いことが読み取れよう。避難区域外の県民には、わざわざ「血算」検査をぬいて「健康診査」を提供している。また「血算」検査をしているはずの避難区域住民の「血算」検査結果は公表されていない。ある程度の検査結果は出ていると考えられるが、何もないーというか標準的な程度の結果であれば、公表したほうが県の立場としてもよいのではないかとも思う。現実の「血算」検査結果において、見のがし得ないほどの「問題」がおきているのではないかと思うのである。

このように、そもそも、福島県は「美味しんぼ」に対して、実証的な反論が可能なデータをもっているのかとも思う。福島県は、そもそも、県民全体の健康を考える立場にたって、「健康診査」をやり直すべきであろう。現状では、福島県で「鼻血」が多発しているかいなか(つまりなんらかの血液異常があるかどうか)、そして、それが放射線の影響によるものなのかどうかということを確定的に福島県の調査結果からいうことはできない。現実の福島県民の健康状態はどういうものなのか。そもそも、「100mSv未満は健康に影響がない」というドクトリンばかりなのであり、それですべての問いを封殺しているというのが福島県の姿勢なのである。

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