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Posts Tagged ‘高浜原発’

さて、本ブログでは、「東日本大震災の歴史的位置」というテーマのもとで、度々福島原発の建設過程について検討し、それをもとに、昨年『戦後史のなかの福島原発ー開発政策と地域社会』(大月書店)という著書を上梓した。

本ブログでは、これから「福井県の人びとはなぜ原発建設に賛成/反対したのか」というテーマのもとに、福島県を凌駕する原発集中立地地帯である福井県の原発についてみていこうと考えている。私は、まず、福井県の原発の現状をみておきたい。周知のことだが、福井県の嶺南地方には日本原子力発電の敦賀原発(2基)、関西電力の美浜原発(3基)・大飯原発(4基)・高浜原発(4基)が立地している。都合13基となり、敦賀市にある高速増殖炉もんじゅなどを含めると、福島県以上(福島第一原発6基・福島第二原発4基)の原発集中立地地帯である。しかし、現状は、他の地域の原発同様、この地域の原発も2013年9月以降すべて停止している。次の福井新聞のネット配信記事をみてほしい。

 

福井県内原発、初の発電量ゼロ 14年度実績、全13基停止で
 (2015年4月7日午後5時30分)

 福井県が発表した2014年度の県内原発の運転実績によると、総発電電力量は県内で最も古い日本原電敦賀原発1号機が運転を開始した1969年度以降で初めてゼロとなった。商業炉13基(合計出力1128・5万キロワット)の全基が停止しているため。

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、県内の商業炉は定期検査などで次々止まり、12年2月に全基が停止。同年7月に関西電力大飯3、4号機が国内で唯一再稼働したが、13年9月に13カ月間の営業運転を終え、再び全原発が停止した。

 再稼働に向け関電高浜1~4号機、大飯3、4号機、美浜3号機の計7基が原子力規制委員会に安全審査を申請している。高浜3、4号機は審査に事実上合格したが、残りの認可手続きなどがあり再稼働時期は見通せていない。

 輸送実績はウラン新燃料集合体が計140体、低レベル放射性廃棄物は8千体(200リットルドラム缶)、使用済み核燃料は大飯4号機の14体だった。

 安全協定に基づき連絡のあった異常事象は1件で、法律に基づく国への報告対象になった事象や、保安規定に基づく運転上の制限の逸脱はなかった。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/nuclearpower/68306.html

この原発群のうち、もっとも古いのは敦賀原発1号機と美浜原発1号機で、ともに1970年に営業運転が開始された。特に敦賀原発1号機については、1970年に大阪で開催された万国博覧会に電力を供給したことでよく知られている。この両原発は、福島第一原発1号機(1971年営業運転開始)とともに、日本国内において軽水炉による原子力発電所とはもっとも古いものである。他方、その古さにより、この両原発は、美浜原発2号機(1972年営業運転開始)とともに廃炉にされることになった。次の福井新聞のネット配信記事をみていただきたい。

 

美浜と敦賀の原発3基廃炉決定 老朽化、福井県知事に報告
 (2015年3月17日午後0時05分)

 関西電力は17日、臨時取締役会を開き、運転開始後40年以上たち老朽化した美浜原発1、2号機(福井県美浜町)の廃炉を正式決定した。八木誠社長は福井県庁を訪れて西川一誠知事と面談し、2基の廃炉方針を報告した。日本原子力発電も同日、敦賀原発1号機(同県敦賀市)の廃炉を決定。午後に浜田康男社長らが福井県と敦賀市を訪れ、方針を説明する。

 東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年とする規定に従って、電力会社が廃炉を決めるのは初めて。古い原発の選別を進めることで政府は安全重視の姿勢を強調する一方、一定程度の原発は今後も活用していく方針だ。日本の原発行政は、大きな転換点を迎えることになる。

 関電は一方、運転開始から40年前後たった美浜3号機と高浜原発1、2号機(福井県高浜町)について、17日午後、再稼働に向けて原子力規制委員会に新規制基準の適合性審査の申請をする。

 八木社長は美浜廃炉について西川知事に「将来の(電力)供給力などを総合的に勘案した結果、廃炉を決定した」と説明した。

 関電は美浜原発2基に関し、40年を超えて運転できるか検討していた。だが、出力がそれぞれ34万キロワット、50万キロワットと比較的小さいため運転を続ける場合に必要な安全対策の工事費用などを回収できない可能性が高く、廃炉決定に傾いたとみられる。

 関電は福井県に対し、廃炉工事に当たって地元企業を積極的に活用することや、使用済み核燃料の福井県外への搬出に最大限努力することなどを報告した。

 老朽原発をめぐっては、中国電力と九州電力も、島根原発1号機(島根県)と玄海原発1号機(佐賀県)の廃炉を、それぞれ18日に開く取締役会で決める見通し。関電と日本原電を含む4社は19日に経済産業省に報告する方向で調整している。

 関電と日本原電は当初18日に取締役会を開いて廃炉を決定する運びだったが、地元自治体などとの日程調整を経て1日前倒ししたもようだ。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/66497.html

なお、日本原子力発電の敦賀原発2号機についても、活断層の直上に建設されていたとされ、廃炉がとりざたされている。次の毎日新聞のネット配信記事をみてほしい。

 

敦賀原発:2号機直下「活断層」 原電、再稼働厳しく
 毎日新聞 2015年03月25日 22時34分

 日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)、東北電力東通原発1号機(青森県)の敷地内断層について、原子力規制委員会の有識者調査団は25日、いずれも「将来活動する可能性がある」として新規制基準で定める活断層と認める報告書を規制委に提出した。規制委は今後、原発の再稼働に必要な安全審査で、この報告書を「重要な知見の一つ」と位置付け、活断層かどうかを判断する。両社は廃炉や大規模な改修工事などの重大な決断を迫られる公算が大きい。

 報告書は、敦賀2号機の原子炉建屋直下を通る断層と、東通1号機の原子炉建屋から最短200メートルにある2本の断層を活断層と認定した。新規制基準では、活断層の真上に原子炉などの重要施設を造ることは許されない。

 原電は報告書について「重大かつ明白に信義則、適正手続きに反し、無効」と反論し、敦賀2号機の安全審査を申請する方針。審査で敦賀2号機直下の断層が活断層だと判断されれば、廃炉に追い込まれる公算が大きいが、原電は訴訟も辞さない姿勢を見せている。

 東通1号機については、昨年12月にまとめた報告書案では「活動性を否定できない」との表現だったが、外部専門家からの意見聴取などを経て、一歩踏み込んだ。原子炉冷却用の海水取水路の直下にある別の断層については判断を保留した。東北電は既に審査を申請しており、規制委は近く審査を本格化させる。判断を保留した断層についても規制委の田中俊一委員長は「審査の大きなテーマになる」と述べた。合格には大幅な耐震補強や取水路の付け替えなどが必要になる可能性がある。【酒造唯】
http://mainichi.jp/select/news/20150326k0000m040142000c.html

関西電力は、前掲新聞記事のように、高浜原発1−4号機、大飯原発1−4号機、美浜原発3号機の再稼働をめざし、原子力規制委員会の安全審査を申請していた。そして、高浜原発3・4号機については、原子力規制委員会の安全審査を事実上パスし、地元への同意を求める手続きに入っていた。次の中日新聞のネット配信記事をみてほしい。

 

2015年3月20日 夕刊

 高浜再稼働に町議会が同意

 関西電力が十一月の再稼働を想定している高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐり、高浜町議会は二十日、全員協議会で再稼働に同意した。議会の判断を受け、野瀬豊町長は四月以降、町として再稼働への同意を表明する方針。町議会の同意で、再稼働に必要な「地元同意」手続きの最初の関門を通った形だ。

 全員協議会には全町議十四人が出席。的場輝夫議長によると、「安全対策が不十分」などの反対意見は一人だけで、再稼働同意を議会の意思として取りまとめた。同意文書を手渡された野瀬町長は「3・11以降の議論を積み重ねた議会の判断であり、大きな判断要素として承る」と応じた。

 再稼働で先行する九州電力川内原発(鹿児島県)の地元説明会が混乱したことを踏まえ、同町では説明会の代わりに町内ケーブルテレビで安全審査の解説ビデオ(原子力規制庁制作)を放映するにとどめた。的場議長は、事前に議会の同意条件として挙げていた町民の意見集約ができたと考える根拠を報道陣から問われ「ビデオへの反応は鈍かったが、議員の日々の活動の中で町民と接して、原発の安全対策について、町民は理解していると判断した」と答えた。

 野瀬町長も取材に「他府県との広域避難計画の調整や、原子力政策や避難計画に関する町民向けの説明会の日程の調整が必要」とした上で、県知事・県議選の投開票日(四月十二日)以降に町として同意を表明する考えを示した。

 高浜3、4号機をめぐっては、原子力規制委員会が二月、新規制基準に「適合」と判断した。

 野瀬町長が同意を表明すると、地元同意の手続きは、福井県議会と西川知事の判断に移る。
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015032002000257.html

このような原発再稼働の動きにストップをかけたのが、福井地裁の司法判断である。2014年5月21日、福井地裁は大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を出した。福井新聞の次のネット配信記事をみてほしい。

 

大飯原発の運転差し止め命じる 福井地裁が判決
 (2014年5月21日午後3時15分)

 安全性が保証されないまま関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させたとして、福井県などの住民189人が関電に運転差し止めを求めた訴訟の判決言い渡しが21日、福井地裁であり、樋口英明裁判長は関電側に運転差し止めを命じた。

 全国の原発訴訟で住民側が勝訴したのは、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の設置許可を無効とした2003年1月の名古屋高裁金沢支部判決と、北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止めを命じた06年3月の金沢地裁判決(いずれも上級審で住民側の敗訴が確定)に続き3例目。

 大飯3、4号機は昨年9月に定期検査のため運転を停止。関電は再稼働に向け原子力規制委員会に審査を申請し、新規制基準に基づく審査が続いている。

 審理では、関電が想定した「基準地震動」(耐震設計の目安となる地震の揺れ)より大きい地震が発生する可能性や、外部電源が喪失するなど過酷事故に至ったときに放射能漏れが生じないかなどが争点となった。

 大飯原発3、4号機をめぐっては、近畿の住民らが再稼働させないよう求めた仮処分の申し立てで、大阪高裁が9日、「原子力規制委員会の結論より前に、裁判所が稼働を差し止める判断を出すのは相当ではない」などとして却下していた。

 脱原発弁護団全国連絡会(事務局・東京)などによると2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、全国で住民側が提訴した原発の運転差し止め訴訟は少なくとも16件あり、福井訴訟が事故後初めての判決となった。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/50555.html

さらに、2015年4月14日、福井地裁は、原子力規制委員会の安全基準を批判しつつ、高浜原発3・4号機の再稼働を認めない仮処分決定を下した。NHKの次のネット配信記事をみてほしい。

高浜原発 再稼働認めない仮処分決定
4月14日 14時04分

福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機について、福井地方裁判所は「国の新しい規制基準は緩やかすぎて原発の安全性は確保されていない」という判断を示し、関西電力に再稼働を認めない仮処分の決定を出しました。
異議申し立てなどによって改めて審理が行われ決定が覆らなければ、高浜原発は再稼働できなくなりました。
関西電力は異議を申し立てる方針です。
福井県高浜町にある関西電力の高浜原発3号機と4号機について、福井県などの住民9人は、安全性に問題があるとして福井地方裁判所に仮処分を申し立て、再稼働させないよう求めました。これに対して、関西電力は、福島の原発事故も踏まえて対策をとったと反論しました。
福井地方裁判所の樋口英明裁判長は、関西電力に対して高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない仮処分の決定を出しました。
決定では「10年足らずの間に各地の原発で5回にわたって想定される最大の揺れの強さを示す『基準地震動』をさらに超える地震が起きたのに、高浜原発では起きないというのは楽観的な見通しにすぎない」と指摘しました。
そして原子力規制委員会の新しい規制基準について触れ、「『基準地震動』を見直して耐震工事をすることや、使用済み核燃料プールなどの耐震性を引き上げることなどの対策をとらなければ、高浜原発3号機と4号機のぜい弱性は解消できない。それなのに、これらの点をいずれも規制の対象としておらず、合理性がない」という判断を示しました。
そのうえで、「深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないと言えるような厳格な基準にすべきだが、新しい規制基準は緩やかすぎて高浜原発の安全性は確保されていない」と結論づけました。
今回の仮処分はすぐに効力が生じるもので、関西電力の異議申し立てなどによって改めて審理が行われ、決定が覆らなければ、高浜原発は再稼働できなくなりました。
異議申し立てなどによる審理は福井地裁で行われ、決定が覆れば、仮処分の効力は失われます。
福島の原発事故後に起こされた裁判では、14日の決定と同じ樋口英明裁判長が去年、大飯原子力発電所3号機と4号機の再稼働を認めない判決を言い渡し、現在、名古屋高等裁判所金沢支部で審理が行われています。

 仮処分手続きと決定の効力
仮処分の手続きは、正式な裁判をしていると時間がかかって間に合わない、緊急の場合などに使われるもので、今回の仮処分の決定は直ちに効力が生じます。
決定の是非については異議申し立てなどによる審理で最高裁判所まで争うことができ、その過程で取り消されなければ決定の効力は続きます。逆に決定が覆れば仮処分の効力は失われます。
ただ、仮処分はあくまで正式な裁判が行われるまでの暫定的な措置で、再稼働を認めるべきかどうかについて正式な裁判が起こされれば、改めて司法の判断が示されることになります。
住民側代表「脱原発へ歴史的な一歩」
仮処分の決定のあと、住民側の代表が記者会見を開きました。
このなかで住民側の弁護団の共同代表を務める河合弘之弁護士は、「司法が原発の再稼働を止めたきょうという日は、日本の脱原発を前進させる歴史的な一歩であるとともに司法の歴史でも、住民の人格権、ひいては子どもの未来を守るという司法の本懐を果たした輝かしい日であり、大きな喜びとともに大きな責任を感じている」と述べました。
そのうえで、「この決定は、国の新規制基準の不備を厳しく指摘し、その無効性を明らかにしたもので、これを機に日本中の原発を廃炉に追い込まねばならない」と述べました。
関電「速やかに異議申し立てを検討したい」
14日の決定について関西電力側の弁護士は「会社の主張を裁判所に理解してもらえず、まことに遺憾で、到底承服できない。決定内容を精査したうえ、準備ができ次第、速やかに異議の申し立てと執行停止の申し立ての検討をしたい」と述べました。
そのうえで「会社としては十分な安全性を確保しているとして科学的・専門的・技術的な知見に基づいて十分な主張・立証をしているつもりなので、引き続き、裁判所に理解を求めたい」と話しました。

 高浜町長「再稼働の同意は現在の規制基準で判断」
高浜原子力発電所がある福井県高浜町の野瀬豊町長は、「司法の判断は重いが、関西電力から求められている再稼働の同意の判断にあたっては、現在の規制基準で安全が十分なのかという点で判断していく。行政としての手続きは進めていきたい」と述べ、今回の決定が同意の判断には大きく影響しないという考えを示しました。
そのうえで、「住民は困惑すると思うので、エネルギー政策を決める国が覚悟を持った姿勢を改めて示してほしい」と話していました。

 地震の専門家「誤った理解」
地震による揺れの予測について詳しい日本地震学会の元会長で、京都大学名誉教授の入倉孝次郎さんは「原発の基準地震動は地震の平均像ではなく、個別の敷地の不確かさも考慮して設定されており、決定で『実績や理論の面で信頼性を失っている』としているのは誤った理解だ。一方で、決定の中で原発に外部から電力を供給する送電線なども安全上重要であり、ふさわしい耐震性が求められると指摘しているのはそのとおりだと思う」と話しました。
そのうえで、「原発の安全性を検討するには地震の揺れだけでなく福島で見られたような津波による被害や火山、人為ミスなどさまざまな面を総合的に考慮する必要があるが、今回の決定ではこうした点については科学的な見地で正確な分析がされていない」と話しています。

 官房長官「再稼働の方針変わらない」
菅官房長官は午後の記者会見で、「独立した原子力規制委員会が十分に時間をかけて世界で最も厳しいと言われる新基準に適合するかどうかという判断をしたものであり、政府としてはそれを尊重して再稼働を進めていくという方針は変わらない」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「国は本件の当事者ではなく、あくまで仮処分であり、当事者である事業者の今後の対応を国としては注視していきたい」と述べました。
また、菅官房長官は、記者団が「ほかの原子力発電所の再稼働やエネルギー政策への影響はないか」と質問したのに対し、「そこはないと思う。そこは『粛々と』進めていきたい。法令に基づいてということだ」と述べました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150414/k10010047951000.html

福井県の原発の現状をネット配信記事からみたものだが、古いもしくは問題のある原発の廃炉という方針が打ち出されるとともに、関西電力・国・立地自治体は原発再稼働をめざしており、他方でその阻止をめざして裁判が行われているなど、複雑な動きがみられる。原則的には建設後40年を経過した原発は廃炉となることになっている。20年の運転延長は認められているが、追加の安全対策なども必要となっており、敦賀原発1号機や美浜原発1・2号機は廃炉が決定された。一方、より新しい原発である高浜原発3・4号機は、原子力規制委員会の安全審査も事実上パスし、スムーズに再稼働されるだろうと関西電力や国などは想定していたが、福井地裁の仮処分決定でストップがかけられた形となった。これが、2015年4月時点の福井県の原発の現状なのである。。

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1960年代、福島原発建設と同時期に、福井においても原発建設が進められていた。福井が公式に原発建設の候補地となったのは1962年で、初めは福井県嶺北地方の坂井郡川西町(現福井市)の三里浜地区が候補になったが、岩盤が脆弱なために放棄され、嶺南地方の敦賀半島に所在する、敦賀市浦底地区と美浜町丹生地区が原発建設の候補地となった。結局、前者に日本原子力発電株式会社敦賀発電所、後者に関西電力美浜発電所が建設され、双方とも1号機は1970年に営業運転が開始されている。この二つの原発は、福井県への原発集中立地のさきがけとなり、敦賀原発自体が二つ、美浜原発自体が三つの原子炉を有するとともに、近接して実験炉のふげん(廃炉作業中)、もんじゅが建設されることになった。さらに、若狭地方には、それぞれ四つの原子炉を有する高浜原発と大飯原発が建設され、福島を凌駕する日本最多の原発集中立地がなされることになった。

福井の場合、福島と違って、1960年代初めから、原発建設に対する懸念が強かった。福井県の労働組合やそれを基盤とする社会党・共産党の県議・市議たちは、原子力の平和利用ということは認めつつ、具体的な原発建設についてはさまざまな懸念の声をあげていた。また、地元においても、美浜町丹生などでは比較的反対する声が強かった。

他方、思いもかけない方面で懸念の声があがっていた。懸念の意を表明したのは、昭和天皇である。このことを報道した福井新聞朝刊1966年10月14日付の記事をここであげておこう。

原電、西谷災害など 北知事、陛下にご説明

町村北海道知事ら十二道府県知事は、十三日午前十時半から、皇居で天皇陛下に各県の情勢などを説明した。これは数年前から恒例の行事になっているもので、陛下を中心に丸く輪になってすわった各知事が、五分間ずつ各地の現状と最近のおおきなできごとを話した。陛下は北海道、東北地方などの冷害や台風被害などにつき質問されていた。
正午からは陛下とともに仮宮殿の別室で昼食をとった。
北知事の話 電源開発と昨年秋の集中豪雨禍で離村する西谷村の現状について申しあげた。電源開発計画は、九頭竜川上流に四十三年六月を目標に三十二万二千キロの水力発電が完成するほか、原子力発電は現在敦賀半島で六十七万キロの開発が進んでおり、このほかの計画も合わせると数年後には百二十万キロ以上の発電能力を持つ全国屈指の電力供給県になるとご説明した。陛下からは非常によい計画だが、これによって地盤変動などの心配はないかとのご質問があったが、じゅうぶん考慮しており大じょうぶですとお答えした。
また昨年九月の集中豪雨で大きな被害を出した西谷村について、防災ダム建設などもあって全村離村する計画をお話ししたが、これについてはご下問はなかったが、ご心配の様子がうかがえた。
(福井新聞朝刊1966年10月14日付)

「北知事」とされているのは、原発誘致を積極的にすすめた当時の北栄造福井県知事のことである。かいつまんでいうと、北知事は、当時の福井県で進められていた水力発電所と原発建設を中心とする電源開発について説明したのだが、その際、昭和天皇から「非常によい計画だが、これによって地盤変動などの心配はないか」と質問され、北知事は「じゅうぶん考慮しており大じょうぶです」と答えたということなのである。

ここで、昭和天皇は、福井県の電源開発について「地盤変動などの心配はないか」と懸念を表明している。あげられている文章からでは、水力発電を含めた電源開発全体についてなのか、原発に特化したものなのか判然としないのだが、「地盤変動」をあげていることから原発のことなのだろうと推測できる。

このように考えてみると、原発開発の創設期である1960年代において、昭和天皇は、原発について「地盤変動」ー具体的には地震などを想定できるのだがーを「心配」していたとみることができよう。

原発が建設される地元の人びとや、さらに昭和天皇ですら表明していた原発に対する「懸念」に、国も県も電力会社も正面から答えることはなかった。結果的に福井県の原発はいまだ大事故を起していない。しかし、それは、「地盤変動」が原因でおきた福島第一原発事故をみて理解できるように、「たまたま」のことでしかないのである。

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2012年に成立した原子力規制委員会は、2013年に次のような「組織理念」を発表している。

原子力規制委員会の組織理念

平成25年1月9日
原子力規制委員会

原子力規制委員会は、 2011年3月11日に発生した東京電力福島原子力発電所事故の教訓に学び、二度とこのような事故を起こさないために、そして、我が国の原子力規制組織に対する国内外の信頼回復を図り、国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立すべく、設置された。

原子力にかかわる者はすべからく高い倫理観を持ち、常に世界最高水準の安全を目指さなければならない。

我々は、これを自覚し、たゆまず努力することを誓う。

使命

原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守ることが原子力規制委員会の使命である。
(後略)
http://www.nsr.go.jp/nra/idea.html

これによると、福島第一原発事故を教訓として、国民の安全を最優先にして、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立することが原子力規制委員会の設置目的であり、常に世界最高水準の安全をめざし、努力しなくてはならないとしている。「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守ること」が使命であるとまでされているのである。

この原子力規制委員会が策定し、2013年7月から施行された「実用発電用原子炉に係る新規制基準」(新規制基準と略記)について、同委員会は次のようにサイトで説明している。

新規制基準について
原子力規制委員会は、原子炉等の設計を審査するための新しい基準を作成し、その運用を開始しています。

今回の新規制基準は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省や国内外からの指摘を踏まえて策定されました。

以前の基準の主な問題点としては、
地震や津波等の大規模な自然災害の対策が不十分であり、また重大事故対策が規制の対象となっていなかったため、十分な対策がなされてこなかったこと
新しく基準を策定しても、既設の原子力施設にさかのぼって適用する法律上の仕組みがなく、最新の基準に適合することが要求されなかったこと
などが挙げられていましたが、今回の新規制基準は、これらの問題点を解消して策定されました。
この新規制基準は原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのものです。しかし、これを満たすことによって絶対的な安全性が確保できるわけではありません。原子力の安全には終わりはなく、常により高いレベルのものを目指し続けていく必要があります。
https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/shin_kisei_kijyun.html

新規制基準についての詳細は省略するが、上記の原子力規制委員会の主張によれば、津波・地震の自然対策や重大事故対策がはかられていなかったこと、新しい基準を策定して既設の原発に規制を適用できなかったなどの問題点を解消したものとされている。しかし、これは、「原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのもの」で、「絶対的な安全性」を確保するものではないとしている。いわば、原子力規制委員会が新規制基準が「暫定的」なものでしかないとしているのである。

この「暫定的」な新規制基準で、原発再稼働の審査が現在行なわれている。原子力規制委員会の定義によれば、これは「安全審査」ではなく、「適合性審査」なのである。

この「適合性審査」に川内原発はクリアしたと2014年7月16日に原子力規制委員会は発表した。このことを定例記者会見で発表した原子力規制委員会委員長田中俊一は、記者の質問にこたえて、注目すべき発言をしている。

私は、今はそういう数値だけで議論する、もちろん数値目標は大事ですけれども、そのことで、では国民が納得しているかというと、必ずしもそれはそうではないので、そこのところは、安全目標というのは決して国民と我々が合意して作ってた値ではないということだけは御理解いただかないといけないと思うのです。ただ、我々としては、全ての技術者がそうですけれども、あるレベルの安全性を確保しながらいくという意味で安全目標というのを持ったということで、これは大体、国際的にもそういうふうに思われているところですので、その辺も踏まえて御理解いただければ幸いです。
(中略)
安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということです。ですから、これも再三お答えしていますけれども、基準の適合性は見ていますけれども、安全だということは私は申し上げませんということをいつも、国会でも何でも、何回も答えてきたところです。

クリックして20140716sokkiroku.pdfにアクセス

田中は、彼らの「安全目標」は国民との合意によって形成されたものではなく、「あるレベルの安全性を確保しながらいく」というものであり、基準の適合性は審査したが、それで安全とは言えないと述べているのである。さらに、別のところでは、次のように話している。

こういったリスクがありますということが分かれば、それに対する対応ができるのですが、一般論として、技術ですから、これで人事で全部尽くしていますと、対策も尽くしていますということは言い切れませんよということです。
ただ、現段階で、いろいろなことを今日も後で私の方からもレクチャーしたように、相当のことを考えてリスクの低減化には努めてきたと、そのつもりではいます。

ゆえに、原子力規制委員会としては、基準の適合性以外は、すべて他者まかせという姿勢をとっている。川内原発の再稼働については、「これも何回も国会でもお答えしているのですけれども、私どもは再稼働をするか、しないかという判断についてはコミットしませんということを申し上げています。稼働を許可するかどうかということについては、もちろん事業者と、それから、地域の住民の方、それから、政府の考えとか、いわゆる関係者の合意で行われるのであって、そのベースとして私どもの審査があるということかと思います」とし、事業者・地域住民・国の合意にすべてまかせている。避難計画についても、「避難計画と再稼働というのは、ある意味では密接に関係はしていますけれども、規制委員会、規制庁がそれの関係をきちっと評価するという立場にはない」と、自身の権限外であることをことさらに強調しているのである。

また、電力会社に安全意識を高めて行くことについては「能力を高めるとか、安全に対する考え方を高めるというのは、事業者は事業者の努力がやはり基本になるのだということだと思います。そういう意味でJANSI(原子力安全推進協会)という組織を作ったので、そういったところを大いに活用して発展してもらって、事業者自身がそういう努力をしていただく必要はあろうかと思います。」と、電力会社側の「自主努力」に委ねるという姿勢をとっているのである。

さらに、防災時に作業員が退避してしまう可能性があることを例にして、事業者=電力会社に規制を守らせる担保はどこにあるのかと記者に質問されて、このように田中は述べている。

○記者 東京新聞のシミズです。これまでも誰が安全の責任をとるのかということは、一義的に事業者だということは再三おっしゃられていて、今回、こういう規制を作って、この規制を事業者が守ればある程度の安全は確保されるだろうということなのですけれども、結局、この規制を最後まで事業者が守るかどうかというのは、どうやって担保されるのでしょうか。要するに、ソフト面で、これは以前も質問があったかも知れないのですけれども、例えば、事故時に最悪の場合、作業をされている方が退避してしまうという可能性がないことはないわけですよね。
○田中委員長 防災のときの事業者の責任については、もう少しこれから確かめていく必要があることは事実です。だけれども、基本的には安全の担保は事業者にあるということも事実です。
○記者 確かめていくというのが、ちょっとよく分からないのですが。
○田中委員長 事故時の被ばく線量とか、そういうことについて、ある程度そういう場合に、事業者に対しては、従業員に対してきちんとそういう約束をしていただくとか、そういうことがいずれ必要になると思っていますけれども、まだそこまで届いていないというところもあります。
○記者 その状態で仮に動かしても、それは今の基準では仕方がないという、そこまで求められないということでしょうか。
○田中委員長 そうですね。そういうふうには私はならないと思いますし、先程も申し上げたような手順を踏んでおいた方が間違いないだろうということはありますけれども、今、そういうことについて、事業者の方から、そういうことがあるとは聞いていませんし、何かそんなことが問題になりそうですか、市村(市村知也 安全規制管理官)さん。ならないよね。

まず、防災の時の安全性確保は事業者側の責任であることを強調し、その際の手順を定めていないことは認めつつも、事業者側からそういうことは聞いていないし、そういうことは問題にならないと言い放っているのである。

そして、政権側が規制委員会が責任をもって安全かいなかをチェックしているのであるから、規制委員会の判断に全てを委ねると発言していると記者から質問されると、田中は次のように答えている。

政治家は政治家の発言がありますので、私から何か申し上げることではないと思っています。私どもは、ゼロリスクということはいつも申し上げられないから、安全というとゼロリスクと誤解されるので、そういうことを申し上げていますけれども、政治的にはわかりやすい意味で安全だということをおっしゃったのかも知れませんし、これは政治家と私の発言とが同じであることは多分ないと思います。

原子力規制委員会の任務は新規制基準の「適合性審査」であって、「安全審査」ではないという田中俊一原子力規制委員長の姿勢は、2014年12月17日に行なわれた高浜原発の「適合性審査」の発表のときにも見られた。この際、次のようなやりとりがなされている。

○記者 ロイターのハマダです。簡潔な質問です。高浜3・4号機の審査書案で両号機は安全と確認されたのでしょうか、そうでないのでしょうか、どちらでしょうか。
○田中委員長 我々の新しい安全要求というか、規制基準に適合しているということを認めたということです。
○記者 それは安全なのでしょうか、安全ではないのでしょうか。
○田中委員長 そういう表現の仕方は私は基本的にとらないと言っています。
○記者 では、安全だということではないということでよろしいですか。
○田中委員長 安全ではないとも言っていません。安全だとも言っていません。
○記者 ○か×かであれば、どちらでしょうか。
○田中委員長 ○か×かという言い方はしません。

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そして、再び、このようなことを言っている。

○記者 すみません。朝日新聞のカワダと申します。先程高浜の関係で、安全とも安全ではないとも言わないという話だったのですけれども、先日、安倍首相が会見で、いわゆる規制委が再稼働に求められる安全性を確認した原発については再稼働を進めるという表現をされたのですが、再稼働に求められる安全性というのは確認できたという理解でしょうか。
○田中委員長 言葉遊びになってしまうからね。総理は政治家だから、いろいろなそういう言い方をされますよ。分かりやすくという意味で。でも、私の方は、安全とか安全でないとか、安全が確認されたとか安全でないことが確認されたとかそういう言い方ではなくて、稼働に際して必要な条件を満たしているかどうかということの審査をしたということです。そのことイコール、では事故ゼロかというと、そんなことはないだろうというのは、どんな科学技術でもそういう側面がありますので、そこのところも誤解がないようにということで申し上げているし、逆にそう言ってしまうと、我々自身のワークフィットが典型的ですけれども、そういったことができなくなってしまうということがありますので、そこはやはり少し曖昧かも知れないけれども、そこが非常に大事な考え方だとは思っています。

なんというか…。ここまで田中俊一原子力規制委員会委員長の発言をおってみると、「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守ること」を使命とするという組織の長としては、あまりに無責任だと思わざるをえない。田中は、7月16日の会見で新規制基準の安全性は世界において「ほぼ最高レベルに近い」と述べており(ただ、ここでも断言はしていない)、以前よりは基準は厳しく、相対的には安全性は高まったといえる。しかし、田中自身が認めているように、3.11以後、原発への不安が高まった国民との合意によって新規制基準ができたとはいえず、前述したように、これとても絶対的に安全とは田中自身が断言できないものなのである。

もちろん、どんな規制も、現在の知見に依拠した「暫定的」なものでしかないともいえる。その意味で、原子力規制委員会の組織理念のいうように「原子力にかかわる者はすべからく高い倫理観を持ち、常に世界最高水準の安全を目指さなければならない。我々は、これを自覚し、たゆまず努力することを誓う」ことは必要なことだろう。しかし、前述してきたように、その姿勢はみられない。避難計画も電力会社への規制も自身の権限外として放置し、暫定的なものでしかない「新規制基準」がいつのまにか「金科玉条」とされ、その「適合性」のみを審査し、結果としての安全性の確保は等閑視しているのである。

そもそも、「新規制基準」自体が原子力規制委員会が策定したものであり、彼ら自身が見直しできるはずである。しかし、現行の新規制基準を再検討する姿勢はみられない。将来の検討課題にもなっていない。現行の新規制基準以上に安全性を確保することは、事業者=電力会社、自治体、国に丸投げなのである。もちろん、これは、委員長田中俊一の個人だけの問題ではないだろう。新規制基準をより厳しくすれば、田中の立場が危うくなるだろうと考えられる。それでも、田中個人には「辞任」という選択肢はあるだろう。組織理念とは全く違った運営になっているのだから。しかし、田中は、自身の責任は全く等閑視しているのである。

他方で、国は、前述してきたように、安全性の確保は原子力規制委員会の責任としている。安全性確保を組織理念でうたっている原子力規制委員会が絶対的安全は保障できないとし、国は原子力規制委員会が安全性について責任をもつという。両者とも、「権限への逃避」を行なって結果責任を回避しようとしている。それでは、原発の安全性については、どこが責任をもつのだろうか。

まさに、この局面において、丸山真男のいうところの「日本ファシズム支配の厖大なる『無責任の体系』」(『増補版 現代政治の思想と行動』、未来社、1964年)の一端が再現されているといえる。田中俊一の記者会見の速記録を読んでいると、丸山などが記述している東京裁判の被告や証人たちの証言を彷彿させる。ただ、一つ言えるのは、3.11以前には、たぶん、こういう言説を原子力規制当局は発しなかっただろう。彼らは、たぶん、安全性が確保できないと内心思っていても「安全神話」をふりまいていただろう。そういう「安全神話」が消滅した3.11以後、国にしても原子力規制委員会にしても電力会社にしても「危機」に直面しており、その「危機」によって、潜在的には内在していた「無責任の体系」が再び現出しているといえるのではなかろうか。

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福島第一原発事故を受けて、関西電力大飯原発3・4号機の再稼働問題がクローズアップされている。まず、福井県の原発の現況をウィキペディアや関西電力などのサイトに依拠して、ここで概観してみよう。

現在、福井県内にある原発は、高速増殖炉もんじゅも含めて、14基を数える。現在、福島第一原発1〜4号機が廃炉となり、もんじゅも含めれば51基(商業炉だけでいえば50基)の原発が存在しているが、基数でいえば全体の約27.4%にあたる。福島第一・第二原発が健在であった時期の福島県においても10基(現在は6基)にすぎない。全国で最も原発が集中して建設されているといえる。そして、これらの原発は、全て福井県の嶺南地方といわれる、敦賀・若狭地区に建設されている。

ここで、それぞれの原発についてみておこう。

敦賀発電所(日本原子力発電所株式会社 関西・北陸・中部電力に電力供給 敦賀市所在)
1号機 電気出力35.7万kw 営業運転開始1970年3月14日 定期点検2011年1月25日より
2号機 電気出力116万kw 営業運転開始1987年3月30日 定期点検2011年5月7日より(放射能漏洩調査あり)

もんじゅ(日本原子力開発機構 高速増殖原型炉 敦賀市所在)
もんじゅ 電気出力28万kw 運転開始1983年1月25日(事故・故障続出で運転実績が少ない)

美浜発電所(関西電力株式会社 美浜町所在)
1号機 電気出力34万kw 営業運転開始1970年11月28日 定期点検2010年11月24日より
2号機 電気出力50万kw 営業運転開始1972年7月25日 定期点検2011年12月18日より
3号機 電気出力82.6万kw 営業運転開始1976年3月15日 定期点検2011年5月14日より

高浜発電所(関西電力株式会社 高浜町所在)
1号機 電気出力82.6万kw 営業運転開始1974年11月14日 定期点検2011年1月10日より
2号機 電気出力82.6万kw 営業運転開始1975年11月14日 定期点検2011年11月25日より
3号機 電気出力87.0万kw 営業運転開始1985年1月17日 定期点検2012年2月20日より
4号機 電気出力87.0万kw 営業運転開始1985年6月5日 定期点検2011年2月20日より

大飯発電所(関西電力 おおい町所在)
1号機 電気出力117.5万kw 営業運転開始1979年3月27日 定期点検2010年12月10日より
2号機 電気出力117.5万kw 営業運転開始1979年12月5日 定期点検2011年12月16日より
3号機 電気出力118万kw 営業運転開始1991年12月18日 定期点検2011年3月18日より
4号機 電気出力118万kw 営業運転開始1993年2月2日 定期点検2011年7月22日より

事業者別でいえば、関西電力11基、日本原子力発電2基、日本原子力研究開発機構1基であり、関西電力の原発が突出して建設されている。日本原子力発電の敦賀発電所は、地元の北陸電力にも電力供給しているが、大部分は域外の関西電力圏内に供給されているといえよう。なお、原子炉形式は、敦賀発電所1号機が沸騰水型軽水炉、もんじゅが高速増殖炉であるが、それ以外はすべて加圧水型軽水炉である。

このように、福井県の原発について、自分なりにメモしてみると、興味深いことがわかる。関西電力の各原発は美浜、高浜、大飯の順で建設されていったといえるのだが、今回、ストレステストに合格したと称して再稼働が企てられている大飯3号機・4号機は、福井県の原発の中で、最も後に建てられた(1990年代前半に営業運転開始)ものであることがわかる。いわば、この地域にとっては、最新鋭の原発なのである。

このことは、各原発の定期点検に入った日からも裏付けられる。大飯原発3・4号機は、それぞれ2011年3月と7月に定期点検に入っているが、その前から定期点検に入った原発は、敦賀1号機(2011年1月)、美浜1号機(2010年11月)、高浜1号機(2011年1月)、大飯1号機(2010年12月)と、かなりある。これらが、ストレステスト実施後初の再稼働候補にならなかった理由は、端的にはこういえるだろう。これらは、大飯原発3・4号機よりもかなり古い原発なのである、敦賀1号機は現存の原発としては1番古いもので1970年運転開始であり、美浜1号機は次に古い原発で、これも1970年運転開始なのである。この二つの原発は、40年をこえている。高浜1号機も1974年運転開始である。また、大飯原発1号機も電気出力は、3・4号機とさほど変わらない117.5万kwなのだが、運転開始は1979年で、30年以上昔のものである。

30年以上たった原発は、最新鋭の原発と比較すると、よりリスクがあるとされている。そもそも、原発は、熱や放射線などをあび続けていると材質などがもろくなるとされている。また、特に初期型の原発は、アメリカのウェスティングハウス社やゼネラルエレクトリック社によって、いわばレディメイドな形で設計され、耐震性などは初期設計では考慮されなかったということもあり、そもそも、よりリスクがあるといえるのだ。電力会社などは、建設後60年まで運転できると称している。しかし、彼らも、より古い原発のほうがリスクが高まることは承知しているといえる。ゆえに、最新鋭で、たぶん故障も少ないと思われる大飯3・4号機を再稼働の候補としたといえる。

もちろん、この再稼働が実施されれば、それを前例にしてその後は古い原発も安全であるといいはると考えられる。しかし、この最新鋭の原発ですら、安全性の面では根本的な改善がみられず、世論が再稼働に反対するに至ったとは見ての通りである。そして、今後は、より古く、リスクがより大きいと関西電力すら認める原発が再稼働されていくことになってしまうと考えられるのである。

さて、このような現況をふまえて、機会をみて、どのように福井県地方に原発が建設されていくにいたったかを検討していきたいと考えている。

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