2011年7月20~22日(つまり、このブログを書いている22日現在ということになるが)、女川町復興計画公聴会が開かれている。7月20日午前は高白浜(五部浦中心)で、午後は女川第二小学校(市街地中心)で、21日午前は女川高校(浦宿中心)で、午後は女川町復興連絡協議会会館で、22日午前は旧女川第三小学校(北浦中心)で行われることになっている。対象地域には送迎バスが出ることになっているとのことである。ただ、復興連絡協議会会館以外は、どれにでてもいいということになっている。
この女川町復興計画公聴会について、東京ではあまり報道されていない。ただ、テレビ朝日が20日夜の「報道ステーション」と21日朝の「やじうまテレビ」で報道されていた。
公式のホームページではないが、「テレビでた蔵」サイトでは、次のように要約している。私自身もみたが、大体、この内容であっていると思う。なお、これは報道ステーションの報道を要約したものであるが、「やじうまテレビ」報道も同様であった。
原発抱える被災地で 「復興」と「脱原発」…住民の苦悩
宮城・女川町では復興計画の意見交換会が役場で行われた。東日本大震災から4ヶ月以上経った今も不満を感じており、女川町の復興費用は推定で3350億円と見られている。この町にある女川原発は、東北電力の最初の原発として1984年に営業運転を始めていた。宮城・女川町には原発による交付金で作られたものが多い。政治家の発言通り脱原発が進めば、女川町の歳入は大きく減る可能性がある。
女川町立病院は毎年町から約5億円の補填を受けており、復興費用で町の負担が増えれば病院が閉鎖する事態もありうる。女川原発がなくなると、女川町は成り立たないという。反対派は人名に関わるような被害を及ぼす原発は見直すのは当たり前という考えを示している
(http://datazoo.jp/tv/%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/500264)
無関心よりはいいと思うが……。私にとっては、なんとなく違和感がある記事である。これまでの女川町復興計画公聴会においては、まずは集落の高地移転、漁港集約化が問題となっており、さらに仮設住宅や仮設店舗の設置や漁港の整備などが中心になっているようにみえた。実際、多少原発問題は出ているのであるが、メインの問題にはみえなかった。メインの問題ではないということ自体が問題でもあろうが。
実際、公聴会の映像をみても「高台移転」は議論されていたが、原発問題を議論している印象は薄かった。
なお、財政問題であるが、毎日新聞のサイトは、7月15日付で、次のように報じている。
(前略)
「原発事故が発生すれば復興計画も意味のないものになる」5月27日、女川町が復興計画を策定するため、県立女川高校で開いた公聴会。町の「復興計画策定委員会」が5月に公表した復興方針に原発への言及がないことに、町民から疑問の声が出た。
震災で緊急停止した東北電力女川原発は町中心部から車で約30分、牡鹿半島の中ほどに位置している。営業運転が始まったのは1984年。町は見返りに、多額の固定資産税と電源3法交付金という恩恵を受け、原発は最大2000人規模の雇用も生んだ。
電源3法交付金は電源開発促進税法など三つの法律に基づき、原発などの発電所を受け入れた立地自治体に交付されている。09年度の女川町の歳入総額は約64億円。このうち、固定資産税と電源3法交付金を含めた原発マネーの割合は65%に達し、全国最高水準だ。
町は潤沢な財源で避難所となっている町総合運動公園や観光拠点施設、町立病院といったハコモノを相次いで建設してきた。施設の維持・管理費だけでなく、施設で働く看護師や保育士などの人件費まで交付金でまかなう。「原発があるから予算が組めた」(町幹部)というのが実態だ。
町の基幹産業だった水産業は、震災で壊滅的な被害を受けた。町財政の減収は避けられず、固定資産税と電源3法交付金の比重は増す。東京電力福島第1原発の事故で原発リスクが高まる一方で、復興計画を実現するため、町はこれまで以上に原発マネーに頼ろうとしている。
しかし、福島第1原発の事故を受け、住民の意識は変わり始めた。女川原発に近い沿岸部に暮らす主婦(61)は「原発にもろ手を挙げ賛成、と言えなくなった」。息子は家業の漁業を継がず、女川原発で20年以上働いてきたが、やはり「脱原発」の議論が気になるという。
選挙を控えた現職町議も住民意識の変化を敏感に受け止めている。阿部繁町議(46)は「今、脱原発を言わずにいつ言うのか。原発ありきでない町の復興計画にしないといけない」と話す。一方、町幹部は「原発の是非を巡る議論が始まれば、復旧・復興が遅れかねない」ともらす。
「これまで選挙の時に原発なんか、話したことがない。でも、人間が制御できないものを造っていいの、と率直に思うのよね」
当選6回を数える女川町議会の木村征郎議長(66)は、次期町議選の争点として原発論議が浮上するとの見方を示した。町財政の大前提だった原発を巡り、定数14の町議会も揺れている。【青木純】
(http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110715ddm002040081000c.html)
実際、このような発言が5月27日の女川町市街地を対象とした公聴会でなされており、まだしも説得力がある。ただ、この発言だけで、この公聴会を要約してよいのかといえば、それにも違和感がある。
確かに、脱原発かいなか、女川町にとっても重要な問題である。その気運が女川町に出ていることを伝えるのも重要であろう。これらの報道は、公聴会というよりも、原発問題についてのインタビューを中心に構成されている。その努力は認めるべきであろう。
しかし、復興計画公聴会で出された、女川町にかかえている問題はそれだけではないのである。3350億円が復興費用としてかかると算出されている。一方、町の予算は64億円で、その65%が原発関連とされている。確かに平時には重要な財源であるといえるが、復興費用全体を賄うものであろうか。
なんとなく、原発立地自治体という性格のみに着目した、ステレオタイプな報道に思えるのである。女川の場合、①津波被災地であること、②漁業の中心地であること、という二つの性格もあり、それと原発がどのようにからまっていくのかをみていく必要があるのではないか。
次回以降、原発問題も議論された、5月27日の女川町復興計画公聴会をみていきたい。また、現在開かれている公聴会についての報道があれば、紹介していきたいと考えている。
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