さて、ふたたび、女川町復興計画案に関する公聴会の景況をみておこう。5月27日、女川町では再度女川町復興計画公聴会が開催された。まず、午前10時から、「女川町復興連絡協議会」を対象に公聴会が行われた。
この女川町復興連絡協議会とは何か。4月14日のMSN産経ニュースは、次のように伝えている。
東日本大震災で被害を受けた宮城県女川町の水産業や観光業の各団体などが14日、新しい町づくりを担おうと女川町復興連絡協議会を発足させることを決めた。同町出身の俳優中村雅俊さんも駆け付け旗揚げ式を行った。
自らも協議会のメンバーになる中村さんは被害の大きさに驚いたといい、「女川を復興させなければならない。みなさんの手を取り心を満たしたい」と話した。
水産観光センターが入っていた「マリンパル女川」に、中村さんが持参した「女川の町は俺たちが守る」と書かれた横断幕と垂れ幕をかけ、復興を誓った。
中村さんは、母校の女川第一小学校も訪問。集まった児童と一緒に校歌を歌い、「みんなの笑顔が避難している人たちを元気づける」と、児童らのサインの求めに応じていた。(http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110414/dst11041412540040-n1.htm)
4月14日に、俳優中村雅俊の来訪を契機に、水産業や観光団体を中心として結成された団体ということである。いわば、業界団体を中心としているといえるのである。女川町の共産党議員高野博のサイトによると「女川町の若手4,50人で組織している復興連絡協議会と議会議員の懇談会が午後4時から持たれました。」(5月28日)とあり、その中でも「若手」で構成されているといえよう。
まず、安住宣孝町長は、このように述べている。
今回の計画は、減災という考え方で、命を守ることを第一優先としている。一方で、行政としては、皆様の財産を守ることも重要な責務であるが、今回の災害をふまえると、すべての財産を守ることは非常に困難であり、優先順位を決めて、少しでも財産を守るという考え方としたい。
復興計画の検討には、生活基盤となる商工業の考え方も十分に取り入れる必要がある。そのため、委員会における先生方の検討とともに、皆様とも現実的な商業再生について、話し合っていきたい。
まずは、生活の土台を検討していただきたい。その場合、土地の問題を避けて通ることはできない。具体的な土地の権利を考慮したさまざまな制度を検討することが重要であると認識している。(http://www.town.onagawa.miyagi.jp/hukkou/pdf/iinkai/03_meeting/03_meeting_appendix5.pdf 女川町役場ホームページより)
まずは、「減災」が強調されている。港町である女川町にとって、海辺から完全に撤退することはできないのである。その上で、特に、商工業について、この復興連絡協議会に町長は意見を問うているのである。
女川町復興連絡協議会会員からは、まず、このような意見が出た。
ゾーニングについて、新聞等を見ると「住宅地の高台移転」という方針に対して、現在の場所で継続して暮らしたいとの意見も出ているとのことである。しかし、町の将来の発展という前提に立てば、高台に住宅移転をするということについて合意形成ができていると思う。
住宅の高台移転に原則的な賛意を示しているといえる。その上で、女川湾北岸の水産物加工ゾーンとして設定された宮ケ崎~石浜地区の背後に住宅を確保することは可能か、一等地に設定されている新産業ゾーンには何を建設する予定なのかと質問している。
それに対して、町長は、宮ケ崎地区の背後に住宅を建設することは可能である、新産業ゾーンはいまだ検討が必要であると述べた。その上で、より詳細に、復興構想を物語っている。
住宅地について、総合運動場が海抜32~33m程度、二小が20数m、病院が16mで病院が被災したことを考慮すると、20m前後が津波被害の目安となる。鷲神については、バイパスで18m程度、398号は低い。委員会で盛り土の高さは、5mが限界との意見が出ている。計画では、嵩上げ地の途中に、数ヵ所津波の減衰を目的とした緑地を確保し、少しでも高い場所に宅地を確保する予定である。盛り土の程度については、技術的な検証をしっかり行いたい。また、今後、新たな住宅の確保が困難な高齢者向けに、公営住宅を建設することも視野に入れている。
つまり、委員会で出た盛り土の限界を踏まえて、まさに「減災目的」で緑地帯を設け、住宅地はより20m以上の高台に建設するというのである。一方で、自力再建が難しい高齢者のためには、公営住宅を建設するとしたのである。
また、会員からは、ゾーニング・嵩上げなどの具体的な手法が示されないので不安である、自分の土地がなくなって、新たな土地をどのように求めればよいのかという質問が出た。町長は、今、100坪の土地を持っている人に新たな造成地で100坪の土地を与えるようにしたい、造成地は国の事業で造成するので、現行制度では土地を貸すことのみが認められているが、将来的には住民のものに土地がなるように制度変更を要望していきたい、商業地や加工施設については、同じ場所で確保することは難しいかもしれないが、嵩上げ前の土地の権利は保全すると述べている。
この女川町復興連絡協議会にとって切実な問題は、仮設店舗の確保であった。鈴木浩会長が、宮古のほうで無償でプレハブを経産省から提供されて仮設店舗が建設された事例が紹介されると、協議会会員よりは、このような声があげられた。
仮設店舗については、女川町も検討していたが、公有地でなければならない等、国の条件に満たないため、実現していない。女川高校が候補地であるが、ボーリング調査の結果をふまえてと言うことなので、まだ、見通しが立たない。できれば、町で予算を確保して仮設店舗を確保してほしい。
なんとしても場所を確保したい。今後の復興のスピードに合わせて、どのような仮設店舗を作るかを検討しなければならない。まずは、開始することが重要である。たとえば、海外からトレーラーハウスが提供されていると聞いており、それを仮設店舗として活用することも考えられるが、県に来ている情報が降りてこない。町もFRK(女川町復興連絡協議会)と連携をして積極的に要望をしてほしい。
これから商売をするための方策がない。国の施策を調べると農業への支援はあるが、商工業への支援は融資のみである。我々が頼るのは、町のみである。仮設店舗が設置できるような場所を、町として確保して欲しい。現在、建築制限のある区域において、仮設店舗を建設できるように県に要望をして欲しい。
このような声に対し、町長は、次のように答えている。
個人が声を上げても、国や県は動かない。協同した流れにより、行政機関は動く。民間の支援も含め、できることから意見をまとめて、動き始める必要がある。
(中略)
FRK(女川町復興連絡協議会)の部会で具体的な意見をまとめて要望をして欲しい。行政機関としては、個人事業者個別への支援ができない。複数の事業者が活用するのであれば、支援をすることができる。
基本的には、漁業の集約化と同一の論理が町長の意見に現れているといえる。町長によれば複数の事業者が「協同」することが、国や県の支援を得る道なのである。
なお、一会員から「また、福島県では、100万個の『ひまわり』の種を植えたというニュースを見た。これは癒しの場になり、同じようなことを女川でもやるべきである」という意見が出た。実は、福島県におけるひまわりの植栽は、放射性物質の除染が目的であり、癒しの場を与えることは主目的ではないのであるが…。 女川町において「癒し」が切実に求められた証左と解釈すべきであろう。
このように、業界団体としての女川町復興連絡協議会においては、住宅の高台移転に反対の意見は出ておらず、具体的なやり方について、議論が出たといえる。他方、より切実な問題としては、仮設店舗の建設が望まれ、町長は、漁業集約化と同様に、国・県の支援を引き出すものとしての「協同」化を求めたといえるのである。
女川町出身でドイツ在住の鈴木英文と申します。
実兄の鈴木敬幸と同級生の木村昇がFRKの副会長で、女川町FRK押しかけサポーターのようなことをやっております。御ホームページでは非常に丹念に女川町復興計画策定委員会の活動をサーベイされているので感心して読んでいる次第です。
ただし今回のレポートでは事実誤認が一箇所ありますのでご指摘申し上げます。FRKは兄(遠洋漁業の会社を経営していますが、なぜか観光協会長もやっています)や高政社長(商工会議所会長兼FRK会長)高橋正典氏などを中心に津波の比較的直後から立ち上げを開始した団体であり、中村雅俊氏は、両人の小学校中学校高校の同窓生である関係もあり、むしろ4月上旬のFRK旗揚げ式直前に彼の好意でメンバーとして参加してくれて、謂わば客寄せパンダになってくれた人です。この辺は梅丸新聞店の阿部喜英さん(商工会議所青年部リーダーでFRK町づくり創造委員長)等が良くご存知のことと思います。
以上、それ以外のレポート分析が非常に丁寧で感心していますので、ご訂正申し上げます。尚、私、来週7月20日から8月25日ころまで日本に里帰りし、3-4週間程度田舎の手伝いをする所存でいますので、機会があればお話できれば幸いです。8月20日から24日までは東京に滞在する予定です。
今後とも女川への暖かい支援と視線をよろしくお願い申し上げます。
ご指摘ありがとうございます。新聞記事が中村氏の来訪を中心に書いていたので、あのように記述しましたが、確かに地元の人々の独自の動きがないと、あのような会が立ち上がらないと思います。これから、より注意深くみていきたいと思います。