前回のブログで、福島第一原発周辺で生産された食品を購入することについて、筑波大学のアンケート調査に基づいて考えてみた。
このことを、私自身の消費行動に基づいて考えてみよう。
昨日(2011年9月10日)、自宅(東京都練馬区)付近のスーパーで、昼食・夕食のための買い物を行った。
その時は、夕食としては、サンマの塩焼きをメインとし、味噌汁と何か野菜の付け合せを考えた。サンマは88円で販売していたので購入し、味噌汁の具としては長ネギ(108円)を買った。
そして、キュウリをみつけた。1本68円である。ホウレンソウなどのお浸しをつくるのも面倒であったので、塩もみだけで食べられるキュウリは好適な食材である。ただ、「福島県産」と表示されている。
私個人の消費行動においては、通常、あまり放射性物質などを意識していない。しかし、前回のブログ執筆直後であったため、普段は意識しないことを意識して購入するかしないか考えることになった。
その際、厚生労働省(http://www.maff.go.jp/noutiku_eikyo/mhlw3.html)や福島県(http://www.new-fukushima.jp/monitoring.php)が公表している、福島県産の食品に対するモニタリング調査の結果を想起した。キュウリだけをみたわけではないのだが、一年草の野菜について、最近では福島県の全地域で、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137が不検出となっていたという印象があった。現状の検査体制には不備があると思うが、福島県全域で野菜からは放射性物質は検出されていないということは、それなりに考慮すべきことであろう。他方で、暫定基準値を一部で超えたものがみつかった牛肉や茶については、暫定基準値は超えないまでも、それなりの検出値を示す検体は多かった。
現に売られているキュウリが不検出がどうかはわからないが、まあ、福島県の野菜全般の状況から考えれば、放射性物質はほとんど含有していないだろうと考えた。そこで、キュウリを購入し、その日の食卓に塩もみで供したのである。
前述した福島県のサイトでキュウリの放射性物質の検出結果を検索してみた。3月24日に採取した二本松市の検体がヨウ素131が36ベクレル(1kgあたり)、セシウム134が12、セシウム137が15と、キュウリとしては最高値を示すが、もちろん暫定基準よりはるか下である。3月から4月に採取された検体からは、これらの核種が検出された事例が複数あるが、それ以降は、5月23日に田村市で採取された検体からセシウム137が4,4ベクレル、6月29日に相馬市で採取された検体から、セシウム134が9.6ベクレル、セシウム137が9.7ベクレル検出されたことを最後として、不検出となっている。なお、福島県の放射性物質の検査は、かなり大がかりなものであり、キュウリだけでも200~300検体は検査しているのである。その意味で、広範囲な検査を実施し、公表することは、意義があるといえるのである。
といっても、普通の日常生活で、政府・県の検査結果をいちいち検索して、購入を決定するというのは、ちょっと難しいのではなかろうか。知識を蓄積して、商品を選択して購入することは、かなり意識して行はねばならないことである。
となると、より簡単な消費行動としては、次の二つが考えられる。
その一つは、「福島県産」というだけで忌避することである。福島県(近県も含むだろうが)産物は、放射性物質の検査結果いかんにかかわらず、すべて購入しないということになる。これが不当であることは間違いないのだが、購入する際、放射性物質について自分なりに考えるという手間を省くことができる。
もう一つは、政府の暫定基準を前提にして、それ以下ならばとりあえず安心とみなして、福島県産だとか放射性物質検査値などを考慮せず、購入していくことである。これも、自分なりに放射性物質について考えるという手間を省くことができる。
その意味で、もう一度、前回のブログで紹介した、福島第一原発近傍で収穫された米を購入するかしないかにつき既婚女性を対象に行った筑波大学のアンケート調査の結果をみておこう。
(http://mainichi.jp/select/science/news/20110903k0000e040049000c.htmlより)
一番多いのは、暫定基準値以下ならば購入するという人びとで、計算すると44.6%になる。次に多いのが、不検出でも買わないとしている人びとで、34.9%である。不検出も含めて放射性物質の検査結果を考慮して購入するという人びとは計算すると20.5%である。ただ、5ベクレル以下でも買わないとした人びとは47.6%であり、不検出でも買わないという人びとを差し引くと12.7%となる。この結果では、この人びとは5ベクレル未満なら買うということになるが、実際には微量でも検出されたら買い控えることのほうが多いであろう。
このように、自分自身の消費行動を考えてみると、前回のブログでの一般的な消費行動についての見解を修正したほうがよいかと思う。結局、①福島第一原発近傍地の産物については、放射性物質が不検出でも買わない、②不検出の場合も含めて放射性物質の検査結果を暫定基準とは別個に考えて判断する、③暫定基準値をとりあえず暗黙のうちに認め、放射性物質については考えないで購入するという、三つの類型が考えられる。
①と③は、もちろん対蹠的な消費行動であるが、実は、放射性物質について、それぞれが自分で考える手間を省くという意味では共通している部分があるといえる。
②のような行動は、実はかなり難しいといえる。そもそも暫定基準値自体が論議の的であるが、ではどの値にすべきかという定説があるわけではない。結局、「不検出」しかないのである。その上で、実は、新聞・テレビなどの一般的マスコミが与える情報では判断できず、インターネットなどで官庁が公表する情報を検索しないと判断できないのである。そして、それですら、目の前にある野菜自体の放射姓物質の含有量はわからない。福島県産の野菜一般から考えた推定でしかないのである。そのため、アンケート調査でも20.5%と、もっとも少ない数となっている。
ここでは、とりあえず、自分の消費行動から、もう一度、放射性物質の影響があると考えられている食品に対する消費行動について考え直してみた。たぶん、現状では、福島県などでも「放射性物質不検出」のものがかなりあることを強調し(暫定規制値以下では消費者の半分以下しかアピールしない)、さらに「放射性物質不検出」ということうたったブランドを立ち上げ、全品を調査していくようなシステムをつくるならば効果はあると思われるが、そのようなシステムを構築するのが、割に合うのかいなかは不明としかいえないのである。
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