Feeds:
投稿
コメント

Posts Tagged ‘石神井公園’

ひとつぶの砂にも世界を
いちりんの野の花にも天国を見
きみのたなごころに無限を
そしてひとときのうちに永遠をとらえる
(ウィリアム・ブレイク「無心のまえぶれ」〈寿岳文章訳〉 http://pb-music.sakura.ne.jp/PoetBlake.htm〈2020年5月12日閲覧)より引用)

 

新型コロナウィルス肺炎のパンデミック後の世界はどうなっていくのだろうか。2019年末以降、世界各地ー中国・イタリア・スペイン・イラン・フランス・アメリカ・ドイツ・ブラジルなどの諸国で多く数多くの感染者・死者が出ている。これらの諸国の多くでは、感染対策として都市封鎖・ロックダウンなどと称される、人々の外出・旅行の制限措置がなされた。この措置は、経済活動・教育活動・文化活動を含む社会的活動の多くの部分が抑制することにつながっている。いまや、感染対策として、世界の多くの人々は、密集をさけ、社会的距離をとることが求められている。そして、これらのことは、世界全体の経済活動をおしどめることになった。

日本は、比較するならば、爆発的感染という状況にはいたっていないが、2〜3月以降、国内でも感染は拡大し、2月には大規模なイベントの「自粛」が要請され、3月には全国の学校が休校となり(4月以降、部分的には再開)、4月には緊急事態宣言が出された。そして、順次、テレワークや在宅勤務が奨励され、デパート・飲食店などは休業や営業時間短縮などが要請された。図書館・博物館・美術館・資料館・水族園・動物園・テーマパークなど、人々が集まる可能性があるとされた施設の多くが閉鎖された。また、旅行や都心部に出ていくことも「自粛」が要請された。とはいえ、これらの措置は、世界各国のロックダウンや都市封鎖などのように法的な強制力をもったものではなく、その点では不十分な措置といえる。それでも、日本の多くの市民は、スーパーなどの買い出しや、運動・散歩以外は、自宅から出ないことを公権力から要請されたのである。そして、多くの市民たちは、失業・営業停止・給料減額などの経済的困難への不安にさらされることになった。

というわけで、東京都練馬区にすんでいる私も、結果的に、その要請に従うことになった。4月以降、勤務先は在宅勤務となり、自治体史編集のために会議や打ち合わせに行くこともままならない。関係する研究会の会議はすべてネット経由となった。情報・文献・資料などの収集のために、図書館などに行くこともできない。大型書店も多くが休業し、開いているところに行けば混雑する。国際交流やフィールドワークなどもできない。結局、自宅周辺にいるしかない。とはいえ、それではあまりにも運動不足となるので、朝のうちに近くの東京都立石神井公園で散歩し、帰りがけにスーパーやホームセンターによって買い出しをするというのが日課となった。

東京都立石神井公園はそれほど大きな公園ではない。この公園は、東京西部の武蔵野台地を流れる小河川石神井川の水源地の一つであり、湧水池である三宝寺池、そしてその下流にある元々は水田であったところをボート池に改修した石神井池からなっている。三宝寺池の中の島(浮島)には、1935年に国の天然記念物に指定されている三宝寺池沼沢植物群落があり、ミツガシワ・カキツバタ・コウホネなどの寒冷地植物が自生している。この二つの池の周辺は雑木林に囲まれている。池のほうにはカワセミ・カイツブリ・バン・アオサギ・ゴイサギ・カワウ・カルガモなどが住んでおり、林のほうには、シジュウカラ・キジバト・エナガなどがいる。そして、渡り鳥としてオナガガモ・コガモ・マガモ・オオバン・キンクロハジロが飛来している。もともと緑の濃い公園であり前から時々行っていた。

しかし、今、公園に行ってみると、前とはなんとなく違う。これほど、緑が鮮明だったのだろうか。まるで、高原の尾瀬ヶ原を歩いているようではないか。こんなに空は澄んでいたのだろうか。まるで、毎日、雨上がりを歩いているようではないか。木々の緑、空の青、公園に咲く花々、池や林でくつろぐ野鳥たち、それらのすべてが、日常のくもりがなく、まるで、突き刺さるかのように、目にうつるのである。

石神井公園(2020年5月7日)

石神井公園(2020年5月7日)

石神井公園(2020年5月10日、青い花はカキツバタ)

石神井公園(2020年5月10日、青い花はカキツバタ)

これは、石神井公園だけではない。自宅の庭も、近所の街路樹も、ふだんよりも生き生きしてみえる。春という季節は、春霞といわれ、黄砂もあり、どちらかといえば埃がかった印象があったが、今年の春は例外である。花の色、木々の緑はくっきりとし、空は真っ青というイメージがある。

これは、私の個人的印象というだけではない。日本気象情報会社ウェザーニューズ社は、「4月22日は地球の日(アースデイ) 新型コロナで地球環境は改善か」(4月22日配信)という記事の中で、新型コロナパンデミック後、世界各地で環境が改善しているということを述べて後、このように主張している。

日本の大気汚染物質も減少
黄砂やPM2.5などの大気汚染物質の監視や予測を行っている、ウェザーニュース予報センターの解析によると、日本でも3月の大気がきれいになっていることが分かりました。
大気汚染物質の少なさを表す指数(CII:Clear aIr Index〈※〉)をみると、2019年3月の全国平均は0.78だったのに対し、2020年3月は0.81前後と、0.03ポイント高い結果に。中国大陸で大気汚染物質が減少し、越境汚染が低下したことなどが原因として考えられます。
(中略)

※CIIは、オゾンやPM2.5などの大気汚染物質の少なさを表す指数で、NICT-情報通信研究機構による計算式をもとにウェザーニュースが独自で算出しています。値が高いほど空気がきれいなことを表しています。
https://weathernews.jp/s/topics/202004/210055(2020年5月11日閲覧)/

この記事の前のほうで、新型コロナウィルス肺炎対策として、中国・イタリア・アメリカなどの感染諸地域で、それぞれの諸地域で人々の経済活動を含む社会活動が抑制された結果として、地球環境が一時的にかなり改善したことが伝えられている。この記事は2020年3月までの状況をもとにしたものであり、2020年4月以降は、日本でも緊急事態宣言が出されて人々の社会的活動がそれまで以上に抑制され、大気汚染物質減少の傾向は続いているといえないだろうか。

世界全体、いや日本列島全体からみて、ひとつぶの砂ともいうべき非常に狭い地域に押し込められ、世界全体を直接的に知るすべを失った現在、自分の生活圏である石神井の森から、再度、世界全体を見てみたのである。

さて、あまり長い記事はブログにはむかない。今回はここまでとしておく。次回以降は、ウェザーニューズ社配信の記事にもあった、新型コロナウィルス肺炎感染対策が世界各地の環境にもたらした影響と、その意味について考えてみたい。

Read Full Post »