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さて、自民党の石破茂幹事長は、11月29日に自身の「石破茂(いしばしげる)オフィシャルブログ」に掲載された「沖縄など」と題された文章の中で、特定秘密保護法案についてこのように主張した。

(前略)
 特定秘密保護法の採決にあたっての「維新の会」の対応は誠に不可解なものでした。自民・公明・みんなの党とともに共同修正を提案したからには、その早期成立にも責任を共有してもらわなくてはなりません。しかるに、日程を延ばすことを賛成の条件としたのは一体どういうわけなのか。質疑を通じて維新の会の主張は確認されたのではなかったのか。反対勢力が日程闘争を行うのはそれなりに理解できなくもありませんが、共同提案をしている党が日程闘争を展開するという前代未聞の光景に当惑せざるを得ませんでした。

 今も議員会館の外では「特定機密保護法絶対阻止!」を叫ぶ大音量が鳴り響いています。いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう。
 主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます。
(後略)
http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/

この発言で問題なのは、後半である。石破は、「特定秘密保護法案」反対のシュプレヒコールを「絶叫戦術」とし、世論の共感をよぶことはないと批判した上で、「民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべき」と主張した。そして、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます。」としたのである。

もちろん、この発言には石破一流のレトリックもあるだろう。しかし、非暴力的に行われている「特定秘密保護法案」反対のシュプレヒコールを「テロ行為」と本質的に変わらないとするのは大きな問題をはらんでいる。

なぜならば、これは、特定秘密保護法案のテロの定義にかかわるからである。特定秘密保護法案のテロの定義については、11月29日付の毎日新聞社説がこのように指摘している。

社説:秘密保護法案 参院審議を問う テロの定義
毎日新聞 2013年11月29日 02時31分

 ◇あいまいで乱暴すぎる

 国際的にも解釈の分かれる重要な論点が、ほとんど議論のないまま素通りされていることに驚く。

 特定秘密保護法案のテロリズムに関する定義である。「反政府組織はテロリストか」。国際社会では、そういった解決困難なテロの定義をめぐり、今も議論が続く。日本も国際協調しつつ、テロ対策に向き合うべきだ。だが、テロを定義した法律は現在、国内にない。法案は12条でテロを定義した。全文を紹介する。

 「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要し、又(また)は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう」だ。

 テロ活動の防止は、防衛、外交、スパイ活動の防止と並ぶ特定秘密の対象で、法案の核心部分だ。本来、法案の前段でしっかり定義すべきだが、なぜか半ばの章に条文を忍ばせている。それはおくとしても、規定のあいまいさが問題だ。

 二つの「又は」で分けられた文章を分解すると、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」「社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷」「重要な施設その他の物を破壊するための活動」の三つがテロに当たると読める。衆院国家安全保障特別委員会で、民主党議員が指摘し、最初の主義主張の強要をテロとすることは拡大解釈だと疑問を投げかけた。

 これに対する森雅子特定秘密保護法案担当相の答弁は、「目的が二つ挙げてある」というものだった。つまり、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し」「又は社会に不安若しくは恐怖を与える」がともに「目的で」にかかるというのだ。

 ならば、そう分かるように条文を書き改めるべきだ。法律は、条文が全てだ。読み方によって解釈が分かれる余地を残せば、恣意(しい)的な運用を招く。だが、委員会では、それ以上の追及はなかった。

 たとえ森担当相の答弁に沿っても、テロの範囲は相当広い。「主義主張を強要する目的で物を破壊するための活動」はテロなのか。「ための」があることで、準備段階も対象になる。原発反対や基地反対の市民運動などが施設のゲートなどで当局とぶつかり合う場合はどうか。

 もちろん、この定義に従い、すぐに具体的な摘発が行われるわけではない。だが、こんな乱暴な定義では、特定秘密の対象が広がりかねない。参院の拙速審議は許されない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20131129k0000m070123000c.html

つまり、普通に読むと、人を殺傷したり、施設その他を破壊するということだけでなく、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」することも、テロに該当する危険性があると毎日新聞は指摘しているのである。それに対して、森雅子担当相は、上記の部分は、人を殺傷したり、施設その他の破壊について修飾するものだと弁明した。

しかし、石破の特定秘密保護法案反対のシュプレヒコールはテロ行為と同じとした発言は、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」という定義に合致しているといえる。つまり、政府の主張と対立するシュプレヒコールを集会やデモで発することは、テロ行為と見なされる可能性があるのである。

その先に、どういう社会がまっているのか。すでにジャーナリストの堤未果は、4月の週刊現代に次のような記事を寄稿し、自身のブログにも掲載している。その中で、「テロとの闘い」を旗印にした米国愛国者法が施行されたアメリカを参考にしながら、この法律の危険性を警告している。

先週の週刊現代連載記事です。
昨夜のJーWAVE JAM THE WORLD でもインタビューコーナーで取り上げました。
この法律が通ったら、ブログやツイッターでの情報発信、取材の自由など様々な規制がかかるでしょう。
アメリカでも、大手マスコミが出さない情報を発信する独立ジャーナリストは真っ先にターゲットにされました。そして「原発情報」はまず間違いなく「軍事機密」のカテゴリーでしょう。

「アメリカ発<平成の治安維持法>がやってくる!」
ジャーナリスト 堤 未果

3月31日、安倍総理は今秋国会での「秘密保全法」提出を発表した。
日弁連などが警鐘を鳴らし続けるこの法案、一体どれだけの国民がその内容を知っているだろうか? 

01年の同時多発テロ。あの直後にアメリカ議会でスピード可決した「愛国者法」がもたらしたものを、今ほど検証すべき時はないだろう。 

あのとき、恐怖で思考停止状態の国民に向かって、ブッシュ元大統領はこう力説した。
「今後、この国の最優先事項は治安と国会機密漏えい防止だ。テロリスト予備軍を見つけ出すために、政府は責任を持って全米を隅々まで監視する」

かくして政府は大統領の言葉を忠実に実行し、国内で交わされる全通信に対し、当局による盗聴が開始された。それまで政府機関ごとに分散されていた国民の個人情報はまたたく間に一元化され、約5億6千万件のデーターベースを50の政府機関が共有。通信業者や金融機関は顧客情報や通信内容を、図書館や書店は貸し出し記録や顧客の購買歴を、医師達は患者のカルテを、政府の要請で提出することが義務づけられた。

デンバー在住の新聞記者サンドラ・フィッシュはこの動きをこう語る。
「米国世論は、それまで政府による個人情報一元化に反対でした。憲法上の言論の自由を侵害する、情報統制につながりかねないからです。でもあのときはテロリストから治安や国家機密を守るほうが優先された。愛国者法もほとんどの国民が知らぬ間に通過していました」

だが間もなくしてその“標的”は、一般市民になってゆく。

ペンシルバニア州ピッツバーグで開催されたG20首脳会議のデモに参加したマシュー・ロペスは、武器を持った大勢の警察によって、あっという間に包囲された経験を語る。
「彼らは明らかに僕達を待っていた。4千人の警察と、沿岸警備隊ら2千5百人が、事前に許可を取ったデモ参加者に催涙弾や音響手りゅう弾を使用し、200人を逮捕したのです」
理由は「公共の秩序を乱した罪」。
その後、ACLU(米国自由市民連合)により、警察のテロ容疑者リストに「反増税」「違憲政策反対」運動等に参加する学生たちをはじめ、30以上の市民団体名が載っていたことが暴露されている。

政府による「国家機密」の定義は、報道の自由にも大きく影響を与えた。
愛国者法の通過以降、米国内のジャーナリスト逮捕者数は過去最大となり、オバマ政権下では七万以上のブログが政府によって閉鎖されている。

為政者にとってファシズムは効率がいい。ジャーナリストの発言が制限され国民が委縮する中、政府は通常なら世論の反発を受ける規制緩和や企業寄り政策を、次々に進めていった。

ブッシュ政権下に時限立法として成立した「愛国者法」は、06年にオバマ大統領が恒久化。
その後も「機密」の解釈は、年々拡大を続けている。

日本の「秘密保全法」も、日米軍一体化を進めたい米国からの〈機密情報保護立法化〉要請が発端だ。その後、07年に締結した日米軍事情報包括保護協定を受け、米国から改めて軍事秘密保護法の早期整備要求がきた。 だが米国の例を見る限り、軍事機密漏えい防止と情報統制の線引きは慎重に議論されるべきだろう。なし崩しに導入すれば〈愛国者法〉と同様、監視社会化が加速するリスクがある。

震災直後、テレビ報道に違和感を感じた人々は、必死にネットなどから情報収集した。
だがもし原発や放射能関連の情報が国民の不安をあおり、公共の安全や秩序を乱すとして〈機密〉扱いにされれば、情報の入手行為自体が処罰対象になるだろう。 

公務員や研究者・技術者や労働者などが〈機密〉を知らせれば懲役十年の刑、取材した記者も処罰対象になる。国民は「適正評価制度」により「機密」を扱える国民と扱わせない国民に二分されるのだ。

行き過ぎた監視と情報隠ぺいには私達も又苦い過去を持ち、国民が情報に対する主権を手放す事の意味を知っている。歴史を振り返れば〈言論の自由〉はいつも、それが最も必要な時に抑えこまれてきたからだ。

(週刊現代:4月14日連載「ジャーナリストの目」掲載記事)
http://blogs.yahoo.co.jp/bunbaba530/67754267.html

ここで、特に重要なのは、このくだりである。

ペンシルバニア州ピッツバーグで開催されたG20首脳会議のデモに参加したマシュー・ロペスは、武器を持った大勢の警察によって、あっという間に包囲された経験を語る。
「彼らは明らかに僕達を待っていた。4千人の警察と、沿岸警備隊ら2千5百人が、事前に許可を取ったデモ参加者に催涙弾や音響手りゅう弾を使用し、200人を逮捕したのです」
理由は「公共の秩序を乱した罪」。
その後、ACLU(米国自由市民連合)により、警察のテロ容疑者リストに「反増税」「違憲政策反対」運動等に参加する学生たちをはじめ、30以上の市民団体名が載っていたことが暴露されている。

政府による「国家機密」の定義は、報道の自由にも大きく影響を与えた。
愛国者法の通過以降、米国内のジャーナリスト逮捕者数は過去最大となり、オバマ政権下では七万以上のブログが政府によって閉鎖されている。

つまり、政府の政策に反対する主張を行う人や団体は「テロ容疑者」に指定され、徹底的に弾圧され、多くのジャーナリストが逮捕され、数多くのブログも閉鎖させられてしまうというのがアメリカの現状なのである。石破の発言は、まさに、その危険性を明らかにしているといえよう。

すでに、アメリカでも、そのような現状を見直しすべきという声が出ている。それを紹介しているのが、The New Classicというウェブマガジンである。

国者法から12年、アメリカは新しい時代に突入した

シャットダウンに陥った一連の問題分裂したアメリカが1つになるには、NSAへの抗議活動によってかもしれない。26日、ワシントンに集まった米国政府によるオンライン監視プログラムへの抗議者の中には、リベラルなプライバシー擁護派から保守的なティーパーティー運動のメンバーまでが参加したという。この抗議活動には、数百人が集まったと言われているが、メルケル首相への衝撃的なスパイ行為が明らかになったことで、この動きは世界中に広がっていくと思われる。

愛国者法から12年
彼らが集まった日は、2001年に「愛国者法」が成立した日と同じ10月26日だった。9.11の直後にスピード可決した法案が、12年が経過したアメリカ社会に問いかけるものは大きい。

この愛国者法は、テロリストの攻撃に対応するために政府などがアメリカ国内における情報の収集に際して生じる規制を緩和するものだ。国内における外国人に対しての情報収集の制限を緩和したりすること以外にも、電話やEメール、医療情報、金融情報などへの調査権限を拡大するとともに、「テロリズム」の定義が拡大したことで、司法当局の拡大された権限が行使される場面の増加を招いている。

テロと炭疽菌事件によって混乱していたアメリカ社会においてあっという間に可決された法案は、2011年にオバマ大統領が、「愛国者法日没条項延長法(PATRIOT Sunsets Extension Act of 2011)」に署名したことでその中心的な条項は4年間延長されたのだ。

ビック・ブラザーを引き抜け
「愛国者法」に代表されるように、アメリカ社会の安全と引き換えに市民の監視を強める姿勢をジョージ・オーウェルの名作に準えるむきもある。デモには、「ビック・ブラザーを引き抜け(Unplug Big Brother)」という言葉も見えたが、これは小説『1984年』に登場する架空の人物だ。

作中の全体主義国家「オセアニア」に君臨する独裁者であるビック・ブラザーは、テレスクリーンをはじめとする手段によって、住民を完全なる監視下に置いていた。冷戦下の英米で“反共主義のバイブル”として爆発的な人気を誇った著作は、現在でも広く知られている。

日本とも無関係ではない
“共産主義と闘い”、そして“自由を具現化してきた”アメリカ政府をビック・ブラザーとなぞらえる動きは、皮肉なものだ。しかし、「愛国者法」の成立から10年以上が経過して、突如として「戦後最大の外交上の亀裂」に直面した政府にとっては、リアリティのある批判になりつつある。

彼らが今後大きな議論に巻き込まれ、そして新たな社会へと突入することは確実だろう。そのことは、アメリカをベンチマークとしながら、日本版NSCや秘密保護法の構想が現実のものとなっている日本にとっても決して無関係のことではないだろう。
http://newclassic.jp/archives/2476

このように、アメリカで批判にさらされているような制度を、「安全保障」という名目で導入しようとしているのが、今回の特定秘密保護法案といえるだろう。そのことを、石破発言は暴露してしまったのである。

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先日の台風18号による豪雨・強風は激しかった。私は東京に住んでおり、15日・16日と立て続けに外出する必要があったが、外出するのに躊躇するほどであった。しかし、関東地方はまだましだっただろう。関西地方では、京都府・滋賀県・福井県に特別警報がだされ、京都市、福知山市などで大規模な浸水があるなど大きな爪痕を残したといえる。

大阪でも、大阪市と堺市の境界を流れている大和川が危険水位をこえ、大阪市では住吉、平野、住之江、東住吉の4区の計約13万1000世帯、計約30万人に避難勧告を出した。また、堺市でも一部地域にあたる計約1万9400世帯、計約4万2000人に避難勧告を出した。結果的には大和川が氾濫することなく、避難勧告が解除された。

大阪で避難勧告が出されたと聞いた時、橋下市長は真面目に災害対策に取り組んでいるのだろうかと思ったものだ。そして、次のようなことが報道されている。ここではJーCASTニュースのそれをあげておこう。
 

橋下大阪市長「久しぶりのツイッター」で「堺市長選」語る 「避難勧告さなかの話題か」とネットで怒りの声
2013/9/16 17:48

 「久しぶりのツイッターだな~。以前の感覚、忘れちゃった。徐々に取り戻します」——大阪市が台風18号の暴風域に入り避難勧告などが出された2013年9月16日午前、橋下徹市長がおよそ1か月弱ぶりにツイッターを更新した。
最初は台風18号に関連したツイートだったのだが、話は堺市長選へ。危険な状況の続くさなかにする話題かと、ネットユーザーの怒りを買うことになってしまった。
自宅待機でツイート「堺市長選挙について述べます」
橋下市長がツイートを開始したのは16日9時半すぎ。大阪市と堺市の境界を流れる大和川流域の水位が上がり避難勧告が出される中、それを告知した上で「市長が個人的にツイッターで知らせるものではありません。これは市役所として組織対応していきます」と宣言した。大和川の状況が落ち着くまで自宅待機で役所と連絡をとるといい、その間に堺市長選挙(15日告示、29日投開票)についてツイートしはじめた。
「状況が落ち着いてから、堺市長選挙のために堺市内に入ります。ゆえにツイッターで、堺市長選挙について述べます。久しぶりのツイッターだな~。以前の感覚、忘れちゃった。徐々に取り戻します」
ツイートは現職の竹山修身堺市長の批判からはじまり、堺市を巻き取った大阪都構想へ。ところが、台風の大阪での勢力がもっとも強いタイミングだったため、「この感覚に驚き」「いいかげんにしろ!状況考えろよ!」などと市民からは怒りのツイートが相次いだ。市長選で維新側の候補と「一騎打ち」する形になる竹山市長がさっそく氾濫した河川の視察に出ていたことがツイッターで伝えられたことなどもあって、「うち(大阪)の市長ときたら」と呆れ返る声も出た。
維新側候補は「すべての選挙活動を休止しています」
こうした批判に対し、橋下市長は「同時に複数の仕事ができるくらいでないと市長などできません。危機管理はちゃんとやっています」と反論。その上で、竹山市長の視察についても持論を展開した。
「今回は大きな被害が出ていない。大和川の堤防の状況を見るには、専門的な知識が必要。ゆえにまずは土木担当の副市長が視察に行き、必要な現場指揮をしながら、現場の状況や、問題点、そして判断を求める事項等を市長に報告。これが組織マネジメント。今、市長が堤防を見るのは何の目的??」「必要性の乏しいトップ現場視察は現場を混乱させるだけ」
 
この発言についての評価はさまざまだ。「橋下市長の判断正しい。このタイミングで来れても現場が混乱するだけで迷惑です」という意見もあるが、ネットユーザーからは「そもそも自宅待機でツイッターで遊んでるのが問題」「市民が見てることだけは覚えておいて下さい。災害の不安を抱えた人の気持ちを」という意見もあった。
ちなみに、堺市長選の維新側の候補・西林克敏氏は橋下市長がツイートをしているのとほぼ同じ時間に「堺市内に避難勧告が発令されておりますので すべての選挙活動を休止しております。 市民の皆様には厳重な注意のもと行動されるよう望みます」とツイートしていた。
大阪市は16日7時過ぎ、大和川がはん濫する恐れがあるとして、住吉、平野、住之江、東住吉の4区の計約13万1000世帯、計約30万人に避難勧告を出していた。また、大和川を境に大阪と隣接する堺市でも9時半過ぎに一部地域にあたる計約1万9400世帯、計約4万2000人に避難勧告を出していた。いずれも13時過ぎには解除されている。
http://www.j-cast.com/2013/09/16183905.html?p=all

橋下市長のツイッターをみてみると、実際、そういう状態であったことが確認できる。興味のある方は参照してほしい。

さて、結局、橋下市長は、朝方、自宅において避難勧告を出した以降、市役所に登庁もせず、現場視察もしないで、自宅で延々と対立候補の現職竹山堺市長の批判や、大阪都構想のメリットなどのツイッターを続けていたということになる。そのような橋下市長のツイッターに対して批判されると、「組織マネジメント」だと反論し、さらに竹山市長が選挙活動を一時中止して現場を視察すると必要性がないなどと主張したのである。

このような橋下市長の姿勢は、18日、市役所で新聞記者たちの質問を受けた時も変わらなかった。9月18日にネット配信されたスポーツ報知の記事をみておこう。

橋下氏逆ギレ、嫌なら見るな「フォローを外せばいい」

 橋下徹大阪市長(44)は18日、台風18号で市内に避難勧告を出した際、自宅で関係部局からの報告を待ちながら、ツイッターで堺市長選に関する投稿を続けたことに「嫌だったら(ツイッターを読まないように)フォローを外してくれればいい」と強気に言い放った。自身の危機管理対応にも問題はなかったとし、批判に対しても「極めて日本的だ」と不快感を示した。

 大阪市内に避難勧告を出した際、ツイッターで台風に関係のない堺市長選についての投稿を続けた橋下市長。市民からの怒りと批判に対し、この日、反論した。市役所で報道陣に「それぐらい余裕があるということだ。そういう情報(堺市長選の話題)が嫌だったら(ツイッターを読まないように)フォローを外せばいい」と述べ、つぶやきに問題はないとの考えを強調した。

 橋下氏のツイッターは18日現在、114万人以上がフォロー。その影響力は大きく、インターネット上で「災害が大変な状況を考えるべきだ」などの声が相次いでいる。だが橋下氏は、そうした批判について「極めて日本的だ」と斬って捨てた。さらに「(批判するなら)今回の危機管理の問題点を指摘してもらいたい」と、逆ギレ気味に話した。

 かたや、橋下氏が実現を目指す「大阪都構想」への反対を旗印に、29日投開票の堺市長選に立候補している竹山修身堺市長(63)は避難勧告時に現地視察を行い、陣頭指揮を執った。橋下氏はこれについても、「トップがドタバタと慌てふためくのは最悪。有事になればなるほどトップはフリーにならなければいけない」と、自宅待機して状況の把握に努めたとする自らの正当性を主張した。

 大阪市は16日、大和川が氾濫する恐れがあるとして、13万1000世帯29万9000人に避難勧告を出した。一方で橋下氏は同日、大阪・豊中市内の自宅で、関係部局からの報告を受け、市長としての判断を伝えながら、ツイッターへ投稿。「市役所で組織対応していきます」「久しぶりのツイッターだな~。以前の感覚忘れちゃった」などとつぶやいていた。

 堺市長選や、他の投稿者からの批判に対する反論なども大量に書き込みながら、首長としての有事対応に最善を尽くしたという橋下氏は「危機管理としては自分の思い描いている方向性だった」と満足そう。つぶやきと危機管理は別問題だという認識を強調していた。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20130919-OHT1T00020.htm

橋下市長は、陣頭指揮をとらないことに対する批判は「極めて日本的」ときって捨てた。そして、ツイッターで堺市長選に言及していたことについては、「嫌ならフォローを外せ」としたのである。

さて、選挙期間中に災害に見舞われた時、指導者はどのように振る舞うべきか。橋下のいうように、陣頭指揮をとるべきだとする考えは「極めて日本的」なのか。その点で参考になるのは、2012年のアメリカ大統領選である。民主党の現職大統領オバマと共和党の候補者であったロムニーで争われた選挙であったが、選挙戦の終盤、アメリカ東海岸をハリケーン・サンディが直撃し、多大の被害に見舞われた。その際、オバマは、選挙活動を中止して、災害対策にあたった。産經新聞の次のネット配信記事をみてほしい。

迫るハリケーン、勝敗左右? オバマ氏、遊説中止し陣頭指揮
2012.10.29 23:24 (1/2ページ)[2012米大統領選挙]
 【ニューヨーク=黒沢潤】カリブ海諸国で猛威を振るった後、米東部沿岸を北上しているハリケーン「サンディ」が11月6日の米大統領選に影響を及ぼしかねない勢いだ。ハリケーン対策の初動が遅れた場合、政権としての危機管理能力が問われかねないだけに、オバマ大統領は29、30両日の遊説を急きょ中止し、対策に全力を注ぐ構えをみせている。一方、ハリケーンは期日前投票にも影響を与えるとみられ、同投票を重視するオバマ陣営には頭の痛い日が続きそうだ。

 カリブ海諸国で65人の死者を出したサンディの米本土上陸を控え、ニュージャージー州のほか、メリーランド、コネティカット州などでも非常事態宣言が発令された。

 共和党のロムニー候補も28日に激戦州のバージニア州で行う予定だった選挙運動を中止した。米メディアによると、同州も被害を受ける可能性があるという。

 ハリケーン「カトリーナ」が2005年に米南部を直撃した際、当時のブッシュ政権は初動の遅れを批判されて支持率を大きく落とし、政権失速の契機となった。

 オバマ大統領も10年4月、米メキシコ湾で起きた原油流出事故への対応の遅れを批判されただけに、今月29、30の両日、バージニアなどの激戦州で予定していた遊説を急きょ中止し、28日にワシントンの連邦緊急事態管理庁(FEMA)を訪問、被害阻止に全力を挙げる姿勢をアピールした。

一方、オバマ陣営はハリケーン直撃によって期日前投票の出足が鈍ることを強く懸念している。

 08年大統領選で勝利の原動力となった若者層や黒人らに対し、積極投票を呼び掛けているだけに、被災により投票率が低下した場合、戦況は不利になりかねない。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121029/amr12102923270004-n1.htm

このように、オバマはまず連邦緊急事態管理庁にいき、そこで指揮をとったのである。

そして、オバマのこの姿勢が選挙民に評価された。産經新聞の次のネット配信記事をみてほしい。そして、この評価がオバマ再選につながったといえる。

オバマ氏ハリケーン対応 「評価する」78%
2012.11.2 00:01 [2012米大統領選挙]
 米東海岸を襲ったハリケーン「サンディ」への対応に専念するため、選挙運動を3日間中断、救援活動や被災者支援を陣頭指揮したオバマ大統領の姿勢について、米国民の78%が「素晴らしい」または「良い」と好意的に評価していることが10月31日、ワシントン・ポスト紙などの緊急世論調査で明らかになった。

 接戦のままで投票日を今月6日に控え、共和党のロムニー候補と競り合う激戦州の遊説を短縮したのは痛手だが、オバマ氏は「有事に頼りになる大統領」との印象を強め得点を上げた。ただ復旧が遅れれば政権批判が高まる恐れもあり、1日の選挙運動再開後も息の抜けない対応が続く。

 オバマ氏は10月31日、被害が深刻な東部ニュージャージー州を訪問し、共和党有力者のクリスティー同州知事と被災状況を視察。「再建に必要な支援を最後まで続ける」と宣言した。

(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121102/amr12110200020000-n1.htm

もし、橋下市長の言葉を借りるなら、ハリケーン・サンディの襲来に際し、選挙活動を停止して災害対策の陣頭指揮をとったオバマ大統領や、それを評価したアメリカ国民も「極めて日本的」と指摘しなくてはならないだろう。

確かに、災害の際作業服を着て現場視察や陣頭指揮をする統治者に違和感を感じる時はある。「人気取り」だと思ったりもする。しかし、それでも、災害時に自宅にこもって選挙活動のツイッターをするよりはましだろう。少なくとも、姿勢においては、選挙活動よりも市民の安全を第一に考えていることの証左にはなる。そのようなことに「好感」をおぼえるということは、東西どこでも変わらないのである。たとえ、いささか偽善的であっても、市民の安全を第一に考えることが、統治者に求められていることなのである。

大和川は決壊しなかった。そのためか、新聞などはさほどこの件を扱っていない。また、堺市長選の帰趨もわからない。ただ、橋下の対応は、ハリケーン・サンディの襲来に早期に対応して支持率をあげたオバマ大統領よりも、ハリケーン・カトリーナ襲来に対する対策が遅れて非難されたブッシュ大統領に近いといえるのである。橋下が理解できないのは、被統治者が統治者に何を第一として考えて欲しいとしているかということなのである。

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