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2015年7月22日、NHKのクローズアップ現代で、「もう一度咲かせたい 福島のバラ」(水)という表題で、福島第一原発事故で「帰還困難区域」となり、事実上閉鎖に追い込まれた双葉ばら園について放映された。まず、番組の紹介をみてほしい。

もう一度咲かせたい 福島のバラ

 
出演者
開沼 博 さん
(福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員)

福島県双葉町に、イギリスのウィリアム王子など世界中の人たちが強い関心を示し、復活を切望するバラ園がある。7000株ものバラが咲き乱れ、“日本で最も個性的で美しい”と称賛された「双葉ばら園」だ。地元の岡田勝秀さん(71)の一家が40年以上かけて築いたが、原発事故で荒れ野と化してしまった。ばら園は原発事故がもたらした悲劇の象徴として知れ渡り、再建を願う声は今も後を絶たない。しかし賠償手続きは難航。ばら園の価値をはかることは難しいというのだ。避難先の茨城県つくば市で茫然自失の日々を送っていた岡田さんを変えたのは被災者からの言葉だった。「失った暮らしがバラと重なる。だからこそ再び美しいバラを咲かせてほしい」。今年、岡田さんは養護施設で子供たちと一緒にバラを育て始めた。目を輝かせて取り組む子供たちの姿に力をもらっているという。岡田さんの姿から福島のいまを見つめ、取り返しのつかないものを失った人々に何が必要なのか、考える。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3689.html

この双葉ばら園は、双葉町に所在し、ばら愛好家の間では知られた存在であった。私も、よくこの前を通り、1、2回は中を見たことがある。しかし、初夏に行くことができず、花盛りのばら園をみたことがない。今となっては永遠に見ることはできない。福島第一原発事故で残念に思うことの一つだ(もちろん、こればかりではないけれど)

この番組の冒頭では、写真などをもとにしてCGで花盛りのばら園を再現していた。この番組内容をおこしたサイトがあるが、それによると全体は6ヘクタールになり、個人経営としては国内最大規模で、750種7000株のバラが植えられ、年間5万人の人が訪ねたという。(http://varietydrama.blog.fc2.com/blog-entry-2881.htmlより、以下番組内容については、同サイトより引用)

しかし、福島第一原発より8キロの場所にあり、放射線量が高く、今でも「帰還困難区域」にある。園主は200キロ離れた茨城県つくば市に避難し、ばら園を手伝っていた息子たちも別の仕事につかざるをえなくなった。こうして、4年以上もの間、ばら園は手入れされることもなく、荒れ果ててしまった。双葉でのばら園再開はあきらめざるをえなくなったのである。

園主に別の場所でのばら園再開を求める人たちもいる。しかし、園主は再開に踏み切れない。その理由を、クローズアップ現代では、このように説明した。

バラ園を再建するためには新たな土地に移るかしかありません。
しかし岡田さん(園主)はまだ具体的には考えられないといいます。
その理由は東京電力との賠償交渉が進まず再建のための資金にメドが立たないためです。
岡田さんのようなバラ園の賠償は前例がありません。
東京電力の基準ではヒノキやスギなどを植えた人工林と同じ扱いになります。
しかし岡田さんは、そのことに納得がいかないといいます。

基本的には、東電との間の賠償交渉が不調のため、ばら園再開の資金がないということが、ばら園再開を阻んでいるといえよう。同番組では「一向に先が見えない日々」と表現している。

その上で、クローズアップ現代では、ある養護施設が、ばら栽培の専門家としての園主に子どもたちの心を慰めるばら苗植え付けを依頼したり、支援者がばら園の写真展を開始したりすることを肯定的に伝えている。

そして、ここで、「被災者の方々への聞き取りをずっと続けている」「福島県いわき市のご出身」で福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員」の開沼博氏が登場してくる。開沼氏は、福島原発の建設経過から福島第一直後の状況を扱った『フクシマ論』の著者として著名である。

開沼氏は、震災や原発事故などで失われたもののなかで、死亡者や賠償金額など数字に表されるものはわかりやすいが、生きがいとか、社会的役割とか、仕事とか、未来への展望とか外からは見えにくいとする。そして、被災者たちは、政治とか行政とかメディアと研究者とかへの社会的信頼ととも自分自身への信頼も失っていると主張する。

その上で、このようにいう。

もうかなうならば、失われたものが元に戻ってほしい、多くの方がそういうふうに思っています。
一方で、なかなかその思いというのはかなわない。
失われてしまったものをどうすればいいのかと思っている方が多いです。
そこに対して、1つは、いわゆる公助、公に行政とか東電とかが補償、賠償などをするということがあります。
ただそれだけで足りない部分というのがあるわけですね。
VTRの中でもありましたとおり、なかなかお金に換算できない価値というのがある。
(中略)
やっぱり重要なのは、そういう賠償、補償などだけではカバーしきれない部分というのをいかに立ち直していくか。
ここで重要になってくるのは承認というキーワードだというふうに思っています。
これ、承認っていうのは、まず1対1の関係で、あなたはそこにいていいんだと、分かりやすくいうなら、そういう感覚だと思います。
そして自分自身がここにいて、こういうことをやっていいんだという感覚。
それが失われているわけですね。
これをどういうふうに立て直すか、もちろん公助はまだまだ必要ですけれども、いわゆる自助、共助といわれる、つまり自分たちの身の回りで、あなたがこういうふうに必要なんだよ、ここにいてよと。
あるいは自分たちと一緒に何かやってくださいと

まとめていえば、東電の賠償も含めて「公助」としつつ、金銭でカバーしきれない部分について、被災者の自己承認を回復させるためとして、「自助」「共助」の重要性を主張したのである。

こういう番組があることはいいことである。しかし、開沼氏のような捉え方は、非常に奇異に思える。東電は原発事故を起した責任者である。そして、原発事故で住めなくなったり、使えなくなってしまった財産に対する賠償は、権利の侵害に対する代価を義務として提供することであって、津波被害などの自然災害による被災者の生活を政治的に救助するという意味での「公助」ではない。

まず、そうした理解の上にたって、「双葉ばら園」について考えてみよう。ばら園が再開できない最大の理由は、東電の賠償交渉が不調であるということである。東電の賠償金は、たぶん一般山林と同様な基準で賠償を考えているのであろう。しかし、その金額ではばら園再開はできないため、園主は再開できないと考えているのだ。ばら園創設後の手間は確かに金額に換算できない。しかし、少なくとも、別の場所でばら園を再開することが可能な程度が最低の賠償金額になるべきだと思う。

一方、NHKや開沼氏の強調する「自助」「共助」はどうだろうか。生活者的視点から考えて、被災者自身や被災者を受け入れている地域社会の側で、そのような営為が不要であるとは思われない。聞き取り調査などすれば、そういう意見も出るだろう。そもそも東電の賠償が失われた財産の最低限度にたるものになるかどうか不明でもある。しかし、それは、NHKや開沼氏のような非当事者が一方的に強調してよいこととは思えない。それでもたぶん、かれらは「被災者によりそう」視点として自己規定するだろう。

番組全体では、東電の賠償を「公助」として「義務」的色彩をうすめつつ、それに頼らない被災者の「自助」「共助」を説いているといえるのである。しかし、これでよいのか。こういうことで、「福島のばら」は「もう一度咲く」のであろうか。

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本日(2015年1月30日)、NHKの19時のニュースを見ていたら、次のような報道があった。

首相 福島第二原発の廃炉は事業者判断
1月30日 17時35分

安倍総理大臣は、衆議院予算委員会の基本的質疑で、福島第二原子力発電所の廃炉について、「第一原発の5号機と6号機は事故処理の観点から廃炉を要請したが、第二原発は状況が違う」と述べ、今後のエネルギー政策などを総合的に勘案して、事業者が判断するという認識を示しました。
このあと委員会では、今年度の補正予算案の採決が行われ、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。

この中で、共産党の高橋国会対策副委員長は、東京電力福島第二原発の廃炉について、「原発事故の収束に集中すべきで再稼働などあってはならない。去年の福島県知事選挙で、与党も支援して当選した内堀知事は、福島県内に10基あるすべての原発の廃炉を要請しており、政府としても全基の廃炉を決断すべきだ」と指摘しました。これに対し、安倍総理大臣は「福島県から福島第二原発の廃炉を要望する声があることは承知している。福島第一原発の5号機と6号機は、事故を起こした1号機から4号機の近くにあり、事故処理に集中する現場体制を構築する観点から廃炉を要請したが、遠く離れた第二原発は状況が違う。今後のエネルギー政策の状況や新規制基準への対応、地元のさまざまな意見なども総合的に勘案し、事業者が判断する」と述べました。
(後略)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150130/k10015095871000.html

これを視聴して、えっと思った。福島第一原発事故の処理は、汚染水処理を筆頭にして、ほとんど停滞し、多くの予定を先送りせざるをえない状態にある。そのような中で福島県側は福島にあるすべての原発の廃炉が求めている。それなのに、「事業者」=「東京電力」に福島第二原発稼働の判断をまかせるということを、首相が述べてよいのだろうかと思ったのだ。

しかし、この報道は、NHKの報じ方にも問題があったようだ。ロイターは、同じやりとりをこのように伝えている。

福島第1原発事故、収束という言葉を使う状況にない=安倍首相
2015年 01月 30日 16:10 JST

 1月30日、安倍晋三首相は午後の衆議院予算委員会で、東京電力福島第1原子力発電所の事故について、「収束」という言葉を使う状況にはないとの認識を示した。

[東京 30日 ロイター] – 安倍晋三首相は30日午後の衆議院予算委員会で、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所の事故について、「収束」という言葉を使う状況にはないとの認識を示した。

高橋千鶴子委員(共産)の質問に答えた。

安倍首相は福島第1原発の状況について「汚染水対策を含め、廃炉、賠償、汚染など課題が山積している」としたうえで「今なお厳しい避難生活を強いられている被災者の方々を思うと、収束という言葉を使う状況にはない」と語った。

また同原発で死亡事故が連続して発生していることについて「極めて遺憾だ。政府としても再発防止策の徹底を図り、安全確保を大前提としつつ、迅速に汚染水対策を進めるよう東電を指導していく」と語った。

福島第2原発を廃炉とするかどうかについては「今後のエネルギー政策の状況や新規制基準への対応、地元の意見などを総合的に勘案しながら、事業者が判断するものだ」との見解を示した。

(石田仁志)
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0L30GD20150130

ロイターの報道では、NHKの報道にはなかった、安倍晋三首相自身が福島第一原発事故は収束にいたっていないと認めざるを得なかったことを強調している。衆議院議事録で確認しなくてはならないが、たぶん、そのように安倍晋三首相は答えたのであろう。

もちろん、このように報道されても、安倍晋三首相が福島第二原発については「事業者」=東京電力にまかせると発言した問題性は変わらない。福島第一原発事故の影響は、福島第二原発の立地地域を含めた広範囲にも及んでいる。廃炉作業も進まず、さらにその作業自体が新たな汚染を引き起こす可能性がある。補償や帰還の問題もある。そのような状況の中で、福島第二原発の存続を東京電力の判断に委ねるということは、当事者責任の放棄である。そして、そもそも、東京電力の最大株主は、今や国なのである。

しかし、NHKの報道姿勢もまた問題である。結局、安倍晋三首相は福島第一原発事故の処理は進んでいないと認めざるを得なかった。これは、安倍政権の失点といえるのだが、そのことをNHKは報道しなかったのである。私も、外電であるロイターが報道したから、ようやく知ったのである。国内メディアよりも、外電の方が信用にたるということになる。政権の失点は最大限隠蔽するーそれは、戦時期の大本営発表の特徴であった。。

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本日、2014年4月1日は、エイプリルフールである。その日にふさわしい話題が報道された。

NHK会長「1人の行為で信頼全て崩壊」 入局式で訓示
2014年4月1日20時23分

 就任会見での政治的中立性を疑われる発言が問題になっているNHKの籾井勝人会長は1日、新入局員の入局式での講話で、「(就任)初日に記者会見を行った際、質問に答えて個人的な意見を言い、大きく報道されました。入局前の皆さんには、ご心配をかけたことと思います。たいへん申し訳ありません」と話し、謝罪した。

 その後、NHKが受信料によって成り立っていることに触れ、「職員全員が信頼や期待を積み重ねていったとしても、たった1人の行為がNHKに対する信頼のすべてを崩壊させることもあります。自らの行為の、NHKや日本の社会に与える影響や責任の重さは、昨日までとは全く違うことを、しっかりと自覚していただきたいと思います」と話した。
(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASG416FF4G41UCVL034.html

これは、残念ながら実話である。朝日新聞以外の多くの新聞や通信社も同様の報道を行っている(NHK自体は報道していないようだが)。

入社式や入庁式などで、そのトップが「1人の行為で信頼全て崩壊」することを警告する訓示を行うことは、よく見られることである。しかし、籾井の発言自体が「1人の行為で信頼全て崩壊」させるものではなかっただろうか。入局式でこのような訓示を行っても、「よくできたエイプリルフール」としか受け取ることができないのである。

籾井については、もはや「笑う」しかない。しかし、この「笑い」は、籾井が組織の代表として発言する資格を失ったことを示している。これ以上、籾井は嘲笑される立場にしがみつづけるつもりなのだろうか。安倍晋三は、新入局員にも劣る会長を今後とも擁護しつづけるのであろうか。そして、そんなことを許せば、NHK受信料を払っている私たちが「四月馬鹿」にされたということになろう。

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前回のブログで、記録的な大雪に際してオリンピック情報を優先した(今もだが)NHKを批判した。しかし、このような対応はNHKだけではなかった。日本政府中枢の首相官邸も同様であったのだ。

首相官邸のサイトをあけてみよう。「新着情報 平成26年2月15日 総理の一日 安倍総理は羽生結弦選手にお祝いの電話をかけました」とある。そこをクリックすると、次の記事が出て来る。

平成26年2月15日
羽生選手へのお祝いの電話

 平成26年2月15日、安倍総理は総理大臣公邸で、ソチ・オリンピックで金メダルを獲得した羽生結弦選手へお祝いの電話をかけました。

安倍総理はお祝いの中で次のように述べました。

「羽生選手、おめでとう。昨日はたくさんの日本人がみんな、羽生選手の演技を見て胸が熱くなる想いだったと思います。
 私もワクワクしながら、ドキドキしながら見ていましたけれども、最後まで本当に冷静で諦めずに、凄いなと思いました。」
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201402/15gold_hanyu.html

前のブログでも書いたが、私はこのようなオリンピックの国家主義的利用には反対である。しかし、安倍晋三首相ならば、こういうことをすることは予想できた。予想できなかったことは、少なくとも表に出た限り、15〜16日において、「それ」しかしていなかったようにみえることである。

時事新報で報道された、2月15〜16日の首相動静をみてみよう。

首相動静(2月15日)

 午前8時現在、公邸。朝の来客なし。
 午前中は来客なく、公邸で過ごす。
 午後2時25分から同26分まで、報道各社のインタビュー。「ソチ五輪男子フィギュアで、羽生結弦選手が金メダルを獲得した」に「テレビを見ていて、日の丸を背にウイニングランをするシーンは本当に感動した」。同31分から同35分まで、ソチ冬季五輪フィギュアスケート男子で金メダルを獲得した羽生結弦選手を電話で祝福。同36分、公邸発。同54分、東京・富ケ谷の私邸着。
 16日午前0時現在、私邸。来客なし。(2014/02/16-00:04)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014021600002

首相動静(2月16日)

 午前10時現在、東京・富ケ谷の私邸。朝の来客なし。
 午前中は来客なく、私邸で過ごす。
 午後も来客なく、私邸で過ごす。
 午後5時31分、私邸発。
 午後5時49分、東京・赤坂の天ぷら料理店「楽亭」着。支援者らと会食。
 午後7時50分、同所発。(2014/02/16-20:01)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014021600098

15・16日は土日であり、安倍晋三首相ももちろん休んでいてもかまわない。しかし、「記録的大雪」があったことについて、政府内部で協議した形跡がまるでない。特に15日は公邸と官邸にいたのであるから、首相官邸内部で協議してもよさそうだが、その様子は全くない。さすがに、電話連絡などが全くないとは思えないのだが、大雪対策についてだれかを呼び入れて特別の指示を与えてはいないのである。安倍首相がこの2日間で公的に行ったことは「羽生選手に祝福の電話をかけたこと」だけなのだ。

それでも、首相官邸のサイトには、国土交通省へのサイトのリンクがはられており、多少なりとも対策を講じているようにみせている。しかし、この国土交通省の対策も、次にみるように、かなり不備なものなのである。

平成26年2月16日
国土交通省 道路局
今般の大雪による道路における対応状況とみなさまへのお願い
1.立ち往生の状況
・14日からの大雪により、15日に東名高速では裾野インターを先頭に、約40km渋滞し、直轄国道では、5路線7区間において、約1400台の車が立ち往生しました。
2.対応
・高速道路の本線における立ち往生車両については、移動が終了しております。
・直轄国道の立ち往生が生じた区間においては、車両の乗員の安否確認は終了しています。
・雪による通行止めの各区間においては、除排雪作業を全力で進めております。
・また、立ち往生している車両の乗員のみなさまには、地元自治体と協力し、食料等の提供、ガソリン等の補給を行っております。
・なお、最新の通行止め情報は、道路交通情報センターのhttp://www.jartic.or.jp/で、ご覧になれます。
3.お願い
・高速道路および直轄国道以外の道路については、現在、各道路管理者にて状況の確認を進めております。
・万が一、立ち往生が生じている場合は、道路緊急ダイヤル「#9910」※に、御一報いただくようお願い致します。
※「#9910」とダイヤルすると、係員につながります。
http://www.mlit.go.jp/road/bosai/kosetsu/1402161500.pdf

大雪対策といっても道路だけで、それも東名高速道路と直轄国道(しかも、この道路名すらあきらかではない)のことだけなのである。現時点(2月16日)においても、東名・中央・上信越・関越・東北道の関東から他地方に通ずる高速道路の交通は途絶している。そして、1mをこえる積雪に見舞われた山梨県内では多くの道がとざされ、自衛隊が除雪作業をしている。そのようなことには全くふれていない。いわば、情報収集すら十分ではない「対策」なのである。

そして、16日の状況について、山梨日々新聞が県内の状況を中心にネット配信している。

2014年02月16日(日)

【大雪情報】あす、315の小中高校が休校
19日以降、一時雪の恐れ

 記録的な大雪に見舞われた山梨県内は16日も鉄道が始発から運転を見合わせ、高速道路で通行止めが続くなど、交通機関がまひしている。JR身延線は身延~西富士宮駅間で運転を再開した。
 甲府地方気象台は山梨県内全域に強風注意報となだれ注意報(昭和町を除く)を継続して出している。16日夜から17日にかけて冬型の気圧配置となり、山梨県内は晴れる見込み。16日夜は強風が吹き、17日は朝方冷え込み、日中はやや強い風が吹きそう。また、19日午後から20日午前にかけ、一時雪となる恐れがある。同気象台は雪崩や落雪、路面凍結などに注意を呼び掛けている。

【読者の皆様へ】本日16日付の山梨日日新聞の配達に遅れがでています。こちらで紙面の一部をPDFで17日午前零時まで公開しています。事情をご理解いただき、ご了承ください。

 
中央道、あす中の通行止め解除めざす
 中日本高速道路は、大雪で通行止めが続いている中央自動車道(富士吉田線を含む)について、「17日中をめどに通行止め解除をめざす」としている。

徒歩で帰宅中の男性が凍死か 北杜市
 北杜市須玉町下津金の路上で15日午前6時ごろ、男性が倒れているのを通行人が発見し119番した。倒れていたのは北杜市の無職男性(48)で、搬送先の病院で死亡が確認された。
 県警によると、死因は凍死とみられる。男性は、車が雪のため動かなくなったため、歩いて帰宅途中で死亡したとみている。

あす、315の小中高校が休校
 山梨県教委によると、週明けの17日、大雪の影響で県内の公立小中高校と特別支援学校計315校が休校する。睦合小(南部)が2時間、始業時間を遅らせる。栄、富河、万沢小、南部中(南部)は平常通り。

甲府~身延駅間、あすも終日運転見合わせ JR身延線
 JR東海は16日、週明けの17日も、甲府~身延駅間で終日運転を見合わせると発表した。特急も全列車を運休する。運転再開には相当の日数がかかる見込み。
 16日に運転を再開した身延~富士駅間は、本数を通常より減らす。

豪雪対応、国に要請 テレビ会議で横内知事
 政府の関係省庁災害対策会議が16日開かれ、横内正明知事はテレビ会議システムを通じ、古屋圭司防災相に対し、山梨県内で除雪が難航して交通網が遮断されている現状を報告。自衛隊の増員や豪雪対応のノウハウがある国交省職員の派遣を要請した。
 古屋防災相はソーシャルネットワークを活用して詳細な情報収集をするよう関係省庁に求めた。

陸自、郡内地域で除雪作業に入る
 県から災害派遣要請を受けた陸上自衛隊は16日、富士河口湖町などの国道138、139号の除雪作業に入った。同町の精進湖周辺で孤立しているホテル3カ所には食料、毛布をヘリで輸送している。また、大月市の国道20号で立ち往生している車列に対応する部隊は東富士五湖道路を除雪しながら、山中湖村を移動している。

2020軒で停電続く
 東京電力山梨支店によると、県内では大雪の影響で16日午後5時半現在、2020軒で停電が続いている。
 停電が続いているのは、北杜、上野原、南部、身延、早川の5市町。富士河口湖町精進の停電は午後3時20分ごろ、解消された。身延町では930軒、南部町は860軒が依然停電している。同支店は自衛隊に協力を要請し、新たな職員をヘリで現場に運び、復旧作業を急いでいる。
 早川、南部、身延町の一部では14日から2日間にわたって停電が続いている。
 
雪中の車内、CO中毒に注意を 県が呼び掛け
 山梨県防災危機管理課によると、記録的な大雪のため、県内各地で立ち往生する車が相次いでいる。同課は、できる限り外出は控えるよう呼び掛けるとともに、エンジンを掛けた車内にいる人に対し、車の排気管が雪で埋もれると一酸化炭素(CO)中毒になる恐れがあるとして、十分注意するよう呼び掛けている。
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2014/02/16/2.html

記録的大雪に見舞われた山梨県の被災状況が多少なりとも伝えられている。そして、このような被害は、山梨県だけではなく、関東・甲信・東北の各地でみられるであろう。そんな中、ようやく16日に政府の関係省庁災害対策会議が開かれた。しかし、これは内閣府の所管であり、官邸主導ではない。また、「古屋防災相はソーシャルネットワークを活用して詳細な情報収集をするよう関係省庁に求めた」とあるように、いまだ情報収集すら緒に就いたばかりという状態のようである。

しかし、これは、一体全体、なんなのだろう。安倍首相も他の政府首脳も東京にいて、30センチ弱の積雪で、空路・鉄道・道路の交通が遮断され、屋根が落ち、けが人が出ている状況を自身でも見聞きしているはずだ。また、一般人よりも確度の高い、リアルタイムな情報を得ているはずである。その3倍の積雪ではどうなるか、想像できないはずはないと思う。それにもかかわらず、首相は「羽生選手に祝福の電話をかける」以外の公的な動きをみせない。集団的自衛権では選挙で審判を受ける自分が答弁すると主張した首相が、大雪対策については、まったく主導性をみせない。古屋防災相もソーシャルネットワークを活用して情報収集をはかれという指示をしたりしている。15日の大雪は気象庁は予想しておらず、「想定外」だったかもしれないが、被害が出た時点では少なくともなんらかの対策が必要であった。オリンピックに関心をもつことの是非はともかく、少なくとも困った人びとが出たり、出ることが予想された場合、できることを行おうとするのが、政治の責任者たちの責務である。遅きに失しているかもしれないが、今からでも、雪害で困った人びとのため万全を尽すべきだと思う。

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2月8日に続き、2月14〜15日も、関東甲信地方は記録的な大雪に襲われた。まず、朝日新聞のネット配信記事をみてほしい。

東日本の広範囲で記録的大雪 甲府で114センチ
2014年2月15日12時25分

 日本の南海上を進む発達した低気圧の影響で、東日本は14日夜から15日にかけて広範囲で記録的な大雪となった。甲府市や前橋市では積雪が観測記録を大幅に更新し、首都圏各地の交通網は混乱した。東急東横線の元住吉駅(川崎市)では電車同士の衝突事故も発生し、19人が軽傷を負った。

 甲府市では15日午前、先週の残雪分も含め114センチの積雪を記録し、1998年1月の49センチを大幅に上回り、1894年からの観測記録を更新。埼玉県秩父市は98センチ、同熊谷市62センチ、前橋市73センチといずれも観測史上1位となった。東京都心も歴代8位タイとなった8日と同じ27センチ。横浜市も28センチを記録した。

 気象庁は14日夕には東京23区の降雪量の予測を10センチとしていたが、低気圧からの暖気が予想よりも入り込まず気温が低くなり、雪の量が増えたという。

 16日午前6時までの24時間降雪量は、いずれも多い所で東北70センチ、関東北部山沿いと甲信60センチ、関東南部20センチ、関東北部の平野部10センチと予想されている。

 群馬県富岡市では同日朝、雪の重みで車庫の屋根が崩れ、男性(79)が下敷きになり死亡した。

 関東南部の平野部では同日未明に雨に変わったが、内陸や山沿いでは16日にかけて雪や強風が続く見込みで、気象庁は警戒を呼びかけている。最大風速はいずれも陸上で東北20メートル、関東18メートル、東海15メートルと予想されている。
http://www.asahi.com/articles/ASG2H1RB8G2HUTIL008.html

甲府・秩父・熊谷・前橋と、軒並み記録更新という状態で、特に甲府では、これまでの記録の2倍以上の114センチを記録した。そして、これは、単に記録というだけでなく、この記事にもあるように、この大雪によって、首都圏の交通網は大混乱に陥ったのである。

私事になるが、本日(15日)、私個人は群馬県館林市の会議に出席することを予定していた。何もなければ、東北道などを経由して自動車で行くことにしていたが、スノータイヤなどの装備がなく、前日(14日)の時点で断念し、鉄道で行くことにしていた。

しかし、東京にいても、夜が深まるにつれて積雪がましており、翌朝起きてもとんでもない深さの積雪だった。とにかく、館林まで鉄道は動いているだろうか。どのくらいの積雪だろうか。そのような情報を求めて、NHK総合テレビの7時台のニュースをみてみた。ところが、大雪情報は少しばかりで、多くは、ソチオリンピックの男子フィギュアスケートで金メダルを獲得した羽生結弦選手のことばかりであった。やや後の配信だが、こんな調子である。

金メダルの羽生「復興に役立ちたい」
2月15日 12時55分

ソチオリンピック、フィギュアスケートの男子シングルで金メダルに輝いた羽生結弦選手は、試合後の記者会見で、東日本大震災で出身地の仙台市が被災した経験に触れ、「復興に役立ちたい」という強い思いを口にしました。

羽生選手は会見で、報道陣から試合後にあまり笑顔を見せない理由を問われて、「金メダルの実感が沸かないこともありますが、震災からの復興のために自分に何ができたのか分からない。複雑な気持ちです」と答えました。
そして、震災の当時を振り返って、「スケートができなくて、本当にスケートをやめようと思いました。生活するのが精いっぱいというなかで、大勢の人に支えられてスケートを続けることができました。金メダルを取れたのは、被災した人たちや支えてくれた人たちの思いを背負ってやってきたからです」と語りました。
そのうえで今後について、羽生選手は「将来、プロになったとき、震災からの復興のために何かできればと思っています。金メダリストになれたからこそ復興のためにできることがあるはずです。これがスタートになると思います」と真剣な表情で話していました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140215/k10015261821000.html

後述するように、私個人は「オリンピック報道」が好きではない。ただ、それは報道のやり方がきらいなだけであって、オリンピックのそれぞれの種目でメダルを獲得すること自体、選手個人にとってかけがえないものであり、一般の「日本国民」においても、喜びを分かち合いたいと思う人が多く存在することは当然だと思う。しかし、その時の私は、何よりも、大雪とそれによる交通網への影響についての最新で詳細な情報を欲していた。とにかく、NHKニュースからの情報収集をあきらめ、民放各局のニュースをみることにした。民放ニュースも「羽生結弦の金メダル」一色であったが、それでも、NHKのニュースよりは、大雪情報を伝えていた。結局、NHKにはたよらず、民放ニュースとネットで収集した情報をもとに、館林までの交通網が混乱しているだろうと判断して出発時間を自主的におくらせた。その後、電話で連絡をとりあって、館林出張をとりやめた。

しかし、こんなことは、実は初めての経験である。地震・津波・台風などの災害時において、私は、CMがあり、視聴率に拘束されている民放各局のニュースよりも、公共放送であり、CMは入らず、視聴率に拘束されず、全国的な支局網をもつNHKのニュースのほうを、速報性・確実性という観点から評価していた。東日本大震災の時もそうであった。もちろん、その情報自体が信頼に値するかいなかは別だが。今回の場合は、逆に、NHKのニュースのほうが「役に立たない」と判断したのである。

もちろん、NHKニュースをずっと見ていた訳ではないので、いわば印象批評でしかないといえる。しかし、この大雪のニュースについてNHKが速報性においても確実性においても劣っていたことは、次の記事でもうかがえるように思う。

記録的大雪 なだれなど注意

県内は低気圧の影響で14日から雪が降り続き、甲府市では、積雪が1メートルを超えるなど記録的な大雪となっています。
気象台では、大雪の峠は越えたとして県内全域に出していた大雪警報は解除しましたが、引き続き雪崩や強風に注意するよう呼びかけています。
甲府地方気象台によりますと低気圧の影響で、県内は14日から雪が降り続き、記録的な大雪になりました。
午前11時の積雪は、▼富士河口湖町で1メートル38センチ▼甲府市で1メートル8センチなどとなっています。
甲府市では、これまでの記録の倍以上となり、120年前の明治27年に記録を取り始めてから最も多くなりました。
気象台は大雪の峠は越えたとして県内全域に出していた大雪警報を午前11時すぎに解除しました。気象台では引き続き16日までなだれに注意するよう呼びかけています。
また、これから16日昼前にかけて県内では風が強まる見込みで強風にも注意するよう呼びかけています。
02月15日 12時59分
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kofu/1045254843.html

これは、NHK甲府地方局の地方ニュースだが、朝日新聞の先のニュースよりもやや遅い時間に配信されたにもかかわらず、甲府の積雪を1メートル8センチとしている。些細なことなのだが、速報性・確実性という点で、NHKは劣っていたといえるのである。

まさに印象でしかないが、公共放送としてのNHKは、オリンピックでの金メダル獲得を重視し、私個人を含めた関東圏の多くの人に影響を与えた大雪情報を軽視しているように思える。私個人は、交通網の混乱で館林に行けない程度のことであるが、大雪のため、屋根などが倒壊して死傷者も出ているそうである。

さて、この「公共放送」における「公共」とは何だろう。私は「公共」には三つの含意があると考えている。一つは「国家的」であり、もう一つは共同利益などの意味での「共同的」であり、最後の一つは言論などを通じた「公開性」である。NHKの籾井勝人会長が、従軍慰安婦への言及だけでなく、「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいかない。国際放送にはそういうニュアンスがある」となどと発言し、物議を醸しているが、これは、まさに、言論の自由などの「公開性」の原則に対し、「国家的」に傾斜した形で「公共」を再定義しようということになるだろう。他方で、今回のようなことは、大雪情報を提供するという人びとの「共同利益」を、「国威発揚」をめざすオリンピック報道によって抑圧したものとみることができる。オリンピックに携わる選手たちのひたむきさを否定はしないし、彼らの活動を伝える報道も必要だろう。しかし、現時点での日本のオリンピック報道は、スポーツを通じて行われる国家間競争の側面が強調され、その中で、「国民」のアイデンティティを再確認することが中心となっていると思われる。その意味でオリンピック報道は「国家的」なものといえる。いわば、ここでは「国家的」なものが「共同的」なものを抑圧したものといえるのである。

このようなことは「ニュースバリュー」という形で、民放各局も含めて内面化されていると考えられる。しかし、視聴率競争に縛られている民放とは別個な形で、「公益」を実現することが「公共放送」であるNHKに期待されていたことである。最初に述べたように、災害時により信頼性の高い情報を提供するというイメージがNHKにはあった。それがふみじられていくこと、これもまたNHKの「国営放送局」化の一側面としてみることができよう。

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昨日(2012年1月16日)、NHKの「クローズアップ現代」において「子どもが語る大震災(1) 高校生が伝える福島」という番組を視聴した。まずは、内容についての紹介分を紹介しておこう。

東日本大震災で被災した状況を自ら記録し続けている高校生たちがいる。福島県立原町高校放送部の生徒たちだ。原町高校は福島第一原発から30キロ圏内の南相馬市にあり、震災直後から学校は閉鎖。5月に2か所の「サテライト校」に分かれ授業は再開したが、転校を余儀なくされた生徒も全校の半数に及ぶ。放送部の2年生7人は震災と原発事故に翻弄される自分や家族の姿を記録。ドキュメンタリー作品にまとめ、6月のNHK杯放送コンテストで発表した。今も、刻々と変化する暮らしや学校生活を記録し続けている。作品作りのために互いの本心をぶつけあい、困難を乗り越え、心の成長も見せる生徒たち。彼らの姿を通じて「見過ごされてきた等身大の被災地の姿」「子供たち自身が記録し伝える意味」を探る。
(中略)
出演者
江川 紹子さん(ジャーナリスト)
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=3141

この番組のサイトで、原町高校放送部ーつまり高校生が実際に撮影・編集された映像「原発30km圏内からの報告」と「原町高校紹介2011」が紹介されている。この二つの映像、特に前者は、NHKの番組よりも興味深いものだった。「原発30km圏内からの報告」は、NHK杯全国高校放送コンテストでテレビドキュメント部門制作奨励賞となったものである(http://www.haramachi-h.fks.ed.jp/bukatudo/bukatudo.htm)。NHKが、この映像を知ったのは、たぶん、この経緯からのであろう。
 

「原発30km圏内からの報告」は、このようなナレーションから開始されている。

5月9日、原発30km圏内にあるわが原町高校のサテライト校での授業が始まった。
http://www9.nhk.or.jp/gendai/material/img/movie/video_480.html?flv=Genpatu_kurogen_001.flv&autostart=1

このナレーションは男子生徒が行っているが、とにかく淡々として、感情を交えず、事実経過を伝えていくことに徹している。震災・原発報道で、よくセンセーショナルな口ぶりで伝える職業的アナウンサーがいたが、それとは正反対である。しかし、このような感情を押し殺したアナウンスは、逆に、事態の深刻さ、その底にうごめく恐怖を伝えているといえる。

そして、それから、映像は、3.11に遡って、原町高校にどのような運命がふりかかったのかを回想していく。ナレーションでは「東日本大震災2日目、日曜日から混乱が始まった。」と語り、20km圏内が強制避難地域になり、30km圏内が屋内退避という「どうしたらよいのかはっきりわからない地域」に指定されてしまったと述べる。

学校は閉鎖され、そのこと自体がテレビでしか発表されなかった。情報はテレビでしか入手できない状況になった。放送部員たちもばらばらになっていく。30km圏内の原町地区の農家出身の部員は、すぐもどってくるつもりで避難した。50kmは原発から離れている部員の生活には大きな変化はなかった。一方、まさに20km圏内の浪江町に住んでいた二人の部員については「最悪」だと語られている。そして、「おじいちゃんやお父さんなどの上の世代の人たちは、大丈夫だ、爆発なんかしないといっていたけれど、そんなことなかったね」と語る回想などが挿入されている。

結局、しばらく学校は閉鎖された。先生や生徒も学校にこれない状態になった。常に情報不足の状態であったようである。そして、5月に、ようやく、「30km」外の相馬高校と福島西高校にサテライト(仮校舎)を設置して、そこで授業を行うことになった。

それは、高校が二つに分断されたことを意味する。南相馬市などから避難しなかったり、また近隣に避難した高校生たちは、北隣の相馬高校(確か相双サテライトといったと思う)で授業を受けることになった。他方、原発20km圏内に住んでいて、福島などの福島県中通りに避難した高校生たちは、福島西サテライトで授業を受けることになった。特に、飯館村に住んでいる生徒は、計画的避難区域に編入されてしまったため、自身も避難することになってしまったのである。

「原発30km圏内からの報告」の終局部には、このような高校生の分断を前提にして、次のようなフレーズがある。

原発は私たちをばらばらにした。原発はなくなればいいと思った。でも

しかし、このナレーションで「でも」と発言した直後、この発言を覆い隠すように、原町高校の教師が、このように諭している。

東電に直接関連のない会社や個人経営の商店でも、東電関連の人たちがお買いものをするわけですから、東電と全く縁がないということはなかなか難しいかもしれませんね。

これは、たぶん、原町高校放送部が、「両論併記」という形ではあるが、原発問題に対する主張としてみることができる。これは、別に、原町高校の生徒だけの問題ではない。日本のいや世界の課題ということができる。

しかし、NHKの「クローズアップ現代」では、この部分をカットしている。この高校生の映像を紹介したNHKの努力は了とする。NHKがなければ、この高校生たちの映像に接することはできなかった。しかし、このことは黙視しがたい。情報隠蔽である。高校生たちに、「自分の意見は公共番組では伝えるべきものではない」と教え諭しているようなものではなかろうか。

もちろん、「クローズアップ現代」自身の取材を総否定するつもりはない。10月になり、相双サテライトから原町高校に生徒たちが移り、他方で福島西サテライトは今年度限りで廃止することなった。「クローズアップ現代」では、互いの状況がかわり、今後の身の振り方に迷う高校生たちの葛藤を繊細に描いている。そして、「スタッフの部屋」というブログでは、このように語られている。

プレビュー(試写)をのぞいてきました。

取材VTRは高校生の日常のリアルが伝わってくるものでした。
もちろん、原町高校を離れてサテライト校での授業をうけることになってしまう生徒や、
学校を離れていく生徒、
今後の不安など、厳しい状況はいくつも出てきます。
ただ、それでも、高校生らしさを失わないというか、
VTRを見ながら、
自分の高校時代を思い出してしまうような感じもいくつも出てきます。

先にご紹介した原町高校のホームページには、
校内の放射線の線量まで記載されています。
生徒はきっと、不安も心配もいろいろとあって、
「震災さえなければ…、原発事故さえなければ…」という思いは本当に強いと思います。
それでも、原町高校放送部のメンバーは今後も”みずから記録”することを続けていくそうです。
わたしたちマスコミによる”記録”では決して見えない、
“リアルな部分”に、すこしホッとするというか、
がんばってほしいと感じたプレビューでした。
http://www.nhk.or.jp/gendai-blog/100/106364.html

つまりは、「震災さえなければ…、原発事故さえなければ…」(なお、この発言は、原町高校放送部の顧問の教師によるもの)という気持ちを全くわかっていなかったわけではないのである。しかしながら、NHKは、放送では、「原発はなくなればいい」という発言をカットし「高校生の人間ドラマ」という面を強調したのである。

インターネットにて、この放送をみた人たちの声を検索してみた。評価する人たちがいる一方、「高校生たちは放射線問題にふれていない」と批判する人もいた。ただ、これは、高校生たちのせいではない。NHKの責任であることを、ここでは主張しておこう。

それにしても、こんな番組まで、歴史学の王道である「史料批判」をしないとはみられないということに、正直驚いている。メディアの「透明性」とは、今はないらしい。もちろん、こんな番組が作成され、そのソースまで公開されているのであるから、NHKでも良心的な人びとはいるのだろう。しかし、高校生の、今や当たり前の主張ーしかも両論併記という形で彼ら自身が公平性を担保しようとしているーまで封殺することが当たり前と思っている人たちが、NHKの主流なのであろう。

こういう、高校生たちの取り組みに感心したことを、このブログでは伝えたかった。今もその思いは強くある。しかし、情報操作・情報隠蔽は、こんな番組までおよび、史料批判をしないと感動もできない状態になっていることに、私の心は沈んでいる。

*なお、原町高校放送部の映像はNHKの「クローズアップ現代」のサイトからみることができる。他方、NHKが製作した「子どもが語る大震災(1) 高校生が伝える福島」という番組は、NHKオンデマンドで視聴が可能である。有料だが105円なので、できたら、両方の映像比較してみてほしい。

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一昨日(2011年12月31日)、例年のごとくNHKは紅白歌合戦を生放送で放映した。東日本大震災があった2011年という年をNHKがどのようにしめくくるのかということに興味があって、すこし注意深くみることにした。なお、ここで、紅白歌合戦で歌われた歌について、多少批判的なことを書くかもしれないが、その歌や歌っていた歌手を批判するつもりではなく、NHKの紅白歌合戦に対する姿勢を表明している材料として検討していることをまず申し述べておく。それでも、それぞれの歌手のファンには不快の念を与えるかもしれない。前もってお詫びしておく。

今年のテーマは「あしたを歌おう」ということがテーマになっていた。善意でいえば、NHKは「希望」で東日本大震災のあった2011年をしめくくりたいらしいのである。そして、それが、良くも悪くも、紅白歌合戦全体のコンセプトになっていたようである。

まずは、冒頭に、「なでしこジャパン」が登場してきた。別に彼女たちに文句はない。確かに、日本社会に「希望」を与えたことも確かであろう。しかし、彼女たちの「希望」は、震災・津波・原発事故における「苦悩」を背景にしていたがゆえに輝いたのではないか。ある意味では、「明暗」の「明」しかみようとしていないように思えた。

後、大体、そんな調子で進んだ。震災や津波の被災が語られることはあまりなく、語られるとしても「希望」の前提としてみられているようである。例えば、紅組司会井上真央が、3.11当日に誕生した子どもたちを紹介していたが、それこそ、「被災」という現実よりも「明日の希望」に焦点をあてた事例といえよう。

特に、福島第一原発事故については、ほとんどふれられることがなかった。長淵剛の「ひとつ」という歌の紹介で、長淵が原発事故より避難した子どもを鹿児島に招待したということが語られていた。福島出身の人が他にも出ていたので、全く言及されていないとは思えないのだが、印象に残ったのはそれくらいだ。

全く、NHKが被災地を無視していたわけではない。被災地復興のための「応援ソング」というものもかなり多く見受けられた。例えば、福島県出身のグループ猪苗代湖ズが歌った「I love you and I need you ふくしま」などがその一つである。この歌については、賛否両論があることは承知している。とりあえず、紹介しておこう。

この歌の中では、このように福島は歌われている。

I love you,baby 浜通り
I need you,baby 中通り
I want you,baby 会津地方 福島が好き

少し調べてみて、この歌の成立は、3.11以前だったようであることを知った。それならいたしかたないのだが…。ただ、この歌詞を聞いた時の感想では、この三つの地域を同列に扱ってよいのかと思った。ただ、それは、この歌を採用したNHKの方の問題であろう。全体でいえば、「希望」を際立たせたいという、NHK側のもくろみがよく現れていると思う。すべての「応援ソング」を注意深く聞いていたわけではないのだが、いわゆる「応援ソング」はこのようなかたちで「希望」が歌われていたように思われた。

「東北」や「ふるさと」を扱った歌も多かった。ただ、郷愁の中で歌われる「東北」「ふるさと」と、現実の東北の津波・原発被災地とはかなり距離があるのではなかろうか。千昌夫「北国の春」や北島三郎「帰ろかな」では、「ふるさとに帰ろうかな」と歌われていた。しかし、帰ることができる「ふるさと」は、実在するのか。千や北島が悪いわけではないのだが。

「短期的にでも元気づける」というならば、むしろ、現実の苦悩を一時でも忘れさせ、相対化させるようなもののほうがよいのではなかろうか。津波被災地の石巻市の夏祭りで、例年にはないディズニーのパレードがでて、石巻の人びとが喜んでいる映像をみたことがある。今回の紅白でも、ミッキーが出演していた。KARAや少女時代が出演していたのも、そのようなねらいなのかもしれない。しかし、ミッキーの出演には問題がなかったが、KARAや少女時代などの「韓流」の出演については、右翼的な人びとの抗議デモを招いたのである。

さらに、どうしても「希望」を語りたいのであれば、その底流にある「苦悩」にもっと光をあてなくてはならないのではなかろうか。紅白の中で、徳永英明が、中島みゆきの「時代」をカバーして歌っていたが、その点からみれば評価できると思った。歌詞を一部紹介しておこう。

今はこんなに 悲しくて
涙も 枯れ果てて
もう 二度と 笑顔には
なれそうも ないけど

そんな時代も あったねと
いつか話せる 日がくるわ
あんな時代も あったねと
きっと笑って 話せるわ
だから今日は くよくよしないで
今日の風に 吹かれましょう

まわる まわるよ 時代は回る
喜び悲しみ くり返し
今日は別れた 恋人たちも
生まれ変わって めぐり逢うよ
(後略)

そんなこんなの、一視聴者の違和感などは、もちろん気にせず、NHK紅白歌合戦は進行していく。そして、いわゆる、ラストは、スマップが歌った。スマップの歌は、「SMAP AID 紅白SP」ということでメドレーである。「AID」とあるので、応援ソングなのだろう。このメドレーの最後をなしているのが、「オリジナル スマイル」なのである。「オリジナル スマイル」の歌詞を一部紹介しておこう。

笑顔抱きしめ 悲しみすべて
街の中から 消してしまえ
晴れわたる空 昇ってゆこうよ
世界中がしあわせになれ!

(中略)
マイナスの事柄(こと)ばかり 考えていると
いいことない 顔つき暗いぜ

笑顔抱きしめ ココロに活力(ちから)
腹の底から笑いとばせ
女神がくれた 最高の贈り物
生まれつきの笑顔に戻れ!
(後略)
http://www.uta-net.com/user/phplib/Link.php?ID=5299

この歌は、1994年に発売されており、震災とはもちろん関係がなくつくられた。歌っているスマップにも、別に、他意はない。しかし、やはり、この歌をラストにもってきたNHKの意図は、やはり「希望」を強調しようという意識なのであろう。だが、この歌を聞いていると、笑えば何でも解決できるように聞こえるのだ。

もちろん、笑うことも必要だ。しかし、今、笑っているだけで、何が解決するのか。笑っててはすまない問題もあろう。怒ることも悲しむことも、また必要なのではなかろうか。

「希望」は重要である。しかし、「苦悩」が先行していることが、あまりにも紅白歌合戦では軽く扱われているように思えた。

確かに、紅白歌合戦なんて、日本という国民国家でその年流行した歌を確認することによって、日本国民というアイデンティティを確認する国民国家の国民統合の装置ということができる。しかし、これは何だろうか。家族・友人・家・財産・故郷を失い、仮設住宅の中でようやくテレビを見ている人びとも「国民」の中にはいるはずだ。国民統合の装置であるはずが、「国民分断」の象徴のように思えてならないのだ。「共苦」という姿勢がかけたまま、「希望」だけが強調されていたのが今回の紅白だったと思う。

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