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さて、自民党の石破茂幹事長は、11月29日に自身の「石破茂(いしばしげる)オフィシャルブログ」に掲載された「沖縄など」と題された文章の中で、特定秘密保護法案についてこのように主張した。

(前略)
 特定秘密保護法の採決にあたっての「維新の会」の対応は誠に不可解なものでした。自民・公明・みんなの党とともに共同修正を提案したからには、その早期成立にも責任を共有してもらわなくてはなりません。しかるに、日程を延ばすことを賛成の条件としたのは一体どういうわけなのか。質疑を通じて維新の会の主張は確認されたのではなかったのか。反対勢力が日程闘争を行うのはそれなりに理解できなくもありませんが、共同提案をしている党が日程闘争を展開するという前代未聞の光景に当惑せざるを得ませんでした。

 今も議員会館の外では「特定機密保護法絶対阻止!」を叫ぶ大音量が鳴り響いています。いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう。
 主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます。
(後略)
http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/

この発言で問題なのは、後半である。石破は、「特定秘密保護法案」反対のシュプレヒコールを「絶叫戦術」とし、世論の共感をよぶことはないと批判した上で、「民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべき」と主張した。そして、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます。」としたのである。

もちろん、この発言には石破一流のレトリックもあるだろう。しかし、非暴力的に行われている「特定秘密保護法案」反対のシュプレヒコールを「テロ行為」と本質的に変わらないとするのは大きな問題をはらんでいる。

なぜならば、これは、特定秘密保護法案のテロの定義にかかわるからである。特定秘密保護法案のテロの定義については、11月29日付の毎日新聞社説がこのように指摘している。

社説:秘密保護法案 参院審議を問う テロの定義
毎日新聞 2013年11月29日 02時31分

 ◇あいまいで乱暴すぎる

 国際的にも解釈の分かれる重要な論点が、ほとんど議論のないまま素通りされていることに驚く。

 特定秘密保護法案のテロリズムに関する定義である。「反政府組織はテロリストか」。国際社会では、そういった解決困難なテロの定義をめぐり、今も議論が続く。日本も国際協調しつつ、テロ対策に向き合うべきだ。だが、テロを定義した法律は現在、国内にない。法案は12条でテロを定義した。全文を紹介する。

 「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要し、又(また)は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう」だ。

 テロ活動の防止は、防衛、外交、スパイ活動の防止と並ぶ特定秘密の対象で、法案の核心部分だ。本来、法案の前段でしっかり定義すべきだが、なぜか半ばの章に条文を忍ばせている。それはおくとしても、規定のあいまいさが問題だ。

 二つの「又は」で分けられた文章を分解すると、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」「社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷」「重要な施設その他の物を破壊するための活動」の三つがテロに当たると読める。衆院国家安全保障特別委員会で、民主党議員が指摘し、最初の主義主張の強要をテロとすることは拡大解釈だと疑問を投げかけた。

 これに対する森雅子特定秘密保護法案担当相の答弁は、「目的が二つ挙げてある」というものだった。つまり、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し」「又は社会に不安若しくは恐怖を与える」がともに「目的で」にかかるというのだ。

 ならば、そう分かるように条文を書き改めるべきだ。法律は、条文が全てだ。読み方によって解釈が分かれる余地を残せば、恣意(しい)的な運用を招く。だが、委員会では、それ以上の追及はなかった。

 たとえ森担当相の答弁に沿っても、テロの範囲は相当広い。「主義主張を強要する目的で物を破壊するための活動」はテロなのか。「ための」があることで、準備段階も対象になる。原発反対や基地反対の市民運動などが施設のゲートなどで当局とぶつかり合う場合はどうか。

 もちろん、この定義に従い、すぐに具体的な摘発が行われるわけではない。だが、こんな乱暴な定義では、特定秘密の対象が広がりかねない。参院の拙速審議は許されない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20131129k0000m070123000c.html

つまり、普通に読むと、人を殺傷したり、施設その他を破壊するということだけでなく、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」することも、テロに該当する危険性があると毎日新聞は指摘しているのである。それに対して、森雅子担当相は、上記の部分は、人を殺傷したり、施設その他の破壊について修飾するものだと弁明した。

しかし、石破の特定秘密保護法案反対のシュプレヒコールはテロ行為と同じとした発言は、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若(も)しくは他人にこれを強要」という定義に合致しているといえる。つまり、政府の主張と対立するシュプレヒコールを集会やデモで発することは、テロ行為と見なされる可能性があるのである。

その先に、どういう社会がまっているのか。すでにジャーナリストの堤未果は、4月の週刊現代に次のような記事を寄稿し、自身のブログにも掲載している。その中で、「テロとの闘い」を旗印にした米国愛国者法が施行されたアメリカを参考にしながら、この法律の危険性を警告している。

先週の週刊現代連載記事です。
昨夜のJーWAVE JAM THE WORLD でもインタビューコーナーで取り上げました。
この法律が通ったら、ブログやツイッターでの情報発信、取材の自由など様々な規制がかかるでしょう。
アメリカでも、大手マスコミが出さない情報を発信する独立ジャーナリストは真っ先にターゲットにされました。そして「原発情報」はまず間違いなく「軍事機密」のカテゴリーでしょう。

「アメリカ発<平成の治安維持法>がやってくる!」
ジャーナリスト 堤 未果

3月31日、安倍総理は今秋国会での「秘密保全法」提出を発表した。
日弁連などが警鐘を鳴らし続けるこの法案、一体どれだけの国民がその内容を知っているだろうか? 

01年の同時多発テロ。あの直後にアメリカ議会でスピード可決した「愛国者法」がもたらしたものを、今ほど検証すべき時はないだろう。 

あのとき、恐怖で思考停止状態の国民に向かって、ブッシュ元大統領はこう力説した。
「今後、この国の最優先事項は治安と国会機密漏えい防止だ。テロリスト予備軍を見つけ出すために、政府は責任を持って全米を隅々まで監視する」

かくして政府は大統領の言葉を忠実に実行し、国内で交わされる全通信に対し、当局による盗聴が開始された。それまで政府機関ごとに分散されていた国民の個人情報はまたたく間に一元化され、約5億6千万件のデーターベースを50の政府機関が共有。通信業者や金融機関は顧客情報や通信内容を、図書館や書店は貸し出し記録や顧客の購買歴を、医師達は患者のカルテを、政府の要請で提出することが義務づけられた。

デンバー在住の新聞記者サンドラ・フィッシュはこの動きをこう語る。
「米国世論は、それまで政府による個人情報一元化に反対でした。憲法上の言論の自由を侵害する、情報統制につながりかねないからです。でもあのときはテロリストから治安や国家機密を守るほうが優先された。愛国者法もほとんどの国民が知らぬ間に通過していました」

だが間もなくしてその“標的”は、一般市民になってゆく。

ペンシルバニア州ピッツバーグで開催されたG20首脳会議のデモに参加したマシュー・ロペスは、武器を持った大勢の警察によって、あっという間に包囲された経験を語る。
「彼らは明らかに僕達を待っていた。4千人の警察と、沿岸警備隊ら2千5百人が、事前に許可を取ったデモ参加者に催涙弾や音響手りゅう弾を使用し、200人を逮捕したのです」
理由は「公共の秩序を乱した罪」。
その後、ACLU(米国自由市民連合)により、警察のテロ容疑者リストに「反増税」「違憲政策反対」運動等に参加する学生たちをはじめ、30以上の市民団体名が載っていたことが暴露されている。

政府による「国家機密」の定義は、報道の自由にも大きく影響を与えた。
愛国者法の通過以降、米国内のジャーナリスト逮捕者数は過去最大となり、オバマ政権下では七万以上のブログが政府によって閉鎖されている。

為政者にとってファシズムは効率がいい。ジャーナリストの発言が制限され国民が委縮する中、政府は通常なら世論の反発を受ける規制緩和や企業寄り政策を、次々に進めていった。

ブッシュ政権下に時限立法として成立した「愛国者法」は、06年にオバマ大統領が恒久化。
その後も「機密」の解釈は、年々拡大を続けている。

日本の「秘密保全法」も、日米軍一体化を進めたい米国からの〈機密情報保護立法化〉要請が発端だ。その後、07年に締結した日米軍事情報包括保護協定を受け、米国から改めて軍事秘密保護法の早期整備要求がきた。 だが米国の例を見る限り、軍事機密漏えい防止と情報統制の線引きは慎重に議論されるべきだろう。なし崩しに導入すれば〈愛国者法〉と同様、監視社会化が加速するリスクがある。

震災直後、テレビ報道に違和感を感じた人々は、必死にネットなどから情報収集した。
だがもし原発や放射能関連の情報が国民の不安をあおり、公共の安全や秩序を乱すとして〈機密〉扱いにされれば、情報の入手行為自体が処罰対象になるだろう。 

公務員や研究者・技術者や労働者などが〈機密〉を知らせれば懲役十年の刑、取材した記者も処罰対象になる。国民は「適正評価制度」により「機密」を扱える国民と扱わせない国民に二分されるのだ。

行き過ぎた監視と情報隠ぺいには私達も又苦い過去を持ち、国民が情報に対する主権を手放す事の意味を知っている。歴史を振り返れば〈言論の自由〉はいつも、それが最も必要な時に抑えこまれてきたからだ。

(週刊現代:4月14日連載「ジャーナリストの目」掲載記事)
http://blogs.yahoo.co.jp/bunbaba530/67754267.html

ここで、特に重要なのは、このくだりである。

ペンシルバニア州ピッツバーグで開催されたG20首脳会議のデモに参加したマシュー・ロペスは、武器を持った大勢の警察によって、あっという間に包囲された経験を語る。
「彼らは明らかに僕達を待っていた。4千人の警察と、沿岸警備隊ら2千5百人が、事前に許可を取ったデモ参加者に催涙弾や音響手りゅう弾を使用し、200人を逮捕したのです」
理由は「公共の秩序を乱した罪」。
その後、ACLU(米国自由市民連合)により、警察のテロ容疑者リストに「反増税」「違憲政策反対」運動等に参加する学生たちをはじめ、30以上の市民団体名が載っていたことが暴露されている。

政府による「国家機密」の定義は、報道の自由にも大きく影響を与えた。
愛国者法の通過以降、米国内のジャーナリスト逮捕者数は過去最大となり、オバマ政権下では七万以上のブログが政府によって閉鎖されている。

つまり、政府の政策に反対する主張を行う人や団体は「テロ容疑者」に指定され、徹底的に弾圧され、多くのジャーナリストが逮捕され、数多くのブログも閉鎖させられてしまうというのがアメリカの現状なのである。石破の発言は、まさに、その危険性を明らかにしているといえよう。

すでに、アメリカでも、そのような現状を見直しすべきという声が出ている。それを紹介しているのが、The New Classicというウェブマガジンである。

国者法から12年、アメリカは新しい時代に突入した

シャットダウンに陥った一連の問題分裂したアメリカが1つになるには、NSAへの抗議活動によってかもしれない。26日、ワシントンに集まった米国政府によるオンライン監視プログラムへの抗議者の中には、リベラルなプライバシー擁護派から保守的なティーパーティー運動のメンバーまでが参加したという。この抗議活動には、数百人が集まったと言われているが、メルケル首相への衝撃的なスパイ行為が明らかになったことで、この動きは世界中に広がっていくと思われる。

愛国者法から12年
彼らが集まった日は、2001年に「愛国者法」が成立した日と同じ10月26日だった。9.11の直後にスピード可決した法案が、12年が経過したアメリカ社会に問いかけるものは大きい。

この愛国者法は、テロリストの攻撃に対応するために政府などがアメリカ国内における情報の収集に際して生じる規制を緩和するものだ。国内における外国人に対しての情報収集の制限を緩和したりすること以外にも、電話やEメール、医療情報、金融情報などへの調査権限を拡大するとともに、「テロリズム」の定義が拡大したことで、司法当局の拡大された権限が行使される場面の増加を招いている。

テロと炭疽菌事件によって混乱していたアメリカ社会においてあっという間に可決された法案は、2011年にオバマ大統領が、「愛国者法日没条項延長法(PATRIOT Sunsets Extension Act of 2011)」に署名したことでその中心的な条項は4年間延長されたのだ。

ビック・ブラザーを引き抜け
「愛国者法」に代表されるように、アメリカ社会の安全と引き換えに市民の監視を強める姿勢をジョージ・オーウェルの名作に準えるむきもある。デモには、「ビック・ブラザーを引き抜け(Unplug Big Brother)」という言葉も見えたが、これは小説『1984年』に登場する架空の人物だ。

作中の全体主義国家「オセアニア」に君臨する独裁者であるビック・ブラザーは、テレスクリーンをはじめとする手段によって、住民を完全なる監視下に置いていた。冷戦下の英米で“反共主義のバイブル”として爆発的な人気を誇った著作は、現在でも広く知られている。

日本とも無関係ではない
“共産主義と闘い”、そして“自由を具現化してきた”アメリカ政府をビック・ブラザーとなぞらえる動きは、皮肉なものだ。しかし、「愛国者法」の成立から10年以上が経過して、突如として「戦後最大の外交上の亀裂」に直面した政府にとっては、リアリティのある批判になりつつある。

彼らが今後大きな議論に巻き込まれ、そして新たな社会へと突入することは確実だろう。そのことは、アメリカをベンチマークとしながら、日本版NSCや秘密保護法の構想が現実のものとなっている日本にとっても決して無関係のことではないだろう。
http://newclassic.jp/archives/2476

このように、アメリカで批判にさらされているような制度を、「安全保障」という名目で導入しようとしているのが、今回の特定秘密保護法案といえるだろう。そのことを、石破発言は暴露してしまったのである。

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