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Posts Tagged ‘避難区域再編’

2013年3月25日、全域が立ち入りが制限される警戒区域のもとにあった富岡町は、避難指示区域を再編し、避難指示解除準備区域と居住制限区域には昼間の立ち入りが認められるようになった。

しかしながら、この措置は問題がないとはいえない。そもそも、国が決めた基準では、被曝線量年間20mSv以下の地域を避難指示解除準備区域、20〜50mSvの地域を居住制限区域、50mSvを超える地域を帰還困難区域としている。国としては、将来的には被曝線量年間1mSvをめざして除染を進めるとはしているが、20mSv以下の地域では、水道などの生活上必要なインフラが整備されれば、避難指示を解除し、居住を認めるということになっている。そして、居住制限区域も除染などの進行によって放射線量が20mSv以下になれば避難指示解除準備区域に移すことにしている。

つまりは、被曝線量年間20mSvを居住可能の線引きとしているのである。一般公衆の場合は被曝線量年1mSv(毎時0.23μSv)未満とされ、これが除染基準となっているが、その20倍の被曝線量が福島第一原発地域の基準となっているのである。

そして、もう一つの問題がある。いろいろ検討してみると、被曝線量年間20〜50mSvになる居住制限区域も、避難指示解除区域と同様に、昼間の立ち入りが認められているということである。ある意味で、無用な被曝を惹起しかねないということである。

それでは、現実に、富岡町の区域再編をみていこう。3月に富岡町が出した、「富岡町への立入りのしおり」によると、区域再編は次のようなものになっている。

富岡町における避難指示区域の見直し地図

富岡町における避難指示区域の見直し地図


http://www.tomioka-town.jp/living/cat4/2013/03/000807.html

富岡町では、ほとんど国の基準に忠実に区画の線引きをしたことがわかる。立ち入りが制限される帰還困難区域は、北東部の一部だけである。その他の50mSv未満の地域は、昼間は原則的に立ち入ることができる。国道6号線上における帰還困難区域との境界にある富岡消防署前においては検問所が設置され、国道6号線から帰還困難区域に通ずる道路は封鎖されているが、その他の検問所はないのである。

そして、さらに問題なのは、富岡町の放射線量がかなり高いということである。上の図でもわかるが、避難指示解除準備区域においても、その多くが年間10〜20mSvという放射線量を示している。年間1mSv未満のところはどこにもなく、低線量地帯でも多くは5mSv以上なのである。

それは、現在の放射線量モニタリング調査の結果からもわかる。

町内空間線量(3月分)

町内空間線量(3月分)


http://www.tomioka-town.jp/living/cat25/2013/04/000852.html

一番低いところが毛萱集会所の毎時0.63μSvであるが、それすら、一般公衆の基準の2倍以上である。1μSvを下回るところは少ない。高いところは14μSvをこえている。なお、この14μSvをこす線量を示した太平洋ブリーディングというところは、小良が浜という富岡町の北東部にあり、帰還困難区域に属しているようである。

このように、富岡町も推奨しているように、防護装備がないと立ち入ることに懸念をおぼえる地域なのである。しかし、この地域への立ち入りは可能なのである。

なお、4月1日に区画再編を実施した浪江町も基準自体は同じである。ただ、避難指示解除準備区域に指定された浪江町の海側は富岡町よりも概して低く、年間1〜5mSvの場所が多い。そして、浪江町では、町外の人が浪江町内に立ち入る場合には「臨時浪江町通行証」を発行し、ある程度制限している。また、町内の検問所も7ヵ所と多い。

この区域再編について、富岡町では、本格的除染を進め、インフラなどの復旧をはかるためとしている。ある程度、自由に立ち入ることができないと、除染やインフラ復旧がすすまないというのである。

富岡町の区域の見直しにあたって

富岡町の区域の見直しにあたって


(「富岡町への立入りのしおり」より)

しかし、多くの富岡町民は、元の居住地に戻ることが難しいと感じている。昨年末に実施した、富岡町住民意向調査調査結果(速報版) では、多くの住民が富岡町に戻らないと答えている。

富岡町住民意向調査調査結果(速報版)より

富岡町住民意向調査調査結果(速報版)より


http://www.tomioka-town.jp/living/cat16/2013/02/000731.html

上記のように、現時点で、戻りたいと考えている人は約15%。判断がつかない人は約43%であるが、戻らないことに決めている人が約40%で、戻りたいと考えている人の2倍以上となる。若い人びとほど戻らないと決めている人たちが多い。特に30代が多いが、これは子育て世代のためなのだろう。世代が高くなるたびに戻りたい人たちが増えてくるが、それでも、戻りたいと考える比率が大きくなるのは70代以上のみ。この推移でいくと、富岡町は老人のみの町になってしまうだろう。

そして、戻らない理由として、多くの人が放射線や福島第一原発事故への不安をあげている。

富岡町住民意向調査調査結果(速報版) より

富岡町住民意向調査調査結果(速報版) より


http://www.tomioka-town.jp/living/cat16/2013/02/000731.html

戻らない理由として80%の人が放射線量への不安をあげ、70%が福島第一原発への不安をあげている。その他、家荒廃や、商業施設や医療施設の不備を多くあげている。なお、戻るかいなかの判断基準については約82%がインフラ整備をあげているが、放射線への不安については約77%が判断基準としている。仕事がないから戻らないというのは、思ったよりも少なく、36%にすぎない。たぶんに、福島第一原発、福島第二原発、広野火発などの東電の施設における雇用を念頭に置いているといえる。確かに、富岡町に戻ることが出来たら、東電での雇用が期待できるだろう。このような形での雇用確保は、この地域における原発再稼働への期待の一因となっていると思われる。しかし、放射線や福島第一原発事故への不安は、多くの住民に富岡町に戻ること自体を断念させているのである。

昨年9月に出された富岡町災害復興計画(第一次)でも、早くても町内への住民の帰還が開始されるのは、2017年度からとしている。しかも、その時点での生活拠点は比較的線量が低い富岡町の南東部に限定されている。そして、町内への帰還を望まない町民の生活拠点をいわき市と郡山市に設けるとしている。防護設備がないと立入り自体に懸念をおぼえるような、年間20mSvの被曝線量下の生活は、富岡町の多くの住民は望んでいないといえよう。

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