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福島第一原発の汚染水問題が議論されていた8月末、福島第一原発・第二原発が所在している立地自治体では、もう一つ大きな動きがあった。まずは、河北新報の次のネット配信記事(2013年8月30日付)をみてほしい。

福島第1・第2の立地4町 全基廃炉方針 東電に要求へ
 福島第1、第2の両原発が立地する福島県双葉、大熊、富岡、楢葉4町は29日、両原発の全10基の廃炉を国と東京電力に求める方針を確認した。全基廃炉は県と県議会が求めているが、立地町の要求は初めて。
 同県広野町であった4町の原発所在町協議会で各町長、町議会議長が確認した。各町議会に議論を促し、同意を取り付ける。
 東電の相沢善吾副社長は4町の意向を受け、「重く受け止める。原発の安定化を最優先に取り組み、エネルギー施策を見極めて国の判断に従う」と話した。
 廃炉が決まっているのは、事故を起こした第1原発の1~4号機。第1原発の5、6号機、第2原発の1~4号機の計6基は方針が定まっていない。
 協議会は第1原発の放射能汚染水漏れの再発防止を求める要望書を相沢副社長に渡した。

2013年08月30日金曜日
http://jyoho.kahoku.co.jp/member/backnum/news/2013/08/20130830t61038.htm

この記事の中で述べているように、事故を起こした福島第一原発1〜4号機の廃炉はすでに決定されている。しかし、福島第一原発5〜6号機、福島第二原発1〜4号機は、事故が起きたわけではなく、再稼働可能である。この再稼働可能な原発も含めて、原発が所在している双葉、大熊、富岡、楢葉の4町の原発所在町協議会は、福島にあるすべての原発の廃炉を東電に求めることにしたのである。

なお、この記事にもあるように、すでに福島県知事と福島県議会は、県内すべての原発の廃炉を要求していた。本ブログの「福島県知事による県内全原発廃炉を求める方針の発表ー東日本大震災の歴史的位置」(2011年11月30日)によると、紆余曲折をへながら、福島第一原発・第二原発の廃炉を求める請願を採択する形で、2011年10月20日に福島県議会は県内すべての原発の廃炉要求に同意する旨の意志表示を行った。この廃炉請願採択を受けて、11月30日に県内すべての原発廃炉を求めていくことを正式に表明している。

その点からいえば、これらの原発所在地において県内原発すべての廃炉を求めるというのは、かなり遅かった印象がある。しかし、それも無理からぬところがあるといえる。福島県全体とは相違して、原発立地自治体においては、雇用、購買力、補助金、税収などさまざまな面で原発への依存度は大きい。それゆえ、福島第二原発など再稼働可能な原発を維持すべきという声は、福島県議会以上に大きかったといえる。例えば、楢葉町長であった草野孝は、『SAPIO』(2011年8月3日号)で次のように語っていた。

双葉郡には、もう第二しかないんだ……。
 正確に放射線量を測り、住民が帰れるところから復興しないと、双葉郡はつぶれてしまう。第二が動けば、5000人からの雇用が出てくる。そうすれば、大熊町(第一原発の1~4号機が立地)の支援だってできる。
(本ブログ「「遠くにいて”脱原発”なんて言っている人、おかしいと思う」と語った楢葉町長(当時)草野孝とその蹉跌ー東日本大震災の歴史的位置」、2012年5月22日より転載)

福島第二原発という再稼働可能な原発が所在し、また、比較的放射線量が低い楢葉町と他の三町とは温度差はあるだろう。しかし、いずれにせよ、福島第二原発などの再稼働によって地域経済を存立していこうという考えが、福島第一原発事故により広範囲に放射性物質に汚染され、ほぼ全域から避難することを余儀なくされていた原発立地自治体にあったことは確かである。

そのような声があった原発立地自治体においても、再稼働可能な原発も含めた全ての原発の廃炉を要求することになったということは画期的なことである。しかし、これは、他方で、福島第一原発事故で避難を余儀なくされ、復興もままならず、多くの避難者が帰郷することはできないと意識せざるを得なくなった苦い経験によるものでもあろう。そして、また、この当時さかんに議論されていた汚染水問題が県内全原発廃炉要求を後押しすることになったとも考えられる。

ただ、河北新報の記事にあるように、この要求はいまだ、町長・町議会議長たちだけのものであり、各町議会で同意をとるとされている。このことに関連しているとみられる富岡町議会の状況が9月21日の福島民報ネット配信記事にて報道されている。

第二原発廃炉議論本格化 富岡町議会 一部に慎重論、審議継続
 富岡町議会は20日、町内に立地する東京電力福島第二原発の廃炉に関する議論を本格化させた。一部町議から「廃炉の判断を現時点で行うのは時期尚早」という意見が出て、継続的に審議することを決めた。
 20日に郡山市で開かれた町議会の原発等に関する特別委員会で塚野芳美町議会議長が「廃炉に関し町議会の考え方をまとめたい」と提案した。
 町議からは「原発に代わる再生可能エネルギーの担保がない」「原発に代わる雇用の場を確保しなければならない」など現時点で廃炉の姿勢を示すことに慎重な意見が出た。
 一方で「県内原発全基廃炉は当然」「廃炉と雇用の問題は別に議論すべきだ」など立地町として廃炉の姿勢を明確にすべきという意見があった。
 特別委員会の渡辺英博委員長は「重要な問題。今後も議論を続けて方向性を定めたい」と述べた。
 富岡の他、楢葉、大熊、双葉の4町でつくる県原子力発電所所在町協議会は8月、国と東電に対し、県内原発の全基廃炉を求める認識で一致している。

( 2013/09/21 08:59 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/2013092111011

ここでは富岡町議会のことしか報道されていないが、やはり「全県内原発廃炉」という方針には抵抗のある議員がいることがわかる。つまり、町議会レベルでは、いまだ流動的なのである。

他方、福島原発立地自治体における県内原発全機廃炉の声はそれなりに政府においても考慮せざるを得ない課題となった。9月30日、茂木敏充経済産業相は、東京電力福島第1原発の汚染水問題を巡る衆院経済産業委員会の閉会中審査において、福島第二原発廃炉を考慮せざるをえないと述べた。そのことを伝えている毎日新聞のネット配信記事をあげておこう。

福島第2原発:廃炉検討の考え示す 茂木経産相
毎日新聞 2013年09月30日 20時10分(最終更新 09月30日 22時40分)

 茂木敏充経済産業相は30日、東京電力福島第1原発の汚染水問題を巡る衆院経済産業委員会の閉会中審査で、福島第2原発について「福島県の皆さんの心情を考えると、現状で他の原発と同列に扱うことはできない」と述べ、廃炉を検討すべきだとの考えを示した。福島県は県内全原発の廃炉を求めており、県民感情に配慮した形だ。

 茂木氏は同時に、廃炉にするかどうかの判断について「今後のエネルギー政策全体の検討、新規制基準への対応、地元のさまざまな意見も総合的に勘案して、事業者が判断すべきものだ」と述べ、最終的には東電が判断するとの立場を強調した。

 福島県内には、福島第1、第2で計10基の原発があり、福島第1原発1〜4号機は既に廃炉が決定。同原発5、6号機については、安倍晋三首相が東電に廃炉を要請しており、これを受けて東電が年内に判断する。

 閉会中審査は27日に続いて2日目の開催。茂木氏のほか、原子力規制委員会の田中俊一委員長らが参考人として出席した。

 福島第2原発1〜4号機を全て廃炉にした場合、東電の損失額は計約2700億円。会計制度の見直しで、一度に発生する損失は1000億円程度まで減る見込みだが、福島第1原発5、6号機の廃炉でも数百億円の損失が一度に出る見通し。同時に福島第2の廃炉も行うと決算に与える影響は大きい。

第2原発廃炉については東電内でも「再稼働に必要な地元同意が見込めない以上、いずれ判断をする時期が来る」との意見が多いが、第1原発5、6号機の廃炉は1〜4号機の廃炉作業や汚染水対策に集中する目的があるのに対し、第2の廃炉は「仕事が増えるだけ。将来はともかく、今やれる話ではない」(東電幹部)との声もある。【笈田直樹、浜中慎哉】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20131001k0000m010035000c.html

安倍政権は、原子力規制委員会が安全と判断した原発は再稼働していくというものであった。しかし、茂木経産相としては、「福島県の皆さんの心情を考えると、現状で他の原発と同列に扱うことはできない」として、再稼働可能な福島第二原発も含めて福島県内の全原発の廃炉を考慮せざるをえないと言わざるを得なくなったのである。

もちろん、今後の推移については、まだまだ紆余曲折があるだろう。地元ではいまだに原発による雇用などに依存しようとする声は小さくないと思われる。また、安倍政権は全体として原発再稼働を求めており、福島第二原発も再稼働対象に含めようとすることも今後あるかもしれない。といいつつ、やはり、地元自治体すらもすべての原発の廃炉を求めるようになったということの意義は大きい。やはり「時計の針は元には戻せない」のである。

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さて、福島第一原発汚染水問題についての政府の方針が9月3日に発表された。まず、次の毎日新聞がネット配信した記事をみておこう。

福島第1原発:政府の汚染水対策 柱は「アルプス」増設
毎日新聞 2013年09月03日 19時42分(最終更新 09月03日 20時29分)

 政府が3日決めた東京電力福島第1原発の汚染水対策の柱は、地下水が原子炉建屋に流入するのを防ぐ「凍土遮水壁」の建設と、汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS(アルプス)」の増設・改良だ。両事業に計470億円の国費を投入し、汚染水問題収拾へ「国が前面に出る」(安倍晋三首相)姿勢をアピールする。

 事業費の内訳は遮水壁320億円、除去装置150億円。今年度予算の予備費(総額約3500億円)から遮水壁に140億円、除去装置に70億円を充て、事業を前倒しで進める。

 組織体制も強化。経済産業省や原子力規制庁に加え、国土交通省や農林水産省も入る関係閣僚会議を設け、汚染水を増幅している地下水対策などに政府一丸で取り組む。また、福島第1原発近くに現地事務所を設けて国の担当者が常駐、東電や地元との連携を強める。風評被害防止を狙いに海洋での放射性物質の監視を強めるほか、在外公館を通じた国際広報体制も充実させる。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130904k0000m010040000c.html

結局、国が前面に出るといっても、「凍土遮水壁」建設と多核種除去装置(ALPS)の増設・改良に国費を投じるというだけだ。問題の汚染水貯蔵タンクの改修については、いまだ東電まかせだ。9月4日のロイターのインタビューにおいて、茂木経産相は、次のように語っている。

(前略)
ただ、8月下旬に汚染水貯蔵タンクから約300トンの高濃度汚染水の漏えいが発覚するなど、事態は予断を許さない。タンク問題について茂木経産相は「(東電の)管理態勢の問題。パトロールの強化、漏えいの検出装置の設置など5つの強化策を指示した。東電もより緊張感をもって仕事に当たってくれると思っている」などと述べ、東電側の改善を見守る考えを示した。

その上で、汚染水問題を含む福島第1の廃炉作業における東電と政府の役割分担について「国が前面に出て、廃炉の問題や汚染水問題も(対応を)加速化させていきたいと思っているが、日々のオペレーションは原発を所有している東電が責任を持つことになる」と語り、作業の主体は一義的には東電だという政府としての見解をあらためて強調した。

<「廃炉庁」は否定>

未曽有(みぞう)の原発事故から2年半が経過し、失態を重ねてきた東電に対する国内外の不信感は根深い。廃炉の作業自体を国が全面的に引き受けるべきと指摘する声も少なくない。

ただ茂木経産相は、受け皿となる「廃炉庁」のような新しい組織を作る考えについては否定した。「エネルギー政策をどうするのか、大きな視野で(検討を)やらないといけない。1つの分野に限った新しい組織を作ることで作業が加速化していくかというと、必ずしもそうではないなと思っている」と語った。

(インタビュアー:ケビン・クロリキー)
http://jp.reuters.com/article/jp_energy/idJPTYE98307920130905?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0

結局、長期的にも、東電に日々のオペレーションをまかすということであり、東電の責任ー株主や金融機関の責任をただす姿勢はない。この国費投入もまた、破たん企業東電に対する法外な支援なのである。そして、汚染水タンクの設置・管理すらできない東電に日々のオペレーションをまかすという体制こそ、一番の問題である。

さて、政府が国費を投じて行うという凍土遮水壁の設置と多核種除去装置(ALPS)の改良・増設についてみておこう。凍土遮水壁とは、原子炉建屋への地下水の流入や、そこからの汚染地下水の流出を防ぐために、凍土による遮水壁を建屋周辺の地下に設置するというものである。この凍土遮水壁がそもそも実現可能なものか、そして実現されたとしても十分機能をはたすのか、いろいろと疑問がある。また、とりあえず、これらの疑問はおいておくとしても、その設置は年単位でかかり、急場の汚染水対策には寄与できない。ただ、今は、可能と思われることを何でもするということは必要だろうとは考えられるだろう。

他方、多核種除去装置(ALPS)の改良・増設であるが、これは、大きな問題をはらんでいる。多核種除去装置(ALPS)は、従来の除去装置がセシウムだけしか汚染水から除去できないものだったのに対し、ストロンチウムその他、多くの放射性物質を放出限界以下まで除去することができるというものである。この装置は東芝製で、すでに福島原発に設置されていたが、これすらも汚染水もれを起こして、現在は稼働できないものとなっている。多核種除去装置(ALPS)の改良・増設とは、現在ある装置の不備を修繕して、さらに、増設して、どんどん東電に汚染水処理を進めさせようということを意味する。

そして、処理済みの汚染水をどうするのか。田中俊一原子力規制委員会委員長は9月2日の日本外国特派員協会における講演で次のように語っている。ここではロイターのネット配信記事を出しておく。

原子力規制委員長、低濃度汚染水の海洋放出の必要性強調
2013年 09月 2日 16:55 JST

9月2日、原子力規制委員会の田中委員長は、福島第1原発における汚染水問題が深刻化していることについて「(東電の対応は)急場しのぎで様々な抜けがあった」と指摘。

[東京 2日 ロイター] – 原子力規制委員会の田中俊一委員長は2日、日本外国特派員協会で講演し、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所における汚染水問題への対応で、放射能濃度を許容範囲以下に薄めた水を海に放出する必要性をあらためて強調した。

政府や東電よると、福島第1原発1─4号機に流入してくる地下水(推定日量1000トン)の一部が、配管や電線を通す地下の坑道にたまっている汚染源に触れ、海に日量約300トンが放出されている。また、8月19日には、汚染水を貯蔵している地上のタンクから約300トンの高濃度の汚染水が漏れていることがわかり、これが排水溝を通じて外洋に流れた可能性も否定できないとしている。

田中委員長は講演で、 汚染水の海洋への影響について「おおむね港の中で、(港湾の)外に出ると(放射性物質は)検出限界以下だ」と指摘。その上で田中氏は、「必要があれば、(放射性濃度が)基準値以下のものは海に出すことも検討しなければならないかもしれない」と述べた。

多核種除去設備(ALPS)で処理した汚染水を一定濃度に薄めて海洋に放出する必要性については、田中氏が過去の記者会見でも言及した。ただ、ALPSに通してもトリチウムは取り除けない。東電は2011年5月から今年7月までに20兆から40兆ベクレルのトリチウムが海に出たと試算している。

この数値について、田中氏は「とてつもなく大きな値に見えるが、トリチウム水としてどれくらいか計算すると最大で35グラムくらいだ」と述べ、十分に低い水準であるとの認識を示した。

一方で田中氏は、タンクからの汚染水漏れなど対応が後手に回る東電の対応について、「急場しのぎで様々な抜けがあった」と指摘。田中氏は「福島第1は今後も様々なことが起こり得る状況。リスクを予測して早めに手を打つことが大事だ」と強調した。

(浜田健太郎;編集 山川薫)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE98103M20130902

ここでは、多核種除去装置(ALPS)で処理した低濃度汚染水(もちろん、完全には取り除けない)を、海洋に放出する必要があると田中は述べた。重要なことは、この装置では、トリチウム(三重水素)は除去できないということだ。

つまり、この国費投入による多核種除去装置(ALPS)の改良・設置は、ある意味では、海洋へのトリチウム汚染水の放流につながりかねないものなのである。まさしく、技術的においても、そのような危険性をはらんでいる。このようなことがなされれば、福島県周辺の漁業者だけでなく、日本列島すべての人の脅威となろう。さらに、海洋への汚染は、広くいえば全世界の問題ともなる。オリンピック招致への影響を懸念して、国会審議もなく、このような重大な問題が決められてしまった。しかし、このことは、これではすまないだろうと考える。

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