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Posts Tagged ‘第一声’

このブログで、12月2日に福島県相馬市の相馬漁港で行った衆院選第一声で、安倍晋三首相は、福島第一原発の廃炉作業、汚染水対策、補償問題、避難指示解除問題などに触れないまま、雇用確保や中小企業対策、復興公営住宅建設、常磐道早期開通などの「福島」復興事業を提唱した。この第一声は、単に全国にむけてメッセージを発するというだけでなく、この相馬市や南相馬市・飯舘村・伊達市・福島市などが包含されている福島一区の自由民主党候補者亀岡偉民への応援演説でもあった。

とりわけ、この相馬漁港でとれた水産物を主な事例として、「風評被害」を打破して福島県産の農水産物を日本中に、いや世界中に売り広めることを安倍首相はこの第一声で強調している。重複になるが、その部分を抜き出しておこう。

昨年10月、この港にやってきて、おいしいシラスや、毛ガニや水たこやイカをごちそうになりました。本当においしい、このおいしい水産物をもっともっと多くの皆さんに食べてもらいたいな、風評被害を払拭しなきゃいけない。頑張ってまいりました。
(中略)
3月の1日に常磐道全線が皆さん、開通するんです。これを皆さん、これを皆さん、しっかりとこの東北の復興の起爆剤に活用させようではありませんか。常磐道を通って、日本中からこの地にやってきて、この漁港であのおいしいシラスやなんかを食べていただけるんではないかなと思います。試験操業についても魚種、そしてエリアを今、着実に拡大をしているところであります。
(中略)
そして、私たちは地方の良さを生かして、地方創生を進めていきたいと思います。地方創生、地方の良さ、この漁港で採れる、素晴らしい、おいしい水産物もありますし、福島県にはいろんな農産物もありますね。漢方未来米。体にもいいし、健康にもいいという付加価値の付いたお米があります。そして、またおいしい牛もあります。「あかつき」っていう桃もありますね。まだ亀岡さんからもらったことありませんが。
 今度は当選したらもらえるんではないのかな。このふうに思います。この輸出、なかなかまったく言われなき輸出規制が海外にあった。私は世界中回って、必ず首脳に直接おかしいと、私、毎日食べてんですよと言って、この輸出規制に対して撤廃、緩和をするように呼びかけてきました。シンガポールをはじめ多くの国々でやっと、撤廃緩和がスタートしまいした。今、このチャンスを生かして、福島の素晴らしい農産物を日本中に、水産物を世界中に、どんどん送り出していこうではありませんか。
http://thepage.jp/detail/20141202-00000013-wordleaf?page=1

この第一声の後、相馬双葉漁協の女性から安倍首相に塩焼きしたマガレイ一箱が贈呈された。そのメッセージで、相馬双葉漁協の女性は、普段であれば、「おとうさんたち」のとってきた魚を選別して市場に売っていたのだが、それができないのは残念であるとまず述べた。そして、「おとうさんたち」は「試験操業」で前向きに過ごしているが、「本操業」になって魚が売れるかどうかは心配でならないとして、安倍首相には放射能対策に対する取り組みをしっかりやってもらって、福島でとれる魚が安全・安心で食べられることをPRしてほしいとし、相馬で穫れたマガレイを用意したので、ぜひ食べて欲しいと発言した。

この「塩焼きカレイ」一箱(数匹は入っていたが)を受け取った安倍首相は、この塩焼きカレイの箱を観衆に披露した後、カレイの箱を片手に抱えつつ、カレイ1匹の尾を片手でつかみ、尾に近い側を口で直に齧る(たぶん背鰭か臀鰭も含んで)というパフォーマンスを行ったのである。この演説やパフォーマンスの一部始終は自由民主党のサイトがあげている次の動画で見ることができる。なお、カレイを手づかみで食べるというパフォーマンスは、この動画の終わりのほうである。

安倍晋三は、自身のツイッターで、次のような感想をもらしている。

さて、このパフォーマンスは、いろんな意味を含んでいる。私は自著『戦後史のなかの福島原発』(大月書店、2014年)において、原発建設の過程で原発のリスクと原発建設にともなう開発利益や交付金などのリターンがバーターされていたと論じた。このパフォーマンスも、この論理のなかで理解すべきであろう。福島第一原発事故がもたらしたリスクーここでは福島県産の水産物への「風評被害」という形で現出されているーを、首相自らが福島県の水産物の「安全・安心」をPRする広告を行うーこれを「放射能対策」を講じるということにされているのだがーという「リターン」とバーターすることがはかられているのである。そして、このことは、その前段の演説の中で「私は世界中回って、必ず首脳に直接おかしいと、私、毎日食べてんですよと言って、この輸出規制に対して撤廃、緩和をするように呼びかけてきました」と安倍首相自身が強調していたことでもあった。もちろん、福島県産の魚が売れて欲しいという要望は切実なものである。そして、その切実さを前提にこのパフォーマンスがなされたのである。いわそして、このようなパフォーマンスは支持基盤の強化につながると安倍陣営などは考えていたであろう。

考えてみると、これは、日本国全体の統治責任者である首相という立場であるからできることでもある。民主党の海江田万里代表がやっても意味はないし、たぶんやらない。言わば、現状の「放射能対策」は万全であり、それゆえに首相が食べて問題ないのだという意味をこめたパフォーマンスなのであろう。

とはいえ、このパフォーマンスは、福島県産の水産物を売り広めることにつながるのであろうか。汚染水対策も廃炉作業も除染も十分進展していない。これらのことは、究極的に福島県水産物への忌避感を継続させている。そして、今でもまた放射能100bq以上の魚が福島県沖でときどきとれている。もちろん、多くの水産物は「検出限界」以下であるとされている。こういう状況で確定的なことはいえないが、このようなパフォーマンスより、根拠を示して理性的に説得するほうが、まだ「風評被害」対策になりうるとも思えるのだ。そして、それは、せいぜいが「美味しい」としか言えない安倍首相(手づかみで鰭も含めて齧りついた魚が美味しいかどうかすら疑問なのだが)よりも、より理知的に説明できる専門家のほうが買い控えする消費者たちを納得させられると思う。しかし、そういう対策がとられているかどうか不明であり、安倍首相の演説を聞いていると、そういう体制をとることの必要性すら認識していないのではないかと思う。

時事通信は、安倍首相の第一声を聞いた相馬市の人びとの感想を次のように伝えている。

復興推進訴えも「上っ面」=首相演説に住民冷ややか-福島・相馬【14衆院選】

 安倍晋三首相が第一声の候補地として選んだのは、東京電力福島第1原発の汚染水問題を受け中止していた試験操業が昨年9月に再開した福島県相馬市の相馬原釜漁港。「この選挙を勝ち抜き、復興を進めていく」と訴えた。
 首相は白いコート姿で、強い寒風が吹き荒れる中、集まった支持者らを前に交通インフラの復旧や企業立地など原発事故からの復興の成果を強調。「経済が成長し、みなさんの生活が豊かになる。これがアベノミクスだ」と力説した。
 しかし、住民の反応は冷ややか。同県浪江町から南相馬市に避難し、漁業再開に向け準備している漁師高野武さん(64)は「上っ面だけきれいごとを並べている。具体的な話は何一つ出てこない」と批判した。
 相馬市で釣具店を経営する斎藤基次さん(73)も「復興の実感が湧かない中、成果だけ強調されてもアリバイ作りにしか聞こえなかった。期待外れだ」と漏らした。(2014/12/02-12:14)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201412/2014120200741

福島第一原発事故のリスクを、安倍首相が福島県産のカレイを手づかみして食べるというパフォーマンスにより安全・安心を広告するというリターンとバーターするという論理。前述してきたように、これは、福島原発建設時にもみられた構造であった。そのような論理に期待をもつ人びとが多くいる。しかし、その論理の有効性自身が、福島第一原発事故の中で問われているのである。

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さて、本日(2014年12月2日)、衆議院選挙が告示され、選挙戦が始まった。自由民主党総裁である安倍晋三首相が、衆院選第一声を発する地として選んだのは、自民党衆院選候補者亀岡偉民の選挙区である福島県相馬市の漁港であった。

この相馬市は福島第一区である。この区には、福島市、相馬市、南相馬市、伊達市、伊達郡桑折町、伊達郡国見町、伊達郡川俣町、相馬郡新地町、相馬郡飯舘村(http://senkyo.yahoo.co.jp/kouho/s/?b=07より)が属している。重要なことは、この区には、今でも帰宅困難区域や居住制限区域をかかえている飯館村、南相馬市、川俣町を包含しているということだ。飯舘村は基本的にはまだ全村避難のままである。また、福島市や伊達市も決して放射線量が低かったわけではなかった。

そのような状況を踏まえつつ、「THE PAGE」というサイトで全文起されている安倍首相の第一声をみていくことにしたい。安倍首相の第一声は、このように始められている。

安倍:皆さま、おはようございます。安倍晋三でございます。今日は寒い中、風の強い中、亀岡偉民頑張れというお気持ちでこの相馬港にお集まりをいただいたこと、厚く御礼を申し上げます。いよいよ選挙戦がスタートしました。一昨年の総選挙、やはり選挙戦の第一声、福島市から、福島県からスタートしました。そして、今年はこの相馬市からスタートさせていただきます。昨年10月、この港にやってきて、おいしいシラスや、毛ガニや水たこやイカをごちそうになりました。本当においしい、このおいしい水産物をもっともっと多くの皆さんに食べてもらいたいな、風評被害を払拭しなきゃいけない。頑張ってまいりました。今、ごあいさつをさせていただいた亀岡偉民さん、本当に頑張ってきてくれたと思います。ちょうどあの大震災が発災したとき、彼らは政権を失っていた。あの大災害、なんでこうなるんだ、皆さんも天を仰いだことだと思います。亀岡さんにとっても、なんで自分が議席を持っていないときに、こんな思いだったと思います。
http://thepage.jp/detail/20141202-00000013-wordleaf?page=1

最初から、脱力してしまいそうな話し振りである。確かに、相馬漁港は福島県の代表的な漁港の一つで、いわゆる「風評被害」が深刻であることは事実であろう。しかし、「昨年10月、この港にやってきて、おいしいシラスや、毛ガニや水たこやイカをごちそうになりました。本当においしい、このおいしい水産物をもっともっと多くの皆さんに食べてもらいたいな、風評被害を払拭しなきゃいけない」ということで済むようなことなのだろうか。

その後、亀岡偉民が津波被災者の捜索活動を3.11直後行い、政権復帰以後は復興庁の政務官としてがんばって、相馬港の施設も沖の防波堤以外完成したと述べている。そして、復興庁も組織改革して、復興総局を福島に設置して窓口を一本化し東京に行かなくても交渉できるようにしたとし、さらに復興予算も19兆円から25兆円に増やしたと主張した。加えて、現状の低米価にも対策をとると述べた。

特に強調しているのが、雇用創出・中小企業保護と復興公営住宅建設である。次のように安倍首相は演説している。

また、われわれはやっぱり仕事を創らなければいけない。この考え方の下に、約400の工場の新増設を、財政支援を行って行いました。そして、5,000名の新たな雇用を生み出すことが福島県でできたのです。そして、グループ補助金を使って、3,000の中小・小規模事業者の皆さんを応援をしてきました。やっとこのように、この地域にも仕事ができてきました。また住まいについても400戸の災害公営住宅、今年度中に全て完成することになります。私たちが政権を取った段階では、復興公営住宅、計画すら実はまったくなかったわけであります。また、この相馬市以外ではありますが、原発被災者の方々、大変つらい思いをされています。ご選考については、用地についてはすでに空きをちゃんと付けて、選定が終わりました。ちょっと時間がかかるんですが、28年度中に全戸入居できるようにしていくことをお約束を申し上げる次第であります。

ここで、ようやく「原発被災者」について言及されている。しかし、安倍首相は、わざわざ「相馬市以外」としている。そもそも、彼が語る「復興」の中心に原発被災者はいないのである。そして、原発被災者対策については「住宅建設」だけなのである。彼の念頭には、福島第一原発廃炉処理も、除染事業も、避難ー帰還問題も、補償問題もないのである。そして、非常に象徴的なことだが、かなり長い安倍首相のこの演説の中で、「原発」と言っている個所は、ここしかないのである。

さらに、安倍首相は、このように話を続ける。

住まいにおいても、仕事なりわいにおいても、間違いなく進んでいます。ただ、まだまだ12万人の方々がこの福島県では不便な生活をしておられる。道半ばではありますが、私たちはしっかりと、しっかりと復興を加速化させていくことをお誓い申し上げる次第であります。復興を加速化させていくために、例えば常磐道、私たちは来年のゴールデンウイーク、この常磐道を使ってたくさんの観光客がこの地にやってくるように、ゴールデンウイークまでに全線を開通する、そうお約束をしました。さらに私はハッパを掛けました。そして、2カ月間、思い切ってさらに前倒しをします。3月の1日に常磐道全線が皆さん、開通するんです。これを皆さん、これを皆さん、しっかりとこの東北の復興の起爆剤に活用させようではありませんか。常磐道を通って、日本中からこの地にやってきて、この漁港であのおいしいシラスやなんかを食べていただけるんではないかなと思います。試験操業についても魚種、そしてエリアを今、着実に拡大をしているところであります。

安倍首相によると、常磐道が開通すれば、日本中の人が相馬漁港のおいしい魚を食べにくるというのである。

この後、安倍首相は、「アベノミクス」や「消費増税」についての自分の政策の正当性を主張している。その部分については割愛することにする。しかし、再度、安倍は、福島について、次のように言及した。

そして、私たちは地方の良さを生かして、地方創生を進めていきたいと思います。地方創生、地方の良さ、この漁港で採れる、素晴らしい、おいしい水産物もありますし、福島県にはいろんな農産物もありますね。漢方未来米。体にもいいし、健康にもいいという付加価値の付いたお米があります。そして、またおいしい牛もあります。「あかつき」っていう桃もありますね。まだ亀岡さんからもらったことありませんが。

 今度は当選したらもらえるんではないのかな。このふうに思います。この輸出、なかなかまったく言われなき輸出規制が海外にあった。私は世界中回って、必ず首脳に直接おかしいと、私、毎日食べてんですよと言って、この輸出規制に対して撤廃、緩和をするように呼びかけてきました。シンガポールをはじめ多くの国々でやっと、撤廃緩和がスタートしまいした。今、このチャンスを生かして、福島の素晴らしい農産物を日本中に、水産物を世界中に、どんどん送り出していこうではありませんか。

福島の、おいしく、物によっては「体にもいいし、健康にもいい」農水産物を、日本中に、世界中に送り出していくべきだと、安倍首相は主張するのである。

要するに、安倍首相は、復興予算によって港を復興し、公営住宅を建設し、常磐道などのインフラ整備をし、雇用を確保し、中小企業対策をして、福島の「おいしく」「体にもよい」農水産物を日本中に世界中に売り出し、観光開発を行うことによって「復興を進めていく」と言いたいのであろう。

確かに、3.11以前ならば、こういうことが「地方振興」のメニューたりえたであろう。それが、真に「地方振興」たりえるかは別として。しかし、福島第一原発事故によって多くの人びとが避難を余儀なくされ、福島第一原発の廃炉処理も除染も進んでいない現状に対し、こういう「地方振興」はどういう意味があるのだろうか。住むこともできず、もし住んだとしても健康上の懸念をもたざるをえない「地方」の振興はどうすればよいのだろうか。そのような地で生産される農水産物を売り広めるということはどういう意味をもつのか。その地を「観光開発」するとはどういうことになるのだろうか。

原発事故をなかったことにはできないし、それを見据えなくては、本当の意味で復興などできはしない。しかしながら、日本社会の多くの人びとは、福島第一原発事故から目を背け、従来の認識枠組で今後もやっていけると思い込もうとしているようにみえる。そして、安倍晋三首相は、よくも悪くも、そういう人びとの代表なのである。

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