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Posts Tagged ‘町長辞職’

2013年1月23日、福島第一原発の地元である、福島県双葉郡双葉町の井戸川克隆町長が辞職した。このブログでもこれまでの経緯を述べているが、ここでは、背景事情も詳しく報道している、福島民報2013年1月24日付ネット記事をあげておく。

井戸川双葉町長が辞職届 「信念曲げて続けられない」 3月末までに町長選
 双葉町の井戸川克隆町長(66)は23日、埼玉県加須市の町埼玉支所で臨時庁議を開き、2期目の任期途中での辞職を表明した。町議会事務局に辞職届を提出した。福島民報社の取材に対し「放射線量などの問題で信念を曲げてまで町長を続けるつもりはない」と理由を述べた。地方自治法に基づき、2月12日午前零時で失職する。3月末までに町長選が行われる見通しだが、立候補しない意向を示した。町議会の不信任決議案可決を受け、井戸川町長が解散した町議会の議員選挙は予定通り24日に告示される。
 井戸川町長は体調不良を訴え、20日から郡山市の病院に入院していた。町によると、23日午前に退院し、午後3時ごろから加須市の支所で決済などの公務をこなした。午後4時半ごろから臨時庁議を開き、辞職の意向を示したという。
 井戸川町長は同日夜、支所で福島民報社の取材に応じ、「町民の健康と町を守りたいという思いだけで取り組んできた。悔しい気持ちもあるが、潮時だと思った」と話した。町長選には立候補しない意向を示した。
 井戸川町長の現任期は12月7日まで。地方自治法では、町長が辞職する場合、20日前までに町議会議長に届け出ると規定されている。町議会の解散に伴い、議長が不在のため、井戸川町長は町議会事務局に届け出た。23日から20日後の2月12日午前零時で失職する。その場合、町は、12日から新町長が就任するまで井上一芳副町長が町長の職務代理者を務める。ただ、町議選後に議会が辞職に同意すれば、町長の辞職が早まる可能性がある。公選法では、辞職から50日以内に町長選を行う。投票日を日曜日とすると3月末までに町長選が行われる見通しだ。
 東京電力福島第一原発事故で、双葉町は全町民が避難生活を送っている。井戸川町長は汚染廃棄物を保管する中間貯蔵施設をめぐり、昨年11月に佐藤雄平知事と双葉郡7町村長が現地調査受け入れを決めた際の会議を欠席した。
 昨年6月と9月の町議会に井戸川町長の不信任決議案が提出されたが、いずれも否決。会議の欠席を受けた12月議会は全会一致で可決された。これに対して井戸川町長は辞職せず、同月26日に議会を解散した。
 24日告示の町議選には前職の8人が立候補し、無投票当選する公算が大きくなっている。町議選後の臨時議会では、あらためて井戸川町長の不信任決議案が提出され、町長が失職する可能性が高まっていた。

( 2013/01/24 09:15 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/201301246195

なお、井戸川町長は、2013年1月の年頭挨拶で「双葉町の道しるべ」というメッセージを双葉町のサイトに出し、井戸川町長自身が考える双葉町の今後のあり方を提示した。後任の双葉町長が、このメッセージを抹消する恐れもあり、ここでは、歴史に残る資料として、全文を掲げておく。

双葉町の道しるべ
双葉町の道しるべを申し上げます。
1.双葉町・町民は国、福島県、東京電力と協力し、双葉町民の一日も早いふるさとへの帰還を目指します。
(1) 双葉町・町民のふるさとへの帰還にあたっては、人の健康の観点から国、福島県、東京電力と協力し、徹底した放射能の除去に取り組みます。
(2) 双葉町・町民がふるさとに帰還するにあたっての放射能除去の目標値は、国際放射能防護委員会(ICRP「2007年勧告」)の示す一般住民の年間積算被ばく線量の上限1ミリシーベルトとします。
2.双葉町・町民は国、福島県、東京電力と協力し、双葉町・町民の一日も早いふるさとへの帰還を目指し、以下の取り組みをします。
(1) 双葉町・町民のふるさとと双葉町への帰還の目標を暫定的に30年後とし(汚染物質である放射性セシウムの半減期が約30年であることから、双葉町への帰還居住は暫定的に30年後とする)その期間中、2011年3月11日以前の生活保障に取り組みます。
(2) ここで言う生活保障とは以下のことを指します。
イ.家族の営みや生活を成り立たせる仕事及び住居
ロ.健康な生活、就学、医療の手当てなどが保障される生活環境
ハ.ふるさとを奪われた過酷な状況の中での生活文化の継承
3.双葉町・町民は国、福島県、東京電力と協力し、2011年12月16日に事故の収束が宣言された東京電力福島第一原子力発電所事故について、人の健康の観点から徹底した事実解明に努めます。
(1) 双葉町・町民、国、福島県、東京電力は福島原発事故の全ての情報を共有します。
(2) 東京電力及び国は、福島原発事故の収束を宣言したことに基づき、双葉町・町民が原子炉からの新たな放射性物質漏出に脅かされないことを確約する。
(3) 東京電力及び国は、2011年3月11日より後に漏出した放射性物質が福島原発事故の収束宣言した東電福島第一原発敷地内に存在する場合には、帰還する双葉町・町民の健康の観点から速やかに撤去する。
以上について取り組みます。
 
 平成25年1月4日
双葉町長 井戸川 克隆
http://www.town.futaba.fukushima.jp/message/20130107.html/

このメッセージで重要なことは、双葉町民の被曝線量限度を年間1mSvととし、国、福島県、東京電力の除染には協力するものの、双葉町民の帰還時期を、セシウム137の半減期である30年後としていることである。そして、それまでの間の生活保障に努力するとしている。つまりは、政府や福島県が年間20mSvを基準として住民の帰還を進めることに真っ向から反対しているのである。

そして、辞職した1月23日、井戸川町長は、「双葉町は永遠に」というメッセージを出した。これも、全文を掲載しておく。

双葉町は永遠に
 私たちは前例の無い避難という過酷な状況に置かれています。いつまでも海原を漂流するわけにはいきません。早く上陸地を国が準備して、再興できる日を求めてきました。しかし、時間が足りませんでした。
 放射能のないところで平和な、皆が集える町ができることを祈り町民の安寧を願って、私は本日、双葉町長の辞職申し出をしました。
 私の今までの取り組みから次のことを申し上げたいと存じます。

1 事故に負けない
 原発事故で負けるということは、今のまま、何もしないことである。
 双葉町民には負けてほしくない。勝ってそれぞれ生き抜いてもらいたい。今はそれぞれの地に離れて住もうとも、廃炉が完了して故郷から放射能の危険が去り、自然と共生出来るようになったら再結集しよう。
 我が子どもたちへ、この悔しさを忘れることなく、何としても生き抜いて何倍も幸せな双葉町を再建していただきたい。そのためにも負けないで学び、求められる人になれ。世界の雄になってもらいたい。
(1) 負けないということは以下のことを忘れないこと
①避難してくださいと国から頼まれたこと。
②東電と国は事故を絶対起こさないと言っていたこと。
③町と県と東電には安全協定があること。
④事故は我々が起こしたものではないこと。
⑤正式な謝罪と見舞いがないこと。(形のあるものではないこと)
⑥自分の権利は自分以外に行使できないこと。
⑦被ばくさせられたこと。
⑧放射能の片付けをさせられること。
⑨20msv/yで町へ帰ること。(一般公衆の限度は1msv/y以下)
(2) 勝つためには何をしなければならないか
①事故の原因者を確定すること。
②我々の受けた損害のメニュー作成すること。
③損害の積算をすること。
④回復の請求をすること。
⑤回復の限界と代替を請求すること。(仮の町、借りの町)
⑥立証責任の不存在を共有すること。
⑦気づくこと。
⑧水俣の住民の苦難を学ぶこと。
⑨広島・長崎の住民の方に聞くこと。
⑩避難先の皆さんの恩を忘れないこと。
⑪多くの町民が健全な遺伝子を保つこと。
⑫ウクライナの現実を確認して同じテツを踏まないこと。
(3) 町民の力を結集すること
①役割分担をすること。
 ・汚染調査 ・除染問題 ・賠償問題
 ・住居問題 ・職場問題 ・健康問題
 ・墓地問題 ・学校問題 ・中間貯蔵施設問題
 などの調査研究する組織をつくり町民の不利益を解消すること。
②事故調査委員会をつくること
 事故の報告書には避難を強制された住民の実態が語られていない。外部に任せていたらいい加減に処理されてしまうので、委員会を町独自に構成して正しい記録を残さなければならない。
2 主張する権利を行使する
①見守り隊の組織
②法律家の組織
③文書学事の組織
④ボランティア活動組織
⑤被ばく被害者団体の組織
などを組織して国民の主権と被害者の復権を勝ち取らなければならない。
3 この世には先人の教えがある
(1) 温故知新
 歴史から新しい発想が出てくる。自分が直面している問題について語られています。遠くは私たちの祖先である標葉藩が相馬に滅ぼされたこと、会津藩が長州に負けたこと。しかし、負けても滅びる事もなく私たちは生きてきました。先人達に感謝し、これからは私たちが町の存続を引き継ぎ後世に繋がなければなりません。今度の事故は前例がありません。今は子どもたちを放射能の影響によるDNAの損傷を避けて暮らし、幾多の困難に負けずに 双葉町の再興に向かって、生き延びましょう。
(2) 人生に五計あり
 中国、宋時代の朱新仲が教訓として伝えた人生の処世訓とされるものです。生計、身計、家計、老計、終計があり、生き抜く考えが記されています。
(3) 八正道と言う道
 昔、釈迦がインドで行われていた求道について、新しい道があることを説いたとされています。
正見  : 正しい物の見方
正思惟 : 正しい思考
正語  : 偽りのない言葉
正業  : 正しい行為
正命  : 正しい職業
正精進 : 正しい努力
正念  : 正しい集中力
正定  : 正しい精神統一

 今の私たちにはこのような精神にはなれません。この言葉は東電と国あるいはこの事故を被害者の人権を無視して矮小化しようとしている勢力に猛省を促す言葉として捉えてほしい。願わくば、双葉町の子どもたちに人生の教訓の一部として、心に刻んでほしい。

 この事故で学んだことは多い。我国でも人命軽視をするのだと言うことがわかった。国は避難指示と言う宣戦布告を私たちに出した。武器も、手段も、権限もない我々はどうして戦えるだろうか。

 白河市にアウシュヴィッツ博物館がある。ナチスがユダヤ人を毒ガスで虐殺したことは衆目の事実だ。福島県内では放射能という毒で県民のDNAを痛めつけている。後先が逆だ。この状態から一刻も早く避難をさせること以外に、健康の保証は無い。その後に十分時間をかけて除染をやれば良い。
 人工放射能に安全の基準を言う実績が少ない。20msv/yで住めると言う人が家族と一緒に住んで示すことが先だろう。その安全が確認出来たら福島県民は戻ればいい。これ以上モルモットにするのは、外国の暴君が国民にミサイルを撃つのと変わり無い。
 福島の復興なくして日本の再生はないとは、人口減少の今、将来の担い手を痛めつけていては、真に福島の復興には繋がらないと心配している県民は少なくないと思う。双葉町は原発を誘致して町に住めなくされた。原発関連の交付金で造った物はすべて町に置いてきました。

 原発の誘致は町だけで出来ない、県が大きく関わってはじめて可能となる。私たちは全国の人たちから、「お前たちが原発を誘致しておいて被害者面するな」という批判を受けている。私たちはどこにいても本当の居場所がない今、苦悩に負けそうになりながら必死に生きている。子どもたち、高齢者、家計を支えなければならないお父さん、お母さんたちの悲鳴を最初に菅総理に訴えた。変わらなかった。そのために私は野田総理に国民としての待遇を訴えたのです。しかし、今の町民の皆さんは限界を超えています。何とか国には町民の窮状を訴え、町民には叱られ役をやり、マスコミに出されるようにしてきました。

 県にも窮状を訴えています。最近も質問をしました。回答は具体的な内容ではなく失望しました。知事は福島の復興のために双葉町に中間貯蔵施設を造れと言うので、双葉町の復興はどうするのですか、と聞くと答えてくれません。そこで、踏み込んで私に町をくださいと言いましたがやはり答えませんでした。これでは話し合いになりません。

 環境省の局長にどうして双葉に二つの場所を決めたのですかと聞いたら、分かりませんと言いました。では会議録をみせてくださいと聞いたら、後日ありませんと言う返事でした。このようなことで、調査だけで建設はしないからと言われて、ハイいいですよとは言えません。
 町には古くから先人が築いてきた歴史や資産があります。歴史を理解していない人に中間貯蔵施設を造れとは言われたくありません。町民の皆さんが十分議論した後に方向を決めていただきたい。若い人に決めてもらうようにしてほしい。

 今まで支えていただきました町民の皆様、双葉地方各町村をはじめ福島県内各市町村の皆様、国及び福島県そして事故発生時から避難救済にご支援いただきました国民の皆様、国会議員の皆様、全国の自治体の皆様、埼玉県と埼玉県議会の皆様、県民の皆様、加須市と加須市議会の皆様、市民の皆様、さくら市の皆様、医療界の皆様、福祉関係の皆様、貴重な情報の提供された方、最後に国内並びに世界中からボランティアのご支援をいただきました皆様、この避難を契機にご支援いただきました多くの皆様に支えられて、ここまで来ることができました。心から感謝を申し上げまして、退任のご挨拶に代えさせていただきます。
 長い間誠にありがとうございました。
 
 平成25年1月23日
双葉町長 井戸川 克隆
http://www.town.futaba.fukushima.jp/message/20130123.html/

このメッセージについて、今の私には全体を論評することはできない。「歴史から新しい発想が出てくる。自分が直面している問題について語られています。遠くは私たちの祖先である標葉藩が相馬に滅ぼされたこと、会津藩が長州に負けたこと。しかし、負けても滅びる事もなく私たちは生きてきました。先人達に感謝し、これからは私たちが町の存続を引き継ぎ後世に繋がなければなりません。」などと、さかんに「歴史」から、今後を展望しようとする論理がみられることだけ指摘しておこう。現時点では、それぞれの人が味読してほしい。

また、1月24日に、ouraplanet-tvが井戸川町長にインタビューした動画が残されている。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F1518

これを視聴していると、新聞報道やメッセージで表面化していない事情も語られていることがわかる。例えば、双葉町長選に再出馬しないかという問いに対し、井戸川氏は、「この問題は大きな問題で、双葉町の問題ではなく、福島県、日本の問題である、双葉町の首長をやっていると、限られたところしか活動できない、悩んでいる人びとは福島県にいっぱいいる、その人たちと連携をはかって、今後どうするのかということもでてくると思う、県内で不満をもっている人たちと連携をはかりつつ、この事故はこれで終りではないし、これで終わらせてはならない、これは大きな犯罪であるから、どうやって立証立件できるかということに努力しなくてはならないと思う、ものすごく忙しくなると思う」と語っていることが印象的であった。井戸川氏は、むしろ、この辞職を契機として、より多くの人びととともに、原発問題に立ち向かおうとしているのである。井戸川氏も、他の人も、このことで意気消沈する暇はないのだ。このことが感想として、強く思ったことである。

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