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最近、朝鮮学校への差別的待遇が強まっている。2010年の高校無償化においては、高等学校等に対する就学支援金の対象外とされた。また、朝鮮学校への補助金支給を打ち切る地方公共団体が増加してきている。

そんな中、町田市では、市立小学校や私立小学校に通っている児童に配布している防犯ブザーを、朝鮮学校通学の児童には配布しないという決定を下した。次のNHKがネット配信した記事をみてほしい。

町田市教委 防犯ブザーを朝鮮学校に配らず
4月5日 12時54分

北朝鮮が挑発的な言動を続けるなか、東京・町田市の教育委員会は、社会情勢や国際情勢などを理由に小学校に入学する児童に配付している防犯ブザーを今年度、朝鮮学校の児童に配付しない決定をしていたことが分かりました。

町田市教育委員会は、小学校に入学する児童を対象に防犯ブザーを無償で配付する事業を9年前から行っています。
町田市にある朝鮮学校の児童に対しては学校から要望があれば配付し、ことし2月にも新入学の児童6人と在校生の故障分など合わせて45個を配付するよう要望を受けたということです。
これに対し、市教育委員会は、今年度、朝鮮学校の児童に防犯ブザーを配付しないことを決め、先月28日に伝えました。
その理由について、市教育委員会教育総務課の高橋良彰課長は「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢を踏まえて市の事業を進めるのはふさわしくないと判断した」と説明しています。
この決定に対し、町田市にある「西東京朝鮮第二幼初級学校」のリ・ジョンエ校長は「社会情勢を理由に子どもの安全を脅かすような対応で、残念に思います」と話していました。
市教育委員会には、今回の対応を疑問視する電話が4日までにおよそ40件、寄せられているということで、市教育委員会は、対応を見直すかどうか検討を進めることにしています。

「いじめに遭わないよう配慮を」
下村文部科学大臣は、閣議のあと、記者団に対し、「自治体の判断であり、コメントは差し控えたいが、子どもたちがいじめに遭わないよう配慮してもらいたい」と述べました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130405/k10013696541000.html

朝日新聞は、やや詳しく、この背景を4月5日にネット配信した。

市教委は今年2月下旬、前年度までと同様、同校にも防犯ブザー(1個299円)の必要個数を知らせるように連絡。同校から3月上旬、この春に初級部に入学する6人と在校生の故障分など計45個の要望を受けた。だが、2月中旬の北朝鮮の核実験などで安倍政権が北朝鮮への強硬姿勢を強める中、市教委の職員から「市民の理解が得られない」「今はまずい」との声が上がり、3月下旬に学校に配布の中止を伝えた。
http://www.asahi.com/national/update/0404/TKY201304040485.html

このような町田市の措置を、産經新聞はコラム「産経抄」4月6日付で擁護した。このコラムでは、前半に黒沢明の映画「夢」が原発事故を予感していたのではないかと述べている。しかし、その話と全くかかわらないかたちで、このように主張している。

▼将来は画像の再現も夢ではないそうだが、ろくな夢を見ない小欄は、夢の中身をわざわざ画像にするなぞまっぴら御免である。さりながら、あの人がどんな夢を見ているのかは、こっそり知りたい。「無慈悲な作戦」を承認し、核戦争の危機をあおりにあおっている北朝鮮の3代目である。

 ▼3代目は、ミサイルの発射ボタンを押し、ワシントンや東京が火の海になる画像を夜な夜な見ているのだろうか。東京都町田市では、教育委員会が朝鮮学校生徒への防犯ブザー配布をやめたが、当たり前の話である。かの地出身の同胞は「差別はけしからん」と騒ぐ前に、胸に手を当ててよく考えてほしい。子供に罪はないが、悪夢の発生源をいまだに崇拝している親たちの責任は重大である。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130406/plc13040603110003-n1.htm

この文章は、全体でも意味が貫徹せず、学校の作文レベルでも、たぶん評価できないと思われる。そして、引用した部分でも、論理が破綻している。北朝鮮の核兵器政策への批判がなぜ、「教育委員会が朝鮮学校生徒への防犯ブザー配布をやめたが、当たり前の話である」ということにつながるのか。「子供に罪はないが、悪夢の発生源をいまだに崇拝している親たちの責任は重大である」としているが、なぜ罪のない子供が責任をとらなくてはならないのか。

この産経抄の論理の破綻は、そもそも、このような決定を下した町田市の姿勢にも共通しているだろう。「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢を踏まえて市の事業を進めるのはふさわしくないと判断した」とするが、産経抄においても認めるように「子供に罪はない」のであり、「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢」とは別次元の話である。ある意味では、朝鮮学校通学児童は、法的に保護しないと宣言したことに等しい。他方で、朝鮮学校には婉曲な廃校を促していることになるだろう。

しかも、問題は、「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢」のために、朝鮮学校に通学する児童・生徒に対して、より危険な状態になっているということである。人種差別撤廃委員会に提出した「人種差別撤廃条約 第3回・第4回・第5回・第6回 政府報告 」(2008年8月) で、日本政府自体が、次のようにいっている。

 

(3)児童・生徒等に対する嫌がらせ等の行為への対応
26.2002 年 9 月 17 日の日朝首脳会談において、北朝鮮側が拉致事件の事実を正式に認めたこと等から、在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為が発生したため、全国の法務局・地方法務局では、各地で啓発ポスターを掲示したり、JRの駅頭や繁華街等において啓発パンフレットや啓発物品を配布する等の啓発活動を実施したほか、嫌がらせ等に対する人権相談等を通じて適切な措置を講じた。
また、2006 年 7 月、北朝鮮によりミサイル発射が行われたとの報道がされた際、及び2006 年 10 月、北朝鮮により核実験が行われたとの報道がされた際にも、在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為が発生したため、同様に適切な対応を実施した。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/pdfs/hokoku3-6.pdf

また、「人種差別撤廃条約 第7回・第8回・第9回 政府報告 」(2013年1月)でも、次のように述べている。

(4)児童・生徒等に対する嫌がらせ等の行為への対応
40.第3回・第4回・第5回・第6回政府報告パラグラフ26参照。
41.さらに、2009年4月に北朝鮮によるミサイル発射が行われたとの報道がされた際、同年5月に北朝鮮による地下核実験が行われたとの報道がされた際並びに2012年4月及び12月に北朝鮮によるミサイル発射が行われたとの報道がされた際にも、在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為の発生を防ぐため、啓発活動を実施するとともに、嫌がらせ等に対する人権相談等を通じて適切な措置を講じた。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/pdfs/houkoku_789_1.pdf

日本政府自体が、「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢」によって「在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為が発生」したことを認めているのである。そして、上記の措置が有効なものかどうかは不明であるが、少なくとも、形式的には対応しなくてはならないものであることを表明しているのである。もちろん、日本政府は、高校無償化において朝鮮学校を除外しており、それ自身差別的である。しかし、そのような政府ですら、「在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為」は抑止しなくてはならないという姿勢を建前では方針としている。現状では、朝鮮学校通学の児童は、よりその保護を徹底すべき対象といえる。その意味で、町田市や産経抄の認識は、政府方針にすら反しているのものなのである。

1965年の国連総会で採択され、日本が1995年に加入した人種差別撤廃条約(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)の第5条は、次のように規定している。

第5条
 第2条に定める基本的義務に従い、締約国は、特に次の権利の享有に当たり、あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種、皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに、すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。

(a)裁判所その他のすべての裁判及び審判を行う機関の前での平等な取扱いについての権利
(b)暴力又は傷害(公務員によって加えられるものであるかいかなる個人、集団又は団体によって加えられるものであるかを問わない。)に対する身体の安全及び国家による保護についての権利
(c)政治的権利、特に普通かつ平等の選挙権に基づく選挙に投票及び立候補によって参加し、国政及びすべての段階における政治に参与し並びに公務に平等に携わる権利
(d)他の市民的権利、特に、
(i)国境内における移動及び居住の自由についての権利
(ii)いずれの国(自国を含む。)からも離れ及び自国に戻る権利
(iii)国籍についての権利
(iv)婚姻及び配偶者の選択についての権利
(v)単独で及び他の者と共同して財産を所有する権利
(vi)相続する権利
(vii)思想、良心及び宗教の自由についての権利
(viii)意見及び表現の自由についての権利
(ix)平和的な集会及び結社の自由についての権利
(e)経済的、社会的及び文化的権利、特に、
(i)労働、職業の自由な選択、公正かつ良好な労働条件、
   失業に対する保護、同一の労働についての同一報酬
   及び公正かつ良好な報酬についての権利
(ii)労働組合を結成し及びこれに加入する権利
(iii)住居についての権利
(iv)公衆の健康、医療、社会保障及び社会的サービスについての権利
(v)教育及び訓練についての権利
(vi)文化的な活動への平等な参加についての権利
(f)輸送機関、ホテル、飲食店、喫茶店、劇場、公園等一般公衆の使用を目的とするあらゆる場所又はサービスを利用する権利
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html

このように、「暴力又は傷害(公務員によって加えられるものであるかいかなる個人、集団又は団体によって加えられるものであるかを問わない。)に対する身体の安全及び国家による保護についての権利」「教育及び訓練についての権利」などは平等に保障しなくてはならないことになっている。先の日本政府の見解は、このことをふまえたものなのである。もちろん、日本政府は自発的にこのような見解を主張しているのではないと考えられる。人種差別撤廃委員会の勧告のもとで、このような見解を表明しているのである。

日本政府と人種差別撤廃委員会との関係はまた後述したい。ここで確認すべきことは、町田市にしても産経抄にしても、国籍などの出自に関わらず基本的人権は平等に保障しなくてはならないという意識を欠如しているということである。そして、このような欠如は、在日朝鮮人・韓国人に対するヘイト・スピーチを繰り返す「在日特権を許さない市民の会」(在特会)にも共通している。在特会のヘイト・スピーチは、日本社会のレイシズム的傾向を白日のもとにさらしたが、町田市や産経抄の言動は、このような傾向は在特会だけでなく、よりエスタブリッシュの人たちにも共有されていることを示しているのである。

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