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さて、本ブログの6月25日付記事「地下水・海水への放射能汚染が報道された福島第一原発ー東日本大震災の歴史的位置」において、次のことを指摘した。まず、5月末以来、福島第一原発周辺の地下水の放射能汚染が顕著になった。そして6月中旬以降、福島第一原発取水口付近の海水においても放射能汚染が顕著になってきていた。しかし、東電は海水汚染の原因が汚染地下水にあることを認めなかった。

そして、ようやく、東電は7月22日になってようやく海水汚染の原因が福島第一原発周辺の地下水にあることを認めた。7月21日の、参議院選挙投開票日の一日後のことである。まず、このことを伝える毎日新聞のネット記事をみてほしい。

福島第1原発:東電、汚染水の海洋流出認める 規制委に18日報告、公表4日後
毎日新聞 2013年07月23日 東京朝刊

 東京電力福島第1原発海側の観測井戸で高濃度の放射性物質が検出されている問題で、東電は22日、井戸の地下水位と海の潮位データとの関係を分析した結果「放射性汚染水を含む地下水が海へ流出している」との見解を発表した。2011年4月には2号機取水口付近などで高濃度汚染水が漏れる事故があったが、一連の収束作業で海洋流出を認めたのは初めて。東電は流出が始まったと確認できるのは「少なくとも、井戸の詳細な分析を始めた今年5月以降」と説明。流出量は「不明」としている。

 東電は「汚染は放射性物質の流出を防ぐシルトフェンス内側に限られ、沖合の影響はない」と説明するが、風評被害など周辺漁業への影響は確実。汚染源は海側トレンチ(地下に設置した配管用トンネル)とみられ、東電は同日、残る汚染水を回収する処理計画を発表した。しかし、トレンチ内部には大量の汚染水が未処理のまま残り、完了時期は未定で、今後も海洋汚染が続く恐れがある。

 東電によると、放射性物質が見つかった観測井戸の地下水を調べた結果、井戸の水位が周辺海域の潮位や降雨に従って増減することを確認。地下水と海水との「行き来」があると判断した。

東電は今年6月、井戸から1リットル当たり50万ベクレルのトリチウム(三重水素)などが検出されたと発表。その際は、2号機取水口で漏れた高濃度汚染水が地中に残った影響と説明し、海洋流出の可能性を否定していた。しかし、原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理は同月、「潮位変化による水の出入りを調べるべきだ」と指摘。規制委も今月10日に「海洋への汚染の拡散が疑われる」と指摘した。東電は18日、今年1月末から今月中旬までに実施した水位の結果を規制委に報告し、22日になって公表した。

 17日に港湾入り口で採取した海水を分析した結果、セシウムなどは検出限界未満だったが、微量のトリチウムが検出された。

 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は記者会見で「大変申し訳ない」と釈明。公表が参院選開票日翌日になったことについては「データを説明できる状況になったのが今日(22日)だった。関係ない」と語った。【中西拓司】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130723ddm001040120000c.html

この記事を読む限り、原子力規制委員会もすでに海洋汚染の原因が汚染地下水にある可能性を指摘していた。東電は、原子力規制委員会には18日にその旨を報告していた。しかし、東電は、「データを説明できる状況になったのが今日(22日)だった。」として、22日に公表した。そして、参院選開票日の翌日に公表したことには「関係ない」と答えている。

海洋における放射能汚染の原因が福島第一原発周辺の汚染地下水にあることを22日に東電が公表したことは、近隣の漁師たちの怒りを買った。再び、毎日新聞のネット配信記事をみてみよう。

福島第1原発:汚染水海洋漏れ、地元漁民ら怒り
毎日新聞 2013年07月22日 21時56分(最終更新 07月23日 04時55分)

 「やっぱりか」「なぜ今日なのか」。東京電力福島第1原発の敷地内で出た放射性汚染水について、22日、懸念されていた海洋漏れが「あった」と認めた東電に対し、原発事故の影響で漁自粛が続く福島県の地元漁協は怒りをあらわにした。計り知れない風評被害の拡大へ不信感や危機感をのぞかせた。【中尾卓英、神保圭作、高橋秀郎】

 福島県いわき市沿岸では今年9月から、シラスなどの試験操業が原発事故後で初めて開始される予定で、この日は地元で漁協組合長らが専門家を交えて協議していた。その後飛び込んだ最悪のニュースだった。県内のある漁協関係者は「海に流れているのではないかということはうすうす感じていた」と話し、別の漁業関係者は「選挙が終わった日になぜ」と話していた。

 東電の新妻常正常務らは22日午後3時半、汚染水が海へ漏えいしている事実を説明するため、いわき市の県漁連を訪問。頭をさげる常務らに、対応した県漁連の野崎哲会長や、いわき市漁協、相馬双葉漁協の組合長は硬い表情で「風評被害につながる。ショックは大きい。とにかく早く漏えい対策を取ってほしい」と迫ったという。

 県漁連と東電は、たまり続ける汚染水対策の一環として地下水をくみ上げ海に放出する「地下水バイパス」の稼働を巡り、議論を続けている。県漁連の幹部は「(今回の汚染水漏れの)影響は大きい。組合員へも説明を続けているが、反発は避けられない」と話す。

いわき市漁協の矢吹正一組合長は「重い話だった。分かりにくい数値を並べるより、我々の生活の糧である『常磐の海』を以前の状態に戻すことが東電と国の使命」と指摘した。

 一方、昨夏に試験操業を始めた相馬双葉漁協の佐藤弘行組合長は「これまでの説明で一番厳しい内容だ。慎重に慎重を重ね、放射性物質検査で基準値(1キロあたり100ベクレル)を下回る魚を15種まで一つ一つ増やして試験操業をしてきたのに」と不満を漏らした。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130723k0000m040083000c.html

すでに報道されているように、東電は、福島第一原発に流れ込んで来る地下水をくみあげて海に流し、そのことで汚染水を減らす作業を行おうとしており、周辺漁協と合意をとろうとしていた。しかし、5月以来、福島第一原発周辺の地下水の汚染は顕著となっており、海洋にも及んでいることが明かとなった。この記事もあるように、漁師たちの反発は高まっているのである。

そして、「選挙が終わった日になぜ」という疑問が漁師たちの間でも惹起された。

毎日新聞にあるように、すでに18日には規制委員会には報告していた。すでに、その段階で、公表できる材料はあったといえる。しかし、東電も原子力規制委員会も、その時点で公表しなかったのである。

福島第一原発事故の際、SPEEDI他の値が隠蔽されて公表されず、周辺住民に不要な被曝を招いたことは記憶に新しいが、いまだに、このようなことを行っているのである。

そして、やはり、22日になって公表したのは、参院選の結果に影響が出ることを恐れたためであろう。参院選においては、現政権与党の自由民主党と公明党の有利が伝えられ、実際の選挙結果もそうなった。しかし、東電にせよ、原子力規制委員会にせよ、この参院選の結果に少しでも影響を及ぼすことをさけたため、21日以前ではなく、22日の公表になったと推測できる。

それにしても、東電や原子力規制委員会は、実際に事故をおこしている福島第一原発や、その事故によって被害を受けた当事者たち(この場合は福島県の漁師たち)のほうに向き合わず、「国」の統治者たちのほうに向いていると言わざるをえない。東電が福島第一原発事故をコントロールしているとは到底思えないのであるが、結局、そのことを認める認めないは、国の統治者たちである。実際に、東電は実質的に国有化されている。そして、独立性が強調されている原子力規制委員会も、やはり、究極的には国のほうをむいているのである。

今度の参院選で原発推進派が少しでも多くの議席を獲得し、反原発派に議席を与えないこと、反原発派を政府に入れさせないこと、このような選挙対策こそ、東電や原子力規制委員会の最大の関心事なのである。実際に福島第一原発事故をコントロールすること、周辺住民に被害(精神的なものも含めて)を与えないようにすること、そして、新たな対策に周辺住民の理解を得るというようなことは、二義的な問題にすぎないのであろう。つまり、東電や原子力規制委員会の原発事故対策の中心は選挙対策ということなるのである。

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4月25日、相馬市の原釜漁港にまわってみた。原釜漁港は松川浦に所在する三つの漁港(磯部・松川浦・原釜)の一つである。 googleマップでみると、磯部漁港は松川浦の奥で、最も南に位置している。松川浦漁港は松川浦の入り口でその内側であり、原釜漁港は松川浦の入り口で外海に面している。この原釜漁港を中心とする松川浦漁港は、東北でも有数の水揚げを誇る漁港であった。

原釜は、太平洋に直接面しているため、東日本大震災による津波の直撃を受けたところである。今、その映像が残されている。たぶん、原釜漁港のそばの高台から撮影されているのだろう。写っている建物は相馬原釜地方卸売市場である。かなり長い動画であるが、津波の経緯がよくわかる。最初は、それほど高い津波ではないが、しだいに高まり、堤防をこえ、相馬原釜地方卸売市場を襲った。少なくとも二階部分までは水没したようである。相馬市の津波高は、最終的には9mを超えていたようである。

なお、この動画では、最初のところで撮影者たちの事態を楽観していた声が収録されているが、その後、このようなことを付記してyoutubeにアップされている。

この映像を見るのは私自身正直つらく、けして表に出すものではないと思っていました。
逃げ惑う人、津波に飲み込まれる船、あんなに絶対絶命の状況でも必死に生きようとしている人達の姿を、遠い所からただ撮影してることしかできなかった自分にものすごく嫌悪­感があったからです。また、津波を目の前で見た人にしか分からない恐怖感が甦ってくると思ったから。
しかし、震災から半年がたった今、この映像を今後の教訓にできる様に、資料として使って頂くのが最良だと感じる様になりました。
地震大国日本にいる私たちは、常にこの映像と隣り合わせだということを、観た方たちには本当に感じていただきたいと思います。
そして、今後このような災害に見舞われた時に、冷静な判断で少しでも多くの命が助かることを祈ります。

サイト「東日本大震災(地震、津波)被害状況専門サイト」による、2012年4月12日時点の被害状況は、次の通りである。

2012/4/12時点の相馬市の被害状況※ 福島県,復興庁HPのデータより
死者数:458
行方不明者数:0
県内第1次,2次避難所在住者数:0
住宅、建物被害(全壊数+半壊数):1791
仮設住宅建設戸数:1500 (完成度100%)
仮設住宅建設箇所数(団地数):13
※ 6/17:仮設住宅への入居等が完了し全避難所が閉鎖。
※ 仮設住宅一覧はこちらのページ

2012/4/9時点の災害廃棄物(震災がれき)処理状況 ※環境省公表資料より

がれき推計量:25万4千トン
※ うち建物解体に伴うがれき発生推計量:2万3千トン

解体を除いたがれき推計量に対する撤去率:100%
解体を含んだがれき推計量に対する撤去率:97%
※ 撤去は仮置き場への搬入のことです。

処理・処分量:1万6千トン
処理・処分割合:6.5%
※ 破砕・選別等により有価売却、原燃料利用、焼却やセメント焼成、
  埋立処分等により処理・処分された量。

http://ranasite.net/?p=1478#Higai

その跡を写したのが、この動画である。ただ、先の津波現場の動画より、やや北側のところを主に写している。2011年4月6日撮影とのことである。多くの建物が流失し、瓦礫しか残っていないことがわかる。

4月25日、私自身がみた原釜地区の景況は、次の通りである。海岸付近の住宅は流され、ほとんど基礎しか残っていない。農地が主に被災した南相馬市と比べると、漁港が多かった女川や牡鹿半島の被災に類似しているように思われる。ただ、山のようにあった瓦礫の多くは整理されていたようである。瓦礫の撤去は90%以上進んでいるとのことであったが、たぶんその通りなのであろう。

相馬市原釜地区(2012年4月25日撮影)

相馬市原釜地区(2012年4月25日撮影)

そして、被災した相馬原釜地方卸売市場(魚市場)は、1年たってもがらんどうのままであった。同じく津波に被災した気仙沼魚市場が2011年6月、石巻魚市場・女川魚市場が2011年7月に再開されたことからみても、非常に遅れている。

相馬原釜地方卸売市場(2012年4月25日撮影)

相馬原釜地方卸売市場(2012年4月25日撮影)

この付近の漁船の大半は、松川浦側の松川浦漁港に繋留されていた。これらのうちには、津波に被災し、各地に流されてしまった船もあるだろう。しかし、ほとんど、漁に出た形跡はなかった。

松川浦漁港に繋留される漁船(2012年4月25日撮影)

松川浦漁港に繋留される漁船(2012年4月25日撮影)

このように、原釜・松川浦漁港の漁業再開が遅れているのは、いうまでもなく原発災害による海洋汚染のためである。2011年、福島県の各漁協では、水産物の放射性物質による汚染を懸念して、福島県の沿岸漁業を自粛した。いわき市小名浜については、2011年8月より沖合捕獲のカツオ漁の水揚げが再開された。しかし、これも、放射性物質汚染を懸念した買い控えをおそれ、6月から可能であった水揚げが延期され、ようやく8月なってから水揚げがなされたのである。もちろん、小名浜においても、沿岸漁業の自粛は続いている。次の読売新聞のネットに、2012年2月時点における原釜漁港の景況が報道されている。

来月11日めど 直売所も開店 県外から魚調達

 東日本大震災の津波で被災した福島県相馬市原釜の水産加工業者などでつくるNPO法人「相馬はらがま朝市クラブ」が震災から1年になる3月11日をめどに、水産加工場を再開し、直売所の「相馬報徳庵」をオープンさせる。(高貝丈滋)
 東京電力福島第一原発事故の影響で県内は出漁自粛が続き、相馬市内の加工場もほぼ休止状態にあるため、材料の魚は県外から調達し、復興へ向けた一歩を踏み出す。
 朝市クラブは、相馬市の水産加工場の経営者や全国各地のボランティア約30人でつくられ、津波で工場が被災したセンシン食品経営、高橋永真(ながまさ)さん(52)が理事長を務める。昨年5月から、週末に市の中心部で支援物資を提供したほか、リヤカーで仮設住宅を巡回して野菜などの販売や声かけ訪問を行ってきた。
 東北地方で有数の水揚げを誇る相馬原釜漁港周辺ではヒラメ、マガレイ、ミズタコなどを加工する水産加工会社が25社あったが、津波で被災し、ほとんどが止まったままだ。出漁自粛により、同港の漁船約120隻も現在は稼働していない。
 震災後1年をきっかけに、水産加工場を再稼働させて地元に雇用を生み出そうと、高橋さんらは今年に入り、北海道函館市や松前町、青森県深浦町などの業者に魚を卸してくれるよう要請し、協力を得られることになった。
 加工場は、津波の被害を受けた原釜地区の施設を修理して活用する。直売所は、中小企業基盤整備機構の支援制度を利用して造られた相馬市中村の仮設店舗を使う。
 店舗内は、阪神大震災で被災した経験を持つ朝市クラブの副理事長、石井弘二さん(59)の紹介で、神戸市の大工が工事した。材木は、相馬市と交流のある神奈川県小田原市から寄付された杉を使用した。
 高橋さんは、「水産業の街・相馬を復活させるためにも加工場を再開させるのが第一歩。前へ進んでいきたい」と話している。
(2012年2月29日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20120228-OYT8T00456.htm

そして、現在でも、検査のためにとった福島県の水産物の一部から、放射性物質は検出されている。基準値が100ベクレル/kgとなったこともあり、出荷できる範囲をこえた水産物は後を絶たないのである。

福島県産水産物における緊急モニタリング調査結果(2012年4月24日公表分まで)

福島県産水産物における緊急モニタリング調査結果(2012年4月24日公表分まで)

クリックしてhousya-soukatu01.pdfにアクセス

相馬市原釜漁港における津波被災は圧倒的なものであった。しかし、同じく、津波に被災した石巻・女川・気仙沼(これらの地域でも、スムーズに生活復旧が進んでいるとは思わないが)と比較して、生業としての漁業再開が進んでいないのは、原発災害による海洋への放射性物質汚染のためなのである。

石橋克彦氏は、震災と原発災害の同時的被災を「原発震災」とよんだ。この原発震災のありようが、ここ相馬市原釜漁港にあらわれている。震災による被災とともに、原発災害による被災が、この地に重くのしかかっているのである。

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