Feeds:
投稿
コメント

Posts Tagged ‘海洋汚染’

さてはて、福島第一原発における汚染水において問題の起きない時はない。例えば、10月2日には、たまった雨水を汚染水貯蔵タンクにためていたところ、雨水を入れすぎて、上部から0.43トンの汚染水が漏れ、一部は排水口をつたわって、港湾外に流失したことが報じられている。まず、下記の毎日新聞の報道をみてほしい。このようなことが報道されている。

福島第1原発:港湾外に汚染水流出「タンクに入れ過ぎた」
毎日新聞 2013年10月03日 13時21分(最終更新 10月03日 16時39分)

 東京電力福島第1原発の汚染水をためる貯蔵タンクから新たな漏れがあった問題で、東電は3日、推計約0.43トンが漏れたと発表した。一部は排水溝を通って港湾外の海に達したとしている。タンクを囲う高さ30センチのせき内にたまった水を、既にほぼ満杯状態だったタンクに移した結果、タンクの天板と側板の間からあふれたとしている。安倍晋三首相は「汚染水の影響は港湾内の0.3平方キロで完全にブロックされている」としているが、汚染水は港湾外に達した。【高橋隆輔、鳥井真平】

 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は3日の記者会見で「タンク満杯のぎりぎりを狙いすぎた。貯蔵計画にミスがあった」と語った。

 せき内の水からは、ストロンチウム90などベータ線を放出する放射性物質が1リットル当たり20万ベクレル、タンク内の水は、セシウム除去装置などで一旦処理した汚染水で、ベータ線が同58万ベクレル、セシウム134が同24ベクレル、セシウム137が同45ベクレル検出された。汚染水が流れた排水溝からはベータ線が同1万5000ベクレル検出された。タンクから漏れた汚染水の放射性物質濃度と環境への影響は確認中。東電は原子炉等規制法に基づき、国に通報した。

 東電によると、汚染水漏れが発覚したのは「B南」エリアと呼ばれ、8月に300トンの汚染水漏れが見つかったのとは別のタンク群。海から約300メートル離れている。

2日は、せきから雨水があふれ出すのを防ぐため、ポンプで吸い上げ、タンク内に移す作業をしていた。タンクの水量は元々97〜98%まであったが、雨水を移送する緊急対策として98〜99%まで水を入れることにしていた。

 作業は午前中から正午過ぎまで約2時間行い、最大約25トンをタンクに移した。午後8時5分ごろ、作業員がタンクの最上部から水が漏れているのを発見した。水漏れはポンプを起動した約12時間前の午前8時35分ごろから始まったとみられるという。

 漏れた水の一部は、タンクの最上部から2.5メートル下に設置されている作業用の足場の雨水を抜く穴からせきの外側に落ち、さらに側溝から海につながる排水溝へ流れ込んだとみられる。

 漏れが見つかる前の水位は98.6%だったが、水位計を常時確認していたかは分からないという。2日午後2時半の目視確認は、タンク天板から水位を計測しただけだった。

 タンクは傾斜した地面上に設置されていた。東電はタンクの傾斜は基準の範囲内だったとしている。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20131003k0000e040235000c2.html

東京新聞の報道によると、より情けないことが判明する。

汚染水漏れ 満水に気付かず注水

2013年10月3日 夕刊

 福島第一原発の雨水を移送していたタンクから高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む処理水が漏れた問題で、東京電力は三日、四百三十リットルが堰(せき)外へ出て、一部が排水溝を通じて外洋に流出した可能性があると発表した。タンクが傾いていたため、低い所から漏れ出した。
 水漏れしたタンクは、八月に漏れが見つかったのとは別のタンク群にある。敷地東の海に向かって緩やかに傾斜した土地に五基連結し、傾いて建てられていた。タンク一基の大きさは直径九メートル、高さ八メートルの円筒状。
 最も高い位置にあるタンクより約五十センチ低い海側のタンクに雨水を入れていたが、水位計は一番高い陸側にあるだけ。水位計で98%になるまで雨水を入れる予定で作業し、海側のタンクが先に満水になったことに気づかなかった。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は三日、「タンク運用が厳しく、ぎりぎりを狙いすぎてアウトになった」と話した。
 漏れた水の一部は、近くの排水溝から外洋などに流れたらしい。一リットル当たり五八万ベクレルのストロンチウムなどを含んでおり、外部への放出が許される濃度の約一万倍。ただ、ベータ線のため直接、触れなければ人体に大きな影響はない。東電は国に通報するとともに、排水溝に土のうを積むなどの対策を取った。
 二日は台風の影響で、処理水タンク周りの堰内の水位が上がり、雨水を移送した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013100302000240.html

この漏れたタンクは、傾斜地に五基連結して建設されており、その内の最も下部に海側に所在していた。しかし、それぞれのタンクには水位計が設置されておらず、最も上部の陸側のタンクにしか水位計が設置されていなかった。そのため、最も下部の海側にある当該タンクが満水になったことを承知できず、上部から汚染水が漏れることになったという。小学生の理科でもわかるようなことが、福島第一原発の現場では検討されなかったらしい。

この状態について、さすがに、菅義偉官房長官は対応策が十分ではなかったことを認めた。しかし、福島第一原発については「全体としてはコントロールできていると思っていると述べている。次のロイター発信の記事をみてほしい。

福島第1原発の新たな汚染水漏出、東電と連携し対策=官房長官
2013年 10月 3日 11:52 JST
[東京 3日 ロイター] – 菅義偉官房長官は3日午前の会見で、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート) 福島第1原子力発電所のタンクから新たな汚染水が漏出し、その一部が海に流出した可能性があることについて、東電の対応を確認するとともに、汚染水問題解決に向けてしっかり対策を講じていきたいと語った。

菅官房長官は、汚染水問題の抜本的な改革は政府が責任をもって対応し、個々の問題は東電が対応するとしたうえで、今回のような漏れもあってはならないことだと指摘。「実際に漏れているのだから対応策が十分だったとは思わない」と語った。そのうえで「政府と東電が連携し、一切こういうことがないよう、これからもしっかり取り組んでいきたい。最善の努力をしていく」とした。

安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会などで汚染水問題はコントロールできていると発言したこととの関連については「全体としてはコントロールできていると思っている」と答えた。

(石田仁志)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE99201R20131003

福島第一原発が「コントロールされている」という状況ではないのは、首相官邸とIOC委員以外は周知の事実である。ただ、今回の問題は、福島第一原発建屋に流れ込んできている地下水などの問題とは、やや次元が異なる問題である。地下水については、まさに、自然の力をコントロールできないということである。しかし、今回の汚染水漏れについては、そもそも、タンクの状況を把握して作業していれば防げたことである。作業員も別に無用の被ばくは避けたいのであるから、タンクの状況を把握していれば、タンクが満水して汚染水が漏出するということはしなかったであろう。傾斜地にタンクを建設し、さらにそれぞれのタンクに水位計を設置しないということ自体が無茶苦茶な話であるが、そういう構造であるということすら東電首脳部は十分把握しておらず、それゆえに雨水でタンクを満水にして汚染水を漏出させたと推測できる。

ということは、東電首脳部は、福島第一原発の作業現場を十分コントロールできていないということを意味するだろう。これは、非常に重大なことである。そもそも、汚染水の貯蔵タンク自体が不備なものなのであるが、それが不備であることすら、東電首脳部は承知していないのである。単に、自然の地下水や、メルトダウンした原子炉だけでなく、貯蔵タンクの管理という人間の手で作業しうる範囲ですら、東電はコントロールできなくなっているのではなかろうかと思えるのである。

広告

Read Full Post »

2013年9月19日、安倍首相は、自身が「状況はコントロールされている」と9月7日のIOC総会で述べていた福島第一原発の視察を行った。とりあえず、全体の商況については、フジテレビがネット配信した、次の記事でみておこう。

安倍首相、福島第1原発5・6号機の廃炉を決定するよう東電に要請

安倍首相は19日、福島第1原発を訪れ、自ら汚染水漏れの状況などを視察した。
今回の視察には、海外メディアも同行し、世界が注目している。
安倍首相は19日午後2時ごろ、「事後処理に集中するためにも、停止している5号機・6号機の廃炉を決定してもらいたい」と述べた。
安倍首相は19日午後、福島第1原発の5・6号機について、廃炉を決定するよう、東京電力に要請した。
19日、安倍首相は、汚染水漏れの現状と対応を確認するため、福島第1原発を視察した。
福島第1原発を訪れるのは、2012年12月以来、2回目となる。
7日のIOC(国際オリンピック委員会)総会で、安倍首相は自ら、「状況はコントロールされている」と明言していた。
19日は、海外メディアも同行し、世界から注目される中、視察が行われた。
安倍首相は「皆様ご苦労さまです。大変過酷な仕事ですが、まさに廃炉に向けての仕事。日本の未来は皆さんの双肩にかかっています。国としても前面に出て、しっかりと皆さんと使命を果たしていきたい」と述べた。
まず、免震重要棟で汚染水の貯蔵タンクを管理している作業員たちを激励した安倍首相。
バスに乗り、次に向かった先は、ALPSと呼ばれる汚染水から放射性物質を取り除くための装置。
そして、いよいよ汚染水が漏れた貯蔵タンクへ向かった。
福島第1原発では、8月にタンクから汚染水およそ300トンが漏れ、一部が海に流出したおそれもある。
タンクの底のつなぎ目から漏れたとみられているが、原因はわかっておらず、抜本的な対策が打てないのが現状。
そうした中、安倍首相は汚染水が漏れたタンクを視察し、東電の関係者から、汚染水対策の説明を受けた。
安倍首相は「これそのものに、(水が)1,000トン入っているんですよね」と述べた。
およそ2時間に及んだ視察を終え、19日午後、安倍首相は「国が前面に出て、われわれも責任を果たしていかなければいけない。この汚染水の影響は、湾内の0.3平方km以内の範囲内において、完全にブロックされているわけであります」と述べた。
(09/19 16:53)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00254206.html

この視察についての報道で、関心がひかれるのは福島第一原発5号機6号機の廃炉を安倍首相が東電に要請したということである。しかし、5号機6号機は確かにメルトダウンはまぬがれて原型を保っているとはいえ、現実には稼働困難であることはすでに多くの人により周知されていたことだ。これは、結局、現状を追認したものでしかない。そして、この視察の結論は、「国が前面に出て、われわれも責任を果たしていかなければいけない。この汚染水の影響は、湾内の0.3平方km以内の範囲内において、完全にブロックされているわけであります」という安倍首相の発言に集約されるであろう。

さて、このフジテレビの記事には言及されていないが、興味深い出来事があった。共同通信が9月20日に配信した次の記事をみてみよう。

汚染水の影響範囲知らず発言か 首相「0・3平方キロはどこ?」

 東京電力福島第1原発の汚染水問題をめぐり、安倍晋三首相が19日に現地を視察した際、放射性物質による海洋への影響が抑えられていると説明する東電幹部に、「0・3(平方キロ)は(どこか)」と尋ねていたことが20日、分かった。

 首相は東京五輪招致を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会で「汚染水の影響は港湾内0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と説明していたが、実際の範囲がどの程度か理解しないまま発言していた可能性がある。

 安倍首相は東電の小野明所長から放射性物質の海への流出や海中での拡散を防ぐ対策の説明を受けた際に「0・3は?」と質問した。

2013/09/20 19:50 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201309/CN2013092001002086.html

つまり、安倍首相は、実際視察するまで、汚染水の影響がその内部でブロックされているという0.3平方キロメートルの範囲を理解せず、IOC総会で「汚染水の影響は港湾内0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と述べていた可能性があるのである。

まずは、もう一度、福島第一原発の汚染水の海洋流出についてみておこう。9月20日付朝日新聞朝刊には、次のような図が描かれている。汚染水がブロックされているという「港湾」は、福島第一原発建設にともなって建設された港湾全体である。そのうち、汚染地下水が流出しているとみられる原子炉の排水口付近の入口についてはシルトフェンスをはって海水の行き来をおさえているが、何分フェンスであり、完全に抑えることはできない。特に、トリチウムは、基本的には水素のアイソトープであり、それをフェンスで抑えることはできない。シルトフェンス内側では放射性物質が多く検出されているが、外側でも検出されている。そして、この港湾内の海水は、封鎖されているわけではなく。外側の海水と出入りしている。港湾外の海水から放射性物質は検出されていないが、大量にある海水によって稀釈されているだけとみることができるのである。

福島第一原発港湾内の流出防止策と周辺の海水データ

福島第一原発港湾内の流出防止策と周辺の海水データ

「0.3平方キロはどこか」という首相の質問は、こうした細かな事情を十分認識していなかったことを意味するといえる。結局、IOC総会では「0.3平方キロ」という数字のみが強調されていた。もちろん、私のような理系の素養がない一般人でも把握できることが、IOC総会直前の首相に対するレクチャーで言及されていなかったとは思えない。しかし、安倍首相は、視察して始めて0.3平方キロの範囲を「理解」したともいえるのである。

「状況はコントロールされている」「汚染水の影響は港湾内の0.3平方キロで完全にブロックされている」という首相の発言は「虚偽」などと批判されていた。しかし、意図的に虚偽を述べていたよりもはるかに恐ろしい状況なのかもしれない。つまり、安倍は、具体的な状況を自分の頭で把握しようとせず、東電・経産省・原子力規制委員会などの当事者=原子力ムラの主張の楽観的側面のみしかみていないのかもしれないのである。その上で、IOC総会でのスピーチのレトリックとして、ああいうことをいったともいえるのである。

もちろん、これは、安倍首相の個人的資質によるところが大きいだろう。しかし、そればかりではない。彼のような人がトップにいれば、実質的な状況についてはまるで理解しないで、楽観論をたれながしてくれる。当事者たちがそのような楽観論を主張すれば、「隠蔽」「虚偽」という批判を免れない。しかし、安倍首相の場合は、そもそも事態を認識していないのであるから「隠蔽」「虚偽」と批判されても本人はこたえない。安倍首相は、原子力ムラを含めた現代日本の統治者たちにとって、「期待される人間像」なのである。

しかし、楽観論ですむのだろうか。事態に根本的な対策をたてようとせず、根拠の薄い楽観論に基づいて、その場しのぎの対策をしか出さない状況は、まるで、太平洋戦争中のようである。当時の陸海軍は、自分たちの立場に不利になる戦局の悪化については、国民はおろか自分たち以外の政府機関にも隠蔽しようとした。ゆえに、全体的な戦争指導としては、楽観論に終始し、より戦局の悪化を招いていった。同じような状況は、福島第一原発でもみられる。コントロールしていないのは「汚染水」だけではない。福島第一原発に関わる東電や政府の組織もコントロールできていないのである。

Read Full Post »

ブエノスアイレスで開催された9月7日のIOC(国際オリンピック委員会)総会で、2020年の東京オリンピック開催が決定された。

2020年のオリンピック開催については、東京、イスタンブール、マドリードが立候補していたが、東京は福島第一原発事故の処理、イスタンブールは反政府デモや隣国シリアの内戦などの政情不安、マドリードは経済危機と、それぞれ問題をかかえていた。結果的にいえば、IOCは、経済危機や政情不安よりも、福島第一原発の事故処理のほうがオリンピック開催における克服可能な課題と考えたのだろうといえる。そう考えてみれば、この3都市の中で、東京が選ばれる可能性はもともと少なくはなかったと思われる。これについては、いろいろ考えていることがあるが、それは別の機会にしたい。

さて、東京オリンピック開催決定のIOC総会でなされた東京招致委員会のプレゼンテーションの中で、安倍首相もスピーチをし、その中で短く福島第一原発のことについて触れた。そして、その後、IOC委員から福島第一原発について質問が出て、それにも安倍首相は答えた。福島第一原発についての安倍首相の発言の要旨について、朝日新聞が2013年9月8日にネット配信している。この発言については、NHKのテレビでリアルタイムに聞いていたが、大体この通りであった。

「ヘッドラインではなく事実みて」汚染水巡る首相発言

 東京電力福島第一原発の放射性物質汚染水漏れをめぐる安倍晋三首相の発言要旨は次の通り。

 【招致演説で】

 状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えるようなことを許したりはしない。

 【国際オリンピック委員会(IOC)委員の質問に対し】

 結論から言うと、まったく問題ない。(ニュースの)ヘッドラインではなく事実をみてほしい。汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている。

 福島の近海で、私たちはモニタリングを行っている。その結果、数値は最大でも世界保健機関(WHO)の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。これが事実だ。そして、我が国の食品や水の安全基準は、世界で最も厳しい。食品や水からの被曝(ひばく)量は、日本のどの地域でも、この基準の100分の1だ。

 健康問題については、今までも現在も将来も、まったく問題ない。完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している。

 【演説後、記者団に】

 一部には誤解があったと思うが、誤解は解けた。世界で最も安全な都市だと理解をいただいたと思う。http://www.asahi.com/politics/update/0908/TKY201309070388.html

安倍首相の原発問題についての発言について、2013年9月10日付朝日新聞朝刊の社説「東京五輪―原発への重い国際公約」の中で、

 「状況はコントロールされている」「汚染水の影響は原発の港湾内で完全にブロックされている」――国際オリンピック委員会(IOC)総会での安倍首相のプレゼンテーションと質疑応答は、歯切れがよかった。

 必ずしも原発事故の問題に精通しているわけではないIOC委員には好評で、得票にもつながった。http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2

と評されている。全く、スピーチにおけるレトリックの問題に限定するならば、そうなんだろうと私も思う。日本の国政の最高責任者が「安全だ」とお墨付きを与えること、つまり、福島第一原発事故問題は、日本政府によって克服している問題であるということ、これがIOC委員たちの求めていることであったに違いない。IOC委員たちの求めていた答えを、安倍首相は言い切ったのである。

それにしても、「(ニュースの)ヘッドラインではなく事実をみてほしい。」とは、人を食った発言である。安倍首相の発言内容は「事実」なのか。朝日新聞の同社説は、「だが、この間の混迷ぶりや放射能被害の厳しさを目の当たりにしてきた人には、空々しく聞こえたのではないか。」とも述べている。

そもそも、福島第一原発の状況を「コントロール」しているということ自体が事実に反するだろう。今日(2013年9月10日)も、汚染水貯蔵タンク周辺や1号機のタービン建屋周辺の井戸水が放射能で汚染されたことが報道されている。NHKの次のネット配信記事をみてほしい。

福島第一原発 地下水の汚染拡大か
9月10日 4時21分

福島第一原発 地下水の汚染拡大か
東京電力福島第一原子力発電所でタンクの汚染水が漏れた問題で、地下水への影響を調べるためタンクの周辺に新たに掘った2本目の井戸の水からも、ストロンチウムなどのベータ線という種類の放射線を出す放射性物質が高い値で検出されました。
東京電力は地下の汚染が拡大しているとみて調べています。

福島第一原発では先月、4号機の山側にあるタンクから、高濃度の汚染水300トン余りが漏れ、一部が側溝を通じて、原発の専用港の外の海に流出したおそれがあります。
東京電力が問題のタンクのおよそ20メートル北側に新たに掘った井戸で8日採取した水を調べたところ、ストロンチウムなどのベータ線という種類の放射線を出す放射性物質が1リットル当たり3200ベクレルという高い値で検出されました。
今月4日にはタンクの南側の井戸の水からも放射性物質が検出されていて、今回はその値よりさらに高く、東京電力は漏れ出した汚染水が地下水に到達し、汚染が拡大しているとみています。
100メートル余り海側には、建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げて海に放流するための井戸があり、影響が懸念されていて、東京電力はさらに観測用の井戸を増やして詳しく調べることにしています。
一方、高濃度の汚染水がたまっている1号機のタービン建屋のすぐ海側の井戸で今月5日に採取した水から放射性物質のトリチウムが1リットル当たり8万ベクレルという高い値で検出されました。
この井戸は原発事故の前から設置されていて、今回、監視を強化するためにほぼ1年ぶりに分析したところ、濃度は上昇していました。
東京電力は「継続的に見ていかないと原因や傾向はわからない」としています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130910/k10014415491000.html

より包括的に、安倍首相の発言内容が事実であるかいなかを厳しく検証しているのが、次の毎日新聞の9月9日付ネット配信記事である。

安倍首相:汚染水「完全にブロック」発言、東電と食い違い
毎日新聞 2013年09月09日 21時07分(最終更新 09月10日 01時09分)

 安倍晋三首相が、7日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会の五輪招致プレゼンテーションで、福島第1原発の汚染水問題をめぐり、「完全にブロックされている」「コントロール下にある」と発言したことについて、「実態を正しく伝えていない」と疑問視する声が出ている。

 9日に開かれた東京電力の記者会見で、報道陣から首相発言を裏付けるデータを求める質問が相次いだ。担当者は「一日も早く(状況を)安定させたい」と応じた上で、政府に真意を照会したことを明らかにするなど、認識の違いを見せた。

 防波堤に囲まれた港湾内(0.3平方キロ)には、汚染水が海に流出するのを防ぐための海側遮水壁が建設され、湾内での拡大防止で「シルトフェンス」という水中カーテンが設置されている。また、護岸には水あめ状の薬剤「水ガラス」で壁のように土壌を固める改良工事を実施した。

 しかし、汚染水は壁の上を越えて港湾内に流出した。フェンス内の海水から、ベータ線を出すストロンチウムなどの放射性物質が1リットル当たり1100ベクレル、トリチウムが同4700ベクレル検出された。東電は「フェンス外の放射性物質濃度は内側に比べ最大5分の1までに抑えられている」と説明するが、フェンス内と港湾内、外海の海水は1日に50%ずつ入れ替わっている。トリチウムは水と似た性質を持つためフェンスを通過する。港湾口や沖合3キロの海水の放射性物質は検出限界値を下回るが、専門家は「大量の海水で薄まっているにすぎない」とみる。

 さらに、1日400トンの地下水が壊れた原子炉建屋に流れ込むことで汚染水は増え続けている。地上タンクからは約300トンの高濃度汚染水が漏れ、一部は、海に直接つながる排水溝を経由して港湾外に流出した可能性がある。不十分な対策によるトラブルは相次ぎ、今後もリスクは残る。「何をコントロールというかは難しいが、技術的に『完全にブロック』とは言えないのは確かだ」(経済産業省幹部)という。

 安倍首相は「食品や水からの被ばく量は、どの地域も基準(年間1ミリシーベルト)の100分の1」とも述べ、健康に問題がないと語った。厚生労働省によると、国内の流通食品などに含まれる放射性セシウムによる年間被ばく線量は最大0.009ミリシーベルト。だが、木村真三・独協医大准教授は「福島県二本松市でも、家庭菜園の野菜などを食べ、市民の3%がセシウムで内部被ばくしている。影響の有無は現状では判断できない」と指摘する。【鳥井真平、奥山智己】
http://mainichi.jp/select/news/20130910k0000m040073000c2.html

そもそも、安倍首相は、福島第一原発の港湾部で放射能汚染水がブロックされているといっていたが、港湾と外洋はフェンスによって仕切られているものの、完全に封鎖されているわけではなく、水は移動できる状態である。原子炉建屋への地下水流入はコントロールされておらず、汚染水は増える一方である。

そして、食品に対する放射性物質による汚染についても、流通食品についてはそれなりにコントロールしているが、家庭菜園などの野菜によって内部被ばくした可能性があることが指摘されている。さらに、9月10日付東京新聞朝刊では、「疑問符の付く安倍首相の発言はもう一つ。『日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい』と説明したが、厳密には違う。チェルノブイリ事故の影響を受けたベラルーシは、一部の食品の基準が日本よりも厳しい」と述べている。

このような安倍首相の発言内容に対し、現在、福島第一原発からの汚染水流出によって最も被害を蒙っている福島県の漁業者その他は「あきれた」と発言する他なかった。9月8日の福島民友新聞ネット配信記事をみてほしい。

汚染水めぐる首相発言に批判の声 福島の漁業者ら「あきれた」
(09/08 20:51)

 「状況はコントロールされている」。安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)総会で、東京電力福島第1原発事故の汚染水漏れについて、こう明言した。しかし、福島の漁業関係者や識者らからは「あきれた」「違和感がある」と批判や疑問の声が上がった。「汚染水の影響は福島第1原発の港湾内0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」とも安倍首相は説明した。だが、政府は1日300トンの汚染水が海に染み出していると試算。地上タンクからの漏えいでは、排水溝を通じて外洋(港湾外)に流れ出た可能性が高いとみられる。
http://www.minyu-net.com/newspack/2013090801001923.html

そして、とうとう、菅官房長官も、汚染水を含む港湾部の海水が外洋との間で出入りしていることを認めざるを得なかった。結果的に、安倍発言の一部を訂正したことになるといえる。9月10日に配信した朝日新聞のネット配信記事をみてほしい。

「全部の水、ストップではない」 汚染水問題で官房長官

 菅義偉官房長官は10日午前の記者会見で、東京電力福島第一原発の放射能汚染水漏れについて「全部の水をストップするということではない」と述べ、同原発の港湾の内外で汚染水を含む海水が出入りしていることを認めた。

 安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会で「汚染水の影響は港湾内で完全にブロックされている」と発言した真意を問われて答えた。ただ、菅氏は「港湾内でも大幅に基準値以下だ。汚染水の影響については完全にブロックされていると申し上げた」と強調した。

 安倍首相は同日午前、首相官邸で記者団に「ブエノスアイレスでの約束はしっかり責任をもって実行したい」と述べた。http://www.asahi.com/politics/update/0910/TKY201309100112.html

そして、笑うしかないのは、次の朝日新聞のネット配信記事(9月10日)である。

福島第一原発の汚染水対策 関係閣僚会議が初会合

 東京電力福島第一原発の汚染水問題で、安倍政権は10日午前、廃炉・汚染水対策関係閣僚会議(議長・菅義偉官房長官)の初会合を開いた。五輪招致の演説で、安倍晋三首相は汚染水漏れは制御できているとの考えを示した。その裏付けとなる対策づくりを急ぐ。

 菅長官は会合の冒頭、「総理の発言どおり、状況を確実にコントロールして解決につなげていくことが必要」と述べ、対策を東電任せにせず、政府が前面に出る考えを強調した。

 閣僚会議の下に、茂木敏充経済産業相をチーム長とする「廃炉・汚染水対策チーム」をもうけることを決めた。技術的に難しい課題について国内外から解決策を募り、2カ月後をメドに対応をとりまとめる。
http://www.asahi.com/politics/update/0910/TKY201309100079.html

安倍発言は、「汚染水漏れは制御できている」としている。これは、現在「制御できている」という意味だ。しかし、廃炉・汚染水対策関係閣僚会議では「その裏付けとなる対策づくりを急ぐ」としている。対策はまだつくられてもおらず、実施は当然されていない。未来に属することだ。未来に成立する対策によって、現在の状況を「制御」するというのである。原因と結果が取り違えられているとしかいえない。

事が起こってからあわてて対策や準備をしたりすることを「泥棒を捕えて縄をなう」というが、現状では、汚染水という「泥棒」は捕まえてさえいないのだ。

今、それこそ、「ニュースのヘッドラインだけを見させて、事実を見せない」報道が蔓延している。しかし、その中で「事実」を探してみると、以上の通りなのである。東京オリンピック開催が決定されようとしまいと福島第一原発は存在している。そして、専門家ではなく、責任もないIOC委員たちがどう考えようと、福島第一原発は東京におけるオリンピック開催への「脅威」であり続けているのである。

Read Full Post »

さて、福島第一原発汚染水問題についての政府の方針が9月3日に発表された。まず、次の毎日新聞がネット配信した記事をみておこう。

福島第1原発:政府の汚染水対策 柱は「アルプス」増設
毎日新聞 2013年09月03日 19時42分(最終更新 09月03日 20時29分)

 政府が3日決めた東京電力福島第1原発の汚染水対策の柱は、地下水が原子炉建屋に流入するのを防ぐ「凍土遮水壁」の建設と、汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS(アルプス)」の増設・改良だ。両事業に計470億円の国費を投入し、汚染水問題収拾へ「国が前面に出る」(安倍晋三首相)姿勢をアピールする。

 事業費の内訳は遮水壁320億円、除去装置150億円。今年度予算の予備費(総額約3500億円)から遮水壁に140億円、除去装置に70億円を充て、事業を前倒しで進める。

 組織体制も強化。経済産業省や原子力規制庁に加え、国土交通省や農林水産省も入る関係閣僚会議を設け、汚染水を増幅している地下水対策などに政府一丸で取り組む。また、福島第1原発近くに現地事務所を設けて国の担当者が常駐、東電や地元との連携を強める。風評被害防止を狙いに海洋での放射性物質の監視を強めるほか、在外公館を通じた国際広報体制も充実させる。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130904k0000m010040000c.html

結局、国が前面に出るといっても、「凍土遮水壁」建設と多核種除去装置(ALPS)の増設・改良に国費を投じるというだけだ。問題の汚染水貯蔵タンクの改修については、いまだ東電まかせだ。9月4日のロイターのインタビューにおいて、茂木経産相は、次のように語っている。

(前略)
ただ、8月下旬に汚染水貯蔵タンクから約300トンの高濃度汚染水の漏えいが発覚するなど、事態は予断を許さない。タンク問題について茂木経産相は「(東電の)管理態勢の問題。パトロールの強化、漏えいの検出装置の設置など5つの強化策を指示した。東電もより緊張感をもって仕事に当たってくれると思っている」などと述べ、東電側の改善を見守る考えを示した。

その上で、汚染水問題を含む福島第1の廃炉作業における東電と政府の役割分担について「国が前面に出て、廃炉の問題や汚染水問題も(対応を)加速化させていきたいと思っているが、日々のオペレーションは原発を所有している東電が責任を持つことになる」と語り、作業の主体は一義的には東電だという政府としての見解をあらためて強調した。

<「廃炉庁」は否定>

未曽有(みぞう)の原発事故から2年半が経過し、失態を重ねてきた東電に対する国内外の不信感は根深い。廃炉の作業自体を国が全面的に引き受けるべきと指摘する声も少なくない。

ただ茂木経産相は、受け皿となる「廃炉庁」のような新しい組織を作る考えについては否定した。「エネルギー政策をどうするのか、大きな視野で(検討を)やらないといけない。1つの分野に限った新しい組織を作ることで作業が加速化していくかというと、必ずしもそうではないなと思っている」と語った。

(インタビュアー:ケビン・クロリキー)
http://jp.reuters.com/article/jp_energy/idJPTYE98307920130905?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0

結局、長期的にも、東電に日々のオペレーションをまかすということであり、東電の責任ー株主や金融機関の責任をただす姿勢はない。この国費投入もまた、破たん企業東電に対する法外な支援なのである。そして、汚染水タンクの設置・管理すらできない東電に日々のオペレーションをまかすという体制こそ、一番の問題である。

さて、政府が国費を投じて行うという凍土遮水壁の設置と多核種除去装置(ALPS)の改良・増設についてみておこう。凍土遮水壁とは、原子炉建屋への地下水の流入や、そこからの汚染地下水の流出を防ぐために、凍土による遮水壁を建屋周辺の地下に設置するというものである。この凍土遮水壁がそもそも実現可能なものか、そして実現されたとしても十分機能をはたすのか、いろいろと疑問がある。また、とりあえず、これらの疑問はおいておくとしても、その設置は年単位でかかり、急場の汚染水対策には寄与できない。ただ、今は、可能と思われることを何でもするということは必要だろうとは考えられるだろう。

他方、多核種除去装置(ALPS)の改良・増設であるが、これは、大きな問題をはらんでいる。多核種除去装置(ALPS)は、従来の除去装置がセシウムだけしか汚染水から除去できないものだったのに対し、ストロンチウムその他、多くの放射性物質を放出限界以下まで除去することができるというものである。この装置は東芝製で、すでに福島原発に設置されていたが、これすらも汚染水もれを起こして、現在は稼働できないものとなっている。多核種除去装置(ALPS)の改良・増設とは、現在ある装置の不備を修繕して、さらに、増設して、どんどん東電に汚染水処理を進めさせようということを意味する。

そして、処理済みの汚染水をどうするのか。田中俊一原子力規制委員会委員長は9月2日の日本外国特派員協会における講演で次のように語っている。ここではロイターのネット配信記事を出しておく。

原子力規制委員長、低濃度汚染水の海洋放出の必要性強調
2013年 09月 2日 16:55 JST

9月2日、原子力規制委員会の田中委員長は、福島第1原発における汚染水問題が深刻化していることについて「(東電の対応は)急場しのぎで様々な抜けがあった」と指摘。

[東京 2日 ロイター] – 原子力規制委員会の田中俊一委員長は2日、日本外国特派員協会で講演し、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所における汚染水問題への対応で、放射能濃度を許容範囲以下に薄めた水を海に放出する必要性をあらためて強調した。

政府や東電よると、福島第1原発1─4号機に流入してくる地下水(推定日量1000トン)の一部が、配管や電線を通す地下の坑道にたまっている汚染源に触れ、海に日量約300トンが放出されている。また、8月19日には、汚染水を貯蔵している地上のタンクから約300トンの高濃度の汚染水が漏れていることがわかり、これが排水溝を通じて外洋に流れた可能性も否定できないとしている。

田中委員長は講演で、 汚染水の海洋への影響について「おおむね港の中で、(港湾の)外に出ると(放射性物質は)検出限界以下だ」と指摘。その上で田中氏は、「必要があれば、(放射性濃度が)基準値以下のものは海に出すことも検討しなければならないかもしれない」と述べた。

多核種除去設備(ALPS)で処理した汚染水を一定濃度に薄めて海洋に放出する必要性については、田中氏が過去の記者会見でも言及した。ただ、ALPSに通してもトリチウムは取り除けない。東電は2011年5月から今年7月までに20兆から40兆ベクレルのトリチウムが海に出たと試算している。

この数値について、田中氏は「とてつもなく大きな値に見えるが、トリチウム水としてどれくらいか計算すると最大で35グラムくらいだ」と述べ、十分に低い水準であるとの認識を示した。

一方で田中氏は、タンクからの汚染水漏れなど対応が後手に回る東電の対応について、「急場しのぎで様々な抜けがあった」と指摘。田中氏は「福島第1は今後も様々なことが起こり得る状況。リスクを予測して早めに手を打つことが大事だ」と強調した。

(浜田健太郎;編集 山川薫)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE98103M20130902

ここでは、多核種除去装置(ALPS)で処理した低濃度汚染水(もちろん、完全には取り除けない)を、海洋に放出する必要があると田中は述べた。重要なことは、この装置では、トリチウム(三重水素)は除去できないということだ。

つまり、この国費投入による多核種除去装置(ALPS)の改良・設置は、ある意味では、海洋へのトリチウム汚染水の放流につながりかねないものなのである。まさしく、技術的においても、そのような危険性をはらんでいる。このようなことがなされれば、福島県周辺の漁業者だけでなく、日本列島すべての人の脅威となろう。さらに、海洋への汚染は、広くいえば全世界の問題ともなる。オリンピック招致への影響を懸念して、国会審議もなく、このような重大な問題が決められてしまった。しかし、このことは、これではすまないだろうと考える。

Read Full Post »

このプログでも何度もとりあげている福島第一原発の汚染水流失について、8月23日、原子力規制委員会の更田豊志委員が現地視察を行った。このことについては、実はあまり報道されていない。また、テレビなどで報道されても、その動画はあまりアップされていない。

NHKの全国ニュースをみていても、福島第一原発についてはほとんど出て来ない。しかし、福島放送局の「福島県のニュース」として、ある程度、動画つきでネット配信されている。それは、次のようなものである。

http://www.nhk.or.jp/lnews/fukushima/6053805851.html?t=1377292675313

なお、このような記事は、早期にすべて削除される恐れがあるので、記事部分だけをここで引用しておこう。

原子力規制委が現地視察

原子力規制委員会の更田豊志委員は、23日、タンクから300トンあまりの汚染水が漏れ出た東京電力福島第一原子力発電所を視察し、東京電力に対し、点検がずさんだと指摘した上で「人手の問題などでできないことがあれば国などに対して声を上げてほしい」と呼びかけました。
原子力規制委員会の事務局によりますと、更田豊志委員は、23日午前、福島第一原発を訪れ、今月19日に300トンの汚染水が漏れ出ていることが分かったタンクの周辺などを見て回ったということです。
視察の後、取材に応じた更田委員は、「タンクから漏れることを前提とした準備がとられていたとは思えない。異常に気づくには、小さな変化も見逃せないが、そのために必要となるタンク周辺の通常の放射線量の記録などが残されていないのは、点検に対する姿勢を疑わざるをえない」と東京電力の対応を批判しました。
その上で、東京電力側からは、「点検を強化するには4倍の人員が要る」などと説明があったということで、これに対して更田委員は、「できないことがあれば声を上げてほしい」と呼びかけたということです。
また更田委員は「万全を尽くしていると言うことより、やりたい対策ができない現状を言うことの方が大事だ。事業者が言えないという難しい事情は分かるが、ぜひ勇気を持って声を上げてほしい。お金や人手の問題があれば、資源エネルギー庁などに対して要望を言わなければならない」と話しました。
08月23日 19時14分

実際、この動画をみて驚いたのだが、高濃度汚染水が漏洩したと思われる貯蔵タンクのまわりに「土のう」が積まれていた。そして、それをみて、更田委員と思われる人物が「これでさ、水が止まっていると思うか」とつぶやいていた。

福島第一原発の高濃度汚染水の流失を抑えようとして、東電は、最早「土のう」を積むしかなかったのである。「土のう」は、もちろん、ある程度の水を抑えることはできる。しかし、完全に「漏洩」を防ぐことはできない。そもそも、「土のう」は洪水対策に使うものであって、放射能防護対策に使うようなものではない。どうみても不十分な対策だが、この「土のう」を積む作業でも、作業した労働者は、かなりの被ばくをしたと考えられる。

また、動画をみてみよう。更田委員とおぼしき人物が「排水溝」のほうをみにいき、まるで自然の小川のように流れている排水溝をみて、東電側の説明をうけながら、「これなあ、これ海にいっているじゃない。このまま、ジャーンと合流してこのまま…」と述べている。東電は、汚染水の海への流出を認めたがらなかったが、結局、原子力規制委員会としては、汚染水が海に流失した可能性を認めたのである。

そして、現場で、更田委員が通常の放射線量の記録をとっているかと質問し、東電側が残していないと答えたやりとりが残されている。なお、この動画では残されていないが「点検を強化するには4倍の人員が要る」と東電は弁解したそうである。

その後で、更田委員が記者会見している動画が挿入されているが、それは、ほぼ記事内容通りである。

そもそも、300トンもの汚染水が流失したにもかかわらず、その汚染水の大半が残されていないのは、タンクの周りにあった堰の排水弁が開けられていたというミスのためである。このこと自体ズサンなのだが、「土のう」を積んで汚染水漏洩を防ごうとする、海に流れている排水溝があっても汚染水の海洋流出を認めようとはしない、通常の点検時の放射線量の記録をとっていないなど、私のような素人がみても東電の対応はおかしい。

そして、更田委員が、「万全を尽くしていると言うことより、やりたい対策ができない現状を言うことの方が大事だ。事業者が言えないという難しい事情は分かるが、ぜひ勇気を持って声を上げてほしい。お金や人手の問題があれば、資源エネルギー庁などに対して要望を言わなければならない」と東電によびかけている。しかし、これだけでは、最早、問題解決にならないだろう。原子力規制委員会は、8月14日、汚染水対策にはさらなる検討が必要としながらも、東電の福島第一原発の廃炉計画を認可した。だが、「高濃度汚染水」の放射線量の点検記録をとっていないことすら、「4倍の人員がいる」と弁解した会社が東電なのだ。コスト増になろうとなるまいと、点検などまっとうな管理作業に必要な労働者は確保しなくてはならず、そのことによって、破たん処理を免れたことの正当性が確保できるのが東電の置かれた立場である。にもかかわらず、コスト増になることを恐れてズサンな管理をしているのが東電の現状なのである。コスト減に努力するのは、民間の営利会社の本性といってよい。しかし、東電は、営利会社という自己の本性に忠実であればあるほど、自己の立場を失っていくであろう。

とにかく、この動画は、福島第一原発の管理を東電に任せておけないことを雄弁に物語っているといえよう。そして、それがゆえに、NHKなどは、この報道を抑制していると考えられるのである。

なお、ネット記事配信が削除される可能性があるので、Youtubeにアップされていた、TBSとFNNのニュース動画もここでは紹介しておく。原子力規制委員会の現地視察は、今回漏れた貯蔵タンクだけではない。原子炉建屋の汚染地下水対策も検討しており、このタンクとは違った溶接型のタンクについても漏洩対策が不十分であることを指摘している。

Read Full Post »

福島第一原発の危機は、日々拡大・深化している。あまりにも、多方面で、さまざまなレベルの異常事態が頻発しており、ブログでの整理が追いつかないほどである。

今回は、汚染水貯蔵タンクから300トンもの汚染水がもれたというのである。まず、その第一報をみてみよう。東京新聞は、2013年8月20日、次のような記事をネット配信した。

福島第一タンク周辺 100ミリシーベルト超汚染水漏れ

2013年8月20日

 東京電力は十九日、福島第一原発で、高濃度汚染水から放射性セシウムを除去した処理水をためるタンク周辺で、水が漏れていたと発表した。処理水には放射性ストロンチウムなどが含まれており、周辺に漏れた水の表面近くで毎時一〇〇ミリシーベルトを超える非常に高い放射線量が計測された。 
 敷地内には千基近いタンクがある。漏れが見つかったのは二十六基がある海側のエリアで、鋼板をボルトで張り合わせるタイプのタンクが使われていた。同日午前九時五十分ごろ、見回り中の東電社員が、タンク周りにある高さ〇・三メートルのコンクリート製の堰(せき)の排水弁から水が流れ出ているのを見つけた。堰の内側に二カ所、外側に二カ所の水たまりができており、一〇〇ミリシーベルト超の放射線量は外側の水たまりの真上約五十センチで計測された。
 この場所に一時間いれば、一般人の年間被ばく線量限度(一ミリシーベルト)の百年分に達することになる。前夜の見回りでは、水漏れはなかったという。
 通常は堰の内側に雨水がたまらないよう、弁は開けっ放しになっているが、漏れが見つかり、弁を閉めた。堰の外側には土のうが置かれているが、少なくとも百二十リットルが外部に漏れ、地中にも染み込んだとみられる。
 ボルト締めタイプのタンクは、鋼板の間をパッキンでふさぐ簡易構造。東電は漏れた原因を調べようとしているが、土のう近くの空間でも毎時二〇ミリシーベルトの線量があるため調査は難航。漏れた水や周辺の汚染土の回収が先決となる。漏れは続いている可能性もある。
 原子力規制委員会は国際的な事故評価尺度のレベル1と暫定的に評価。八段階のうち下から二番目の「逸脱」に当たる。規制委は東電に、漏えい場所の特定とモニタリング監視の強化、汚染土の回収を指示した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013082002100003.html

東京新聞によれば、この汚染水が、調査が難航するほどの高い放射線量であることがわかる。しかし、この時の報道では120リットル以上ということであり、小規模なものという印象を受けた。ゆえに、原子力規制委員会も事故評価尺度をレベル1(逸脱)としたのであろう。

しかし、第二報で、その印象は一変する。漏洩した汚染水は300トンにのぼるというのである。東京新聞で次のネット記事をみてみよう。

福島第一 タンク漏水300トン 高濃度、限度の数百万倍

2013年8月20日

 東京電力福島第一原発の地上タンクから高濃度汚染水が漏れた問題で、東電は二十日、一つのタンクの水位が大幅に下がっていたことから、漏れた汚染水は三百トンにのぼるとの推計値を発表した。十九日の段階では、タンク群を取り囲む堰(せき)外に百二十リットルの水たまりがあり、土にも染み込んでいるとしていたが、ずっと多かった。まだ漏れた場所は特定できておらず、現在も漏れが続いている可能性がある。
 東電によると、漏れたのは、原子炉建屋地下などにたまる高濃度汚染水から放射性セシウムを除去した処理水をためるタンクの周辺で、海側に二十六基あるエリア。十九日夜から堰の内側にたまった汚染水の回収を開始。その際、うち一基の周辺の水量が多かったため、タンクの水位を確認したところ、本来の水位より三メートル近く低くなっていた。タンク容量は約一千トンあり、うち約三百トンが漏れたとみられる。三百トンは、一般的な二十五メートルプール(四百~五百トン)の水量に近い。
 漏れた汚染水を分析したところ、セシウム134は一リットル当たり四万六〇〇〇ベクレル、セシウム137は同一〇万ベクレルが検出された。法令で放出が認められる濃度限度の千倍を超える。放射性ストロンチウムなども同八〇〇〇万ベクレルと極めて高い濃度が検出された。同じく濃度限度の数百万倍に達する。
 水面から五十センチ離れた地点での放射線量は毎時一〇〇ミリシーベルトで、この場所に一時間いれば、がんが発生するリスクが明らかに上昇する値。一般人の年間被ばく線量限度(一ミリシーベルト)の百年分になる。
 海への漏出が懸念されるが、海につながる近くの排水溝周辺の放射線量は低く、海まで五百メートルほどあることから、東電は今のところ海への漏出はないとみている。
 問題のタンクは鋼板をボルトでつなぎ合わせ、樹脂製のパッキンで止水した簡易構造で耐久性の問題が指摘されてきた。他のタンクが漏れているかどうかは確認されていない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013082002100007.html

タンクの1基の水位が3mも下がっており、そこから逆算して300トン流出したというのである。そしてまた、漏れ出した汚染水の汚染濃度もあきらかになった。放射性セシウムを除去したはずだが、それでも放出限度濃度の1000倍もあった。放射性ストロンチウムにいたっては、放出限界濃度の数百万倍もあるということである。

しかし、この時点で、東電は、海への漏出はないとしていた。後に、この情報もひっくり返ることになるのだが…。

さて、もう少し、この汚染水漏れ報道を東京新聞で時系列にそって追ってみよう。21日に、東京新聞は次のネット記事を配信した。

福島第一汚染水300トン タンク底から漏れる?

2013年8月21日

 東京電力福島第一原発のタンクから三百トン(東電の推計)の高濃度汚染水が漏れた問題で、東電は原因調査を進めたが、ボルト締め型タンクの弱点である側面の鋼板の継ぎ目に、水が漏れた痕跡は確認できず、底部から漏れた可能性が高まった。大量の漏れが確認され、原子力規制委員会は、国際的な事故評価尺度で下から二番目のレベル1としていた暫定評価を、引き上げる方向で検討に入った。 
 問題のタンクは三百五十基あり、原子炉の冷却後に出る汚染水をためる主力となっている。鋼板の間に樹脂製パッキンを挟み防水性を保っているが、パッキンの耐用年数は五年。同型のタンクで、四回の水漏れが起き、いずれも鋼板の継ぎ目からの漏出だった。
 十九日に漏れが見つかるまで、タンク周辺の見回りでは異常に気付かなかった。二十日にタンクの水位が本来の水位より三メートル下がっていたことを確認。短期に一般的な二十五メートルプール(四百~五百トン)の水量に近い汚染水が漏れたことになる。
 東電はタンク側面を中心に漏れた痕跡を探したが、見つからなかった。タンクは下部ほど水圧がかかり、汚染水はタンクの各方向に漏れていた。タンク底部の可能性が残る。
 汚染水は、放射性セシウムの大半は除去されているが、放射性ストロンチウムなどは一リットル当たり八〇〇〇万ベクレルと極めて高い濃度で残る。法令で放出が認められる濃度限度の数百万倍に達する。ストロンチウムなども除去する新装置の導入が検討されているが、トラブルで止まっている。
 汚染水の放射線量は水面から五十センチ離れた地点で毎時一〇〇ミリシーベルトあった。この場所に一時間いれば、がんが発生するリスクが明らかに上昇する値。
 今のところ海まで流れ込んだ可能性は低いとされる。ただ、高濃度のため、東電はタンク群の周囲に設けられたコンクリート製の堰(せき)内にたまった汚染水が拡散しないよう、汚染水の回収や土のうを積み増す対策に追われた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013082102100003.html

ここでは、原子力規制委員会が事故評価尺度を引上げることを検討していることと、タンク側面ではなく底部から漏れ出したのではないかと推測されていることが、新たに報じられている。

そして、これは当たり前だが、漏洩したタンクから汚染水を移送することに着手されたことも、次のように、東京新聞は報じている。

東電「依然、漏えい」 別タンクに移送

2013年8月21日

 福島第一原発の地上タンクから高濃度の汚染水が漏れた問題で、東京電力は二十一日、依然として漏えいが続いているとの見解を示した。既に隣接する別のタンクへの汚染水移送を始めており、二十一日中にも完了するとの見通しを明らかにした。
 東電によると、移送は二十日午後十時ごろ開始。移送量はポンプ二台で一時間当たり計約四十トン。漏えいがあったタンク(容量千トン)は鋼鉄製の部材をボルトでつないで組み立てる構造で、移送先のタンクも同じ構造。東電は「(移送先の)安全は確認した」としている。
 漏えいがあったタンクは二〇一一年十月に設置された。漏えい箇所は特定できていない。東電は原因を調べるとともに、これまで一日二回だった周辺のパトロールを三時間ごとに増やし、汚染が拡大していないか警戒を強める。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013082102100014.html

そして、他の記事でも前述されているが、原子力規制委員会が事故評価尺度を二段階引き上げてレベル3(重大な異常事象)にすることを検討していることを、8月21日に東京新聞はネット配信している。

タンク汚染水漏れ レベル3に引き上げへ 規制委、評価見直し

2013年8月21日

 東京電力福島第一原発のタンクから三百トン(東電の推計)の高濃度汚染水が漏れた問題で、原子力規制委員会は二十一日の定例会で、国際的な事故評価尺度で下から二番目のレベル1としていた暫定評価を、レベル3に二段階引き上げる可能性があるとの見解を示した。
 規制委は、汚染水にベータ線を出す放射性ストロンチウム90(法定基準は一リットル当たり三〇ベクレル)などが一リットル当たり八〇〇〇万ベクレルと、放出が認められる濃度限度の数百万倍に達する極めて高い濃度であり、三百トンの漏出量から数千テラベクレル規模(テラは一兆)の漏出があると推定。規制委事務局は放射線の管理上、レベル3の重大な汚染に相当するとしている。
 汚染水漏れが発覚した十九日の段階では、漏れた汚染水の量がはっきりしなかったため、規制委は暫定的にレベル1と評価していた。その後、東電が漏れた量を三百トンと推定したことから、評価を見直すことにした。
 ただし、国際基準は通常の原発での事故を評価対象にしている。すでに福島第一原発事故自体は最悪のレベル7と認定されており、それに関連して起きた今回のタンク事故を個別に評価することが適切なのか、基準を所管する国際原子力機関(IAEA)に確認するとしている。
 国内でのレベル3事故は、一九九七年に起きた動力炉・核燃料開発事業団(当時)東海アスファルト固化処理施設爆発事故がある。
 国際評価尺度(INES) 原発など原子力施設で発生したトラブルの規模や深刻度を示す世界共通の物差し。国際原子力機関(IAEA)などが設定した。レベル1~3は「異常な事象」、レベル4~7は「事故」に区分。評価基準は施設内の汚染度合いや安全設備の状態などで、レベル2は相当量の汚染、安全設備の重大な欠陥などが該当し、レベル3は数千テラベクレルの放射能の放出、安全設備が残されていない事故寸前の状態などが該当する。最終的な判断は、IAEAに意見を聞く場合もあるが、各国の規制機関が評価する。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013082102100015.html

そして、8月22日になると、次のことが報道された。このタンク群の周りに汚染水が広がらないように堰が設けられているが、汚染水漏れを発見する便宜をはかって、雨水がたまらないように排水弁が開放されていたため、排水溝をつたって汚染水が海に流出した可能性が高いことが判明したのである。さすがに、原子力規制委員会でも問題となり、「更田豊志(ふけたとよし)委員は、弁が開いていたことに関し、『何のための堰なのか。たまった水が雨水だと確認できてから弁を開けるのが、まっとうなやり方だ』と厳しく批判した」と東京新聞はネット記事で伝えている。

タンク汚染水漏れ 堰の排水弁すべて開放 海に流出可能性大

2013年8月22日

 東京電力福島第一原発のタンクから三百トンの汚染水が漏れた問題で、東電は、ほとんどのタンク群の周りに水を食い止めるコンクリート製の堰(せき)を設けたのに排水弁をすべて開けていたことが分かった。今回の漏出事故では、大量の汚染水が排水弁から堰の外に漏れ、土のうを越え、近くの排水溝から海に汚染が広がった可能性が高い。 
 汚染水漏れが起きたタンク群には、二十六基のタンクがあり、これを囲む堰の二十四カ所に弁が設置されている。東電は、汚染水が漏れても広がらないよう堰を設けたが、堰内に雨水がたまると汚染水漏れが発見しにくくなるとして、弁を開いたままにして雨水が抜けるようにしていた。
 しかし、弁が開いていたことで、漏れた汚染水は簡単に堰の外に出た。外部には土のうが積んであったが、土に染み込むなどしてその外側に漏れ出した。
 二十一日には、問題のタンク群から排水溝に向かって水が流れた跡が見つかったほか、排水溝内でも汚染水が土砂とともに流れた跡が見つかった。放射線量も毎時六ミリシーベルトと高かった。排水溝は海に直結していることから、汚染水が海に流れた可能性は低いとしていた東電も、海洋汚染があることを前提に対応していく考えを示した。
 排水弁が閉まり、コンクリート堰内に汚染水がたまる運用をしていれば、三百トンのうち半分以上は堰内にとどまった上、水が漏れているのを早期に発見できた可能性が高い。
 原子力規制委員会は今回の事故を国際的な評価尺度で上から五番目のレベル3と評価することを検討しているが、その大きな理由として「安全防護層が残されていない」ことを挙げている。二十一日夜に開かれた汚染水対策を検討する同委の作業部会で、更田豊志(ふけたとよし)委員は、弁が開いていたことに関し、「何のための堰なのか。たまった水が雨水だと確認できてから弁を開けるのが、まっとうなやり方だ」と厳しく批判した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013082202100006.html

その上、本日(22日)、このブログを書いている時、別のタンク2基にも新たな汚染水漏れがあった可能性が報道されている。産經新聞のネット配信記事をみておこう。

タンク2基で新たな漏えいか 福島第1原発
2013.8.22 19:11
 福島第1原発で地上タンクから約300トンの高濃度汚染水が漏れた問題で、東京電力は22日、敷地内にある同じタイプのタンクを点検した結果、2基の底部表面に最大毎時100ミリシーベルトの高線量の箇所があるのを確認した。微量の汚染水が漏えいした可能性もあるとみて調べている。

 東電によると、新たな漏えいの可能性があるのは「H3」というタンク群にある2基で、いずれも原子炉を冷却した後の高濃度汚染水が貯蔵されている。

 高線量が計測された底部の接合部付近は乾燥した状態で、周辺に水たまりなどはなかった。タンク内の水位に目立った変化はないという。

 第1原発では19日に4号機山側の「H4」タンク群にある1基から汚染水が漏れているのが確認された。漏えい量は約300トンで、原子力規制委員会は国際的な事故評価尺度(INES)の暫定評価を8段階の下から4番目のレベル3(重大な異常事象)とする方向で検討している。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130822/dst13082219120015-n1.htm

この報道経過をみていても、いら立つ。最初、汚染水は120リットル程度として、結局、翌日には300トンになってしまう。海に漏れていないとしていたが、結局は、むしろ汚染水を閉じ込めておくべき排水弁が開けられていて、対策自体が不備であったということである。東電のやっていることは、情報隠蔽と事態の過小評価だけである。300トンの水が流出しているのに、それだけの水はない。ならば、どこかに流出していったはずである。例え、直接、海に流れ込まないとしても、地下にしみ込んだ汚染水はいつか海に流れ出る。そういう常識はどうやらなく、目に見えるものだけの情報を提供して、想像可能なことはなかったことにしてしまう。甲状腺がん患者が普通よりも多く発生しているのに福島第一原発事故の影響はなかったことにしたがっていた福島県と同じだ。もちろん、情報隠蔽が前提であるが、この情報隠蔽が契機となって、目に見えること以外、都合の悪いことは想定できないという意識構造になっているのではないかとさえ疑われる。

諸外国の報道をみていると、日に400トンは流出しているという汚染地下水の方に強く関心をもっているようである。確かに、この方が規模は大きい。しかし、現状では、汚染地下水も含めて、汚染水貯蔵タンクにためておかなくてはならない状態である。そのタンクが水漏れではどうにもこうにもしようがない。そして、産經新聞がネット配信した記事では、他のタンクも少量とはいえ汚染水漏れを起こしているものがあるようである。タンクすべてが信用できなくなれば、汚染地下水処理以前にお手上げだ。最早、文字通り、汚染水問題は「底なし」になっているのである。

福島第一原発の現状について触れるたびに思うのであるが、最早、民間会社の東電にまかせておけない状況になっている。結局、政府が乗り出さざるをえないのであるが、原発再稼働や原発輸出には乗り気の安倍政権であるが、福島第一原発の管理や廃炉作業は今の所東電まかせである。しかし、このまま、汚染水問題に対処できないでいると、海洋に未処理の汚染水を放出せざるをえなくなるだろう。このようになってしまえば、放射能汚染は拡大し、福島だけでなく多くの人々の不満をかい、さらに、諸外国の反発を買うことになるだろう。加えて、放射性物質による汚染の拡大は、日本産品の買い控えをよぶことになろう。東京オリンピック誘致どころの騒ぎではなくなるだろうと思う。

いくらコストがかかっても、阻止しなくてはならない、眼前の危機。それこそ、「空想上の対外的危機」よりもはるかに深刻な危機が、今、ここにあるのに、そのことは目に入らない。このような、危機感のなさが、本当の危機なのである。

Read Full Post »

最近、ほとんど整理できないほど、福島第一原発事故の異常事態が、主要メディアでも伝えられている。たとえば、共同通信はトレンチから1リットル当たり23億5000万bqの放射性セシウムに汚染された水が検出されたと報じ、「汚染水対策は事実上破綻」と批判した。

【福島第1原発の現状】 汚染水対策は事実上破綻  海洋流出防げるか不透明

 福島第1原発からの汚染水の海洋流出を受け、東京電力は護岸の地盤改良など流出防止策を急ぐが、対策の効果は不透明だ。加えて敷地内の汚染水は1日400トンのペースで増え続け、抜本的な解決策もない。廃炉に向け当面の最重要課題とされた汚染水対策は事実上、破綻している。
 「1リットル当たり23億5千万ベクレル」。原子力規制委員会が汚染水の漏えい源と疑う敷地海側のトレンチ(地下道)にたまっていた水の放射性セシウム濃度だ。東電が27日、発表した。トレンチが通る2号機タービン建屋東側の一帯では5月以降、観測用井戸で高濃度汚染水の検出が相次いでいる。
 東電は4月、港湾内で長さ約780メートルにわたって鋼管約600本を壁のように打ち込む「海側遮水壁」の工事を始めた。完成は来年9月ごろで、汚染水が海に漏れ出さないよう“念のため”の措置だった。
 ところがわずか約2カ月後、敷地海側や港湾内の海水で高濃度汚染水の検出が相次ぐと、水ガラスという薬液で護岸などの地層を固める「土の壁」の工事に着手せざるを得なくなった。
 トレンチには事故直後に流れ込んだ極めて高濃度の汚染水がたまっている。2011年4月に2号機取水口近くで汚染水漏れがあったことを受け、継ぎ目部分の縦穴を埋めて水の流れを遮断しているが、本来は配管や電源ケーブルを通すためのトレンチに、防水処理は施されていない。
 東電は早期に汚染水を抜き取ってトレンチを埋める計画だが、ここが汚染源だとすれば、完了までは高濃度の汚染水が漏れ続ける。今月26日に記者会見した 広瀬直己 (ひろせ・なおみ) 社長は「もっと早くやるべきだった」と悔やんだ。
 一方、汚染水をどう減らすのかも重要な課題だ。建屋に流れ込む前の地下水を井戸でくみ上げて海に出す「地下水バイパス」計画は地元の強い反発でめどが立たない。1~4号機の周囲の地盤を凍らせて地下水流入を防ぐ「凍土遮水壁」は15年の完成を目指すが、世界的に例のない取り組みで効果は未知数だ。「まずは流入量を減らさないとだめだが、抜本策は挙げられない」と広瀬社長は苦悩をにじませている。
(共同通信)
2013/07/29 12:2
http://www.47news.jp/47topics/e/244207.php

そして、結局、原子力規制委員会も、東電頼みでデータをとるのではなく、自らの分析チームを7月29日に設置した。そのことを伝える毎日新聞のネット記事を下に掲載しておく。

福島第1原発:汚染水問題 規制委、分析チームを設置
毎日新聞 2013年07月29日 11時20分(最終更新 07月29日 12時33分)

 東京電力福島第1原発から出た放射性汚染水が海洋に流出している問題を受け、原子力規制委員会は29日、第1原発の収束作業が適切に実施されているかをチェックする「特定原子力施設監視・評価検討会」の会合を開いた。規制委は、汚染水について分析する作業チームを設置することを決めた。現在は「東電任せ」になっている放射性物質のデータ採取・分析について、客観性を確保するのが狙い。

 検討会は、東電が汚染水の海洋流出を公表して以降、初めての開催となる。作業チームは、原子力規制庁や産業技術総合研究所などで構成し、東電も加わる。規制委の更田(ふけた)豊志委員は「地下水や地層、土木の専門性がある職員を結集し、より実質的な分析を進めたい」と述べた。汚染水が海へ流出している現状を受け、海のモニタリング態勢を強化する検討チームも別に作る。

 一方、規制委は東電から汚染水の現状をヒアリングした結果、2号機海側の電源ケーブル用トレンチ(トンネル)下部の砕石層(砂利)が汚染水の通り道になっているとの見方を強め、早期の対策実施を求めた。http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130729k0000e040153000c.html

また、以上の問題と関連するかどうか不明だが、8月1日、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向け、研究機関や電力会社など17の機関が一体となって研究開発を進めるための新たな組織「国際廃炉研究開発機構」が設置された。

福島第一原発廃炉で新組織
8月1日 14時46分

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向け、研究機関や電力会社など17の機関が一体となって研究開発を進めるための新たな組織が設立され、1日、茂木経済産業大臣から認可書が交付されました。

新たに設立されるのは「国際廃炉研究開発機構」で、原発の製造メーカーや電力会社など17の企業や政府系の研究機関から500人以上が参加します。
茂木経済産業大臣が、1日、機構の理事長を務める京都大学原子炉実験所の山名元教授に対し「福島県民や国民の期待は高く、関係者が一丸となって、すばらしい成果を挙げていただきたい」と述べて認可書を手渡しました。
福島第一原発の廃炉は、世界でも例のない技術的に難しい作業で、最長で40年に及ぶとされています。
機構では、廃炉作業が順調に進むよう、溶け落ちた核燃料を取り出す技術の確立や、放射線量が高い場所でも遠隔で操作できるロボットの開発など、幅広い分野の研究開発を共同で行うことにしています。
山名理事長は「オールジャパンで技術を結集し、海外からも積極的にアイデアを募って、できるかぎり早く廃炉技術を育てたい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130801/k10013460401000.html

東電自体が、もはや当事者能力がなく、物事を先送り、その場しのぎの対応をしているのは、すでに広く理解されていることである。東電側からすれば、福島第一原発の廃炉作業に資金・人員・技術をつぎこんでも利益にはならない。柏崎刈谷原発の再稼働にむけて、政府・自民党に協力したほうが、より利益にはなるだろう。これは、営利会社として当然の論理である。結局、東電の存続を許し、事実上国有化したにもかかわらず、民間会社の形態をとらせることで、安上がりな「廃炉」をしようとしていた政府こそ、一番責任を負わなくてならない。

その意味で、政府機関である規制委員会が、分析だけにせよ独自の体制を組んだことは、遅きに失しているし、全く不十分ではあるが、国の責任で廃炉作業をしなくてならないことを暗示させているものといえる。しかし、結局、実行部隊ではない。廃炉作業の研究開発をする「国際廃炉研究開発機構」も、結局は、「原発の製造メーカーや電力会社など17の企業」が中心になっているようである。廃炉作業を契機とした企業グループの形成というべきか。

この廃炉作業は、資本が投下して利潤を上げられる事業ではない。しかし、ボランティアでできるようなものではない。福島第一原発の廃炉作業は、現状では採算を度外視してすすめるしかないのではなかろうか。

それにしても、東電ではない体制をとるにせよ、その核になるかもしれない原子力規制委員会自体が心もとない。田中俊一委員長が排出基準値以下の汚染水を将来的に海に放流するしかないと発言したことは、本ブログでも伝えたが、案の定、周辺の漁協から反発された。

原子力規制委に福島県漁連が反発 汚染水の排出めぐり

 原子力規制委員会の田中俊一委員長が、東京電力福島第一原発の処理済みの放射能汚染水を海に排出することを認めた発言を受け、福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は26日、「県漁連としては排出を認めない。発言の真意を規制委に確認している」と述べた。

 福島市で開いた県漁連の組合長会議で語った。会議では、ある組合長から「汚染が薄まったとしても海への排出は認められない」と反発の声が上がった。

 田中委員長は24日の記者会見で、原発敷地のタンクにたまる一方の汚染水について、「きちんと処理して(国の排出)基準以下になった汚染水を海に排出することは避けられない」と発言した。
http://www.asahi.com/national/update/0726/TKY201307260276.html

東電はもはや福島第一原発を管理することができない。それは、良心の問題というよりも営利会社という体質の問題である。そして、こうなると、責任を負うのは、株主である国なのだが、その中核となるべきと考えられる原子力規制委員会は、体制が不十分であるとともに、社会から信頼を得ていない。そして、また、廃炉作業にむけての企業グループがつくられようとしている。しかし、資本を投下しても利潤を得られない廃炉作業に、どれほど営利会社が関心をもつだろうか。結局、公的資金で行う事業の「下請け」でしかなかろう。

資本主義と国民国家、この二つの共犯関係の上で、現在の日本社会はよくも悪くも運営されてきた。しかし、福島第一原発の廃炉作業は、今までの体制ではできそうもない。チェルノブイリ事故がおこり、そればかりが原因ではないが、ソビエト連邦は解体した。日本社会もまた、そのような危機が眼前にあるといえる。

Read Full Post »

Older Posts »