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Posts Tagged ‘汚染水’

もう、先月のことになるが、2015年5月27日、東京電力は、福島第一原発の汚染水処理が「完了」したと発表した。日本経済新聞のネット配信記事をみてほしい。

福島第1の汚染水処理、東電「完了」 除去し切れず道半ば
2015/5/27 23:56

 東京電力は27日、福島第1原子力発電所のタンクにたまった高濃度汚染水の処理を「完了」したと発表した。当初の目標時期より2カ月遅れ、累積処理量は約62万トンに達する。もっとも、このうち18万トンは放射性物質を除去し切れておらず、再処理が必要。浄化作業は道半ばだ。

 福島第1原発では事故を起こした1~3号機の原子炉に冷却用の水を注いでいる。核燃料などに触れた水は放射性物質を含む汚染水となり、さらに建屋に流れ込む地下水と混じる。東電はこれを敷地内のタンクに移し、浄化装置「ALPS」などで処理してきた。

 東電の広瀬直己社長は2013年に安倍晋三首相に対し「14年度中に浄化を完了する」と約束した。しかしALPSのトラブルが頻発し、達成を断念していた。

 2カ月遅れながら浄化を完了したと東電が発表したのは、あと数カ月かかり夏以降になるとみられていた海水成分の多い汚染水の処理が、想定より前倒しできたためだ。この結果、漏洩による環境汚染や被曝(ひばく)のリスクも下がった。

 ただ作業がこれで終わるわけではない。東電によると、処理した62万トンのうち放射性物質の大半を取り除けるALPSで浄化したものは44万トン。当初はALPSですべて処理する考えだったが実現しなかった。残る18万トンは「主成分」といえるセシウムとストロンチウムを重点的に処理した水で、ほかの放射性物質は除去し切れていない。

 東電は改めてALPSで処理する方針だが、達成時期は未定。ALPSで処理した水もトリチウムという放射性物質は除去できずに残る。この水の扱いは決まっておらず当面は保管を続ける。

 地下水対策も不十分だ。1日約300トンが建屋に流れ込んでおり、浄化作業は続く。流入を止めない限り汚染水が新たに発生する。建屋の周囲の土壌を凍らせて壁を築く「凍土壁」を造成中だが、完成のめどはついておらず、汚染水問題の最終的な解決はなお遠い。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG27HAA_X20C15A5CR8000/

これを読んでいても、何がどういう意味で「完了」したのかがわからない。原子炉建屋への地下水流入は止まっておらず、日々汚染水は発生しているのである。それに、処理したといっても、一部にはセシウムとストロンチウムしか除去できなかった汚染水が残り、ALPSで再処理する必要がある。なにより、すべての汚染水処理で、放射性物質のトリチウムが除去できないでいるのだ。ある程度、高濃度汚染水における放射能汚染を緩和したという程度である。

そして、この汚染水処理におけるトリチウムの問題が課題となっている。本日6月23日にネット配信された福島民報の記事をみてほしい。

 

トリチウム処分足踏み 第一原発汚染水 政府、来年度に検討会新設
 
 東京電力福島第一原発で、多核種除去設備(ALPS)を使っても汚染水から取り除けない放射性トリチウムを含む水の処分方法をめぐる動きが足踏みしている。政府は来年度前半にも有識者や県内の漁業関係者らからなる検討会を新設し、最善の処分方法を決める方針を固めた。しかし、大量のトリチウム水を処分する技術は依然として確立されておらず、漁業関係者らも「陸上保管が前提」と慎重姿勢で、課題解決の糸口は見えない。

 ■議論本格化

 検討会は経産省の作業部会が絞り込んだ5つの処分方法について適切かどうか議論し、採用する方法を決める。検討会の構成員など概要は今後詰めるが、地元の意向をくみ上げる観点から、周辺自治体や漁業関係者らもメンバーに加える案が浮上している。
 経産省の作業部会は「採用方法について結論を出す場ではない」(同省)との位置付けで、検討会が作業部会の成果を引き継ぐことになる。同省の担当者は「国民の理解を得るため、拙速にならないように進めたい」と話している。
 ただ、作業部会は現在、それぞれの処分方法について実証試験を実施しているが、有効性が認められるとは限らないのが現状だという。

 ■慎重姿勢

 漁業関係者をはじめ地元関係者は風評などを懸念し、海洋放出など陸上保管以外の処分方法には慎重な姿勢を崩していない。
 県漁連の野崎哲会長は「ALPS処理水は現時点では陸上保管が前提。政府がどういう提案をしてくるかを注視している段階だが、いずれにしても風評を招かないように丁寧な説明を求める」としている。
 県原子力安全対策課の菅野信志課長は「県としては安易な海洋放出は認めない。どの選択肢を選ぶにしてもしっかりと議論した上で県民の理解を得てほしい」と注文した。
 
 ■保管のリスク

 東電によると、福島第一原発構内には18日現在、ALPSで処理したトリチウム水約45万7500トンが地上タンク約330基に貯蔵されている。これらの水は日々増加しており、トリチウムを処分できないと地上タンクを造り続けなくてはならない。
 タンクのうち、板状の鋼材をボルトでつなぎ合わせたフランジ型タンクの耐久期間は5年とされている。継ぎ目のない溶接型タンクへの切り替えを急ぎながらタンクの増設も進めている。汚染水対策に取り組む作業現場で大きな負担となっている。タンクの設置場所にも限界があり、原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)は「トリチウム水を海洋放出すべき」と指摘する。

( 2015/06/23 09:45 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/2015062323598

これもわかりにくい記事である。まず、一番最後に出ているのだが、専門家である原子力規制委員会委員長田中俊一は「トリチウム未処理水」を海洋放出せよと主張している。記憶によれば、田中は前々からそのように主張していた。しかし、福島県の漁業関係者は風評被害などを懸念し、トリチウム未処理の「完了汚染処理水」(これ自体が名義矛盾だが)は陸上で保管せよと主張し、とりあえず現段階で福島県庁も同様の姿勢をとっている。

経産省としては、トリチウム処理について作業部会を設置し、5つほど処分方法を検討しているが、どれもまだ有効性が実証できないということである。有効な処分方法があれば、専門家である田中俊一委員長も、トリチウム処理を推奨するはずであり、トリチウム処理についての方法論は確立していないということになろう。

しかし、経産省は、作業部会の成果を引き継ぐ形で検討会を設置するというのだ。この記事では「検討会は経産省の作業部会が絞り込んだ5つの処分方法について適切かどうか議論し、採用する方法を決める。検討会の構成員など概要は今後詰めるが、地元の意向をくみ上げる観点から、周辺自治体や漁業関係者らもメンバーに加える案が浮上している」としている。専門家である原子力規制委員会でもトリチウム処理の方法論はわからないというのに、非専門家である漁業関係者や周辺自治体をメンバーに加えても、トリチウム処理の方法論が判断できるとは思えない。

思うに、トリチウム未処理水の海洋放出を地元に飲ませるための布石として位置づけられているのではなかろうか。「完了」などしていないのにもかかわらず、「汚染水処理」は「完了」したという擬制のもと、新たな放射能汚染を心配しなくてはならないのだ。

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とにかく、あきれて、物がいえなくなるーこれが福島第一原発事故処理をめぐる状況だ。

まずは、2月22日、福島第一原発の港湾に流れ込む排水路で通常時より高い濃度の放射性物質を含んだ汚染水が流出したという報道がなされた。中日新聞が同日付でネット配信した記事をみてほしい。

港湾内に汚染水流出か 福島第1原発

 22日午前10時ごろ、東京電力福島第1原発敷地内の排水路で放射性物質濃度の上昇を示す警報が鳴った。東電や原子力規制庁によると、ストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質が、最高で普段の70倍以上に当たる1リットル当たり7230ベクレル検出された。原発の港湾内にそのまま流れたとみられるが、流出量は不明。

 午前11時35分ごろに排水路のゲートを閉めるなどの対策を取った。東電などによると、普段の検出値は数十ベクレル程度といい、濃度が上昇した原因やタンクからの汚染水漏えいがないかどうか調べている。

(共同)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2015022201001650.html

そして、2月24日には、別の排水路において、高濃度汚染水が、福島第一原発前の港湾ではなく、直接海洋に流出していたことが東電から発表された。この排水路について、昨年4月から、雨のたびに放射性濃度が上昇することが発覚していたが、東電は一年近くもそのことを公表してこなかったのである。そして、ようやく、汚染源が特定できたとして公表した。NHKがネット配信した記事をみてほしい。

福島第一 高い濃度の汚染水を海に流出か
2月24日 21時14分

福島第一 高い濃度の汚染水を海に流出か
東京電力福島第一原子力発電所2号機で、原子炉建屋の屋上に比較的高い濃度の汚染水がたまっているのが見つかり、雨が降るたびに排水路を通じて海に流れ出していたおそれがあることが分かりました。
東京電力はこの排水路の放射性物質の濃度が雨のたびに上がっていることを去年4月から把握していましたが、公表していませんでした。

東京電力によりますと、比較的高い濃度の汚染水がたまっていたのは福島第一原発2号機の原子炉建屋の屋上の一部で、この水には放射性物質のセシウム137が1リットル当たり2万3000ベクレル、セシウム134が6400ベクレル、ベータ線という放射線を出す放射性物質が5万2000ベクレル含まれていました。
2号機の周囲を通る排水路では、東京電力が去年4月に観測を始めて以降、雨のたびにほかの排水路よりも高い濃度の放射性物質が検出されていて、去年8月にはベータ線という放射線を出す放射性物質が1リットル当たり1500ベクレル、セシウム137が760ベクレル、セシウム134が250ベクレル、それぞれ検出されていました。
しかも、この排水路は原発の港湾内ではなく港湾の外の海につながっていて、東京電力は2号機の屋上にたまった汚染水が雨のたびに排水路を通じて海に流れ出していたおそれがあるとしています。
東京電力は、問題の排水路の放射性物質の濃度が雨のたびにほかよりも上がっていることを去年4月から把握していましたが、今回の調査結果がまとまるまで公表していませんでした。
東京電力は、周辺の海水の放射性物質の濃度に大きな変動はみられていないとしていますが、対策として来月末までに汚染水がたまっていた2号機の屋上や排水路の底に放射性物質を吸着する土のうを敷くとしています。
福島第一原発では22日にも、別の排水路で、ベータ線と呼ばれる種類の放射線を出す放射性物質の濃度が一時、簡易測定で1リットル当たり最大で7230ベクレルと通常の10倍以上の値を示していて、東京電力は「続けて放射性物質を含んだ水が排水路に流入したことで、福島県民をはじめ皆様に、重ねてご心配をかけて申し訳ありません。調査結果を踏まえて速やかに対策を取っていきたい」と話しています。

いわき市漁協「ショック受けている」
汚染された水が流出していたことについて、地元のいわき市漁協の矢吹正一組合長は「これまでの説明と異なり、港の外に汚染水が漏れていたという発表にショックを受けている。東京電力への信頼喪失につながると思う。現在、東京電力から受け入れ要請を受けている建屋周辺の井戸からくみ上げた汚染水を浄化して海に放出する計画にも影響が出かねない。原因究明と対策の徹底を求めたい」とコメントしています。

問題の排水路とは
今回、汚染水が流れ出していたおそれがある排水路は「K排水路」と呼ばれ、福島第一原発の1号機から4号機のすぐ山側を通り、4号機の南側で港の外の海につながっています。
22日、放射性物質の濃度が一時、上昇した排水路は山側のタンクエリアから流れる別の排水路で、こちらはタンクからの汚染水漏れが相次いだのをきっかけに、港の外に出ないようルートが変更されていました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150224/k10015716031000.html

この記事にもあるように、東電は、福島第一原発周辺の汚染地下水をくみあげ、浄化して海に放出する計画をたて、合意をもとめて福島県漁連と交渉を継続していた。このニュースは、交渉中の福島県漁連にもショックを与えた。2月25日にネット配信した東京新聞の次の記事をみてほしい。

福島第一汚染水垂れ流し 漁連「信頼崩れた」

2015年2月25日 夕刊

 福島県漁業協同組合連合会は二十五日、同県いわき市で組合長会議を開き、東京電力福島第一原発2号機の原子炉建屋屋上から汚染雨水が排水路を通じて外洋に流出していた問題について、東電と国から説明を受けた。東電が問題を把握しながら対策を講じなかったことに、出席者からは「信頼関係が崩れた」「漁業者を甘く見ているのか」と怒りの声が相次いだ。
 内堀雅雄県知事はこの日の関係部長会議で「県民に不安を与える問題が起きたこと、情報が速やかに公表されなかったことは遺憾だ」と述べ、県や地元市町村、専門家でつくる廃炉安全監視協議会の立ち入り調査を近く行う考えを示した。
 東電と国は第一原発の汚染水対策として、建屋周辺の井戸「サブドレン」などからくみ上げた地下水を浄化して海に流す方針で漁業者に理解を求めているが、今回の汚染雨水の流出で反発が強まりそうだ。
 会議では、いわき市漁協の矢吹正一組合長が「以前から分かっていたのになぜ黙っていたのか。漁業者は大ショックで、サブドレンどころではない」と批判。相馬双葉漁協の佐藤弘行組合長も「東電と漁業者の信頼関係が崩れた」と述べた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015022502000241.html

東電の対応はあきれるしかない。汚染源は福島第一原発2号機原子炉建屋の屋上にたまっていた放射性物質で、それが雨のたびに排水路に流出したとされている。そもそも、この程度のことを調査するのに、1年近くもかかるのだろうか。そして、たとえ、汚染源が特定されなくても、排水路の出口を港湾内につけかえるとか、水門を設けて汚染水をためておくとか(これらのことが現実的に効果があるかどうかは疑問だが)などの改善策をとることができないものであろうか。多少でも現状を改善しようというより、事態を隠蔽し、対応を少しでも先送りし、このような事象を「なかったことにする」ということが、東電の対応の基本姿勢であったと思われる。そして、これは、日本の原発で常に行なわれてきたことだった。

一方で、安倍政権の菅義偉官房長官は25日の記者会見で次のようにこたえている。ロイターの記事をみてほしい。

菅官房長官「影響は完全にブロック」、福島第1原発の汚染水流出
2015年 02月 25日 17:48 JST

[東京 25日 ロイター] – 菅義偉官房長官は25日午後の記者会見で、福島第1原発2号機原子炉建屋の屋上に溜まっていた比較的高い濃度の汚染水が海に流出していた問題で、港湾外の海水濃度は法令告示濃度に比べて十分に低い数値だと言明。

その上で「港湾への汚染水への影響は完全にブロックされている。状況はコントロールされているという認識に変わりない」と述べた。

東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)は、この汚染水流出問題を把握していたが、公表していなかった。今回の東電の対応について菅長官は「(問題を)放置していたわけではない。原因を調査して、溜まり水の箇所が判明したのですぐ対応した」と述べた。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0LT0OK20150225

1年近く、汚染源特定もなんらかの対策もなしていないことは、普通は「放置」というだろう。それを「放置していたわけではない」というのである。さらに「港湾への汚染水への影響は完全にブロックされている。状況はコントロールされているという認識に変わりない」としている。問題の排水路は港湾に直結されていないから、そこへの影響は確かにない。しかし、直接に海洋を汚染するという、より深刻な事態を惹起しているのである。この、形式論的には「正しい」言い逃れは、事態のある種の誤認でなければ、意図的な「虚偽」である。そして、菅官房長官は、福島第一原発を「コントロールしている」のではなく、「マスコミ」を「コントロール」しているのである。

東電側の、事故の隠蔽と対応の先送り。安倍政権側の、虚偽的な言い逃れと、マスコミ・コントロール。東電と安倍政権の考える福島第一原発のコントロールは、このようなことから構成されているといえよう。

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さて、安倍晋三首相の衆院選の第一声で、福島にいながら全く言及しなかった、福島第一原発の現状はどうなっているのだろう。実は11月に重大な発表があった。このブログでも触れたが、東電は、原子炉と海側トレンチ(地下道)の間の水の流れを遮断するため、トレンチとタービン建屋の接続部を凍らせて止水しようとしていた。止水が完了すればトレンチの中の汚染水を汲み上げ、それを前提に凍土遮水壁を設置し、原子炉から地下水を通じて海に流出する汚染水の流れを食い止めようというのである。しかし、その止水は難航した。十分凍らない上に、追加投入した止水材も効力を発揮しないのである。結局、11月21日の原子力規制委員会の会合で、東電は止水を断念し、新たな工法をとることを提案した。下記の共同通信のネット配信記事をみてほしい。

福島第1原発の現状】(2014年11月24日) 汚染水流出、新たな懸念 「氷の壁」止められず

 東京電力は、福島第1原発2号機の海側トレンチ(電源ケーブルなどが通る地下道)で、タービン建屋との接続部に設けた「氷の壁」や、追加投入した止水材でも水の流れが止まらなかったと明らかにした。 完全な止水を断念し 今後は、トレンチ内の汚染水を徐々にくみ上げながらセメントで埋める対策に移るが、汚染水の流出や残留など新たな懸念が生じている。
 2号機のトレンチには、2011年の事故直後から約5千トンの高濃度汚染水がたまっている。当初はトレンチと建屋の接続部を「氷の壁」で凍らせて水を止めた上で、トレンチ側の汚染水を全て抜き取り、トンネル部分を埋める計画だった。
 だが、4月の凍結開始後も壁は十分に凍らず、7月からは氷やドライアイスを投入。10月からはコンクリートなどの止水材で隙間を埋めることを試みていた。
 11月21日に開かれた原子力規制委員会の会合で、東電は止水材を入れた後も水の流れが完全に止まっていないと説明。当初の計画を断念し、汚染水を少しずつ抜き取りながら、特殊なセメントを段階的に投入して埋める新たな方法を提案し、規制委も了承した。
 ただ会合では、セメントによる穴埋めが十分にできないと、水の通り道が残り、建屋からトレンチへの汚染水の流出が続いてしまうとの懸念も相次いだ。
 また最近の調査で、トレンチの底に津波で運ばれた砂がたまっていることも新たに判明。投入されたセメントが砂の上で固まると、砂が汚染水を含んだまま閉じ込められ、汚染水が残ってしまう可能性が高いことも明らかになった。
 2号機のトレンチでは近く新たな対策が始まるが、約6千トンの汚染水がある3号機トレンチは手付かずの状態。トレンチを埋めないと、汚染水抑制の抜本対策とされる「凍土遮水壁」の工事も進められず、目標とする来年3月末の凍結開始に間に合うか、不透明だ。
(共同通信)
2014/11/24 13:33
http://www.47news.jp/47topics/e/259645.php

まあ、簡単にいえば、トレンチ(地下道)全体を特殊なセメントで埋め立ててしまおうということなのである。しかし、そもそも、接続部の止水すらできないのに、そういうことが可能なのだろうか。共同通信もこの記事の中で「セメントによる穴埋めが十分にできないと、水の通り道が残り、建屋からトレンチへの汚染水の流出が続いてしまうとの」懸念の声があったことを伝えている。そして、セメントを流し込めば、そこに汚染水が閉じ込められ、汚染が残ってしまう可能性も指摘されている。

毎日新聞が11月21日にネット配信した記事によると「一方、トンネル部分は約60メートルあり、東電は「これだけ長距離を埋めた経験はない。慎重に進める」と説明した」とのことであり、そのような大きな空間全体をセメントで埋めて、水の通り道となる空隙ができないという保証はないのではなかろうか。そして、この水の通り道を塞がないと、トレンチ内の汚染水を汲み上げても、原子炉から汚染水が再び流入してくるだけで、意味はないのである。しかし、結局、原子力規制委員会は工法を認め、今、この工事が進められている。

とにかく、なんとかして、トレンチ内の汚染水を汲み上げなくてはならないということは理解できる。もしかすると、多少は事態が改善するのかもしれない。しかし、まずはタービン建屋とトレンチの接続部を凍結させて止水しようとし、それが失敗して止水材を投入し、それもまた失敗してトレンチ全体をセメントで埋め立てるという方策を、それこそ矢継ぎ早に実施しているのである。それぞれの方策にあった問題点を反省する時間があったようにも思えない。来年3月の凍土遮水壁の運用開始に間に合わせることしか念頭にないように思われる。

衆院選の第一声で、安倍首相は、次のように述べている。

復興を加速化させていくために、例えば常磐道、私たちは来年のゴールデンウイーク、この常磐道を使ってたくさんの観光客がこの地にやってくるように、ゴールデンウイークまでに全線を開通する、そうお約束をしました。さらに私はハッパを掛けました。そして、2カ月間、思い切ってさらに前倒しをします。3月の1日に常磐道全線が皆さん、開通するんです。
http://thepage.jp/detail/20141202-00000013-wordleaf?page=3

ハッパをかければ、あるいは常磐道開通などは早めることができるかもしれない。しかし、汚染水処理一つとっても、未知のことばかりである福島第一原発対策がスケジュール通りにうまくいくとは限らない。そして、それぞれの失敗点を反省することも必要であろう。福島第一原発事故は、少なくとも日本で同様の事故はなかったのである。これまでにない事態に直面しているのであり、そのことに恐れ戦きつつも、なんとか対策をとっていかねばならないのだ。理性的に思考することも必要なはずである。しかし、そういうことも考慮されないまま、東電や政権の都合に合せようとして、福島第一原発事故対策は進められているといえよう。

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福島第一原発は、もはや問題のない時がない状態で、あまりにトラブルが多いので、逆にそれらを追跡することが難しい状態である。しかし、この報道には驚いた。次の、東京新聞のネット配信記事でみてみよう。

氷5トン超 毎日投入 福島第一 難航する凍結止水作業

2014年7月24日

 東京電力福島第一原発の地下トンネルにたまる高濃度汚染水の抜き取り作業が難航している問題で、東電は二十八日から、トンネルに毎日五トン超の氷やドライアイスを投入する。汚染水の温度を下げ、2号機タービン建屋とトンネルの接続部に氷の壁ができやすくする狙い。
 タービン建屋との水の行き来をなくしてトンネル内の汚染水を抜かないと、再び重大な海洋汚染を引き起こす危険が残る。これまでの計画では、トンネル内に粘土などを詰めた袋をいくつも置き、凍結液を循環させて袋や周辺の水を凍らせて止水し、汚染水を抜いてトンネルをセメントで埋める予定だった。
 ところが四月末に凍結作業が始まって以降、一部しか凍らなかったり、凍った部分が溶けたりと不安定な状態が続いている。全体が壁のように凍らないと止水できないため、原子力規制委員会が代替策の検討を指示していた。
 二十三日に開かれた規制委の専門家会合で、東電は現状の汚染水の水温(一五度)を五度まで下げられれば、全体が凍るとの試算を示した。
 トンネル上部の穴から氷を一日五・四トン、ドライアイスも一トンを投入することで水温が十分に下がり、凍結液を循環させる管も四本増やすことで達成できそうだとする。
 それでも凍結しない場合は、袋同士が密着していない部分にセメントなどを流し込んで隙間を埋める作業を、八月下旬から実施。ただセメントが固まれば元に戻せなくなるため、東電はあくまでも最終手段にしたい考えだ。
 検討会で規制委の更田(ふけた)豊志委員は東電側に「氷の投入という極めて原始的な方法だが、やれることは何でもすぐにやってほしい。お盆のころには結果が分かると思うので、朗報を聞きたい」と話した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014072402000130.html

要するに、凍土壁建設の準備もかねて、福島第一原発海側の地下トンネルにたまっている高濃度汚染水を取り除くため、地下トンネルとタービン建屋の接続部にある水を凍結液を循環させることで凍らせて「止水」する作業をしていたが、十分凍らないため、氷やドライアイスを上部から投入することで凍らせて「止水」するという作業を東電がするというのである。

原子力規制委員会側は、あきれ顔である。この記事のなかでも更田委員は「氷の投入という極めて原始的な方法だが、やれることは何でもすぐにやってほしい。お盆のころには結果が分かると思うので、朗報を聞きたい」といっている始末である。さらに、産経新聞が7月23日にネット配信した記事にでは「検討会のメンバーの橘高義典・首都大学東京大学院教授(建築材料)は「これでは凍結しないと思う。コンクリートを流し込んでトレンチの充填をすべきだ」と、東電の対策を疑問視した」と報道されている。

そして、現実に、東電は試験してみたそうである。水温が7.8度まで下がる効果があったとして、毎日、氷を15トン、二週間で180トン投入していくことを東電は決めたのである。福島民報の次のネット配信記事をみてほしい。

トレンチに氷本格投入 第一原発 1日当たり15トン凍結を促進

 東京電力福島第一原発のトレンチ(電源ケーブルなどが通る地下道)にたまった汚染水を抜き取るための凍結工事が難航している問題で、東電は30日からタービン建屋とトレンチの接続部への氷の投入を本格化させた。
 1日当たり約15トン、2週間で計約150トンを投入し、凍結を促進させる。
 24日に、試験的に氷約2トンを投入したところ、水温が12度から7・8度まで下がり、効果を確認できたため、本格投入を開始した。
 東電の計画では、建屋とトレンチの接続部分に挿入した凍結管で氷の壁を作り、水流を遮断してトレンチ内の汚染水を抜く。
( 2014/07/31 08:59 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/2014073117191

まあ、なんというか、言葉もない。そもそも、なんでこんなに杜撰なのかと思う。また、今のところ、水温が下がっただけであり、実際に凍るかどうかは不明なのである。そして、7−8月という、日本全体がもっとも高温の時期に、なんでこんなことをしているのだろうと思う。よしんば、この「極めて原始的な方法」で凍結したとしても、すごくつまらないコストをかけているだけだといえよう。

結局、東電も原子力規制委員会も、福島第一原発について責任意識を欠いた証左である。東電はそのばしのぎの対策をたて、規制委員会は批判はするが「指導」はせず、東電はさらに場当たり的な対応をくりかえしていく。さらにいえば、日本の科学技術というものの限界を如実にみせつけているといえる。予測不可能なことにはついては場当たり的な対応しかとれないのである。

もし、「凍らせる」ということを考えるのであれば、もっとも暑いこの時期はさけたであろう。自然の中に人間も福島第一原発もある。そのことを無視して「水を凍らせる」ことがいかに難しいか、それを理解できないのである。自然の摂理を無視した日本の原発政策の根本がここで露呈しているといえよう。

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福島第一原発の汚染水問題は、どうなるのだろうか。テレビ朝日は、4月19日に次のような記事をネット配信した。それによると、地下水を海に流したり凍土壁を作るなど、汚染水を増やさない対策が実施できない「最悪」のケースになった場合、2年後、建設した全てのタンクに汚染水が入りきらなくなるとされている。

2年後の福島原発は?…“最悪のケース”初試算(04/19 17:42)

 東京電力は、福島第一原発で汚染水が増え続け、2年後にも敷地内のタンクに入りきらなくなる“最悪のケース”を初めて試算し、その結果を原子力規制委員会に報告しました。

 東京電力は、タンクに汚染水を最大90万tまで入れられるよう計画し、タンクを海上輸送するなど建設を急いでいます。しかし、規制委員会から、地下水を海に流したり原子炉建屋の周りの地面を凍らせる「凍土壁」など、汚染水を増やさない対策が実施できない最悪のケースも試算するよう求められました。試算の結果、建設したすべてのタンクに汚染水を入れても、2年後に入りきらなくなるということです。規制委員会は、これまでに打ち出した汚染水対策で期待する効果が出るか確認するよう指示しました。http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000025403.html

もちろん、このことは由々しき事態である。しかし、連日、汚染水漏れやALPS(多核種除去設備)の作動停止などの報道がなされ(あまりに多くて不感症になってしまうほどである)、汚染水処理のコントロールが不全になっている有様を目にすると、この「最悪」のケースが一番現実的なのではないかと考えてしまう。多少うまくいったとしても、せいぜい2年という期限が伸びるだけなのではなかろうか。

そして、さらに指摘しなくてはならないことは、これが「最悪」とすら言い切れないことである。現在、原子炉内部に入った高濃度汚染水については、放射性セシウムや放射性ストロンチウムなどの放射性物質をALPSなどで除染することになっている。しかし、ALPSは、放射性のトリチウムは除染できない。結局、現在の計画では、トリチウムが残存したままで除染処理後の汚染水を放出することになっている。

現在、原子炉建屋に流れ込む前の地下水をくみあげ、それを海に直接流すことで、原子炉建屋で発生する汚染水を量的に減少させる事業を行おうとしている。しかし、福島第一原発事故やその後の汚染水漏れで、対象の地下水自体がトリチウムなどによって汚染されてしまっている。それでも、トリチウムで放出基準値1リットルあたり1500ベクレル以下の場合は放出することにされている。この事業が軌道にのり、ALPSが本格稼働(現状では、いつになるか、神のみぞ知るということなのだが)すれば、原子炉内部で発生した高濃度汚染水についても、トリチウムが残存した形で、海などに放出することになろう。結局、福島第一原発周辺の環境は、これからも放射性物質で汚染され続けることになるのである。

そして、このトリチウムの全体量が半端なものではないのである。4月24日、毎日新聞がネット配信した次の記事をみてほしい。

福島第1原発:放射性トリチウムは推計3400兆ベクレル
毎日新聞 2014年04月24日 20時43分

 東京電力は24日、福島第1原発1〜4号機にある放射性トリチウム(三重水素)の総量は、推計で約3400兆ベクレルに上ると発表した。国が定める1基当たりの年間放出基準(3.7兆ベクレル)の900倍以上に相当する。

 政府のトリチウム対策を考える部会で試算を報告した。内訳は、溶けた核燃料などに約2500兆ベクレル▽敷地内に貯蔵されている汚染水に834兆ベクレル▽原子炉建屋やタービン建屋内の滞留水に約50兆ベクレル▽建屋地下から護岸につながるトレンチ(配管などが通る地下トンネル)の水に約46兆ベクレル−−が含まれる。

 汚染水に含まれるトリチウムの量は1月の報告より約17兆ベクレル増加した。溶けた核燃料を冷却する水にトリチウムが溶け出ていることが懸念される。この点について、東電は部会で「事故直後に比べて濃度は下がっており、核燃料から大量に溶け出ている状況ではない」と説明した。

 トリチウムは62種類の放射性物質を取り除ける多核種除去装置「ALPS(アルプス)」でも汚染水から取り除くことができず、海洋放出や水蒸気化、地下埋設などの対策が検討されている。【鳥井真平】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20140425k0000m040085000c.html

すでに、福島第一原発には3400兆ベクレルのトリチウムが存在しており、1基あたりの年間放出基準3.7兆ベクレルの900倍ーつまり900年分あるということになる。そして、1月から4月までの間だけで17兆ベクレル増えたというのである。この分だけで、4.5年分にあたることになるだろう。かなり緩いと考えられるトリチウムの年間放出基準をもとにかんがえても、トリチウムの放出に900年かかることになる。

つまり、トリチウム除去をせずに汚染水の放流を続けると、大規模な環境汚染を惹起するか、ほぼ1000年近くかけて放流するかという二つの選択肢しかなくなるのである。その上、現在でもトリチウム汚染は拡大している。結局、東電などがいう「最悪」のケースを回避したとしても、「最悪」という状態は変わらないのである。これを「危機」とよばずして、何を「危機」とよべばいいのだろうか。

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さて、増えつづける福島第一原発の汚染水処理の切り札として、ストロンチウム他多くの放射性物質を除去できる設備として、ALPS(多核種除去設備)が設置された。この設備ではトリチウムは除去できないが、その他の62種類の放射性物質は除去できるとされている。

しかし、現実はどうだったのだろうか。福島民報では、3月17日に次のように回想している。

汚染水処理期待外れ ALPS試運転1年
 東京電力が福島第一原発の汚染水処理の切り札として導入した「多核種除去設備(ALPS)」は試運転開始から30日で1年を迎える。一日平均の処理量は11日現在、約180トン。相次ぐトラブルによる停止などで、一日に発生する汚染水約400トンの半分にも満たない。東電は増設で、平成26年度内にタンクに貯蔵している汚染水約34万トンの浄化完了を目指している。だが、トラブルが起きないことが前提で、計画通りに進むかどうかは不透明だ。

■増え続けるタンク
 東電は昨年3月30日、3系統のALPSのうち、「A」と呼ばれる1系統で試運転を開始した。同年6月中旬に「B」、同9月末に「C」と呼ばれる系統の試運転を始めた。今年2月12日には初めて3系統同時の試運転がスタートした。
 ALPSの汚染水処理のイメージは【図上】の通り。一日当たりの1系統の処理能力は250トンで、3系統が稼働すれば750トンの処理が可能だ。しかし、試運転開始後にトラブルが相次ぎ、11日現在までに処理した汚染水の総量は6万2792トンにとどまる。一日当たりの処理量に換算すると平均約180トンで、一日に発生する汚染水約400トンの半分にも達していないのが現状だ。
 高濃度の汚染水を保管する地上タンクは増え続けており、16日現在、約1100基、貯蔵量は約34万トンに上る。東電は平成26年度内に全てのタンクの汚染水を浄化させる目標を掲げている。だが、目標達成には一日当たりの処理能力を1960トンまで上げる必要があり、処理能力の向上が急務だ。

■増設頼み
 東電は4月以降、試運転から本格運転に切り替え、3系統を常時稼働させる。10月に3系統を増設する。さらに政府は同時期に一日当たり500トンの処理能力を持つ高性能ALPS1系統を整備する。
 現在の処理態勢と10月以降の見通しは【図下】の通り。東電のALPS6系統と、政府が新設する高性能ALPS一系統がフル稼働すれば、最大で一日2000トンの汚染水を処理できると見込んでいる。
 ただ、あくまでもトラブルによる停止がないことが前提だ。ALPSでは、試運転開始から作業員のミスなどが原因での停止が相次いでいる。特に、昨年9月下旬には作業員がタンク内部に作業で使用したゴム製シートを置き忘れる人為ミスも起きている。増設後、順調に汚染水処理を進めるには、作業員のミスが原因のトラブルを防ぐ対策が不可欠だ。

( 2014/03/17 08:36 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/2014031714538

要約すると、このようにいえるだろう。現在、ALPSは3系統あり、その処理能力の合計は1日あたり750トンあることになっている。汚染水は1日あたり400トン発生しており、それらタンクに貯められた汚染水は34万トンに上っている。東電は2014年度中にすべての汚染水を処理する計画をたてており、そのために、現状のALPSを増設して1日1500トンの処理能力をもたせるとともに、国が1日あたり500トンの処理能力を有する高性能ALPSを設置し、総計1日約2000トンの汚染水処理を行おうとしているのである。

しかし、現実には、ALPSのトラブルによる停止が相次ぎ、結局1日あたり180トンしか処理できていないのが現状である。ALPSを増設しても、実際にはどれほどの汚染水処理ができるのだろうか。

皮肉なことに、このネット記事が配信された翌日の18日、トラブルによるALPSの運転停止が発表された。朝日新聞がネット配信した次の記事をみておこう。

福島第一のALPSまた停止 一部で浄化能力失う不具合
2014年3月19日01時10分

 東京電力は18日、福島第一原発で発生する汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去設備「ALPS(アルプス)」で、試運転中の3系統のうち1系統で処理ができなくなっていたと発表した。汚染水が十分浄化されないままタンクに移されたことを確認した。

 ALPSは、汚染水から62種類の放射性物質を取り除くとされる装置。東電によると、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質全体の濃度を10万分の1程度まで下げる能力がある。だが17日に3系統あるうちの「B」と呼ぶ系統の処理後の水を調べたところ1リットルあたり1千万ベクレル程度残っていた。14日には異常はなかったという。

 東電はB系統で処理ができなくなったと判断。三つの系統で処理された水は一つに集めて貯蔵タンクに移すため、装置全体を止めた。東電はB系統の異常がいつから起きたのか調べているが、浄化されなかった汚染水が貯蔵タンクに移された可能性がある。

 ALPSは昨年3月に試運転を始めたが、装置内で汚染水が漏れるなどのトラブルが相次ぎ、この1カ月間にも電気系統の不具合が2度発生。その度に一部の系統で処理を止めている。
http://www.asahi.com/articles/ASG3L5JM3G3LULBJ00P.html?iref=comtop_list_nat_n01

これは、単に停止というだけでなく、ALPSの除去能力が一部稼働せず、汚染水が未処理のまま、タンクに移されたことを意味する。しかも、この記事にあるように、それ以前の1カ月間に2度も停止しているのである。

そして、24日にようやく、故障が特定され、一部の運転が再開された。朝日新聞の次のネット配信記事をみてみよう。

福島第一のALPS故障、原因はフィルター 運転を再開
2014年3月24日17時42分

 東京電力福島第一原発で汚染水を処理する多核種除去設備ALPS(アルプス)が故障した問題で、東電は24日、3系統あるうち1系統のフィルターが働かず、放射性物質を含む泥が取れていなかったと発表した。残り2系統は問題ないとして同日午後、運転を再開した。

 ALPSは、高濃度の汚染水からストロンチウムなど62種類の放射性物質を取り除くとされる設備。前処理として、薬品を入れて吸着を妨げる物質を泥状にしてフィルターでこし取った後、吸着材で放射性物質を取り除く仕組み。東電によると、フィルターが機能せず、泥がそのまま吸着材に流れ込んでいたという。

 その結果、処理できなかった汚染水がタンク21基に送られた。タンクの汚染を調べたところ、このうち9基分で6300トン分が汚染されたという。

 このほか、ALPSとタンクをつなぐ配管も汚染された。このため、東電は運転再開した2系統で処理した水を配管などに流し、汚染を洗い流せるかどうか調べる。配管を通した水は、汚染された9基のタンクにためるという。
http://www.asahi.com/articles/ASG3S4RGLG3SULBJ00J.html

しかし、トラブルの原因が特定されたからよかった、というものではない。共同通信は、24日のネット配信記事で、次のように指摘している。

試運転中の東京電力福島第1原発の汚染水処理設備「多核種除去設備(ALPS)」が、汚染水から放射性物質を取り除けないトラブルで停止、東電が目指す4月中の本格運転は厳しい状況になった。敷地内の地上タンクにたまり続ける汚染水の浄化を来年3月までに完了するとの目標達成も一層困難になってきた。
 ALPSはトリチウム以外の62種類の放射性物質を除去でき、汚染水対策の切り札とされる。18日に発覚したトラブルでは、3系統のうち1系統の出口で17日に採取した水から、ベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり最高1400万ベクレル検出。本来なら、数億ベクレル程度の汚染水が数百ベクレル程度まで浄化されるはずだった。
 (中略)
 敷地内の汚染水を来年3月までに浄化するとの目標は、昨年9月に安倍晋三首相が第1原発を視察した際に、東電の 広瀬直己 (ひろせ・なおみ) 社長が表明した。達成には汚染水を1日当たり1960トン処理しなければならない計算で、ハードルは極めて高い。
 (中略)
  尾野昌之 (おの・まさゆき) 原子力・立地本部長代理は「改善点を新しい設備に反映させる。今回の件が、ただちに計画に影響を与えるとは思わない」とする。だが今回のトラブルの原因究明や、設備の洗浄などにかかる時間は不明で、本格運転の見通しは立たない。
 3設備を合わせても処理量は1日約2千トンで、1960トンを維持するには綱渡りが続く。いったん今回のようなトラブルが起きれば、計画は破綻しかねない。
(共同通信)
2014/03/24 13:57
http://www.47news.jp/47topics/e/251668.php

つまり、現状のALPSの本格運転自体が難しいのである。2014年度中に汚染水処理を完了するというのは、東京オリンピック誘致時に東電が表明した方針であった。つまりは、安倍首相の「アンダーコントロール」というのは、2014年度末にすら達成は困難であるということなのである。

ALPSは、そもそもトリチウムを除去できないという構造的欠陥をもっている。しかし、それにしても、トラブル続きで、まともに汚染水処理をこなすことができないという現状は、いったい何なのだろうか。このALPSの惨状には、もんじゅや六カ所村再処理工場と同じようなにおいを感じる。軽水炉本体のようなマニュアルのあるものはそれなりに作れるといえるのだが、独自技術をうまく実用化することができない。そして、日々トラブルにみまわれた結果の反省というものを見いだすことができない。福島第一原発事故自体に反省がないのである。そして、有益かどうかわからない技術に多額の資金が費やされ、さらに作業員も被ばくせざるをえなくなっている。そして、このような惨状を放置したまま、文字通りの「机上の計算」にもとづき、トップダウンで汚染水処理計画が設定され、その計画に基づいて、東京オリンピック招致が正当化されているのである。

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さて、福島第一原発の現状はどうなっているのか。最近は断片的な情報ばかりで、全体を見通すことが難しくなっている。今回は、現時点(2014年2月10日時点)における福島第一原発1号機、2号機、3号機からの冷却水漏れについての情報をまとめておこう。

福島第一原発において、周知のように炉心溶融がおきた1・2・3号機には冷却水が注入されている。しかし、冷却水を注入しても、原子炉格納容器内の水位は上がっておらず、格納容器が損傷して、冷却水が漏れだしていることが指摘されていた。この冷却水は、直接損傷した核燃料に接触しており、高濃度汚染水になっている。しかし、どこから漏れているのは今まで不明だった。

まず、1号機からみてみよう。すでに、2013年11月13日、1号機の格納容器下部から冷却水が漏れ出していることが発見されている。産經新聞の次のネット配信記事をみてほしい。

格納容器下部で汚染水漏洩 事故後初、1号機で2カ所
2013.11.13 23:50 [公害・汚染]

 東京電力は13日、原子炉が損傷した福島第1原発1号機格納容器下部の2カ所で汚染水の漏洩(ろうえい)を確認したと発表した。原発事故で溶け落ちた燃料(デブリ)冷却のため注水が続く1~3号機の格納容器下部から水漏れが実際に確認されたのは初めて。漏洩箇所は特定できなかったが、汚染水対策を進める上で重要な調査結果になるとして、さらに詳しく調べる方針だ。

 調査は格納容器下部の圧力抑制室を収める「トーラス室」と呼ばれる設備に汚染水がたまっている状況を確認するために実施。放射線量が高く人が近づけないため遠隔操作のできるカメラ付きのボートを使った。

 その結果、格納容器下部の外側からトーラス室に通じる細い配管1本が破断して水が漏れていたのを確認。配管の接続部分は塩化ビニール製で、事故当時の熱で溶けた可能性があるという。

 東電によると、破断した配管からは水道の蛇口をひねったような勢いの水が出ているという。東電は原子炉に注水して汚染された冷却水が格納容器の亀裂などから漏れ、配管から流れ出ている可能性もあるとみている。さらに、圧力抑制室の外側でも上部から水が流れ落ちているのを確認したが、漏洩箇所の特定はできなかった。

 調査した場所では毎時約0・9~約1・8シーベルトの極めて高い放射線量が測定されている。この日の調査は、トーラス室の約半分で行われた。残る半分の調査は14日に行われる予定。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131113/dst13111323540013-n1.htm

そして、2014年1月30日、テレビ朝日は次の記事をネット配信している。

冷却水の8割が漏えいか…福島第一原発1号機の汚染水(01/30 22:41)

 福島第一原発の原子炉1号機からの汚染水漏れについて、新たな事実が判明した。「1号機の圧力抑制室付近から、1時間あたり最大で3.4トンの汚染水が漏れていたと推計される」と、30日に東京電力が明らかにした。1号機には溶けた燃料を冷やすために、1時間あたり4.4トン注水している。その水は燃料に触れて、放射性物質を含んだ高濃度の汚染水となり、注水量の約8割が圧力抑制室付近から漏れているとみられるのだ。また、東電は「他の場所からも漏れていることも分かった」とし、引き続き調査する。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000020591.html

圧力抑制室というのは、格納容器下部に付属している部分である。東京電力の電気・電力辞典では次のように説明している。元来、冷却水を保有している場所なのである。そこから、その付近で、最大で、注水分の8割にもあたる毎時3.4トンの冷却水が漏出しているということなのである。後述する読売新聞のネット配信記事によれば、これは11月にみつかった漏水個所からということのようである。さらに、他の場所からも漏水しているということである。

圧力抑制室(S/C)
(あつりょくよくせいしつ)
沸騰水型炉(BWR)だけにある装置で、常時約4,000m3(福島第二2~4号機の場合)の冷却水を保有しており、万一、圧力容器内の冷却水が何らかの事故で減少し、蒸気圧が高くなった場合、この蒸気をベント管等により圧力抑制室に導いて冷却し、圧力容器内の圧力を低下させる設備。また、非常用炉心冷却系(ECCS)の水源としても使用する。
http://www.tepco.co.jp/life/elect-dict/file/a_023-j.html

次に、2号機である。ここでも圧力抑制室に穴が開いており、そこから水漏れしているということである。

福島第一2号機の圧力抑制室に穴…水漏れ

 東京電力は30日、福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室の下部に穴が開いており、外側の「トーラス室」に水が漏れているとの見方を明らかにした。

 両室の水位差を超音波で測定した結果から、穴は合計で8~10平方センチと推計した。

 また、1号機で昨年11月に見つかった水漏れ箇所については、その漏水量が1時間当たり0・89~3・35トンに上るとの推定値を発表した。格納容器本体と圧力抑制室をつなぐ「ベント管」付近の2か所で、ロボットが撮った流れ落ちる水の映像から推定した。

 3号機でも今月、原子炉建屋の1階で水漏れが初めて確認されている。ただ、これらの箇所で推定された漏水量は注水量より少ないため、東電は「3基ともまだ他に漏水箇所がある」とみている。

(2014年1月31日10時50分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140131-OYT1T00241.htm

さて、次は3号機である。2014年1月18日に、「主蒸気隔離弁室」という部屋の近くから建屋地下につながる排水口にかけて冷却水の流れが発見された。「主蒸気管」というのは、原子炉からタービンに蒸気を導く管である。1〜2号機のように圧力抑制室付近ではなく、どちらかといえば上部の配管といえるだろう。しかし、これも毎時1.5トンの流出にすぎず、注入した冷却水毎時5.5トンの他の部分は、他から漏水しているとされている。次の共同通信が1月27日に出した記事をみてほしい。

福島第1原発の現状】 配管貫通部から漏えいか 第1原発3号機の注水

 東京電力福島第1原発3号機の原子炉建屋1階の床面で、汚染水の流れが見つかった。溶けた核燃料を冷却するため原子炉に注入した水が、格納容器の配管貫通部から漏れている可能性が高い。格納容器を水で満たして溶融燃料を取り出す工程を描く東電は、水漏れ箇所の特定と補修を急ぐが、現場の放射線量が高く容易ではない。
 水の流れが見つかったのは、格納容器内部への配管が通る「主蒸気隔離弁室」と呼ばれる部屋の近く。建屋地下につながる排水口に約30センチの幅で流れ込む様子が、遠隔操作のロボットで18日に確認された。
 放射性セシウムが1リットル当たり240万ベクレル、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が2400万ベクレルと高濃度で検出され、燃料冷却後の水とみられている。
 主蒸気隔離弁室の配管貫通部は、事故後の格納容器圧力の異常上昇や水素爆発の影響で破損した可能性がある。東電は格納容器内の水位や配管の位置から水漏れ箇所の一つとみる。
 ただ、漏えい箇所を特定して漏れを止めるのは簡単ではない。現場周辺は毎時30ミリシーベルトと非常に高線量で、作業員が直接調べることは難しい。上の階から、室内にカメラをつり下げる調査方法を検討しているが「まだアイデア段階」(東電担当者)で、具体的な調査時期のめども立っていない。
 漏えい箇所はほかにもある。3号機の原子炉への注水量は毎時5・5トンだが、今回見つかった水漏れの流量は毎時1・5トンと推計され、残る4トン分は別の場所から漏れている計算だ。
 東電は1、2号機でも、原子炉建屋地下にある圧力抑制室の周囲に遠隔操作ロボットを入れ、水漏れの状況や水位の把握を進めているが、漏えい箇所の特定には至っていない。
(共同通信)
2014/01/27 17:38
http://www.47news.jp/47topics/e/249752.php

東電が、1〜3号機の各機に毎時どれほどの冷却水を注入し、どれほど回収しているのか、今の所、よくわからない。しかし、かなりの冷却水が格納容器外部に漏水しているには違いない。そして、原子炉建屋に入ってくる地下水とまざりあうことになる。そして、結局、原子炉外に高濃度汚染水が流出していく。結局、高濃度汚染水の源は原子炉各部から漏水した冷却水なのであり、陸側から流入してくる地下水ではないといえる。今、陸側の地下水を汲み上げて汚染水を少なくしようとしているが、これは、全くの対処措置にすぎない。

現状の東電の計画では、格納容器を水で満たして溶融燃料を取り出すことにしているが、そもそも水漏れを放置しておくならば、単に環境汚染が継続するだけでなく、それ自身が絵に描いた餅となる。そうとはいっても、それぞれの格納容器内部は放射線量が高く、現状では人が入ることはできず、調査すら難しく、補修などはより困難である。

そこで、最近は、空気で冷却する「空冷」方式にしようという動きがあるようだ。しかし、日本では類例のない「空冷」方式を開発するということは、かなり大変であろう。福島第一原発事故だけでもなく、高速増殖炉「もんじゅ」にせよ、六ヶ所村の核燃料再処理工場にせよ、また多核種除去装置ALPSにせよ、理論上設計し製造することは可能だが、恒常的・安定的に稼働しないものが多く存在するように思われる。といって、格納容器の修理を行うにおいても、ロボット技術その他、現在には存在しない科学技術を想定しなくてはならない。廃炉40年というが、それ自体が予測できない「未来」にかかっているのである。

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