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Posts Tagged ‘汚染水漏れ’

福島第一原発の汚染水問題は、どうなるのだろうか。テレビ朝日は、4月19日に次のような記事をネット配信した。それによると、地下水を海に流したり凍土壁を作るなど、汚染水を増やさない対策が実施できない「最悪」のケースになった場合、2年後、建設した全てのタンクに汚染水が入りきらなくなるとされている。

2年後の福島原発は?…“最悪のケース”初試算(04/19 17:42)

 東京電力は、福島第一原発で汚染水が増え続け、2年後にも敷地内のタンクに入りきらなくなる“最悪のケース”を初めて試算し、その結果を原子力規制委員会に報告しました。

 東京電力は、タンクに汚染水を最大90万tまで入れられるよう計画し、タンクを海上輸送するなど建設を急いでいます。しかし、規制委員会から、地下水を海に流したり原子炉建屋の周りの地面を凍らせる「凍土壁」など、汚染水を増やさない対策が実施できない最悪のケースも試算するよう求められました。試算の結果、建設したすべてのタンクに汚染水を入れても、2年後に入りきらなくなるということです。規制委員会は、これまでに打ち出した汚染水対策で期待する効果が出るか確認するよう指示しました。http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000025403.html

もちろん、このことは由々しき事態である。しかし、連日、汚染水漏れやALPS(多核種除去設備)の作動停止などの報道がなされ(あまりに多くて不感症になってしまうほどである)、汚染水処理のコントロールが不全になっている有様を目にすると、この「最悪」のケースが一番現実的なのではないかと考えてしまう。多少うまくいったとしても、せいぜい2年という期限が伸びるだけなのではなかろうか。

そして、さらに指摘しなくてはならないことは、これが「最悪」とすら言い切れないことである。現在、原子炉内部に入った高濃度汚染水については、放射性セシウムや放射性ストロンチウムなどの放射性物質をALPSなどで除染することになっている。しかし、ALPSは、放射性のトリチウムは除染できない。結局、現在の計画では、トリチウムが残存したままで除染処理後の汚染水を放出することになっている。

現在、原子炉建屋に流れ込む前の地下水をくみあげ、それを海に直接流すことで、原子炉建屋で発生する汚染水を量的に減少させる事業を行おうとしている。しかし、福島第一原発事故やその後の汚染水漏れで、対象の地下水自体がトリチウムなどによって汚染されてしまっている。それでも、トリチウムで放出基準値1リットルあたり1500ベクレル以下の場合は放出することにされている。この事業が軌道にのり、ALPSが本格稼働(現状では、いつになるか、神のみぞ知るということなのだが)すれば、原子炉内部で発生した高濃度汚染水についても、トリチウムが残存した形で、海などに放出することになろう。結局、福島第一原発周辺の環境は、これからも放射性物質で汚染され続けることになるのである。

そして、このトリチウムの全体量が半端なものではないのである。4月24日、毎日新聞がネット配信した次の記事をみてほしい。

福島第1原発:放射性トリチウムは推計3400兆ベクレル
毎日新聞 2014年04月24日 20時43分

 東京電力は24日、福島第1原発1〜4号機にある放射性トリチウム(三重水素)の総量は、推計で約3400兆ベクレルに上ると発表した。国が定める1基当たりの年間放出基準(3.7兆ベクレル)の900倍以上に相当する。

 政府のトリチウム対策を考える部会で試算を報告した。内訳は、溶けた核燃料などに約2500兆ベクレル▽敷地内に貯蔵されている汚染水に834兆ベクレル▽原子炉建屋やタービン建屋内の滞留水に約50兆ベクレル▽建屋地下から護岸につながるトレンチ(配管などが通る地下トンネル)の水に約46兆ベクレル−−が含まれる。

 汚染水に含まれるトリチウムの量は1月の報告より約17兆ベクレル増加した。溶けた核燃料を冷却する水にトリチウムが溶け出ていることが懸念される。この点について、東電は部会で「事故直後に比べて濃度は下がっており、核燃料から大量に溶け出ている状況ではない」と説明した。

 トリチウムは62種類の放射性物質を取り除ける多核種除去装置「ALPS(アルプス)」でも汚染水から取り除くことができず、海洋放出や水蒸気化、地下埋設などの対策が検討されている。【鳥井真平】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20140425k0000m040085000c.html

すでに、福島第一原発には3400兆ベクレルのトリチウムが存在しており、1基あたりの年間放出基準3.7兆ベクレルの900倍ーつまり900年分あるということになる。そして、1月から4月までの間だけで17兆ベクレル増えたというのである。この分だけで、4.5年分にあたることになるだろう。かなり緩いと考えられるトリチウムの年間放出基準をもとにかんがえても、トリチウムの放出に900年かかることになる。

つまり、トリチウム除去をせずに汚染水の放流を続けると、大規模な環境汚染を惹起するか、ほぼ1000年近くかけて放流するかという二つの選択肢しかなくなるのである。その上、現在でもトリチウム汚染は拡大している。結局、東電などがいう「最悪」のケースを回避したとしても、「最悪」という状態は変わらないのである。これを「危機」とよばずして、何を「危機」とよべばいいのだろうか。

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さて、福島第一原発の現状はどうなっているのか。最近は断片的な情報ばかりで、全体を見通すことが難しくなっている。今回は、現時点(2014年2月10日時点)における福島第一原発1号機、2号機、3号機からの冷却水漏れについての情報をまとめておこう。

福島第一原発において、周知のように炉心溶融がおきた1・2・3号機には冷却水が注入されている。しかし、冷却水を注入しても、原子炉格納容器内の水位は上がっておらず、格納容器が損傷して、冷却水が漏れだしていることが指摘されていた。この冷却水は、直接損傷した核燃料に接触しており、高濃度汚染水になっている。しかし、どこから漏れているのは今まで不明だった。

まず、1号機からみてみよう。すでに、2013年11月13日、1号機の格納容器下部から冷却水が漏れ出していることが発見されている。産經新聞の次のネット配信記事をみてほしい。

格納容器下部で汚染水漏洩 事故後初、1号機で2カ所
2013.11.13 23:50 [公害・汚染]

 東京電力は13日、原子炉が損傷した福島第1原発1号機格納容器下部の2カ所で汚染水の漏洩(ろうえい)を確認したと発表した。原発事故で溶け落ちた燃料(デブリ)冷却のため注水が続く1~3号機の格納容器下部から水漏れが実際に確認されたのは初めて。漏洩箇所は特定できなかったが、汚染水対策を進める上で重要な調査結果になるとして、さらに詳しく調べる方針だ。

 調査は格納容器下部の圧力抑制室を収める「トーラス室」と呼ばれる設備に汚染水がたまっている状況を確認するために実施。放射線量が高く人が近づけないため遠隔操作のできるカメラ付きのボートを使った。

 その結果、格納容器下部の外側からトーラス室に通じる細い配管1本が破断して水が漏れていたのを確認。配管の接続部分は塩化ビニール製で、事故当時の熱で溶けた可能性があるという。

 東電によると、破断した配管からは水道の蛇口をひねったような勢いの水が出ているという。東電は原子炉に注水して汚染された冷却水が格納容器の亀裂などから漏れ、配管から流れ出ている可能性もあるとみている。さらに、圧力抑制室の外側でも上部から水が流れ落ちているのを確認したが、漏洩箇所の特定はできなかった。

 調査した場所では毎時約0・9~約1・8シーベルトの極めて高い放射線量が測定されている。この日の調査は、トーラス室の約半分で行われた。残る半分の調査は14日に行われる予定。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131113/dst13111323540013-n1.htm

そして、2014年1月30日、テレビ朝日は次の記事をネット配信している。

冷却水の8割が漏えいか…福島第一原発1号機の汚染水(01/30 22:41)

 福島第一原発の原子炉1号機からの汚染水漏れについて、新たな事実が判明した。「1号機の圧力抑制室付近から、1時間あたり最大で3.4トンの汚染水が漏れていたと推計される」と、30日に東京電力が明らかにした。1号機には溶けた燃料を冷やすために、1時間あたり4.4トン注水している。その水は燃料に触れて、放射性物質を含んだ高濃度の汚染水となり、注水量の約8割が圧力抑制室付近から漏れているとみられるのだ。また、東電は「他の場所からも漏れていることも分かった」とし、引き続き調査する。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000020591.html

圧力抑制室というのは、格納容器下部に付属している部分である。東京電力の電気・電力辞典では次のように説明している。元来、冷却水を保有している場所なのである。そこから、その付近で、最大で、注水分の8割にもあたる毎時3.4トンの冷却水が漏出しているということなのである。後述する読売新聞のネット配信記事によれば、これは11月にみつかった漏水個所からということのようである。さらに、他の場所からも漏水しているということである。

圧力抑制室(S/C)
(あつりょくよくせいしつ)
沸騰水型炉(BWR)だけにある装置で、常時約4,000m3(福島第二2~4号機の場合)の冷却水を保有しており、万一、圧力容器内の冷却水が何らかの事故で減少し、蒸気圧が高くなった場合、この蒸気をベント管等により圧力抑制室に導いて冷却し、圧力容器内の圧力を低下させる設備。また、非常用炉心冷却系(ECCS)の水源としても使用する。
http://www.tepco.co.jp/life/elect-dict/file/a_023-j.html

次に、2号機である。ここでも圧力抑制室に穴が開いており、そこから水漏れしているということである。

福島第一2号機の圧力抑制室に穴…水漏れ

 東京電力は30日、福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室の下部に穴が開いており、外側の「トーラス室」に水が漏れているとの見方を明らかにした。

 両室の水位差を超音波で測定した結果から、穴は合計で8~10平方センチと推計した。

 また、1号機で昨年11月に見つかった水漏れ箇所については、その漏水量が1時間当たり0・89~3・35トンに上るとの推定値を発表した。格納容器本体と圧力抑制室をつなぐ「ベント管」付近の2か所で、ロボットが撮った流れ落ちる水の映像から推定した。

 3号機でも今月、原子炉建屋の1階で水漏れが初めて確認されている。ただ、これらの箇所で推定された漏水量は注水量より少ないため、東電は「3基ともまだ他に漏水箇所がある」とみている。

(2014年1月31日10時50分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140131-OYT1T00241.htm

さて、次は3号機である。2014年1月18日に、「主蒸気隔離弁室」という部屋の近くから建屋地下につながる排水口にかけて冷却水の流れが発見された。「主蒸気管」というのは、原子炉からタービンに蒸気を導く管である。1〜2号機のように圧力抑制室付近ではなく、どちらかといえば上部の配管といえるだろう。しかし、これも毎時1.5トンの流出にすぎず、注入した冷却水毎時5.5トンの他の部分は、他から漏水しているとされている。次の共同通信が1月27日に出した記事をみてほしい。

福島第1原発の現状】 配管貫通部から漏えいか 第1原発3号機の注水

 東京電力福島第1原発3号機の原子炉建屋1階の床面で、汚染水の流れが見つかった。溶けた核燃料を冷却するため原子炉に注入した水が、格納容器の配管貫通部から漏れている可能性が高い。格納容器を水で満たして溶融燃料を取り出す工程を描く東電は、水漏れ箇所の特定と補修を急ぐが、現場の放射線量が高く容易ではない。
 水の流れが見つかったのは、格納容器内部への配管が通る「主蒸気隔離弁室」と呼ばれる部屋の近く。建屋地下につながる排水口に約30センチの幅で流れ込む様子が、遠隔操作のロボットで18日に確認された。
 放射性セシウムが1リットル当たり240万ベクレル、ストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が2400万ベクレルと高濃度で検出され、燃料冷却後の水とみられている。
 主蒸気隔離弁室の配管貫通部は、事故後の格納容器圧力の異常上昇や水素爆発の影響で破損した可能性がある。東電は格納容器内の水位や配管の位置から水漏れ箇所の一つとみる。
 ただ、漏えい箇所を特定して漏れを止めるのは簡単ではない。現場周辺は毎時30ミリシーベルトと非常に高線量で、作業員が直接調べることは難しい。上の階から、室内にカメラをつり下げる調査方法を検討しているが「まだアイデア段階」(東電担当者)で、具体的な調査時期のめども立っていない。
 漏えい箇所はほかにもある。3号機の原子炉への注水量は毎時5・5トンだが、今回見つかった水漏れの流量は毎時1・5トンと推計され、残る4トン分は別の場所から漏れている計算だ。
 東電は1、2号機でも、原子炉建屋地下にある圧力抑制室の周囲に遠隔操作ロボットを入れ、水漏れの状況や水位の把握を進めているが、漏えい箇所の特定には至っていない。
(共同通信)
2014/01/27 17:38
http://www.47news.jp/47topics/e/249752.php

東電が、1〜3号機の各機に毎時どれほどの冷却水を注入し、どれほど回収しているのか、今の所、よくわからない。しかし、かなりの冷却水が格納容器外部に漏水しているには違いない。そして、原子炉建屋に入ってくる地下水とまざりあうことになる。そして、結局、原子炉外に高濃度汚染水が流出していく。結局、高濃度汚染水の源は原子炉各部から漏水した冷却水なのであり、陸側から流入してくる地下水ではないといえる。今、陸側の地下水を汲み上げて汚染水を少なくしようとしているが、これは、全くの対処措置にすぎない。

現状の東電の計画では、格納容器を水で満たして溶融燃料を取り出すことにしているが、そもそも水漏れを放置しておくならば、単に環境汚染が継続するだけでなく、それ自身が絵に描いた餅となる。そうとはいっても、それぞれの格納容器内部は放射線量が高く、現状では人が入ることはできず、調査すら難しく、補修などはより困難である。

そこで、最近は、空気で冷却する「空冷」方式にしようという動きがあるようだ。しかし、日本では類例のない「空冷」方式を開発するということは、かなり大変であろう。福島第一原発事故だけでもなく、高速増殖炉「もんじゅ」にせよ、六ヶ所村の核燃料再処理工場にせよ、また多核種除去装置ALPSにせよ、理論上設計し製造することは可能だが、恒常的・安定的に稼働しないものが多く存在するように思われる。といって、格納容器の修理を行うにおいても、ロボット技術その他、現在には存在しない科学技術を想定しなくてはならない。廃炉40年というが、それ自体が予測できない「未来」にかかっているのである。

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最近、福島第一原発の状況について、あまり注目されることがなくなっている。しかし、福島第一原発は、人びとが意識していようがいまいが、厳然と存在している。確かに、1号機・2号機・3号機は水で冷却され、直近に爆発する可能性は少なくなっている。4号機の燃料プールからの燃料棒の取り出しも始まった。しかし、福島第一原発からの汚染水の流出は止まっていない。また、原子炉を冷却した後の汚染水も鉄製貯蔵タンクにためこまれている。

さらに、この鉄製貯蔵タンク自体が問題となっている。1月9日付の次の読売新聞の報道をみてほしい。

汚染水タンクからX線、対策怠り基準の8倍超

 福島第一原子力発電所で、汚染水タンクから発生するエックス線の影響を東京電力が軽視し、対策を講じないままタンクを増設し続けていることが9日わかった。

 国が昨年8月に認可した廃炉の実施計画では、原発敷地境界の線量を「年1ミリ・シーベルト未満にする」と定めているが、12月には一部で年8ミリ・シーベルトの水準を超えた。

 現在、周辺に人は住んでいないが、作業員の被曝ひばく量を増やす要因になっている可能性がある。原子力規制委員会は10日に東電を呼び、対策の検討に入る。

 タンク内の汚染水から出る放射線は主にベータ線で、物を通り抜ける力が弱い。しかし、ベータ線がタンクの鉄に当たると、通り抜ける力の強いエックス線が発生し、遠方まで達する。

 東電によると、様々な種類の放射線を合わせた敷地境界での線量は、昨年3月には最大で年0・94ミリ・シーベルトだったが、5月には同7・8ミリ・シーベルトに急上昇した。汚染水問題の深刻化でタンクが足りなくなり、敷地の端までタンクを増設したため、エックス線が増えたらしい。

(2014年1月9日18時20分 読売新聞)

つまり、汚染水タンク自体が鉄製のため、汚染水が発するベータ線があたると、より透過力の強いX線が発生し、そのため、福島第一原発敷地内の放射線量が急上昇しているというのである。

ベータ線が鉄などにあたるとX線が発生するということは、一般的に知られていたことのようである。例えばWikipediaの「ベータ粒子」(ベータ線)の遮蔽に関する記述をみてみよう。

遮蔽

ヘリウム4の原子核であるアルファ粒子は一枚の紙で遮蔽できる。ベータ線の実体である電子では 1 cm のプラスチック板で十分遮蔽できる。電磁波であるガンマ線では 10 cm の鉛板が必要となる。
透過力は弱く、通常は数 mm のアルミ板や 1 cm 程度のプラスチック板で十分遮蔽できる。ただし、ベータ粒子が遮蔽物によって減速する際には制動放射によりX線が発生するため、その発生したX線についての遮蔽も必要となる。
遮蔽物に使われる物質の原子番号が大きくなるほど制動放射が強くなることから、ベータ線の遮蔽にはプラスティックなどの低原子番号の物質を使い、そこで発生したX線を鉛などの高原子番号の物質で遮蔽する、という二段構えの遮蔽を行う。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%BF%E7%B2%92%E5%AD%90

汚染水タンクについては、鋼材をボルトでつないだだけのボルト締め型では水漏れのおそれがあるといわれていた。このようにみてみると、溶接型も含め、そもそも汚染水と鉄を直に接触させているタンク自体が欠陥品であったことになる。鉄製タンクの場合は、内部をプラスチックなどで遮蔽すべきだったのである。

この記事でも出ているように、この鉄製汚染水タンクの使用は、無用に放射線を増大させている。これが、福島第一原発の労働者に意味もない被ばくを強いていることはあきらかである。1月10日時点では、原子力規制委員会もこの問題について東電を呼び出して、協議するとしていた。

しかし、14日には、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁は、次のような態度表明を行った。

ALPS性能不良、稼働のメド立たず…福島第一

 東京電力が福島第一原子力発電所で試験運転中の新型浄化装置「ALPS(アルプス)」について、原子力規制庁は14日の記者会見で、目標通りの性能が出ておらず、いつ本格稼働できるか分からないことを明らかにした。

 汚染水に含まれる63種類の放射性物質のうち、62種類をほぼ完全に除去できるはずだったが、ヨウ素など一部の物質の除去性能が目標を下回り、改良を加えているという。

 同庁はまた、汚染水タンクから出るエックス線によって、敷地境界の放射線量が基準を大幅に超えている問題について、当面はタンクの設計変更などを求めずに増設を認める姿勢を示した。同庁の担当者は、設計変更の具体案がまだないとして、「(アルプスで汚染水中の)ストロンチウムなどを除去するのが一番」と説明した。

(2014年1月14日21時08分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140114-OYT1T01083.htm

まず、前段は、放射性物質浄化装置(「ALPS(アルプス)」)が性能不良で、本格稼働のめどがたたないということを告白している。ALPSは、トリチウム以外の放射性核種の多くを除去できるといわれているもので、稼働すれば、汚染水におけるベータ線の主な発生源であるストロンチウム90なども除去できることになる。しかし、ALPSについてのニュースは、いつも故障その他で本格稼働できないというものばかりであった。2014年1月時点でも、やはり、本格稼働できないのである。

しかし、後段は、ALPSの本格稼働のめどがたたないにもかかわらず、その稼働を期待するとして、X線の発生源になっている鉄製タンクの設計変更を求めないと主張している。確かに、本格稼働すれば、ストロンチウム90を除去することによって、ベータ線の発生をおさえ、鉄製タンクでもX線は生じないことになるだろう。しかし、そもそも、ALPS自体の本格稼働のめどが立たないのであり、ゆえに、鉄製タンクにストロンチウム90を含んだ汚染水を貯蔵しつづけるしかない。現状において、X線の発生を防ぐ措置は全く講じられないのである。福島第一原発自体の廃炉処理のように、手段自体が現時点の科学技術で考えられないわけではない。タンク自体の設計を変更すればいいのである。そのような指示をすることすら、原子力規制庁は放棄したのである。

そして、東電は、そもそも水漏れの恐れボルト締め型タンクの「延命」すらはかるようになった。東京新聞の次の報道をみてほしい。

欠陥タンク 延命図る 福島第一 漏水不安のボルト締め型

2014年1月22日 朝刊

 東京電力は、水漏れの不安を抱える福島第一原発のボルト締め型タンクに、漏水防止の延命策を施し、数年の間は使い続ける方針を決めた。漏水しにくく耐久性が高い溶接型タンクに早急に置き換えるとしていたが、増設が急速には進まず当初の方針から後退した。置き換えは来春以降にずれ込む見通しで、当面は弱点の底板の接ぎ目を止水材で補強し、だましだまし使い続ける。 (清水祐樹)
 タンク内の水は、溶け落ちた原子炉内の核燃料を冷やした後の水。放射性セシウムはおおむね除去されているが、高濃度の放射性ストロンチウムなどが残る。昨年八月には、一基から三百トンの水漏れが発覚し、周辺の土壌や地下水、さらには排水溝を伝って外洋も汚染した。
 東電が調べたところ、五枚の鋼板をボルトでつなぎ合わせた底板の止水材がはがれたことが水漏れの原因と判明。東電は、国からの指示もあり、全てのボルト締め型を溶接型に置き換えることを決めた。
 ただ、溶接型の増設には一基当たり二カ月前後かかる上、増設用地も不足しているため、東電は場所をとる割に容量の少ない小型タンクを撤去し、そこに溶接型を増設していく方針。ボルト締め型タンクを置き換えるだけの容量の余力ができるのは、早くても来年四月半ばになる見込みだ。
 このため東電は、ボルト締め型タンクの弱点である底板を二つの手法を併用して補修し、延命させてしのぐことにした。一つはタンク天板に穴を開け、そこから止水材を塗った鋼材を入れ、底板の接ぎ目にかぶせる方法。もう一つは、底板の接ぎ目とコンクリート基礎のすき間に止水材を注入する方法だ。いずれもタンクに汚染水が入ったままでも作業できるというが、ボルト締め型の根本的な弱点がなくなったわけではない。鋼材をかぶせる手法では、事前に作業員が水中ポンプを使って接ぎ目周辺の沈殿物を掃除する必要がある。高濃度汚染水のすぐ近くでの作業だけに、細心の注意が必要になる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012202000128.html

汚染水タンクを「溶接型」にするということ自体、「反故」にされていく勢いである。ボルト締め型についても「延命」措置をして、「数年」は使うとのこと。これでは、「緊急措置」とすらいえない。ボルト締め型のタンクの場合、「漏水」と「放射線発生」という二重の欠陥をもっている。しかし、そのことは、当面、放置されるのである。本格稼働のめどがたたないALPSの稼働をあてにして…。

このようなことは、他でも見られる。多少、人びとの目が向かなくなったことを好機として、東電・原子力規制委員会・原子力規制委員会は、好き放題なことをしているのである。

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さてはて、福島第一原発における汚染水において問題の起きない時はない。例えば、10月2日には、たまった雨水を汚染水貯蔵タンクにためていたところ、雨水を入れすぎて、上部から0.43トンの汚染水が漏れ、一部は排水口をつたわって、港湾外に流失したことが報じられている。まず、下記の毎日新聞の報道をみてほしい。このようなことが報道されている。

福島第1原発:港湾外に汚染水流出「タンクに入れ過ぎた」
毎日新聞 2013年10月03日 13時21分(最終更新 10月03日 16時39分)

 東京電力福島第1原発の汚染水をためる貯蔵タンクから新たな漏れがあった問題で、東電は3日、推計約0.43トンが漏れたと発表した。一部は排水溝を通って港湾外の海に達したとしている。タンクを囲う高さ30センチのせき内にたまった水を、既にほぼ満杯状態だったタンクに移した結果、タンクの天板と側板の間からあふれたとしている。安倍晋三首相は「汚染水の影響は港湾内の0.3平方キロで完全にブロックされている」としているが、汚染水は港湾外に達した。【高橋隆輔、鳥井真平】

 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は3日の記者会見で「タンク満杯のぎりぎりを狙いすぎた。貯蔵計画にミスがあった」と語った。

 せき内の水からは、ストロンチウム90などベータ線を放出する放射性物質が1リットル当たり20万ベクレル、タンク内の水は、セシウム除去装置などで一旦処理した汚染水で、ベータ線が同58万ベクレル、セシウム134が同24ベクレル、セシウム137が同45ベクレル検出された。汚染水が流れた排水溝からはベータ線が同1万5000ベクレル検出された。タンクから漏れた汚染水の放射性物質濃度と環境への影響は確認中。東電は原子炉等規制法に基づき、国に通報した。

 東電によると、汚染水漏れが発覚したのは「B南」エリアと呼ばれ、8月に300トンの汚染水漏れが見つかったのとは別のタンク群。海から約300メートル離れている。

2日は、せきから雨水があふれ出すのを防ぐため、ポンプで吸い上げ、タンク内に移す作業をしていた。タンクの水量は元々97〜98%まであったが、雨水を移送する緊急対策として98〜99%まで水を入れることにしていた。

 作業は午前中から正午過ぎまで約2時間行い、最大約25トンをタンクに移した。午後8時5分ごろ、作業員がタンクの最上部から水が漏れているのを発見した。水漏れはポンプを起動した約12時間前の午前8時35分ごろから始まったとみられるという。

 漏れた水の一部は、タンクの最上部から2.5メートル下に設置されている作業用の足場の雨水を抜く穴からせきの外側に落ち、さらに側溝から海につながる排水溝へ流れ込んだとみられる。

 漏れが見つかる前の水位は98.6%だったが、水位計を常時確認していたかは分からないという。2日午後2時半の目視確認は、タンク天板から水位を計測しただけだった。

 タンクは傾斜した地面上に設置されていた。東電はタンクの傾斜は基準の範囲内だったとしている。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20131003k0000e040235000c2.html

東京新聞の報道によると、より情けないことが判明する。

汚染水漏れ 満水に気付かず注水

2013年10月3日 夕刊

 福島第一原発の雨水を移送していたタンクから高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む処理水が漏れた問題で、東京電力は三日、四百三十リットルが堰(せき)外へ出て、一部が排水溝を通じて外洋に流出した可能性があると発表した。タンクが傾いていたため、低い所から漏れ出した。
 水漏れしたタンクは、八月に漏れが見つかったのとは別のタンク群にある。敷地東の海に向かって緩やかに傾斜した土地に五基連結し、傾いて建てられていた。タンク一基の大きさは直径九メートル、高さ八メートルの円筒状。
 最も高い位置にあるタンクより約五十センチ低い海側のタンクに雨水を入れていたが、水位計は一番高い陸側にあるだけ。水位計で98%になるまで雨水を入れる予定で作業し、海側のタンクが先に満水になったことに気づかなかった。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は三日、「タンク運用が厳しく、ぎりぎりを狙いすぎてアウトになった」と話した。
 漏れた水の一部は、近くの排水溝から外洋などに流れたらしい。一リットル当たり五八万ベクレルのストロンチウムなどを含んでおり、外部への放出が許される濃度の約一万倍。ただ、ベータ線のため直接、触れなければ人体に大きな影響はない。東電は国に通報するとともに、排水溝に土のうを積むなどの対策を取った。
 二日は台風の影響で、処理水タンク周りの堰内の水位が上がり、雨水を移送した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013100302000240.html

この漏れたタンクは、傾斜地に五基連結して建設されており、その内の最も下部に海側に所在していた。しかし、それぞれのタンクには水位計が設置されておらず、最も上部の陸側のタンクにしか水位計が設置されていなかった。そのため、最も下部の海側にある当該タンクが満水になったことを承知できず、上部から汚染水が漏れることになったという。小学生の理科でもわかるようなことが、福島第一原発の現場では検討されなかったらしい。

この状態について、さすがに、菅義偉官房長官は対応策が十分ではなかったことを認めた。しかし、福島第一原発については「全体としてはコントロールできていると思っていると述べている。次のロイター発信の記事をみてほしい。

福島第1原発の新たな汚染水漏出、東電と連携し対策=官房長官
2013年 10月 3日 11:52 JST
[東京 3日 ロイター] – 菅義偉官房長官は3日午前の会見で、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート) 福島第1原子力発電所のタンクから新たな汚染水が漏出し、その一部が海に流出した可能性があることについて、東電の対応を確認するとともに、汚染水問題解決に向けてしっかり対策を講じていきたいと語った。

菅官房長官は、汚染水問題の抜本的な改革は政府が責任をもって対応し、個々の問題は東電が対応するとしたうえで、今回のような漏れもあってはならないことだと指摘。「実際に漏れているのだから対応策が十分だったとは思わない」と語った。そのうえで「政府と東電が連携し、一切こういうことがないよう、これからもしっかり取り組んでいきたい。最善の努力をしていく」とした。

安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会などで汚染水問題はコントロールできていると発言したこととの関連については「全体としてはコントロールできていると思っている」と答えた。

(石田仁志)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE99201R20131003

福島第一原発が「コントロールされている」という状況ではないのは、首相官邸とIOC委員以外は周知の事実である。ただ、今回の問題は、福島第一原発建屋に流れ込んできている地下水などの問題とは、やや次元が異なる問題である。地下水については、まさに、自然の力をコントロールできないということである。しかし、今回の汚染水漏れについては、そもそも、タンクの状況を把握して作業していれば防げたことである。作業員も別に無用の被ばくは避けたいのであるから、タンクの状況を把握していれば、タンクが満水して汚染水が漏出するということはしなかったであろう。傾斜地にタンクを建設し、さらにそれぞれのタンクに水位計を設置しないということ自体が無茶苦茶な話であるが、そういう構造であるということすら東電首脳部は十分把握しておらず、それゆえに雨水でタンクを満水にして汚染水を漏出させたと推測できる。

ということは、東電首脳部は、福島第一原発の作業現場を十分コントロールできていないということを意味するだろう。これは、非常に重大なことである。そもそも、汚染水の貯蔵タンク自体が不備なものなのであるが、それが不備であることすら、東電首脳部は承知していないのである。単に、自然の地下水や、メルトダウンした原子炉だけでなく、貯蔵タンクの管理という人間の手で作業しうる範囲ですら、東電はコントロールできなくなっているのではなかろうかと思えるのである。

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福島第一原発の汚染水については、毎日のように新たな漏洩が報道されている。8月31日には、タンク2個で最大毎時1800mSvに達する高放射線量が検出され、汚染水漏洩が原因であると推定されている。毎日新聞のネット配信記事をみてほしい。

福島第1原発:汚染水問題 2タンク底部、高線量 最大1800ミリシーベルト 接合部、漏えいか
毎日新聞 2013年09月01日 東京朝刊

 東京電力福島第1原発でタンクから高濃度汚染水が漏れた問題で、東電は31日、敷地内にある同じ型のタンク2基の底部の外側から最大で毎時1800ミリシーベルトの高い放射線量を検出したと発表した。22日の測定時は最大毎時100ミリシーベルトだった。周辺に水たまりは確認できず、タンク内の水位低下もみられないが、タンクを構成する鋼板の接合部からしみ出ている可能性がある。

 2基は約300トンの汚染水が漏れたタンクから約100メートル離れた「H3」区画にある。測定は、タンクから1メートル離れた地面から高さ50センチの場所で実施。

 前回に比べ線量が高くなった理由について、東電は「原因を調べている」と説明。その上で、「放射線は比較的遮蔽(しゃへい)が容易なベータ線が中心だ。作業員は防護服を着用しており、健康影響は考えにくい。周辺環境への影響も今のところ、みられない」としている。1800ミリシーベルトは、原発作業員の年間被ばく上限に1分あまりで達する線量。

 2基とは別に「H4」エリアにあるタンクの底部と、「H5」エリアのタンク同士をつなぐ配管下部で、最大で毎時230ミリシーベルトを検出した。この2基でも水位の変化は見られないが、「配管部に少量の水滴があり、地面に変色が見られる」という。【渡辺諒】http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130901ddm041040108000c.html

この中で、東電は「放射線は比較的遮蔽(しゃへい)が容易なベータ線が中心だ。作業員は防護服を着用しており、健康影響は考えにくい。周辺環境への影響も今のところ、みられない」と述べている。しかし、この毎時1800mSvという放射線量について、ブルームバーグは、次のような見解のある記事を9月2日に配信している。

近畿大学の伊藤哲夫教授(放射線生物学)は、毎時1800ミリシーベルトという水準について、「4時間浴び続ければ死というものしかなく、手当てしなければ、30日以内に100%の方が亡くなる」と述べ、非常に高いレベルだとの認識を示した。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MSF7FN6KLVR801.html

東電は、また、事態を矮小化しているとしかいえない。ベータ線が遮蔽しやすいといっても、直接1分でもあびたら、それだけで原発作業員の年間の被ばく上限に達する量なのである。最早、死と隣り合わせの作業になっていると考えるべきなのである。そして、これが最悪だとすらいえないのだ。

このような福島第一原発事故の汚染水漏れは、日本よりもはるかに海外で報道されている。共同通信は、9月2日に、福島第一原発の汚染水漏れについての海外の報道を紹介した記事をネット配信している。

五輪招致への影響、指摘も  汚染水問題、各国が報道

 東京電力福島第1原発で汚染水が海に漏出している問題が、各国メディアの注目を集めている。深刻な海洋汚染の脅威が現実となりつつある事態が連日報じられ、東京がマドリード、イスタンブールと争う五輪招致への影響も指摘されている。
 「日本はもぐらたたきにうんざりしている」。米CNNは相次ぐトラブルへの政府、東電の対応が後手に回っている現状をそう例えた。地上タンクからの漏出が「懸念材料のカタログに新たに加えられた」と表現。「汚染水の海洋放出や土壌の凍結措置も考えられるが、重大な技術、政治的な挑戦となるだろう」との専門家の分析を報じた。
 「約千個あるほかのタンクの耐久性にも疑問を生じさせる」とした米紙ニューヨーク・タイムズは、一連の問題が東電への視線を厳しくし、海洋放出の合意形成を難しくしたとの見方を伝えた。
 英BBC放送は、敷地内のプールにある使用済み核燃料の危険性も指摘し「日本が国際的な支援を求めないのは大きな過ちだ」との声を伝えた。
 事故後、2022年末までの脱原発を決めたドイツでは、保守系のフランクフルター・アルゲマイネ紙が「透明性は皆無」の見出しで、東電の変わらぬ 隠蔽 (いんぺい) 体質を批判。「約束した社内改革は口だけにすぎなかった」と、 広瀬直己 (ひろせ・なおみ) 社長の指導力に疑問を投げかけた。
 20年の夏季五輪開催都市が決まる国際オリンピック委員会(IOC)総会は7日(日本時間8日)。「日本が効率的な五輪運営をすることに疑いはないが、まだ原発の危機に取りつかれたままだ」(カナダ紙)など、原発事故と五輪をからめた報道も出てきた。
 候補地を抱えるスペインの地元メディア、エウロパ・プレスは「原発の問題が未解決であることは東京の五輪招致にも影響を与えるだろう」との元閣僚の発言を報じた。
 政府が原発建設を急ぐ中国でも関心は高い。
 共産党機関紙、人民日報の地方支社の幹部は短文投稿サイト「 微博 (ウェイボ) 」に「(日本は)平和憲法の改正を図り、軍国主義が台頭し、大量の汚染水を公海に流している」と投稿し、五輪の東京開催への反対を呼び掛けた。
 国営通信の新華社は「原発の危機が東京の招致に暗い影」と報道。安全性を訴える 猪瀬直樹 (いのせ・なおき) 東京都知事の発言などを伝える記事を「日本政府は危機を見くびり続けているが、内外で高まる懸念にIOCが耳を傾けるかどうかが注目」と結んだ。
 自国産の水産物などにも風評被害が拡大する韓国では、 日本政府が9月の早い時期にも抜本的対策を打ち出すことについて、 五輪招致への悪影響を懸念し「手をこまねいていた姿勢から急変した」(聯合ニュース)と分析。「根本的な事態解決は期待できない」と懐疑的な見方を伝えている。(パリ、ベルリン、北京、ソウル、東京共同)
(共同通信)
2013/09/02 15:44
http://www.47news.jp/47topics/e/245218.php

しかし、このような、海外における福島第一原発汚染水問題の報道に対して、森喜朗元首相は「東京オリンピック招致活動へのネガティブキャンペーン」として理解しているのである。森は現在、招致委員会評議会議長の立場にある。その彼が8月30日、中日新聞のインタビューを受け、中日新聞は8月31日にネット配信した。

「日本の力 見せる時」
 九月七日の二〇二〇年夏季五輪の開催都市決定まであと一週間余り。東京招致に向け、政財界一体となった招致委の評議会議長を務める森喜朗元首相は三十日、本紙のインタビューに「(福島第一原発の汚染水漏れ事故の報道で)ますます分からなくなってきた」と情勢を分析。安倍晋三首相が出る最終プレゼンテーションでの対応が重要との認識を示した。(田嶋豊)
 一九年のラグビーワールドカップ(W杯)招致を成功させた森氏は、今回もきめ細かな采配(さいはい)を発揮。日本オリンピック委員会(JOC)が中心だった前回のコペンハーゲンの反省から「敗因分析も明確にない中、戦略を立て直した方がいい」と指示。招致委に外務省や文部科学省の人間を送り込み、あらゆる団体を網羅し、国民的運動として盛り上げてきた。
 マドリードと東京の決選投票をにらんだ情勢も一部伝えられるが、森氏は王室を巻き込んだスペインの動きを警戒。さらには「アンフェアだが、欧州における汚染問題のネガティブキャンペーンが痛手だ」と分析する。
 一方、その対応をめぐり、二十九日の出発直前まで竹田恒和理事長らと協議。森氏は国際オリンピック委員会(IOC)委員には欧州勢が多く「風で(票が)動くこともある」と警戒感を募らせ、プレゼンに臨む首相に「ネガティブキャンペーンをうまく打ち消す対応をしなきゃいけない」と注文する。
 戦後、国民に自信と希望を与えた一九六四(昭和三十九)年の東京五輪から半世紀。森氏は「東日本大震災もあった。復興と元気、世界中に日本の力を見せる時だ」と強調する。日本だけではない。「スポーツの世界で取り残されているアジアの存在感を示し、理解してもらう機会になる」と期待を込めた。
(後略)http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2013083102100018.html

森は、福島第一原発汚染水問題に対する海外での報道を、「東京オリンピックに対するネガティブキャンペーン」としかみていないのである。スポーツの世界だけしかみてこなかった人がこのような発言をするのは、ある意味で理解できる。しかし、森は、元首相なのである。スポーツ振興は不要だとは言わないが、日本列島に住む人びとの生に一度は責任をもち、国際的にも、日本を代表して発言してきた人なのである。それが、このような発言…。日本列島に住む人びとの生にも、国際関係についても、森にとっては二義的な問題であり、東京オリンピック招致こそが課題なのである。そして、このような論理でいえば、国内で福島第一原発の問題を報道することも「東京オリンピックに対するネガティブキャンペーン」として認識されかねないといえる。

ただ、このような認識の背景には、権力側の漠然とした危機感があるのではないかとも考えている。福島第一原発事故についても東日本大震災についても、権力側においても漠然と危機を感じているのだと思う。しかし、彼らは、どちらについてもまともに向き合わず、彼らからすれば「ナショナリズムの祭典」(実際は、もちろんそれだけではないのだが)であるオリンピックを東京で開催することで、「国威」を発揚させ、「危機」を脱することができるのだと信じているのだと思う。

しかし、それは、全くの本末転倒な幻想に過ぎないだろう。オリンピックが開催されようとしまいと、福島第一原発事故への対応も東日本大震災からの復旧も課題として厳然として存在する。危機に正面から立ち向かうことこそ、危機への本来の対処の道である。

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さて、今まで何度となく述べてきたが、東電は福島第一原発に対する処理能力を失っているようにみえる。それならば、国が責任をもって福島第一原発を処理していかねばならないといえるだろう。しかし、その場合、東電が現在の体制のまま、存続することの当否が問われることになるだろう。

そもそも、東京電力が民間会社のまま存続することになったのは、3.11後の菅政権の政治判断によるものである。すでに2011年3月末、震災によって被害を受けた発電所の修理、原子力にかえて火力にするための燃料費、既発行の社債償還などのため東電は資金不足に陥っていた。特に、信用力が低下したため、社債の新規発行ができず、金融機関から2兆円もの借金をすることになった。さらに、原発事故に対する多額の補償金支払いがこの当時から予想されていた。

東電は、原子力損害賠償法における「異常に巨大な天災地災」などによって生じた場合、事業者ではなく政府が損害を補償するという特例条項の適用を求めた。しかし、当時の菅政権はそれを認めず、東電が全額補償するという建前を崩さなかった。しかし、多額に及ぶと見積もられていた補償金の支払を東電が行えば、それだけでも債務超過となり、東電はつぶれるしかなかった。そのため、菅政権としては、東電救済のシステムを造らざるを得なかった。

そのために造られたのが原子力損害賠償支援機構であった。元々の案は大手銀行が作成したといわれている。原子力損害賠償支援機構を新設し、そこに他の電力会社や政府が資金を提供し、東電はそこから借金して、賠償金にまわすという仕組みがつくられた。もちろん、東電は、この借金を返さなくてはならない。政府としては、一時資金を融通するが、最終的には東電が返済するので税金は投入されないとしたのである。

この機構の新設を定めた原子力損害賠償支援機構法は2011年8月3日に成立したが、その直後の2011年8月4日に出された朝日新聞朝刊では、「政府支援の前提となるのは東電のリストラだ」と述べられている。つまり、まずは、大幅なコストカットが東電に義務付けられたのである。しかし、同紙では「最終的な負担は電気料金に回る可能性が高い」としている。実際、2012年に東電の電力料金は値上げされた

他方で、同紙は「東電の株主や金融機関など、利害関係者の責任追及は先送りされた」と報道している。倒産や破産などの法的破たん処理においては、株主や貸し手の金融機関なども損害を蒙ることになるが、破たん処理されなかった東電では、それらに直接的な損害は及ばなかったのである。結局、株主や金融機関の利益は保護されるとともに、政府は税金を投入するという責任をとらず、それらのつけは、リストラと料金値上げにまわされることになったのである。そして、今の時点で回顧してみると、この「リストラ」は、福島第一原発の廃炉費用にも及んでいたと考えられる。

そして、この矛盾は、野田政権下で2012年7月31日に決定された東電の実質国有化においても解消されなかった。東電の国有化は、前述の原子力損害賠償支援機構が1兆円もの株式投資を行う形で行われた。しかし、2012年7月31日付の朝日新聞朝刊は、まず、原子力損害賠償支援機構による東京電力救済を批判して、次のようにいっている。

 

普通なら会社更生法の適用を申請するなどして、つぶれる。「つぶさない」と決めたのは民主党政権だ。
 昨年8月、原子力損害賠償支援機構法をつくり、政府が東電に賠償のための資金を貸したり、出資したりして支える仕組みをつくった。政府が賠償の責任を持ちたくないので、東電に賠償をすべて負わせるためにつぶさなかったのだ。
 この結果、つぶれれば、「債権放棄」で貸したお金が返ってこない銀行や、株が何の価値もなくなる株主が守られ、ほとんど損をしなかった。逆に、東電の生き残りのために利用者や国民が負担を強いられる。

そして、次のように主張している。

 

さらに、賠償費用や除染費用が予想よりふくらめば、東電がつぶれるなどして政府の出資金や賠償のための支援金が返ってこないおそれもある。その時は国民の税金で穴埋めすることになる。

加えて、東電の実質的国有化は、新たな矛盾をうむことになった。前述の朝日新聞朝刊では、「一方、政府は、電力会社を監督する立場と、東電の筆頭株主という立場になり、大きな矛盾を抱える」と指摘している。そして、東電が予定している柏崎刈谷原発の再稼働を事例にして、「政府は本来、原発が安全かどうかをしっかり審査し、再稼働を認めるかどうかを決めなくてはならない」という立場と、「原発が動けば、火力発電の燃料費が抑えられるという。筆頭株主としては東電再建に黄信号がともるため再稼働しなくては困る」という立場が矛盾していることを示すのである。その上で、同紙は、東電の言い分を認めて電力料金の値上げを認可した枝野経産相(当時)の態度をあげながら「政府はこれから、常に東電の側に立つのではないか。そんな疑念を抱かせた」と述べている。つまり、この段階で東電の筆頭株主となった政府は、東電を存続させ、経営を安定させたいという意識が強まったといえる

このような形で東電が存続しているのは、菅・野田という民主党政権の責任である。しかし、その後継となった自民党の安倍政権も、他の分野でさかんに民主党政権の政策見直しを主張しているにもかかわらず、民主党政権が定めた形で東電を維持している。補償費用、除染費用、廃炉費用など、全く利益にならない支出が何兆円(いや十兆円こえて…それより多くとも不思議はない)もあると想定される東電は、到底自分で資金をまかなうことができるとは思えない。長期間かけても、返済することは難しいだろう。実質的には破たんしているのだが、この会社はいまだ「原子力損害賠償支援機構」のもとに存続している。しかし、東電のやっていることは、補償金支払い一つとっても、被災者の意にそったものとは思えない。東電の救済が、被災者への補償金支払いの形で行われているのである。どの道、税金で、補償費用、除染費用、廃炉費用などをまかなうことになるであろうが、営利会社の形をとることで、政府は税金投入の責任を免れ、さらに補償費用、除染費用、廃炉費用などを「安上がり」で行わせることができる。さらに、表面上の責任を東電にとらせることで、株主や金融機関への責任追求をかわせるということになる。

福島第一原発の汚染水漏れは、そのような矛盾の中で発生しているのである。急ごしらえの汚染水のタンクや、先送りされた遮水壁建設などは、しょせん、コストをカットして、国などへの返済金を確保するという意識が背景になっているといえる。もはや、東電自体の当事者能力はないが、その責任は株主でもあり規制者でもある政府がとらなくてはならない。そして、福島第一原発の危機は、当面、コスト意識を捨てて考えなくてはならない。そのような形での税金投入は、民主党政権で免罪された、東電の株主や金融機関にも責任をとってもらうことにもつながっていくといえよう。

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このプログでも何度もとりあげている福島第一原発の汚染水流失について、8月23日、原子力規制委員会の更田豊志委員が現地視察を行った。このことについては、実はあまり報道されていない。また、テレビなどで報道されても、その動画はあまりアップされていない。

NHKの全国ニュースをみていても、福島第一原発についてはほとんど出て来ない。しかし、福島放送局の「福島県のニュース」として、ある程度、動画つきでネット配信されている。それは、次のようなものである。

http://www.nhk.or.jp/lnews/fukushima/6053805851.html?t=1377292675313

なお、このような記事は、早期にすべて削除される恐れがあるので、記事部分だけをここで引用しておこう。

原子力規制委が現地視察

原子力規制委員会の更田豊志委員は、23日、タンクから300トンあまりの汚染水が漏れ出た東京電力福島第一原子力発電所を視察し、東京電力に対し、点検がずさんだと指摘した上で「人手の問題などでできないことがあれば国などに対して声を上げてほしい」と呼びかけました。
原子力規制委員会の事務局によりますと、更田豊志委員は、23日午前、福島第一原発を訪れ、今月19日に300トンの汚染水が漏れ出ていることが分かったタンクの周辺などを見て回ったということです。
視察の後、取材に応じた更田委員は、「タンクから漏れることを前提とした準備がとられていたとは思えない。異常に気づくには、小さな変化も見逃せないが、そのために必要となるタンク周辺の通常の放射線量の記録などが残されていないのは、点検に対する姿勢を疑わざるをえない」と東京電力の対応を批判しました。
その上で、東京電力側からは、「点検を強化するには4倍の人員が要る」などと説明があったということで、これに対して更田委員は、「できないことがあれば声を上げてほしい」と呼びかけたということです。
また更田委員は「万全を尽くしていると言うことより、やりたい対策ができない現状を言うことの方が大事だ。事業者が言えないという難しい事情は分かるが、ぜひ勇気を持って声を上げてほしい。お金や人手の問題があれば、資源エネルギー庁などに対して要望を言わなければならない」と話しました。
08月23日 19時14分

実際、この動画をみて驚いたのだが、高濃度汚染水が漏洩したと思われる貯蔵タンクのまわりに「土のう」が積まれていた。そして、それをみて、更田委員と思われる人物が「これでさ、水が止まっていると思うか」とつぶやいていた。

福島第一原発の高濃度汚染水の流失を抑えようとして、東電は、最早「土のう」を積むしかなかったのである。「土のう」は、もちろん、ある程度の水を抑えることはできる。しかし、完全に「漏洩」を防ぐことはできない。そもそも、「土のう」は洪水対策に使うものであって、放射能防護対策に使うようなものではない。どうみても不十分な対策だが、この「土のう」を積む作業でも、作業した労働者は、かなりの被ばくをしたと考えられる。

また、動画をみてみよう。更田委員とおぼしき人物が「排水溝」のほうをみにいき、まるで自然の小川のように流れている排水溝をみて、東電側の説明をうけながら、「これなあ、これ海にいっているじゃない。このまま、ジャーンと合流してこのまま…」と述べている。東電は、汚染水の海への流出を認めたがらなかったが、結局、原子力規制委員会としては、汚染水が海に流失した可能性を認めたのである。

そして、現場で、更田委員が通常の放射線量の記録をとっているかと質問し、東電側が残していないと答えたやりとりが残されている。なお、この動画では残されていないが「点検を強化するには4倍の人員が要る」と東電は弁解したそうである。

その後で、更田委員が記者会見している動画が挿入されているが、それは、ほぼ記事内容通りである。

そもそも、300トンもの汚染水が流失したにもかかわらず、その汚染水の大半が残されていないのは、タンクの周りにあった堰の排水弁が開けられていたというミスのためである。このこと自体ズサンなのだが、「土のう」を積んで汚染水漏洩を防ごうとする、海に流れている排水溝があっても汚染水の海洋流出を認めようとはしない、通常の点検時の放射線量の記録をとっていないなど、私のような素人がみても東電の対応はおかしい。

そして、更田委員が、「万全を尽くしていると言うことより、やりたい対策ができない現状を言うことの方が大事だ。事業者が言えないという難しい事情は分かるが、ぜひ勇気を持って声を上げてほしい。お金や人手の問題があれば、資源エネルギー庁などに対して要望を言わなければならない」と東電によびかけている。しかし、これだけでは、最早、問題解決にならないだろう。原子力規制委員会は、8月14日、汚染水対策にはさらなる検討が必要としながらも、東電の福島第一原発の廃炉計画を認可した。だが、「高濃度汚染水」の放射線量の点検記録をとっていないことすら、「4倍の人員がいる」と弁解した会社が東電なのだ。コスト増になろうとなるまいと、点検などまっとうな管理作業に必要な労働者は確保しなくてはならず、そのことによって、破たん処理を免れたことの正当性が確保できるのが東電の置かれた立場である。にもかかわらず、コスト増になることを恐れてズサンな管理をしているのが東電の現状なのである。コスト減に努力するのは、民間の営利会社の本性といってよい。しかし、東電は、営利会社という自己の本性に忠実であればあるほど、自己の立場を失っていくであろう。

とにかく、この動画は、福島第一原発の管理を東電に任せておけないことを雄弁に物語っているといえよう。そして、それがゆえに、NHKなどは、この報道を抑制していると考えられるのである。

なお、ネット記事配信が削除される可能性があるので、Youtubeにアップされていた、TBSとFNNのニュース動画もここでは紹介しておく。原子力規制委員会の現地視察は、今回漏れた貯蔵タンクだけではない。原子炉建屋の汚染地下水対策も検討しており、このタンクとは違った溶接型のタンクについても漏洩対策が不十分であることを指摘している。

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