Feeds:
投稿
コメント

Posts Tagged ‘汚染水タンク’

福島第一原発の汚染水問題は、どうなるのだろうか。テレビ朝日は、4月19日に次のような記事をネット配信した。それによると、地下水を海に流したり凍土壁を作るなど、汚染水を増やさない対策が実施できない「最悪」のケースになった場合、2年後、建設した全てのタンクに汚染水が入りきらなくなるとされている。

2年後の福島原発は?…“最悪のケース”初試算(04/19 17:42)

 東京電力は、福島第一原発で汚染水が増え続け、2年後にも敷地内のタンクに入りきらなくなる“最悪のケース”を初めて試算し、その結果を原子力規制委員会に報告しました。

 東京電力は、タンクに汚染水を最大90万tまで入れられるよう計画し、タンクを海上輸送するなど建設を急いでいます。しかし、規制委員会から、地下水を海に流したり原子炉建屋の周りの地面を凍らせる「凍土壁」など、汚染水を増やさない対策が実施できない最悪のケースも試算するよう求められました。試算の結果、建設したすべてのタンクに汚染水を入れても、2年後に入りきらなくなるということです。規制委員会は、これまでに打ち出した汚染水対策で期待する効果が出るか確認するよう指示しました。http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000025403.html

もちろん、このことは由々しき事態である。しかし、連日、汚染水漏れやALPS(多核種除去設備)の作動停止などの報道がなされ(あまりに多くて不感症になってしまうほどである)、汚染水処理のコントロールが不全になっている有様を目にすると、この「最悪」のケースが一番現実的なのではないかと考えてしまう。多少うまくいったとしても、せいぜい2年という期限が伸びるだけなのではなかろうか。

そして、さらに指摘しなくてはならないことは、これが「最悪」とすら言い切れないことである。現在、原子炉内部に入った高濃度汚染水については、放射性セシウムや放射性ストロンチウムなどの放射性物質をALPSなどで除染することになっている。しかし、ALPSは、放射性のトリチウムは除染できない。結局、現在の計画では、トリチウムが残存したままで除染処理後の汚染水を放出することになっている。

現在、原子炉建屋に流れ込む前の地下水をくみあげ、それを海に直接流すことで、原子炉建屋で発生する汚染水を量的に減少させる事業を行おうとしている。しかし、福島第一原発事故やその後の汚染水漏れで、対象の地下水自体がトリチウムなどによって汚染されてしまっている。それでも、トリチウムで放出基準値1リットルあたり1500ベクレル以下の場合は放出することにされている。この事業が軌道にのり、ALPSが本格稼働(現状では、いつになるか、神のみぞ知るということなのだが)すれば、原子炉内部で発生した高濃度汚染水についても、トリチウムが残存した形で、海などに放出することになろう。結局、福島第一原発周辺の環境は、これからも放射性物質で汚染され続けることになるのである。

そして、このトリチウムの全体量が半端なものではないのである。4月24日、毎日新聞がネット配信した次の記事をみてほしい。

福島第1原発:放射性トリチウムは推計3400兆ベクレル
毎日新聞 2014年04月24日 20時43分

 東京電力は24日、福島第1原発1〜4号機にある放射性トリチウム(三重水素)の総量は、推計で約3400兆ベクレルに上ると発表した。国が定める1基当たりの年間放出基準(3.7兆ベクレル)の900倍以上に相当する。

 政府のトリチウム対策を考える部会で試算を報告した。内訳は、溶けた核燃料などに約2500兆ベクレル▽敷地内に貯蔵されている汚染水に834兆ベクレル▽原子炉建屋やタービン建屋内の滞留水に約50兆ベクレル▽建屋地下から護岸につながるトレンチ(配管などが通る地下トンネル)の水に約46兆ベクレル−−が含まれる。

 汚染水に含まれるトリチウムの量は1月の報告より約17兆ベクレル増加した。溶けた核燃料を冷却する水にトリチウムが溶け出ていることが懸念される。この点について、東電は部会で「事故直後に比べて濃度は下がっており、核燃料から大量に溶け出ている状況ではない」と説明した。

 トリチウムは62種類の放射性物質を取り除ける多核種除去装置「ALPS(アルプス)」でも汚染水から取り除くことができず、海洋放出や水蒸気化、地下埋設などの対策が検討されている。【鳥井真平】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20140425k0000m040085000c.html

すでに、福島第一原発には3400兆ベクレルのトリチウムが存在しており、1基あたりの年間放出基準3.7兆ベクレルの900倍ーつまり900年分あるということになる。そして、1月から4月までの間だけで17兆ベクレル増えたというのである。この分だけで、4.5年分にあたることになるだろう。かなり緩いと考えられるトリチウムの年間放出基準をもとにかんがえても、トリチウムの放出に900年かかることになる。

つまり、トリチウム除去をせずに汚染水の放流を続けると、大規模な環境汚染を惹起するか、ほぼ1000年近くかけて放流するかという二つの選択肢しかなくなるのである。その上、現在でもトリチウム汚染は拡大している。結局、東電などがいう「最悪」のケースを回避したとしても、「最悪」という状態は変わらないのである。これを「危機」とよばずして、何を「危機」とよべばいいのだろうか。

広告

Read Full Post »

最近、福島第一原発について、前ほど報道されなくなっている。しかし、それだからといって、福島第一原発の状況が好転しているわけではない。むしろ、関心が薄まっている中で、とんでもないことがおきている。

その一つが、この事件だ。東電は、これまで、福島第一原発の護岸近くの観測用井戸から、ストロンチウム90を含むすべてのベータ線を発生する放射性物質の濃度を最大1リットルあたり90万ベクレルと説明してきた。しかし、実際はストロンチウム90だけで最大500万ベクレルであったと、2月6日に発表した。そして、予想では、ベータ線を出す全ての放射性物質濃度は、1000万ベクレルになる可能性が出てきたのである。現状では、ストロンチウム90だけでも、法定基準の16万倍以上なのである。次の河北新報のネット配信記事をみてほしい。

福島第1・放射性物質濃度 東電、測定ミス公表せず

 東京電力は6日、福島第1原発の護岸近くの観測用井戸の地下水から採取したベータ線を出す放射性物質(全ベータ)の濃度測定に誤りがあったと発表した。
 東電によると、全ベータの一部にすぎない放射性ストロンチウム90の検出濃度が全ベータの濃度を上回る矛盾した状態が遅くとも昨年10月から続いていた。同社はストロンチウム90の測定は分析中で、全ベータの最大濃度は1リットル当たり90万ベクレルと説明してきた。ところが、ストロンチウム90の測定がほぼ正確で全ベータの測定が誤りだったことが判明。東電が6日に公表したストロンチウム90(昨年7月採取)の最大濃度は500万ベクレル(法定基準30ベクレル)で、全ベータの推定濃度は「1000万ベクレル程度に跳ね上がる可能性がある」(同社)という。
 東電は昨年10月、全ベータの測定法のミスを認識し、測定法を変更。その後4カ月間、測定ミスを公表しなかった。東電福島広報部は「(測定ミス隠しは)意図的でなかったが、誤解を招きかねないことに思いが至らなかったと反省している」と話した。

2014年02月07日金曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2014/02/20140207t63020.htm

この測定ミスの原因について、TBSは次のような記事を2月8日にネット配信している。

東京電力の説明によりますと、放射線の計測器は、1リットルあたり数十万ベクレルなどの高い濃度の水の場合、測定しきれずに実際よりも低い数値を出すことがあります。これを避けるため、濃度が高い場合は水で薄めて測定し、数値を補正する方法が採られます。

 東京電力は、去年10月に、濃度が高い場合は水で薄める手順を社内で定めましたが、それ以前は、大量のデータを速く処理する必要があったため、水で薄める手順を省いていたということです。
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20140208-00000014-jnn-soci

簡単にいえば、放射性物質濃度があまりに高い場合は、放射線計測器ではかれない場合があるので、水で薄めて計るべきであったが、「大量のデータを速く処理する必要があった」ので、それを省略していたということなのである。

これは、単なるミスではない。朝日新聞のネット配信記事(2月6日)によると「ストロンチウムの値がベータ線を出す放射性物質全体の値より高く出て矛盾が生じたため、東電は昨年6~11月に採取した海水や地下水など約140件分の値を公表せず、計測もやめていた」とある。すでに計測時から矛盾は出ており、TBSの報道のように、すでに10月には、水で薄める必要性があることは東電内部でも了解されていた。となれば、本来、それまでの計測結果についても疑わなくてならない。しかし、東電は、再計測しないまま、これまで放置したのである。「(測定ミス隠しは)意図的でなかったが、誤解を招きかねないことに思いが至らなかった」と東電は述べているが、これが「意図的でない」なら、なんなのだろうか。結局、低い濃度が出たので、あえて「寝た子は起こさない」つもりで放置したのであろう。

そして、2014年1月9日に、読売新聞は次のような記事をネット配信し、ストロンチウム90の測定方法が誤っている可能性を指摘した。しかし、それでも、東電は「測定結果に誤りがある可能性があり、公表できない」と述べ、「旧装置と異なる分析結果になった原因を詳しく解明してから、新たな装置による結果を公表したい」としたが、その時以降も自主的に公表する姿勢をみせなかったのである。

東電、ストロンチウム濃度公表せず…測定誤り?

 東京電力は8日、福島第一原子力発電所の港湾や井戸で海水や地下水を採取して調べている放射性ストロンチウムの濃度について、「測定結果に誤りがある可能性があり、公表できない」と発表した。

 海水などは定期的に採取して汚染状況を監視することになっており、放射性セシウムなどは毎週、濃度を分析して公表している。しかし、汚染水に含まれる主要な放射性物質の一つであるストロンチウムは、毎月分析することになっているが、昨年6月に採取した海水などの分析結果を最後に、半年近くも公表していなかった。

 東電によると、昨年夏まで使っていた装置の分析結果にばらつきがあり、信頼性に乏しかった。同9月に新たな装置を導入し、信頼性が向上したが、「旧装置と異なる分析結果になった原因を詳しく解明してから、新たな装置による結果を公表したい」と説明している。

(2014年1月9日07時29分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140108-OYT1T01055.htm

東電のあまりの隠蔽体質については、監督機関の原子力規制委員会がクレームをつけた。1月24日に開かれた原子力規制委員会の作業部会では、次のような声があがっていた。福島民報が1月24日にネット配信した記事をみてほしい。ここで、すでに、原子力規制委員会の更田豊志委員は、「汚染水に含まれる放射性物質の検査結果に疑義があったのに東電の調査報告が遅過ぎる」として「今後の姿勢や改革が実行できるかに関わる。きちんと分析して経緯を報告してほしい」とし、「解釈しづらい分析結果であっても公表すべきだ」と指摘していたのである。

タービン建屋も汚染源か 第一原発の汚染水拡散 規制委指摘
 原子力規制委員会は24日、東京電力福島第一原発の汚染水対策を検討する作業部会を開いた。福島第一原発の東側護岸の地下に汚染水が広がっている問題で、1号機タービン建屋地下にたまった高濃度汚染水が漏れている可能性を指摘する意見が相次いだ。
 担当の更田豊志委員は作業部会に提出された資料から「(汚染水は)タービン建屋に起源がありそうだ。もともと水をためるものではないから、ある程度疑うのは自然だ」と指摘した。
 また更田委員は、汚染水に含まれる放射性物質の検査結果に疑義があったのに東電の調査報告が遅過ぎるとして「今後の姿勢や改革が実行できるかに関わる。きちんと分析して経緯を報告してほしい」と注文を付けた。
 汚染水からはストロンチウム90を含むベータ線を出す放射性物質が検出されているが、東電が昨年6月以降に採取した試料の測定でストロンチウムの濃度がベータ線を出す放射性物質全体の濃度を上回る結果が相次いだ。
 東電によると、同7月には社内で測定方法に問題があるのではないかと意見が出たが、相次ぐ汚染水問題への対応で原因調査が遅れ、現在も解明できていない。規制委への状況報告も今月にずれ込んだ。
 更田委員は「解釈しづらい分析結果であっても公表すべきだ」と指摘。会合に同席した東電の姉川尚史常務執行役は「マネジメントが徹底できておらず申し訳ない」と陳謝した。

( 2014/01/25 10:11 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/2014012513502

結局、以前あった原発事故隠しと同じなのである。さすがに、監督機関の原子力規制委員会まで籠絡できる状態ではないが、不都合な情報は隠蔽し、調査もせず、少しでも時間稼ぎをして、やり過ごそうとしたのである。これが「意図的でない」のなら、東電の運営能力自体を疑うべきであろう。

そして、これは、福島第一原発の護岸そばの観測用井戸だけの問題ではなくなってきた。タンクから漏洩していた汚染水も、ベータ線を出す放射性物質の濃度を過小評価していた可能性が浮上してきたのである。次の時事新報のネット配信記事をみてほしい。

300トン漏えいでも過小評価か=汚染水濃度、実態より低く―東電
時事通信 2月7日(金)18時13分配信

 東京電力福島第1原発で放射能汚染水の濃度が過小評価されていた問題で、東電は7日、昨年8月に判明したタンクから約300トンの汚染水が漏えいしたケースでも、濃度が実態より低い値で公表された疑いがあることを明らかにした。
 原子力規制委員会は東電が公表した濃度などを基に、国際原子力事故評価尺度(INES)で8段階のうち重い方から5番目の「レベル3」(重大な異常事象)と暫定評価したが、根拠が揺らぎかねない事態だ。
 事務局の原子力規制庁は「公表された濃度が実態よりも大幅に低かった場合は評価の見直しにつながり得る」と述べ、再引き上げの可能性に言及。一方、「評価の信頼性に関わるので慎重に対応しなければならない。東電の計測方法は以前から信ぴょう性が低く、最終的な評価結果が固まるには時間がかかる」との見通しを示した。
 東電によると、昨年10月まで同原発で用いられたストロンチウム90などのベータ線を出す放射性物質の濃度の測定方法は、1リットル当たり数十万ベクレルを超す汚染水では計測対象となる放射線が多いため正確に把握できず、実態よりも低い値が出る傾向にあった。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140207-00000139-jij-soci

これは、重大な問題である。記事にある通り、汚染水の濃度が過小評価されている場合、環境に流失した放射性物質の総量は大きくなるはずで、事故尺度を引き上げ、さらに、それに見合った対策が講じられなくてはならない。前年、安倍晋三は、「福島第一原発は完全にコントロールしている」と述べたが、いまや原子炉や放射性物質をコントロールしているどころか、これらの対処にあたるべき東電という機構のコントロールもできないでいるのだ。

そして、この記事で、原子力規制庁は「東電の計測方法は以前から信ぴょう性が低く」と他人事のように指摘している。放射性物質測定という、いわばルーティンワークですら、東電はまともにこなすことができない。原発再稼働に向けての安全審査などに時間・人員を費やすのではなく、福島第一原発の管理こそ、東電にまかせず、最優先にとりくむべきことなのである。

Read Full Post »

最近、福島第一原発の状況について、あまり注目されることがなくなっている。しかし、福島第一原発は、人びとが意識していようがいまいが、厳然と存在している。確かに、1号機・2号機・3号機は水で冷却され、直近に爆発する可能性は少なくなっている。4号機の燃料プールからの燃料棒の取り出しも始まった。しかし、福島第一原発からの汚染水の流出は止まっていない。また、原子炉を冷却した後の汚染水も鉄製貯蔵タンクにためこまれている。

さらに、この鉄製貯蔵タンク自体が問題となっている。1月9日付の次の読売新聞の報道をみてほしい。

汚染水タンクからX線、対策怠り基準の8倍超

 福島第一原子力発電所で、汚染水タンクから発生するエックス線の影響を東京電力が軽視し、対策を講じないままタンクを増設し続けていることが9日わかった。

 国が昨年8月に認可した廃炉の実施計画では、原発敷地境界の線量を「年1ミリ・シーベルト未満にする」と定めているが、12月には一部で年8ミリ・シーベルトの水準を超えた。

 現在、周辺に人は住んでいないが、作業員の被曝ひばく量を増やす要因になっている可能性がある。原子力規制委員会は10日に東電を呼び、対策の検討に入る。

 タンク内の汚染水から出る放射線は主にベータ線で、物を通り抜ける力が弱い。しかし、ベータ線がタンクの鉄に当たると、通り抜ける力の強いエックス線が発生し、遠方まで達する。

 東電によると、様々な種類の放射線を合わせた敷地境界での線量は、昨年3月には最大で年0・94ミリ・シーベルトだったが、5月には同7・8ミリ・シーベルトに急上昇した。汚染水問題の深刻化でタンクが足りなくなり、敷地の端までタンクを増設したため、エックス線が増えたらしい。

(2014年1月9日18時20分 読売新聞)

つまり、汚染水タンク自体が鉄製のため、汚染水が発するベータ線があたると、より透過力の強いX線が発生し、そのため、福島第一原発敷地内の放射線量が急上昇しているというのである。

ベータ線が鉄などにあたるとX線が発生するということは、一般的に知られていたことのようである。例えばWikipediaの「ベータ粒子」(ベータ線)の遮蔽に関する記述をみてみよう。

遮蔽

ヘリウム4の原子核であるアルファ粒子は一枚の紙で遮蔽できる。ベータ線の実体である電子では 1 cm のプラスチック板で十分遮蔽できる。電磁波であるガンマ線では 10 cm の鉛板が必要となる。
透過力は弱く、通常は数 mm のアルミ板や 1 cm 程度のプラスチック板で十分遮蔽できる。ただし、ベータ粒子が遮蔽物によって減速する際には制動放射によりX線が発生するため、その発生したX線についての遮蔽も必要となる。
遮蔽物に使われる物質の原子番号が大きくなるほど制動放射が強くなることから、ベータ線の遮蔽にはプラスティックなどの低原子番号の物質を使い、そこで発生したX線を鉛などの高原子番号の物質で遮蔽する、という二段構えの遮蔽を行う。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%BF%E7%B2%92%E5%AD%90

汚染水タンクについては、鋼材をボルトでつないだだけのボルト締め型では水漏れのおそれがあるといわれていた。このようにみてみると、溶接型も含め、そもそも汚染水と鉄を直に接触させているタンク自体が欠陥品であったことになる。鉄製タンクの場合は、内部をプラスチックなどで遮蔽すべきだったのである。

この記事でも出ているように、この鉄製汚染水タンクの使用は、無用に放射線を増大させている。これが、福島第一原発の労働者に意味もない被ばくを強いていることはあきらかである。1月10日時点では、原子力規制委員会もこの問題について東電を呼び出して、協議するとしていた。

しかし、14日には、原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁は、次のような態度表明を行った。

ALPS性能不良、稼働のメド立たず…福島第一

 東京電力が福島第一原子力発電所で試験運転中の新型浄化装置「ALPS(アルプス)」について、原子力規制庁は14日の記者会見で、目標通りの性能が出ておらず、いつ本格稼働できるか分からないことを明らかにした。

 汚染水に含まれる63種類の放射性物質のうち、62種類をほぼ完全に除去できるはずだったが、ヨウ素など一部の物質の除去性能が目標を下回り、改良を加えているという。

 同庁はまた、汚染水タンクから出るエックス線によって、敷地境界の放射線量が基準を大幅に超えている問題について、当面はタンクの設計変更などを求めずに増設を認める姿勢を示した。同庁の担当者は、設計変更の具体案がまだないとして、「(アルプスで汚染水中の)ストロンチウムなどを除去するのが一番」と説明した。

(2014年1月14日21時08分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140114-OYT1T01083.htm

まず、前段は、放射性物質浄化装置(「ALPS(アルプス)」)が性能不良で、本格稼働のめどがたたないということを告白している。ALPSは、トリチウム以外の放射性核種の多くを除去できるといわれているもので、稼働すれば、汚染水におけるベータ線の主な発生源であるストロンチウム90なども除去できることになる。しかし、ALPSについてのニュースは、いつも故障その他で本格稼働できないというものばかりであった。2014年1月時点でも、やはり、本格稼働できないのである。

しかし、後段は、ALPSの本格稼働のめどがたたないにもかかわらず、その稼働を期待するとして、X線の発生源になっている鉄製タンクの設計変更を求めないと主張している。確かに、本格稼働すれば、ストロンチウム90を除去することによって、ベータ線の発生をおさえ、鉄製タンクでもX線は生じないことになるだろう。しかし、そもそも、ALPS自体の本格稼働のめどが立たないのであり、ゆえに、鉄製タンクにストロンチウム90を含んだ汚染水を貯蔵しつづけるしかない。現状において、X線の発生を防ぐ措置は全く講じられないのである。福島第一原発自体の廃炉処理のように、手段自体が現時点の科学技術で考えられないわけではない。タンク自体の設計を変更すればいいのである。そのような指示をすることすら、原子力規制庁は放棄したのである。

そして、東電は、そもそも水漏れの恐れボルト締め型タンクの「延命」すらはかるようになった。東京新聞の次の報道をみてほしい。

欠陥タンク 延命図る 福島第一 漏水不安のボルト締め型

2014年1月22日 朝刊

 東京電力は、水漏れの不安を抱える福島第一原発のボルト締め型タンクに、漏水防止の延命策を施し、数年の間は使い続ける方針を決めた。漏水しにくく耐久性が高い溶接型タンクに早急に置き換えるとしていたが、増設が急速には進まず当初の方針から後退した。置き換えは来春以降にずれ込む見通しで、当面は弱点の底板の接ぎ目を止水材で補強し、だましだまし使い続ける。 (清水祐樹)
 タンク内の水は、溶け落ちた原子炉内の核燃料を冷やした後の水。放射性セシウムはおおむね除去されているが、高濃度の放射性ストロンチウムなどが残る。昨年八月には、一基から三百トンの水漏れが発覚し、周辺の土壌や地下水、さらには排水溝を伝って外洋も汚染した。
 東電が調べたところ、五枚の鋼板をボルトでつなぎ合わせた底板の止水材がはがれたことが水漏れの原因と判明。東電は、国からの指示もあり、全てのボルト締め型を溶接型に置き換えることを決めた。
 ただ、溶接型の増設には一基当たり二カ月前後かかる上、増設用地も不足しているため、東電は場所をとる割に容量の少ない小型タンクを撤去し、そこに溶接型を増設していく方針。ボルト締め型タンクを置き換えるだけの容量の余力ができるのは、早くても来年四月半ばになる見込みだ。
 このため東電は、ボルト締め型タンクの弱点である底板を二つの手法を併用して補修し、延命させてしのぐことにした。一つはタンク天板に穴を開け、そこから止水材を塗った鋼材を入れ、底板の接ぎ目にかぶせる方法。もう一つは、底板の接ぎ目とコンクリート基礎のすき間に止水材を注入する方法だ。いずれもタンクに汚染水が入ったままでも作業できるというが、ボルト締め型の根本的な弱点がなくなったわけではない。鋼材をかぶせる手法では、事前に作業員が水中ポンプを使って接ぎ目周辺の沈殿物を掃除する必要がある。高濃度汚染水のすぐ近くでの作業だけに、細心の注意が必要になる。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014012202000128.html

汚染水タンクを「溶接型」にするということ自体、「反故」にされていく勢いである。ボルト締め型についても「延命」措置をして、「数年」は使うとのこと。これでは、「緊急措置」とすらいえない。ボルト締め型のタンクの場合、「漏水」と「放射線発生」という二重の欠陥をもっている。しかし、そのことは、当面、放置されるのである。本格稼働のめどがたたないALPSの稼働をあてにして…。

このようなことは、他でも見られる。多少、人びとの目が向かなくなったことを好機として、東電・原子力規制委員会・原子力規制委員会は、好き放題なことをしているのである。

Read Full Post »