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Posts Tagged ‘汚染地下水’

さてはて、福島第一原発における汚染水において問題の起きない時はない。例えば、10月2日には、たまった雨水を汚染水貯蔵タンクにためていたところ、雨水を入れすぎて、上部から0.43トンの汚染水が漏れ、一部は排水口をつたわって、港湾外に流失したことが報じられている。まず、下記の毎日新聞の報道をみてほしい。このようなことが報道されている。

福島第1原発:港湾外に汚染水流出「タンクに入れ過ぎた」
毎日新聞 2013年10月03日 13時21分(最終更新 10月03日 16時39分)

 東京電力福島第1原発の汚染水をためる貯蔵タンクから新たな漏れがあった問題で、東電は3日、推計約0.43トンが漏れたと発表した。一部は排水溝を通って港湾外の海に達したとしている。タンクを囲う高さ30センチのせき内にたまった水を、既にほぼ満杯状態だったタンクに移した結果、タンクの天板と側板の間からあふれたとしている。安倍晋三首相は「汚染水の影響は港湾内の0.3平方キロで完全にブロックされている」としているが、汚染水は港湾外に達した。【高橋隆輔、鳥井真平】

 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は3日の記者会見で「タンク満杯のぎりぎりを狙いすぎた。貯蔵計画にミスがあった」と語った。

 せき内の水からは、ストロンチウム90などベータ線を放出する放射性物質が1リットル当たり20万ベクレル、タンク内の水は、セシウム除去装置などで一旦処理した汚染水で、ベータ線が同58万ベクレル、セシウム134が同24ベクレル、セシウム137が同45ベクレル検出された。汚染水が流れた排水溝からはベータ線が同1万5000ベクレル検出された。タンクから漏れた汚染水の放射性物質濃度と環境への影響は確認中。東電は原子炉等規制法に基づき、国に通報した。

 東電によると、汚染水漏れが発覚したのは「B南」エリアと呼ばれ、8月に300トンの汚染水漏れが見つかったのとは別のタンク群。海から約300メートル離れている。

2日は、せきから雨水があふれ出すのを防ぐため、ポンプで吸い上げ、タンク内に移す作業をしていた。タンクの水量は元々97〜98%まであったが、雨水を移送する緊急対策として98〜99%まで水を入れることにしていた。

 作業は午前中から正午過ぎまで約2時間行い、最大約25トンをタンクに移した。午後8時5分ごろ、作業員がタンクの最上部から水が漏れているのを発見した。水漏れはポンプを起動した約12時間前の午前8時35分ごろから始まったとみられるという。

 漏れた水の一部は、タンクの最上部から2.5メートル下に設置されている作業用の足場の雨水を抜く穴からせきの外側に落ち、さらに側溝から海につながる排水溝へ流れ込んだとみられる。

 漏れが見つかる前の水位は98.6%だったが、水位計を常時確認していたかは分からないという。2日午後2時半の目視確認は、タンク天板から水位を計測しただけだった。

 タンクは傾斜した地面上に設置されていた。東電はタンクの傾斜は基準の範囲内だったとしている。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20131003k0000e040235000c2.html

東京新聞の報道によると、より情けないことが判明する。

汚染水漏れ 満水に気付かず注水

2013年10月3日 夕刊

 福島第一原発の雨水を移送していたタンクから高濃度の放射性ストロンチウムなどを含む処理水が漏れた問題で、東京電力は三日、四百三十リットルが堰(せき)外へ出て、一部が排水溝を通じて外洋に流出した可能性があると発表した。タンクが傾いていたため、低い所から漏れ出した。
 水漏れしたタンクは、八月に漏れが見つかったのとは別のタンク群にある。敷地東の海に向かって緩やかに傾斜した土地に五基連結し、傾いて建てられていた。タンク一基の大きさは直径九メートル、高さ八メートルの円筒状。
 最も高い位置にあるタンクより約五十センチ低い海側のタンクに雨水を入れていたが、水位計は一番高い陸側にあるだけ。水位計で98%になるまで雨水を入れる予定で作業し、海側のタンクが先に満水になったことに気づかなかった。東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は三日、「タンク運用が厳しく、ぎりぎりを狙いすぎてアウトになった」と話した。
 漏れた水の一部は、近くの排水溝から外洋などに流れたらしい。一リットル当たり五八万ベクレルのストロンチウムなどを含んでおり、外部への放出が許される濃度の約一万倍。ただ、ベータ線のため直接、触れなければ人体に大きな影響はない。東電は国に通報するとともに、排水溝に土のうを積むなどの対策を取った。
 二日は台風の影響で、処理水タンク周りの堰内の水位が上がり、雨水を移送した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013100302000240.html

この漏れたタンクは、傾斜地に五基連結して建設されており、その内の最も下部に海側に所在していた。しかし、それぞれのタンクには水位計が設置されておらず、最も上部の陸側のタンクにしか水位計が設置されていなかった。そのため、最も下部の海側にある当該タンクが満水になったことを承知できず、上部から汚染水が漏れることになったという。小学生の理科でもわかるようなことが、福島第一原発の現場では検討されなかったらしい。

この状態について、さすがに、菅義偉官房長官は対応策が十分ではなかったことを認めた。しかし、福島第一原発については「全体としてはコントロールできていると思っていると述べている。次のロイター発信の記事をみてほしい。

福島第1原発の新たな汚染水漏出、東電と連携し対策=官房長官
2013年 10月 3日 11:52 JST
[東京 3日 ロイター] – 菅義偉官房長官は3日午前の会見で、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート) 福島第1原子力発電所のタンクから新たな汚染水が漏出し、その一部が海に流出した可能性があることについて、東電の対応を確認するとともに、汚染水問題解決に向けてしっかり対策を講じていきたいと語った。

菅官房長官は、汚染水問題の抜本的な改革は政府が責任をもって対応し、個々の問題は東電が対応するとしたうえで、今回のような漏れもあってはならないことだと指摘。「実際に漏れているのだから対応策が十分だったとは思わない」と語った。そのうえで「政府と東電が連携し、一切こういうことがないよう、これからもしっかり取り組んでいきたい。最善の努力をしていく」とした。

安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会などで汚染水問題はコントロールできていると発言したこととの関連については「全体としてはコントロールできていると思っている」と答えた。

(石田仁志)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE99201R20131003

福島第一原発が「コントロールされている」という状況ではないのは、首相官邸とIOC委員以外は周知の事実である。ただ、今回の問題は、福島第一原発建屋に流れ込んできている地下水などの問題とは、やや次元が異なる問題である。地下水については、まさに、自然の力をコントロールできないということである。しかし、今回の汚染水漏れについては、そもそも、タンクの状況を把握して作業していれば防げたことである。作業員も別に無用の被ばくは避けたいのであるから、タンクの状況を把握していれば、タンクが満水して汚染水が漏出するということはしなかったであろう。傾斜地にタンクを建設し、さらにそれぞれのタンクに水位計を設置しないということ自体が無茶苦茶な話であるが、そういう構造であるということすら東電首脳部は十分把握しておらず、それゆえに雨水でタンクを満水にして汚染水を漏出させたと推測できる。

ということは、東電首脳部は、福島第一原発の作業現場を十分コントロールできていないということを意味するだろう。これは、非常に重大なことである。そもそも、汚染水の貯蔵タンク自体が不備なものなのであるが、それが不備であることすら、東電首脳部は承知していないのである。単に、自然の地下水や、メルトダウンした原子炉だけでなく、貯蔵タンクの管理という人間の手で作業しうる範囲ですら、東電はコントロールできなくなっているのではなかろうかと思えるのである。

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2013年9月19日、安倍首相は、自身が「状況はコントロールされている」と9月7日のIOC総会で述べていた福島第一原発の視察を行った。とりあえず、全体の商況については、フジテレビがネット配信した、次の記事でみておこう。

安倍首相、福島第1原発5・6号機の廃炉を決定するよう東電に要請

安倍首相は19日、福島第1原発を訪れ、自ら汚染水漏れの状況などを視察した。
今回の視察には、海外メディアも同行し、世界が注目している。
安倍首相は19日午後2時ごろ、「事後処理に集中するためにも、停止している5号機・6号機の廃炉を決定してもらいたい」と述べた。
安倍首相は19日午後、福島第1原発の5・6号機について、廃炉を決定するよう、東京電力に要請した。
19日、安倍首相は、汚染水漏れの現状と対応を確認するため、福島第1原発を視察した。
福島第1原発を訪れるのは、2012年12月以来、2回目となる。
7日のIOC(国際オリンピック委員会)総会で、安倍首相は自ら、「状況はコントロールされている」と明言していた。
19日は、海外メディアも同行し、世界から注目される中、視察が行われた。
安倍首相は「皆様ご苦労さまです。大変過酷な仕事ですが、まさに廃炉に向けての仕事。日本の未来は皆さんの双肩にかかっています。国としても前面に出て、しっかりと皆さんと使命を果たしていきたい」と述べた。
まず、免震重要棟で汚染水の貯蔵タンクを管理している作業員たちを激励した安倍首相。
バスに乗り、次に向かった先は、ALPSと呼ばれる汚染水から放射性物質を取り除くための装置。
そして、いよいよ汚染水が漏れた貯蔵タンクへ向かった。
福島第1原発では、8月にタンクから汚染水およそ300トンが漏れ、一部が海に流出したおそれもある。
タンクの底のつなぎ目から漏れたとみられているが、原因はわかっておらず、抜本的な対策が打てないのが現状。
そうした中、安倍首相は汚染水が漏れたタンクを視察し、東電の関係者から、汚染水対策の説明を受けた。
安倍首相は「これそのものに、(水が)1,000トン入っているんですよね」と述べた。
およそ2時間に及んだ視察を終え、19日午後、安倍首相は「国が前面に出て、われわれも責任を果たしていかなければいけない。この汚染水の影響は、湾内の0.3平方km以内の範囲内において、完全にブロックされているわけであります」と述べた。
(09/19 16:53)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00254206.html

この視察についての報道で、関心がひかれるのは福島第一原発5号機6号機の廃炉を安倍首相が東電に要請したということである。しかし、5号機6号機は確かにメルトダウンはまぬがれて原型を保っているとはいえ、現実には稼働困難であることはすでに多くの人により周知されていたことだ。これは、結局、現状を追認したものでしかない。そして、この視察の結論は、「国が前面に出て、われわれも責任を果たしていかなければいけない。この汚染水の影響は、湾内の0.3平方km以内の範囲内において、完全にブロックされているわけであります」という安倍首相の発言に集約されるであろう。

さて、このフジテレビの記事には言及されていないが、興味深い出来事があった。共同通信が9月20日に配信した次の記事をみてみよう。

汚染水の影響範囲知らず発言か 首相「0・3平方キロはどこ?」

 東京電力福島第1原発の汚染水問題をめぐり、安倍晋三首相が19日に現地を視察した際、放射性物質による海洋への影響が抑えられていると説明する東電幹部に、「0・3(平方キロ)は(どこか)」と尋ねていたことが20日、分かった。

 首相は東京五輪招致を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会で「汚染水の影響は港湾内0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と説明していたが、実際の範囲がどの程度か理解しないまま発言していた可能性がある。

 安倍首相は東電の小野明所長から放射性物質の海への流出や海中での拡散を防ぐ対策の説明を受けた際に「0・3は?」と質問した。

2013/09/20 19:50 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201309/CN2013092001002086.html

つまり、安倍首相は、実際視察するまで、汚染水の影響がその内部でブロックされているという0.3平方キロメートルの範囲を理解せず、IOC総会で「汚染水の影響は港湾内0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と述べていた可能性があるのである。

まずは、もう一度、福島第一原発の汚染水の海洋流出についてみておこう。9月20日付朝日新聞朝刊には、次のような図が描かれている。汚染水がブロックされているという「港湾」は、福島第一原発建設にともなって建設された港湾全体である。そのうち、汚染地下水が流出しているとみられる原子炉の排水口付近の入口についてはシルトフェンスをはって海水の行き来をおさえているが、何分フェンスであり、完全に抑えることはできない。特に、トリチウムは、基本的には水素のアイソトープであり、それをフェンスで抑えることはできない。シルトフェンス内側では放射性物質が多く検出されているが、外側でも検出されている。そして、この港湾内の海水は、封鎖されているわけではなく。外側の海水と出入りしている。港湾外の海水から放射性物質は検出されていないが、大量にある海水によって稀釈されているだけとみることができるのである。

福島第一原発港湾内の流出防止策と周辺の海水データ

福島第一原発港湾内の流出防止策と周辺の海水データ

「0.3平方キロはどこか」という首相の質問は、こうした細かな事情を十分認識していなかったことを意味するといえる。結局、IOC総会では「0.3平方キロ」という数字のみが強調されていた。もちろん、私のような理系の素養がない一般人でも把握できることが、IOC総会直前の首相に対するレクチャーで言及されていなかったとは思えない。しかし、安倍首相は、視察して始めて0.3平方キロの範囲を「理解」したともいえるのである。

「状況はコントロールされている」「汚染水の影響は港湾内の0.3平方キロで完全にブロックされている」という首相の発言は「虚偽」などと批判されていた。しかし、意図的に虚偽を述べていたよりもはるかに恐ろしい状況なのかもしれない。つまり、安倍は、具体的な状況を自分の頭で把握しようとせず、東電・経産省・原子力規制委員会などの当事者=原子力ムラの主張の楽観的側面のみしかみていないのかもしれないのである。その上で、IOC総会でのスピーチのレトリックとして、ああいうことをいったともいえるのである。

もちろん、これは、安倍首相の個人的資質によるところが大きいだろう。しかし、そればかりではない。彼のような人がトップにいれば、実質的な状況についてはまるで理解しないで、楽観論をたれながしてくれる。当事者たちがそのような楽観論を主張すれば、「隠蔽」「虚偽」という批判を免れない。しかし、安倍首相の場合は、そもそも事態を認識していないのであるから「隠蔽」「虚偽」と批判されても本人はこたえない。安倍首相は、原子力ムラを含めた現代日本の統治者たちにとって、「期待される人間像」なのである。

しかし、楽観論ですむのだろうか。事態に根本的な対策をたてようとせず、根拠の薄い楽観論に基づいて、その場しのぎの対策をしか出さない状況は、まるで、太平洋戦争中のようである。当時の陸海軍は、自分たちの立場に不利になる戦局の悪化については、国民はおろか自分たち以外の政府機関にも隠蔽しようとした。ゆえに、全体的な戦争指導としては、楽観論に終始し、より戦局の悪化を招いていった。同じような状況は、福島第一原発でもみられる。コントロールしていないのは「汚染水」だけではない。福島第一原発に関わる東電や政府の組織もコントロールできていないのである。

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このプログでも何度もとりあげている福島第一原発の汚染水流失について、8月23日、原子力規制委員会の更田豊志委員が現地視察を行った。このことについては、実はあまり報道されていない。また、テレビなどで報道されても、その動画はあまりアップされていない。

NHKの全国ニュースをみていても、福島第一原発についてはほとんど出て来ない。しかし、福島放送局の「福島県のニュース」として、ある程度、動画つきでネット配信されている。それは、次のようなものである。

http://www.nhk.or.jp/lnews/fukushima/6053805851.html?t=1377292675313

なお、このような記事は、早期にすべて削除される恐れがあるので、記事部分だけをここで引用しておこう。

原子力規制委が現地視察

原子力規制委員会の更田豊志委員は、23日、タンクから300トンあまりの汚染水が漏れ出た東京電力福島第一原子力発電所を視察し、東京電力に対し、点検がずさんだと指摘した上で「人手の問題などでできないことがあれば国などに対して声を上げてほしい」と呼びかけました。
原子力規制委員会の事務局によりますと、更田豊志委員は、23日午前、福島第一原発を訪れ、今月19日に300トンの汚染水が漏れ出ていることが分かったタンクの周辺などを見て回ったということです。
視察の後、取材に応じた更田委員は、「タンクから漏れることを前提とした準備がとられていたとは思えない。異常に気づくには、小さな変化も見逃せないが、そのために必要となるタンク周辺の通常の放射線量の記録などが残されていないのは、点検に対する姿勢を疑わざるをえない」と東京電力の対応を批判しました。
その上で、東京電力側からは、「点検を強化するには4倍の人員が要る」などと説明があったということで、これに対して更田委員は、「できないことがあれば声を上げてほしい」と呼びかけたということです。
また更田委員は「万全を尽くしていると言うことより、やりたい対策ができない現状を言うことの方が大事だ。事業者が言えないという難しい事情は分かるが、ぜひ勇気を持って声を上げてほしい。お金や人手の問題があれば、資源エネルギー庁などに対して要望を言わなければならない」と話しました。
08月23日 19時14分

実際、この動画をみて驚いたのだが、高濃度汚染水が漏洩したと思われる貯蔵タンクのまわりに「土のう」が積まれていた。そして、それをみて、更田委員と思われる人物が「これでさ、水が止まっていると思うか」とつぶやいていた。

福島第一原発の高濃度汚染水の流失を抑えようとして、東電は、最早「土のう」を積むしかなかったのである。「土のう」は、もちろん、ある程度の水を抑えることはできる。しかし、完全に「漏洩」を防ぐことはできない。そもそも、「土のう」は洪水対策に使うものであって、放射能防護対策に使うようなものではない。どうみても不十分な対策だが、この「土のう」を積む作業でも、作業した労働者は、かなりの被ばくをしたと考えられる。

また、動画をみてみよう。更田委員とおぼしき人物が「排水溝」のほうをみにいき、まるで自然の小川のように流れている排水溝をみて、東電側の説明をうけながら、「これなあ、これ海にいっているじゃない。このまま、ジャーンと合流してこのまま…」と述べている。東電は、汚染水の海への流出を認めたがらなかったが、結局、原子力規制委員会としては、汚染水が海に流失した可能性を認めたのである。

そして、現場で、更田委員が通常の放射線量の記録をとっているかと質問し、東電側が残していないと答えたやりとりが残されている。なお、この動画では残されていないが「点検を強化するには4倍の人員が要る」と東電は弁解したそうである。

その後で、更田委員が記者会見している動画が挿入されているが、それは、ほぼ記事内容通りである。

そもそも、300トンもの汚染水が流失したにもかかわらず、その汚染水の大半が残されていないのは、タンクの周りにあった堰の排水弁が開けられていたというミスのためである。このこと自体ズサンなのだが、「土のう」を積んで汚染水漏洩を防ごうとする、海に流れている排水溝があっても汚染水の海洋流出を認めようとはしない、通常の点検時の放射線量の記録をとっていないなど、私のような素人がみても東電の対応はおかしい。

そして、更田委員が、「万全を尽くしていると言うことより、やりたい対策ができない現状を言うことの方が大事だ。事業者が言えないという難しい事情は分かるが、ぜひ勇気を持って声を上げてほしい。お金や人手の問題があれば、資源エネルギー庁などに対して要望を言わなければならない」と東電によびかけている。しかし、これだけでは、最早、問題解決にならないだろう。原子力規制委員会は、8月14日、汚染水対策にはさらなる検討が必要としながらも、東電の福島第一原発の廃炉計画を認可した。だが、「高濃度汚染水」の放射線量の点検記録をとっていないことすら、「4倍の人員がいる」と弁解した会社が東電なのだ。コスト増になろうとなるまいと、点検などまっとうな管理作業に必要な労働者は確保しなくてはならず、そのことによって、破たん処理を免れたことの正当性が確保できるのが東電の置かれた立場である。にもかかわらず、コスト増になることを恐れてズサンな管理をしているのが東電の現状なのである。コスト減に努力するのは、民間の営利会社の本性といってよい。しかし、東電は、営利会社という自己の本性に忠実であればあるほど、自己の立場を失っていくであろう。

とにかく、この動画は、福島第一原発の管理を東電に任せておけないことを雄弁に物語っているといえよう。そして、それがゆえに、NHKなどは、この報道を抑制していると考えられるのである。

なお、ネット記事配信が削除される可能性があるので、Youtubeにアップされていた、TBSとFNNのニュース動画もここでは紹介しておく。原子力規制委員会の現地視察は、今回漏れた貯蔵タンクだけではない。原子炉建屋の汚染地下水対策も検討しており、このタンクとは違った溶接型のタンクについても漏洩対策が不十分であることを指摘している。

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福島第一原発の危機が拡大している。汚染水については、連日報道され、整理することも難しいほどだ。そんな中、ウォールストリートジャーナルが8月7日付で的確な整理を行っているので、まず、紹介したい。

2013年 8月 07日 11:55 JST
福島第1原発、汚染水封じこめで苦闘

東京電力は福島第1原発で、隔壁やポンプ、それに土壌を固める化学品などを使って、放射性物質に汚染された地下水が海に流出するのを防ごうとしている。

 同社は今週、最も高濃度の汚染水が見つかった場所を新たな一連の措置で封鎖しようとしているが、一部の専門家や規制当局者は、汚染水を原発敷地に完全に封じ込める闘いに勝つのは難しいかもしれないとみている。

 シーシュポスの神話のような果てしない苦闘を続ける東電は先週、汚染された水のレベルが上昇しており、わずか1カ月前に工事が始まったばかりで完了が今週末の予定となっている地中の「遮水壁」を既に越えている可能性があると発表した。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は先週の記者会見で、汚染水を汲み上げて貯蔵するといった東電の汚染水対策は一時的な解決策にすぎないとし、最終的には、処理をして放出濃度基準以下にした汚染水を海に捨てることが必要になるとの見解を示した。

 東電は5日、電子メールで、汚染水があふれている最近の問題に対処するため「いつかの措置を取りつつある」とし、「原発近くの水域の海水と魚介類への影響の監視を強化し続け、諸措置のあとに(汚染水の)廃棄について判断する」と述べた。

 2011年3月の東日本大震災で同原発が電源喪失状態となり、稼働中だった3つの原子炉がコントロール不能に陥ってから、東電は汚染水の管理に苦しんでいる。溶けた燃料炉心を冷やすために毎日約400トンの水―そのほとんどはリサイクルされているが―が使われている。より大きな問題は、これとは別に山々から下りてくる400トンの地下水が発電所敷地の下を流れ、海に注いでいることだ。

 東電はこの2年間、放射線濃度の高い原子炉建屋から水を汲み出し、敷地内のタンクにこれを詰めて汚染を封じようとしてきた。しかし、数カ月前には、原子炉付近で採取した地下水から高濃度の放射性物質が検出されて、その努力も実を結んでいないことが分かった。その理由は明らかではない。さらに、東電はこの水が海に漏れ出ている公算が大きいと明らかにしたのだ。

 放射能漏えいに関し同社の情報に透明性が欠けていることなど、原子炉敷地での問題が続いていることから、規制当局の批判を招いている。2日には、成果の上がらない除染作業で政府の役割を拡大するために設けられた原子力規制委員会の対策検討会が初会合を開いた。同検討会は東電に対して、国民の原発への反対が強まっているとして、コミュニケーションと信頼性を改善するよう要求した。

 東電は7月、緊急措置として、護岸に近い土壌に化学品を注入してこれを固め、地下隔壁とする作業を始めた。しかし、その後、この場所の地下水が隔壁にぶつかって水位が急速に上昇した。水位は地下1メートルのところまで来ており、地下1.8メートルから始まる隔壁を既に越えているようだ。

 同社は今、隔壁の手前にたまっている水の一部を汲み上げ、これまでと同様に貯蔵することを計画している。同社はまた、最も高濃度に汚染されている護岸周辺を隔壁で囲む準備もしている。さらに、隔壁で囲った部分を砂利とアスファルトでふたをし、何も漏れ出ないようにすることを提案している。同社は隔壁部分の作業を10月までに終えたい考えだ。

 同社はこのほかにも、原子炉建屋を凍土で囲うなど、いくつかの実験的構想も持っている。

 しかし、資源エネルギー庁の新川達也・原子力発電所事故収束対応室長は7月の記者会見で、このやり方では地下水の流れを変えてしまう恐れがあると述べた。また、水が大量にたまり、地盤を軟らかくして、原子炉建屋を倒壊させる可能性があると指摘した。東電は水が染み出している公算が大きい建屋内のひびをロボットを使って修理するといった方法も試してみるべきだとしている。

 埼玉大学の渡部邦夫地質学教授は、凍土にも問題があると述べた。同教授は、トンネル掘削で使われるこの技術は汚染地域に入ってくる地下水の量を減らせるかもしれないが、コストが高いとし、「システムを構築するには数億円が必要だ。この氷の壁を維持するのには大量の電力も必要だ」と語った。

 田中委員長は、東電は全ての水を処理することは不可能であるとし、許容水準内の汚染水を海に捨てる準備をすべきだと述べた。しかし、現地の漁業協同組合は依然として、かつてのように漁に出られるようになることを望んでいる。地元漁業者は昨年6月以降、放射能テストで一貫して低い値しか検出されないタコなどをとっている。相馬双葉漁協の遠藤和則氏は、最近汚染水が海中に流れ込んでいることについて、困惑しているとし、消費者が同地の魚を拒否し始めることへの懸念を示した。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324513804578652903693994978.html

つまり、壊れた原子炉に地下水が流れ込んでいて、それが汚染水となり、海洋に流れ出しているのである。東電としては、応急措置として、海側の地下に隔壁を設け、海洋に流れ出さないようにしようとしたが、かえってせき止められた汚染地下水の水位が上がり、隔壁をこえてしまったという。そこで、この汚染地下水をくみあげて貯蔵する計画をたてているということである。

その上、東電と規制委委員長は、汚染水(何らかの処理をすることを前提としているようだが)を海洋廃棄することを検討しているというのである。このことに対しては、周辺の漁協が反発しているということである。

さらに、東電が中長期的な措置として「凍土」で原子炉建屋を囲う構想をもっていることを報じている。

まず、このような大枠の理解のもとに、最近の報道をみてみたい。

最早、東電にせよ、それを監督する経産省の資源エネルギー庁にせよ、汚染水について十分な対策はとっていない。結局、規制側の原子力規制委員会が、東電や資源エネルギー庁に不満をもちながらも、陣頭指揮をとらざるをえなくなった。8月7日の河北新報はそれを次のように伝えている。

福島第1原発の汚染水流出 規制委、異例の陣頭指揮

 福島第1原発の汚染水の海洋流出問題で、原子力規制委員会が異例の陣頭指揮を執っている。汚染水対策など廃炉作業の監督は本来、経済産業省の役割だが、海洋流出に対する動きは鈍い。規制委の突出ぶりは、事態の深刻さへの焦りと対応が後手に回る東京電力へのいら立ちの裏返しと言えそうだ。(東京支社・若林雅人)

 「規制機関が踏み出すべき領域かどうか疑問もあるが、リスクが高まっている」
 規制委が2日に開いた汚染水対策作業部会の初会合。座長役の更田豊志委員は開催理由をこう説明し、早速東電から聴取を始めた。東電が「調査する」「検討する」と答えた事項について「次回、耳をそろえて持ってきてほしい」と強い口調で要求した。
 春先に地下貯水槽での汚染水漏れが発覚し、汚染水の貯蔵が問題となって以降、政府は廃炉対策推進会議の下に汚染水処理対策委員会を設置。経産省資源エネルギー庁が事務局となり、5月末に地下水流入の抑制策を柱とした報告書をまとめた。
 報告書に対し、規制委は「高濃度汚染水が滞留する海側トレンチ(作業用トンネル)からの漏えいリスクが高い」との見解を表明。海水や地下水から高濃度の放射性物質が検出され始めた6月下旬にはトレンチから海に流出した可能性を指摘したが、東電は7月下旬まで流出を否定し続けた。
 規制委の再三の警告にもかかわらず、エネ庁や対策委に目立った動きはなかった。エネ庁事故収束対応室は「汚染水対策のマネジメントはエネ庁だが、放射性物質の外部流出など安全管理は規制委が担う」と役割分担を理由に挙げた上で、「対策委が今後どう関わっていくべきか検討している」と説明する。
 規制委の会合では「緊急対策が必要な際に国の関与が明確でない」と、エネ庁を念頭に置いた苦言も出た。規制委事務局の原子力規制庁事故対策室は「規制委で対策を検討しても東電に実行させるのはエネ庁。責任の大きさは分かっているはずだ」と自覚を促す。
 福島県の内堀雅雄副知事は6日、規制庁と経産省を訪ね、国が前面に立った対処と監視を要望した。赤羽一嘉経産副大臣との会談後、内堀副知事は「経産省は廃炉対策の所管省庁。東電と一体でしっかり対応してほしい」とくぎを刺した。
http://www.kahoku.co.jp/news/2013/08/20130807t63010.htm

その結果、汚染地下水汲み上げの前倒し実施がなされることになったといえる。NHKは、8月6日、原子力規制委員会の指摘を受けて、今月末に行うとしていた汚染地下水の汲み上げを前倒しして、今週中から開始するとした。東電の措置では、高濃度汚染水の大規模な海洋流出がさけられないとみての規制委員会の判断なのであろう。東電は、ここでも、当事者能力のなさを露呈したといえる。

福島第一原発 汚染水くみ上げ急きょ今週から
8月6日 5時56分

福島第一原発 汚染水くみ上げ急きょ今週から
福島第一原子力発電所で汚染された地下水が海に流出している問題で、流出を防ぐために行っている工事で地下水位が上昇していることから、東京電力は急きょ、地下水のくみ上げを、今週中に始めることにしました。
一方、観測用の井戸では新たに放射性物質の濃度が上昇していることが分かり、汚染水対策は手探りの対応が続いています。

福島第一原発では、汚染水の流出対策として、護岸沿いに地中を壁のように固める工事を進めていますが、せき止められて上昇した地下水がすでに壁を乗り越えているおそれがあることが先週、明らかになりました。
このため東京電力は急きょ、小規模な井戸を掘って、今週中にくみ上げを始め、くみ上げた地下水は、一時、地下の施設に保管した後、敷地内のタンクにためることにしました。
当初、東京電力は今月末から地下水をくみ上げるとしていましたが、国の原子力規制委員会から一刻も早く始めるよう指摘を受け、対応を早めることになりました。
一方、高濃度の汚染水がたまっている2号機のタービン建屋に最も近い観測用の井戸で、5日採取した地下水では先月31日に比べて放射性セシウムの濃度が14倍あまり、ストロンチウムなどのベータ線という種類の放射線を出す物質の合計の濃度が46倍あまりといずれも上昇していることが分かりました。
東京電力は濃度が上昇した原因は分からず、今後詳しく調べるとしています。
汚染水を巡っては、事故から2年4か月がたった今も流出の具体的な状況や影響の広がりをつかめず、手探りの対応が続いています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130806/k10013569671000.html

そして、政府もまた、東電の計画していた凍土による地下水遮水壁設置に国費投入を決定した。8月7日の毎日新聞は、次のように伝えている。

福島第1原発:汚染水対策に国費投入…政府検討
毎日新聞 2013年08月07日 13時01分(最終更新 08月07日 13時02分)

 政府は7日、東京電力福島第1原発の放射性汚染水問題をめぐり、対策費用の一部を国費で補助する検討に入った。経済産業省が2014年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。これまでも廃炉や事故収束に関係する研究開発費用は国が支援していたが、汚染水対策への補助が決まれば、国による初めての直接支援となる。国がより踏み込んだ対策を取る方針を明確に示して、処理対策を確実に進める構えだ。【大久保渉】

 ◇遮水壁設置で

 経産省は5月、原子炉建屋への地下水流入を防ぐため、周囲の土を凍らせる遮水壁の設置を東電に指示。設置には数百億円の費用が見込まれるが、経営再建中の東電には資金的な余裕が乏しいのが現状だ。

 菅義偉官房長官は7日午前の記者会見で「これだけの大規模な遮水壁は世界でも例がなく、設置に当たっては国として一歩前に出て支援する。予算は、経産省において現在検討中と聞いている」と説明。7日午後の原子力災害対策本部会議で、安倍晋三首相が茂木敏充経産相に対し、早急に対策を行うように指示する予定であることを明らかにした。

 汚染水対策を含めた廃炉の費用について政府は「東電による負担が原則」としてきたため、国費の投入には「東電救済とみられないか」との慎重論があった。しかし、福島第1原発の汚染水を巡っては、7月に海洋流出が明らかになるなど、東電任せによる対策には限界が指摘されている。

凍土による遮水壁は、長期にわたって使用された例がなく、東電は技術的な検討を進めた上で今年度中に実現可能かどうか判断するとしていた。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130807k0000e010192000c2.html

結局、費用においても、すでに東電では調達できない。その意味で、原子力規制委員会の「陣頭指揮」にせよ、汚染対策への国費投入にせよ、遅ればせながら、公的機関がイニシアチブをとらなければ福島原発の廃炉作業が不可能なことを明示しているといえよう。

しかしながら、これらは、そもそも東電の計画だったことにも注目しておかねばならない。そもそも、場当たりの対応しかできなかった東電が構想した計画であり、その前倒しやバックアップにすぎない。汚染地下水の汲み上げにせよ、凍土による地下水遮水壁の設置にせよ、応急措置にすぎない。資源エネルギー庁で議論されていたようだが、ロボット装置などによる原子炉建屋の点検・修理が、廃炉作業を進める上でも不可欠のはずだが、そのようなことは具体化されていないのである。

しかも、汲み上げた汚染地下水もどんどんたまっていくだろう。凍土による地下水遮水壁設置については、そもそも効果自体に疑問があるのだが、それ以上に、2014年度概算要求の対象であり、つまりは、翌年からしか建設されないのである。現状の汚染水危機には即応するものではないのである。

すでに、東電も原子力規制委員会も、汚染水の海洋廃棄を検討していることは述べた。もはや、政府も、当面の措置として汚染水の海洋廃棄の検討を開始している。8月8日、読売新聞は、次のような記事をネット配信している。

福島第一の基準値以下の地下水、海洋放出検討へ

特集 福島原発
 茂木経済産業相は8日の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所でたまった基準値以下の放射性物質を含む地下水について、「海への放出の可能性も含め、早急に検討して対策を具体化していきたい」と述べ、海洋放出を視野に入れた水の処理を検討することを明らかにした。

 同日午後に開かれる有識者らによる汚染水処理対策委員会で話し合う。この水は、原子炉建屋に流れ込む前の地下水をくみ上げたもの。この水の海洋放出を巡っては、安全性などについて地元の漁業関係者の理解は得られておらず、具体的なめどは立っていない。

 7日に開かれた原子力災害対策本部の会議を受け、茂木経産相は、基準値以上の汚染水についても「国が主導して、絶対に漏らさない状況を作るということを進めたい」と話し、東電任せにせずに対策を進めることを強調した。そのうえで、海側の地中に薬剤を注入して地盤を固める工事や、1~4号機の地中を凍土の壁で囲うなどの対策を行う。

 経産省が7日に公表した、1日当たりの汚染水の流出量(300トン)について、茂木経産相は「汚染の度合いは違うにしても、汚染されている可能性は否定できない」と説明した。

(2013年8月8日14時13分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130808-OYT1T00613.htm?fb_action_ids=511507698928519%2C511427535603202&fb_action_types=og.recommends&fb_source=other_multiline&action_object_map=%7B%22511507698928519%22%3A152528584952987%2C%22511427535603202%22%3A622735257759194%7D&action_type_map=%7B%22511507698928519%22%3A%22og.recommends%22%2C%22511427535603202%22%3A%22og.recommends%22%7D&action_ref_map=%5B%5D

つまり、最早、福島第一原発の汚染水(もちろん、ある程度の処理をしてことだろうが)の海洋廃棄がさけられないとされてきているのである。

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汚染水問題などの福島第一原発事故における異常事態の発生とそれに対する東京電力の対応は、海外の「原子力ムラ」の代表者たちといえる人びとからの批判を招いた。東京電力は昨年から「原子力改革監視委員会」という組織を設置し、デール・クライン委員長(米原子力規制委員会元委員長)、バーバラ・ジャッジ副委員長(英原子力公社名誉会長)、櫻井正史(名古屋高裁元検事長・国会事故調元委員)、大前研一、下川邉和彦(東電会長)を委員とした。クラインとジャッジは、経歴からみるかぎり、いわゆる海外の「原子力ムラ」の代表といえる人物である。この委員会の第四回会合が7月26日にあり、その後、記者会見が開かれた。この記者会見の席上、クラインとジャッジは、汚染水問題に対する東電の対応を批判した。現在のところ、日本語メディアでは、この二人の批判はきわめて小さくしか報道されていない。ロイターもかなりくわしく二人の批判を伝えたが、その記事は後に書き換えられ、批判している部分は切り縮められてしまった。その中で、この二人の批判を日本語でもっとも詳細に伝えているのがAFP(フランス通信社)である。その報道をまずみておこう。

【7月29日 AFP】東京電力(TEPCO)が国内外の専門家で構成する第三者委員会「原子力改革監視委員会」の4回目会合が26日に開かれ、福島第1原子力発電所からの放射性汚染水の放出問題について出席者からは透明性の欠如を指摘する声や、「東電は自分たちのやっていることが分かっていないのではないか」など厳しい批判が相次いだ。

 かねて疑われていた福島第1原発から海への汚染水流出について、東電は前週になって初めて認めた。外国人2人、日本人4人の専門家からなる原子力改革監視委員会のデール・クライン(Dale Klein)委員長(米原子力規制委員会元委員長)は「安全側に立った意思決定の姿勢に欠けている。国民に十分な情報を提供していない」「東電は自分たちのやっていることが分かっていないのではないか。計画がなく、全力を尽くして環境と人々を守ろうとしていないと映る」などと批判した。

 東電ではこれまで、発がんリスクのある放射性物質の濃度が、採取した地下水中で上昇していると報告していたが、汚染水の流出は原発の敷地内にとどまっていると主張していた。しかし、その主張に規制当局が疑念を募らせる中、ここに来て検出結果の公表が遅れたことを認めた。同じ会見で東電の広瀬直己(Naomi Hirose)社長は、ここ数か月の間に汚染水流出の可能性を警告する機会が少なくとも4回はあったと述べ、「3.11の教訓を学んで対応できていない」として謝罪した。また自らが1か月間、10%の減給処分を受けることを発表した。

 クライン委員長は会見の冒頭、汚染水流出に関する東電の対応に「不満を表明したい。汚染水問題がこれまでの福島(第1原発)の事故処理と改革の進歩を後退させると危惧(きぐ)している」と述べた。また東電による情報隠しではないかとの報道陣の質問に対してはこれを否定し、処理計画は適切だが、それを公表するまでに時間がかかりすぎたとし、「問題が発覚した段階ですぐに分かっていること、分からないことを発表する必要がある」と忠告した。

 バーバラ・ジャッジ(Barbara Judge)副委員長(英原子力公社名誉会長)も、東電の情報公開性の欠如に「本当にがっかりした」と述べ、「(原発の)廃炉作業は複雑で難しいプロセスであるため、今後も問題が生じることは必至だろうが、次に問題が起きたときには今回の誤りから学んで人々にいち早く、状況とそれを改善する東電の計画を知らせてもらいたい」と語った。

 ジャッジ氏はまた、東電の企業風土に問題があるとし「多くの企業同様、閉鎖的で効率性を優先する文化があり…議論する準備ができたと思えるまでは、自分たちだけで問題解決を図ろうとする」と指摘し、「効率よりも安全を優先する文化」を歓迎すると述べた。(c)AFP/Harumi OZAWA
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2958809/11090490

なお、クラインとジャッジが東電を批判した記者会見については、IWJがネットで動画を配信している。この動画自体も編集されており、また通訳で表現が変えられてしまっているところもあるかもしれないが、今のところ、この動画が、彼らの批判を肉声で伝えている。ここであげておこう。

とりあえず、クラインとジャッジの批判部分のみおこしてみた。すべてではなく、また通訳の問題もあって、正確とはいえないかもしれないが、ここであげておく。

クライン委員長:…この地下水の漏洩や汚染水の海洋への流出の対処がうまくできていかなかったこと、このタイミングがまさにこの委員会と重なったことについて、私たちは大変残念に思うと同時にいらだちを覚えます。多くの方が鋭意現場で努力をされているなかで、このような広報上の対応のまずさというものが努力をないがしろにしていると思います。特に、私どもが関心をもちましたのは、何を把握されたのか、また、いつそれを把握されたのか、また、この対応のためにどのような対策をとろうとされているのか、ということです(中略)
少し、改革委員会としては以下の提案をさせていただきます。福島第一の汚染水の漏洩問題に関する解決にあらゆる手段をつくすということを迅速に行うのが一点目です。
また、2番目としては、福島第一の汚染水の取扱について、包括的な計画をつくり、その場しのぎでなく、根本的な解決につなげるということです。
また、リスクコミュニケーションならびに情報の公表につきましても、まだ多くの作業を残していると思います。
と、同時に、また、緊急時対応の演習・訓練についても今後とも練習する必要があることはあきらかです。
(中略)
ジャッジ副委員長:昨日、日本に参りましたが、その際、私は大変落胆し意気消沈したということを、クロフツ室長をご紹介する前に申し上げます。原子力発電事業者として東電が再生の道をたどりつつあることを個人的にも私は日本の内外の方々にいろいろとこれまでもお話して参りました。また汚染水の流失につきましては、あまりにも手間取ったということ、遅きに失してしまったという広報の対応というものが、大きく事態の進捗でプラス面があるなかで、事態をないがしろにしかねないと考えています。
また、社長の話がありましたけれども、これからも汚染水の問題、ならびにネズミの侵入による電力の供給の停止がおこりましたけれども、今後、このようなことも引き続きおこると予想されます。これらの事態がさけられないのは廃炉が長い作業であるからです。事態を収拾し、また安定させるために、難しいことと承知していながら、邁進している現場の方々がおられます。しかし、東電としましても手抜かりなく広報にも今後努力をし、事象が起ったらすぐ伝達し知らしめるということが必要になってきます。今後、東電が先に進むにあたって必要な信頼を得るためにも、とりもどすためにも。このような即応体制を広報に対応してもらいたいと思います。

クラインとジャッジがともに指摘しているのは、まず、汚染水問題に対する東電の広報のまずさである。東電は汚染水の海洋への漏洩をなかなか認めず、参院選後の7月22日にようやく認めた。この汚染水問題の発表の遅れを明示的に批判し、現場での対応をないがしろにしかねないとしているのである。

クラインは「何を把握されたのか、また、いつそれを把握されたのか、また、この対応のためにどのような対策をとろうとされているのか」と問いかけた。前二者は主に広報にあたるといえるが、最後については、汚染水問題についての今後の対応計画はあるのかということである。ジャッジも、汚染水問題だけでなく、ネズミの侵入による停電も引き合いにだして、「今後、このようなことも引き続きおこると予想されます。これらの事態がさけられないのは廃炉が長い作業であるからです」といっている。これはもちろん広報の問題でもあるが、より根本的には「廃炉作業全体に対する計画はあるか」ということになる。通訳の問題もあり、実際にはより過激に言っているのかもしれないが、これを読む限り、東電の廃炉作業全体を婉曲的な形で批判したといえるのである。

そして、クラインは、「福島第一の汚染水の漏洩問題に関する解決にあらゆる手段をつくすということを迅速に行うのが一点目です。また、2番目としては、福島第一の汚染水の取扱について、包括的な計画をつくり、その場しのぎでなく、根本的な解決につなげるということです。また、リスクコミュニケーションならびに情報の公表につきましても、まだ多くの作業を残していると思います。と、同時に、また、緊急時対応の演習・訓練についても今後とも練習する必要があることはあきらかです」と提言している。このことを提言であげるということは、反面で、これらのことが不備だということになる。まず、汚染水問題について東電はあらゆる解決手段をつくしておらず、根本的な解決につなげる包括的計画もなく、その場しのぎの対応をしていることになる。そして、リスクコミュニケーションおよび情報公開については、明示的に問題があるということになる。そして、最後の項目は意味深長である。つまり、東電は緊急時の対応の準備ができていないということになるのである。逆にいえば、今回の汚染水問題は、緊急時対応すべき問題であったにもかかわらず、東電はしなかったということになる。それほど、問題は切迫していたということを、クラインは婉曲な形で示したといえよう。

そして、これらの提言は、東電に対する原子力改革監視委員会の答申の中にとりいれられた。東電のホームページに掲載された。福島第一原発事故問題以外にも言及しているが、ここで、全文をあげておこう。

取締役会長 下河邉 和彦 殿
原子力改革監視委員会

原子力安全改革プランの進捗に関する監視結果について
~原子力改革監視委員会から東京電力取締役会への答申~

 当委員会は、本日開催された第4回原子力改革監視委員会において、東京電力原子力改革特別タスクフォースから「福島原子力事故の総括および原子力安全改革プラン(以下「改革プラン」という。)」の進捗状況について報告を受け、以下のとおり改革プランの状況を確認した。

原子力安全に関する経営層向けの研修や原子力発電所幹部の安全意識を抜本的に向上させるための取組みなどを開始している。
全社員に福島第一事故の教訓および改革の必要性を徹底的に理解させ、改革を将来にわたり継続・深化させるため、まずは原子力部門の社員を対象とし、改革プランを題材としたグループ討議を開始している。
取締役会直轄の「原子力安全監視室」を5月に設置。ジョン・クロフツ氏(元イギリス原子力公社 安全・保証担当役員)が室長に着任し、室員のパフォーマンスを最大限に発揮させるためのチームビルディングを行うとともに、執行側の各種会議体に出席し、原子力安全を最優先とした議論がなされているかを監視するなどの活動を開始している。
安全文化の浸透状況等を客観的に把握するため、IAEA(国際原子力機関)、INPO(米国原子力発電運転協会)、WANO(世界原子力発電事業者協会)等の第三者機関による外部評価を計画している。
「ソーシャル・コミュニケーション室」を4月に設置し、社会の捉え方に沿った情報公開やリスクコミュニケーターによる対話活動に取り組んでいる。
柏崎刈羽原子力発電所(以下「柏崎刈羽」という。)においては、福島第一原子力発電所(以下「福島第一」という。)事故の教訓を踏まえた設備面の対策(津波対策、冷却・除熱機能の確保、フィルターベント設備の設置等)が着実に進められている。また、緊急時対応能力を抜本的に向上させるため、防災訓練を繰り返し行う中で、問題点を洗い出し、継続的な改善に取り組んでいる。

 福島第一で進められている廃炉作業は、過去に例を見ないものであり、事故・トラブルが発生するなど様々な困難に直面している。そうした中、東京電力は社長を本部長とする「福島第一信頼度向上緊急対策本部」を設置し、安定状態の維持・強化のための対策を迅速に実行するように努めている。

 しかし、最近の汚染水漏えい問題への対応、およびこの四半期に発生した事故・トラブルの反省を踏まえると、改革プランの実施を加速し、実効性を上げるための一層の努力を行う必要があると言わざるを得ない。こうした観点から、以下の取組みを行うことを提言する。

福島第一の汚染水漏えい問題の解決に必要な対策を迅速に行うこと。
福島第一の汚染水の取り扱いについて、その場しのぎではなく、根本的な解決につながる包括的な計画を立地地域や国と連係しつつ策定すること。
上記汚染水漏えい問題への対応を含む改革を加速し、実効性を上げるため、必要な組織の見直し、人的リソースの投入等を迅速かつ機動的に行うこと。
事故・トラブル発生時のリスクコミュニケーションについては、社内の情報流通・共有を根本的に改善させるとともに、リスクコニュニケーター、ソーシャル・コミュニケーション室を機能させ、迅速かつ適切な情報公開に努めること。一般の方々にリスクについて説明する際は、事例を示すなど、分かり易くすること。
リスク/ソーシャル・コミュニケーションについて、先進的な他社事例を参考にするとともに、社外専門家の知見を適宜活用すること。
福島第一の廃炉作業の円滑な推進にあたっては、技術力のたゆまぬ向上に努めるとともに、立地地域や国と連係・対話しつつ、全体的なリスクの最小化を図ること。
これまで柏崎刈羽において実施した防災訓練で明らかとなった問題点を踏まえ、今後は経営層の意思決定事項や対外対応時の本店の役割分担を明確化させた上で、外部(官邸・規制庁・自治体・警察・自衛隊等)との共同訓練の実施に向けた取組みを具体化すること。
東京電力は、引き続き改革の項目ごとに目標管理しつつ、進捗・実施状況を適宜、当委員会に報告すること。

 当委員会は、今後も東京電力の改革プランの取組状況を定期的にチェックし、その結果を公表することとしたい。

以 上
http://www.nrmc.jp/report/detail/1229306_4971.html

後半の提言部分が、クラインの発言と対応しているといえよう。しかし、この提言のほうが、より厳しく東電の問題点を指摘しているといえる。「福島第一の廃炉作業の円滑な推進にあたっては、技術力のたゆまぬ向上に努めるとともに、立地地域や国と連係・対話しつつ、全体的なリスクの最小化を図ること」とあるが、このことからいえば、東電は技術力のたゆまぬ向上に努めておらず、全体的なリスクの最小化もはかっていないことになる。また、「これまで柏崎刈羽において実施した防災訓練で明らかとなった問題点を踏まえ、今後は経営層の意思決定事項や対外対応時の本店の役割分担を明確化させた上で、外部(官邸・規制庁・自治体・警察・自衛隊等)との共同訓練の実施に向けた取組みを具体化すること」とあるが、逆にいえば、訓練ですら経営層の意思決定も外部との連携もできていないということになる。

総じて言えば、汚染水漏洩問題を中心にして、その公表の遅れについては明示的に批判しつつ、一部で包括的な計画がなくその場しのぎの対応をしていると言及し、「提言」という形で東電の対応全体を婉曲に批判しているといえよう。なお、AFPの記事とはニュアンスが違うように見受けられるところもあるが、この動画自体が編集されており、記者とのやり取りの部分などがないので、あるいはそこで、より明示的に姿勢が表明されたのかもしれない。

ジャッジは「原子力発電事業者として東電が再生の道をたどりつつあることを個人的にも私は日本の内外の方々にいろいろとこれまでもお話して参りました」と述べており、東電の原子力発電事業者との再生を望んでいることをあきらかにしている。そして、この記者会見では柏崎刈谷原発の再稼働についても言及されている。クラインもジャッジも海外の「原子力ムラ」の代表であって、原発推進を心から望んでいる。そのために、東電の原子力改革監視委員に就任したのだ。しかし、彼らからしても、福島第一原発に対する現在の東電の対応については批判すべきものであった。つまり、福島第一原発への東電の対応は、原子力推進の立場からみても、世界水準に達していないのである。このような状態で、よく原発プラントの海外輸出をはかれると思うのである。

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