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2013年12月19日、猪瀬直樹東京都知事が知事選前に徳洲会から5000万円を受け取った問題で辞任した。

辞任の直接の引き金となったのは、一つには、17日に都議会が偽証の際には罰則がある百条委設置を検討したことがあったといえる。そして、もう一つには、朝日新聞(18日付朝刊)の次の報道である。一部引用しておこう。

 

東京都の猪瀬直樹知事(67)が医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受けとっていた問題で、猪瀬氏が昨年11月に徳田虎雄前理事長(75)に面会した際、売却が決まっていた東京電力病院(新宿区)の取得を目指す考えを伝えられていたことが、関係者の話でわかった。今月6日の都議会一般質問で「東電病院の売却は話題になっていない」とした猪瀬氏の答弁は、虚偽だった疑いがある。

 徳田前理事長の意思表示に対し、猪瀬氏も、自らが東電に売却を迫ったことを話したとされ、5千万円はこの面会の2週間後に提供された。猪瀬氏は10日の都議会総務委員会で「徳洲会が東電病院に興味を持っていたことは全く知らない」とも説明していたが、これも虚偽答弁の可能性が出てきた。病院の開設や増床には都知事の権限が及ぶこともあり、辞任を求める声はさらに強まりそうだ。

 猪瀬氏は昨年11月6日、神奈川県鎌倉市の病院に入院中の徳田前理事長と約1時間、面会した。仲介役で新右翼団体「一水会」の木村三浩代表や前理事長の妻・秀子容疑者(75)=東京地検が公職選挙法違反(買収資金交付など)の疑いで逮捕=のほか、複数の徳洲会職員が立ち会った。関係者によると徳田前理事長はこの場で、約1カ月前に決まった東電病院売却に触れ、徳洲会として取得に関心があることを話題にした。

結局、徳田前理事長から、売却予定の東電病院取得に関心が示され、その後で5000万円が無利子・無担保の借出金(猪瀬本人の説明によると)という形で、当時副知事であった猪瀬に提供されたということになる。この記事では、都議会における答弁と食い違いということが指摘されているが、実は、もっと大きな問題がある。徳洲会から東電病院取得の意向が示され、その後5000万円が供与されたということは、贈収賄にあたる可能性があるのだ。

例えば、12月18日、自由民主党の高村正彦副総裁は、次のように語っている。18日に配信された朝日新聞のネット記事をみてみよう。

 

自民党の高村正彦副総裁は18日、医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取っていた東京都の猪瀬直樹知事について、「都知事としての職務権限と関係する仕事をする人から5千万円の大金を受け取った。この外形的事実だけで、出処進退を決断するのに十分だ」と記者団に語り、辞任を促した。自民党幹部で猪瀬氏の辞任論を公言したのは初めて。

 高村氏は「職務権限と関係なく5千万円受け取っても不思議ではない特別な関係を説明できれば別だが、今までの説明からすれば、そうではないとはっきりしている」と述べ、猪瀬氏の説明は理解を得られないと指摘。「辞任の決断が遅れると、東京オリンピックの準備にも支障が出るし、都知事として招致に成功した大きな功績を台無しにすることになる」と強調した。http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312180090.html

さて、この東電病院売却問題とはどういう問題なのだろう。朝日新聞(18日付朝刊)は、次のように説明している。

 

猪瀬氏は副知事だった昨年6月、東電の株主総会に自ら出席し、一般患者が利用できない点などから東電病院の売却を強く要求。東電は同年10月1日、経営合理化の一環として、競争入札での売却を発表した。
 徳洲会は今年8月に東電病院の入札に参加したが、9月に東京地検特捜部の強制捜査を受け、辞退。

つまり、昨年6月の東電の株主総会で、副知事であった猪瀬が経営合理化の観点で東電病院の売却を求め、それが実現されて、徳洲会がその入札に応じたということになろう。

ここで、時計を巻き戻して、昨年6月27日の東電株主総会をみてみよう。この株主総会は、東電が政府の原子力損害賠償機構から1兆円の出資を受けることで、実質的に国有化されることが決定させたものであった。現在、東電は、賠償にせよ、除染にせよ、福島第一原発の廃炉処理にせよ、さまざまな点で機能不全に陥っているが、そのような枠組みが確定した総会であったといえる。

そして、この総会で、猪瀬はさまざまな提案をしている。まず、それを当時の朝日新聞に依拠してみておこう。

 

また総会には、筆頭株主の東京都が、顧客サービスの向上や電気料金の透明性を高めることなどを定款に書き込む提案を提出した。猪瀬直樹副知事が出席し、同意を求めた。
(中略)
 東京電力の株主総会では、東京都の猪瀬副知事が約15分間にわたり、株主提案の趣旨説明をした。「東京電力に対する信頼は大きく揺らいでいる。構造改革を後押しする提案を行った」と訴えた。
 猪瀬氏は「新生東電が信頼を取り戻すには、経営の透明性や説明責任を果たすことがかぎとなる」と声を張り上げて主張。「ゼロから再出発をするのに必要なのは社員の意識改革だ」とも述べた。会場からは拍手ややじが飛んだ。
 東電は株主総会前の通知で、都の提案に反対する意向を表明。 都は大株主約400法人に賛同を呼びかける文書を送り、個人株主にもホームページで賛同を訴えた。猪瀬氏は「電気料金値上げに対し、ユーザーを代表して発言した」と語った。
朝日新聞夕刊(2012年6月27日付)

 

東電病院の売却要求 株主総会で猪瀬副知事

 猪瀬副知事は27日の東京電力の株主総会で、東電が所有する「東京電力病院」(新宿区)の売却を求めた。一般利用できない東電の福利厚生施設にもかかわらず、東電の資産売却リストに入っていなかったためだ。
(中略)
 猪瀬副知事は質疑で「資産価値は122億円に上る」と主張。都が今月行った定期調査では、119のベッド数のうち、稼働しているのは20程度だったという。東電の勝俣恒久会長は「どう整理するか早急に検討したい」と述べるにとどまった。
 猪瀬副知事は質疑後、記者団に「1兆円の公的資金が投入されるのだから、当然売却すべきだ」と協調した。
朝日新聞朝刊東京版(2012年6月28日付)

結局、定款変更他の株主総会への提案はことごとく否決されたが、提案事項ではない東電病院の売却は「検討事項」とされて、結果的に実現したということになる。猪瀬の副知事時代の業績の一つであるといえよう。

この東電の株主総会は、大飯原発再稼働を直前に控えた時期で、脱原発の提案が多く出させれてもいた。そんな中、猪瀬は、脱原発にせよ、東電の存続にせよ、いわば「大きな問題」には関心を示さず、「東電」の経営合理化と、「経営の透明性や説明責任」を、筆頭株主である東京都を後ろ盾にして主張したのである。後者の問題は、結局、本人に降り掛かることになるのだが。実際、猪瀬のブログに、東電株主総会での本人分の発言が出ているが、福島のことはほとんど出てこないのである。東電の経営破たんは、福島第一原発事故のためであり、さらにそれは、重い道義的責任もあるのだが、そのようなことは考慮されない。結局、彼にとっては「電気料金値上げに対し、ユーザーを代表して発言した」ということでしかないのである。

そして、最終的に実現したのは東電病院売却であった。そして、この東電病院売却を主張する猪瀬の「言葉」が、徳洲会からの5000万円の供与につながったのである。

この経過を見ると、憤慨にたえないのである。猪瀬は、東電解体や脱原発などの根本的問題には手を付けないまま、経営合理化や説明責任などで東電を「言葉」でのみ追及して、ポピュリズム的人気を得た。それは、たぶんに、この年末に行われた都知事選における猪瀬の圧勝の一つの要因でもあっただろう。他方で、東電病院売却という、猪瀬の「言葉」による業績が、5000万円供与の要因となっている。根本的なところでは、3.11は東京都政の深部を規定しているのだが、そのことをまともに向き合わず、むしろ、いろいろな意味で「言葉」によって弄び、自身の利益につなげようとしたのが猪瀬であったといえるのではなかろうか。そして、このような存在は、猪瀬だけではないのである。

*東電株主総会における猪瀬の発言は、次のブログで読むことができる。

http://www.inose.gr.jp/news/politics/post312/

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