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Posts Tagged ‘日本国憲法改正草案’

前回のブログでは、2月14〜15日の大雪で被災した住民・ドライバーたちの間で、生存を保障しあう共同性が成立していたことを述べた。幹線国道などで大雪で立ち往生した車両のドライバーたちに、住民や自治体は食料を差し入れたり、避難所を提供した。毎日新聞によると、次のような状況が現出されたという。

大雪:渋滞の国道、助け合い…軽井沢
毎日新聞 2014年02月16日 21時13分(最終更新 02月17日 12時08分)

 長野県軽井沢町の国道18号では、30時間以上立ち往生するドライバーに、沿道の市民が温かい食事や飲み物などを差し入れた。

 同町の喫茶店「鐵音(くろがね)茶房」店主、羽山賢次郎さん(70)は、妻静さん(66)と共に、冬季閉鎖中の店を開放。羽山さんによると、15日午前1時ごろから、店の前の国道の車が動かなくなった。「みんな食べものがないだろう」と思い、15日朝から、うどんやカレー、お雑煮を無料で提供した。軽井沢に住んで約45年。食べた人が16日朝、店の前の雪かきをしてくれた。「一宿一飯の恩義と言ってくれた」と羽山さんは話す。【小田中大】
http://mainichi.jp/select/news/20140217k0000m040066000c.html

さて、政府はどのような対応していたのだろうか。もちろん、知事の要請によって自衛隊が出動し、道路除雪や物資輸送などの営為を15日頃より行っていたことは間違いない。しかし、政府の豪雪対策本部が設置されたのが2月18日になったことに象徴されているように、初動が遅れたことは否めない。そもそも、高速道路の通行止めやチェーン規制の徹底自体が遅れている。また、15日にはそれぞれの地域に駐屯している自衛隊が出動しているが、そもそも豪雪地帯ではないため、装備・人員ともに不十分であったと考えられる。通常は政府よりの報道をしている読売新聞や産經新聞も「初動の遅れ」を指摘せざるえなかったのである。

そんな中、政府・与党より、高速道路・国道などの通行が早期に回復できないのは、立ち往生している「放置車両」のためであり、災害対策基本法の改正が必要だという主張が出された。まず、2月17日の政府・与党協議会についてのFNNの報道をみてみよう。

17日に開かれた政府・与党協議会で、政府は、今回の大雪で多くの車が立ち往生するなどして放置され、自治体の除雪作業が難航しているケースがあると報告した。
これを受けて、政府と与党は、大雪などの災害時に、放置された車両の撤去を可能にする法整備が必要かどうかも含め、対応を検討することを確認した。
菅官房長官は「今回の大雪の災害においてですね、多く立ち往生している車両がありますよね。それに対して、除雪の車両が入ることができない。基本的には、災害対策基本法という法の見直しだというふうに思っています」と述べた。
与党内からは「放置車両を壊してもいいということにしないといけないのではないか」との意見も出ているが、自民党の石破幹事長は、放置車両の撤去は必要だとの認識を示しつつ、「車の所有権はどうなるのか。財産権もからみ、難しい話になる」と指摘した。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00263293.html

その後、菅官房長官は定例の記者会見で、車両の強制撤去が可能になるように法整備を進めることを述べた。下記のテレビ朝日の報道をみてほしい。

“立ち往生車両は強制撤去”大雪受けて法整備検討(02/17 16:56)

 今回、道路で立ち往生した車のために除雪車や緊急車両が通れなくなったケースが相次いだことを受けて、政府は、車を強制的に撤去できるように法整備を検討する方針です。

 菅官房長官:「(移動車両の)損失補償の問題もあり、今まで手が付けられずにいたが、緊急の場合にどうするかは大きな課題で、これ以上、先送りすべきではない」
 菅長官は、災害などの緊急時に道路をふさぐ車は所有者の許可がなくても破壊・撤去出来るようにし、後で所有者に損失補償が出来るよう災害対策基本法を早急に見直す方針を明らかにしました。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000021617.html

しかし、この対応は、全く当を得ないものである。阪神淡路大震災の教訓をふまえて、1995年においてすでに災害対策基本法は改正され、緊急通行車両の通行の妨害となる車両などについて警察官はその移動を命じることができ、それができない場合は、強制撤去が可能になっているのである。警察官がいない場合は、自衛隊・消防も同様の措置がとれることになっている。まずは、下記の災害対策基本法の条文をみてほしい(なお、自衛隊・消防についての条文は省略した)。

第七十六条の三  警察官は、通行禁止区域等において、車両その他の物件が緊急通行車両の通行の妨害となることにより災害応急対策の実施に著しい支障が生じるおそれがあると認めるときは、当該車両その他の物件の占有者、所有者又は管理者に対し、当該車両その他の物件を付近の道路外の場所へ移動することその他当該通行禁止区域等における緊急通行車両の円滑な通行を確保するため必要な措置をとることを命ずることができる。
2  前項の場合において、同項の規定による措置をとることを命ぜられた者が当該措置をとらないとき又はその命令の相手方が現場にいないために当該措置をとることを命ずることができないときは、警察官は、自ら当該措置をとることができる。この場合において、警察官は、当該措置をとるためやむを得ない限度において、当該措置に係る車両その他の物件を破損することができる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO223.html#1000000000005000000004000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

この条文をどのようにみても、警官・自衛官・消防吏員による車両の強制撤去が可能であることはあきらかである。法的に車両が強制撤去できないから大雪対策が進まなかったというのは、災害対策基本法を承知していなかったとしたらファンタジーであり、承知していたとしていたら嘘もしくはデマの類である。最近、安倍政権の周辺で、どうみても事実誤認の発言が相次いでいるが、これもその一つであろう。

前回のブログで、立ち往生した車両のドライバーたちに沿線住民・自治体が温かく支援したことを述べた。立ち往生した車両から一時離れて、避難所にいったり、食事のもてなしを受けたり、食料やガソリンの買い出しをしたりすることは、ドライバーからすれば「自助」であり、沿線住民からすれば「共助」である。初動の対応は遅れたとはいえ、警官・自衛隊・消防・県や市町村の職員は、彼らの生存を保障するために除雪や物資輸送などで働いたといえる。いわばこれらの権力機関は「共同性」を保障するために必要とされたといえる。政府はそれを速やかにサポートすることが求められている。にもかかわらず、避難せざるを得なかったドライバーたちの車両を「放置車両」よばわりし、すでに法的に可能になっている車両の強制撤去が必要だとして、やみくもに私権を制限することばかりを政府・与党は提起している。そもそも、彼らにとって、高速道路・国道などの国家的大動脈の通行が「国民」個人の車両のために妨害されていると認識されていたといえるだろう。もちろん、現実には、法的規制のためなどではなく、想定外の大雪のため、初動が遅れたことに起因するのではあるが。政府・与党は、結局のところ、道路の通行止めが長引いたことを、「放置車両」のためだと責任転嫁したと考えられる。それは、いわば、立ち往生した車両をめぐるドライバーたちの「自助」、沿線住民たちの「共助」からなる共同性の世界を否定し、国家的強制を強めることに結果しているのである。

さらに、大雪対策の議論は、憲法改正問題にまで波及した。2月24日にネット配信された毎日新聞の記事をみてほしい。

安倍首相:緊急事態規定を検討 大雪被害受けて
2日前
 安倍晋三首相は24日の衆院予算委員会で、記録的大雪の被害に関連し、大規模災害に備えた緊急事態規定を盛り込むための憲法改正について「大切な課題だ。国民的議論が深まる中で、制度についてしっかりと考えていかなければならない」と述べ、検討を進める考えを示した。自民党は憲法改正草案で緊急事態宣言に基づく首相権限強化などを盛り込んでいる。日本維新の会の小沢鋭仁氏への答弁。

 首相は大雪被害対策について「災害対応は不断の見直しや改善が必要だ。さまざまな指摘に真摯(しんし)に耳を傾け、野党の指摘にも対応していきたい」と強調した。14日の降り始め以降、政府の対応が後手に回ったとの批判をやわらげる狙いもあるとみられる。

 小沢氏は大雪で孤立集落が相次いだ山梨県出身。予算委では小沢氏のほか、被害の出た地元議員が相次ぎ要望した。埼玉県出身の小宮山泰子氏(生活の党)は、体育館の屋根崩落を受けた構造基準見直しの必要性を指摘。太田昭宏国土交通相は「調査結果を踏まえ、見直しが必要かできるだけ早期に見極め検討したい」とした。【影山哲也】
http://sp.mainichi.jp/select/news/20140225k0000m010115000c.html

これは、2012年の自由民主党の日本国憲法改正草案の一節に関連している。この草案では、武力攻撃・内乱・自然災害などの緊急事態において、「緊急事態の制限」を出すことができ、その場合は、法律と同一の効力をもつ「政令」が出せるのである。その場合、「何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」となる。事後に国会の承認が必要となるが、これは、一種の「授権法」といってよいだろう。

第九章 緊急事態

(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
http://www.geocities.jp/le_grand_concierge2/_geo_contents_/JaakuAmerika2/Jiminkenpo2012.htm#2

大雪対策が「授権法」的憲法改正への動きに結果するということが、現在の安倍政権である。今回の大雪対策の問題は、これは安倍政権ばかりではなく、豪雪地ではない自治体や駐屯自衛隊も含めての「初動」の遅れにあるのであって、別に法律や憲法の不備にあるわけではない。しかしながら、安倍政権は、自らの対応の不備をたなにあげ、人びとが「自助」「共助」のなかでとった行為へと責任転嫁し、私権の制限をはかる法律・憲法改正の必要性を主張する。別に、現行法でも車両の強制撤去はできるにもかかわらずである。そもそも、15〜16日と、公表された範囲では、ソチオリンピックで金メダルをとった羽生結弦選手に祝福の電話をかけ、さらに天ぷらを食べることしかしていないようにみえる安倍首相に「緊急事態宣言」を出す権限を与えても、どのような意味があるのか。現行法の中でも、まともな政治的判断がなされれば、より適切な対応がとれたのではないかと思うし、その点を反省することが、責任者としての安倍晋三首相の行うべきことであろう。大雪対策が憲法改正論議に発展する現在の状況は、現行法でも「国家機密」は保護されているにもかかわらず、憲法のかかげる基本的人権に抵触する可能性が高い「特定秘密保護法」が成立した状況と同様の構図をもっているのである。

*なお、災害対策基本法については、以下のサイトを参考にした。
http://matome.naver.jp/odai/2139331899701944301

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現天皇が12月23日に80歳を迎えた。誕生日をひかえた12月28日に宮内庁で記者会見を行った。まず、冒頭の部分をみておこう。

問1 陛下は傘寿を迎えられ,平成の時代になってまもなく四半世紀が刻まれます。昭和の時代から平成のいままでを顧みると,戦争とその後の復興,多くの災害や厳しい経済情勢などがあり,陛下ご自身の2度の大きな手術もありました。80年の道のりを振り返って特に印象に残っている出来事や,傘寿を迎えられたご感想,そしてこれからの人生をどのように歩もうとされているのかお聞かせ下さい。

〈天皇陛下〉
80年の道のりを振り返って,特に印象に残っている出来事という質問ですが,やはり最も印象に残っているのは先の戦争のことです。私が学齢に達した時には中国との戦争が始まっており,その翌年の12月8日から,中国のほかに新たに米国,英国,オランダとの戦争が始まりました。終戦を迎えたのは小学校の最後の年でした。この戦争による日本人の犠牲者は約310万人と言われています。前途に様々な夢を持って生きていた多くの人々が,若くして命を失ったことを思うと,本当に痛ましい限りです。

戦後,連合国軍の占領下にあった日本は,平和と民主主義を,守るべき大切なものとして,日本国憲法を作り,様々な改革を行って,今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し,かつ,改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し,深い感謝の気持ちを抱いています。また,当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います。戦後60年を超す歳月を経,今日,日本には東日本大震災のような大きな災害に対しても,人と人との絆きずなを大切にし,冷静に事に対処し,復興に向かって尽力する人々が育っていることを,本当に心強く思っています。

http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/kaiken-h25e.html

ここで、重要なことは、第二次世界大戦を「本当に痛ましい限り」と表現した上で、「戦後,連合国軍の占領下にあった日本は,平和と民主主義を,守るべき大切なものとして,日本国憲法を作り,様々な改革を行って,今日の日本を築きました。」と主張していることである。これは、天皇が日本国憲法の原理である「平和と民主主義」を擁護しているといえるであろう。

これは、改憲をかかげる安倍首相とは全く相反した意見といえるだろう。例えば、天皇誕生日の前日である12月22日に、安倍首相はNHKのテレビで次のような発言をしている。日本経済新聞が12月23日に配信した記事でみてみよう。

首相「落ち着いて仕事」 長期政権に意欲
2013/12/23 0:46

 安倍晋三首相は22日夜のNHK番組で「衆院(議員)もまだ3年任期がある。日本を正しい方向へ導いていくためにも、この期間に落ち着いて仕事をしていかなければいけない」と述べた。「そう簡単には辞めるわけにはいかない」とも語り、長期政権に意欲をにじませた。

 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更や憲法改正などには腰を据えて取り組む考えを強調したものとみられる。集団的自衛権に関して日本維新の会やみんなの党と連携したい意向を示すとともに「憲法改正は私のライフワークだ。なんとしてもやり遂げたい」とも力説した。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2201Q_S3A221C1PE8000/

安倍晋三は「憲法改正は私のライフワークだ」とまでいっているのである。天皇の意向との違いはあきらかである。

さらに天皇の発言を紹介しておこう。次の部分を読んでほしい。

問3 今年は五輪招致活動をめぐる動きなど皇室の活動と政治との関わりについての論議が多く見られましたが,陛下は皇室の立場と活動について,どのようにお考えかお聞かせ下さい。

〈天皇陛下〉
日本国憲法には「天皇は,この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ,国政に関する権能を有しない。」と規定されています。この条項を遵守することを念頭において,私は天皇としての活動を律しています。

しかし,質問にあった五輪招致活動のように,主旨がはっきりうたってあればともかく,問題によっては,国政に関与するのかどうか,判断の難しい場合もあります。そのような場合はできる限り客観的に,また法律的に,考えられる立場にある宮内庁長官や参与の意見を聴くことにしています。今度の場合,参与も宮内庁長官始め関係者も,この問題が国政に関与するかどうか一生懸命考えてくれました。今後とも憲法を遵守する立場に立って,事に当たっていくつもりです。

実は、この発言は、日本国憲法の規定に抵触する恐れがある。下記の条文にあるように、天皇は国政に関する権能はもたず、国事に関する行為のみが許されている。しかし、今まで触れてきた発言は、あきらかに「国政」への発言を含んでいるのであり、それ自体が問題をはらんでいる。そしてまた、憲法では、国事行為においては内閣の助言と承認が必要であるとしている。何が国事行為にあたるのかということも、本来、内閣の助言と承認が必要であるはずである。にもかかわらず、天皇は、何が国事行為で、何が国政に関与する行為であるということについて、宮内庁長官や参与の意見を参考にして「判断」しているのである。

第三条  天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第四条  天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
○2  天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
(中略)
第六条  天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
○2  天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第七条  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一  憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二  国会を召集すること。
三  衆議院を解散すること。
四  国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五  国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六  大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七  栄典を授与すること。
八  批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九  外国の大使及び公使を接受すること。
十  儀式を行ふこと。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html

このことは、現天皇が、厳密にいえば憲法の規定通り行動していないこと示しているといえる。しかし、それでも、現天皇は「今後とも憲法を遵守する立場に立」つと宣言しているのである。そして、本意としては「内閣の助言と承認」つまり安倍政権の天皇の行為への関与を限定的なものにしたいという意向があるといえる。

日本国憲法では「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」(前文)とし、天皇の位置については、「第一条  天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と定めている。主権者は国民であり、その総意によって天皇は「日本国の象徴」となっているのである。それゆえ、「国政の権能」はもたず、「国事行為」には、国民の代表である内閣の助言と承認が必要となっている。言うなれば、独自の政治的主体として公的に行動することは憲法上は認めていないのである。

しかし、少なくとも、現天皇は、主体的に「憲法を遵守」すると宣言している。そして、これは、私的な意見の表明ではない。国事行為と国政との境界については、宮内庁長官や参与などと協議して判断しているとしており、公的な意見の表明である。そして、この記者会見での発言を見る限り、内閣とは独立した立場なのである。非常に微妙なのだが、ある種の憲法に拘束されない立場をもつ天皇が、平和と民主主義を原理とする日本国憲法を「遵守」しているということになろう。いわば、天皇制が民主主義を護持しているのであり、「天皇制民主主義」ともいえるだろう。その意味で、実は、天皇の発言は、微妙なものである。

たぶん、この問題は、もともと内包されていた日本国憲法と天皇制の微妙な関係が、改憲をライフワークとする安倍政権の登場によって露呈されたとみることができるだろう。天皇の個々の行動が内閣の助言と承認を得たものではなくても、それらがおおむね内閣の方針と食い違うものでなければ、このよう問題は表面化しない。しかし、安倍政権と現天皇の憲法に対する見解が食い違ってくると、この問題に矛盾が内包されているが露呈されてくることになるのである。

そして、より微妙なのは、安倍政権は自民党を中心とした政権であり、自民党は昨年4月に「日本国憲法改正草案」を発表していることである。この草案では、現在の憲法前文にはない、次のような表現がなされている。

日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される(後略)
http://www.geocities.jp/le_grand_concierge2/_geo_contents_/JaakuAmerika2/Jiminkenpo2012.htm#0

そして、草案第一条では「天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」とし、草案第六条第四項では「天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による」としている。天皇を元首化するとともに、内閣の関与を「助言と承認」から「進言」とトーンダウンさせている。天皇の立場をより権威化しようとしたものといえる。しかし、安倍政権自体は、現天皇の意向とは矛盾した方向性をとっている。より矛盾が深まっているといえよう。そして、このことは、安倍政権が意図しない形で、「戦後政治」の見直しにつながっていくのではないかと考えられるのである。

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