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Posts Tagged ‘放射性廃棄物’

2013年12月6日、経済産業省は、同省の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会を開き、「新しいエネルギー基本計画」の素案を提示した。産経新聞がネット配信した次の記事で概要をみてほしい。

エネルギー基本計画案に当局が「原発再稼働進める」と明記 民主政権のゼロ政策転換
2013.12.6 20:10 [原発・エネルギー政策]
 経済産業省は6日、総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の基本政策分科会を開き、政府の中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の素案を提示した。原発を「重要なベース電源」と評価したうえで、「原子力規制委員会によって安全性が確認された原発について再稼働を進める」と明記した。

 東日本大震災後に民主党政権が掲げた「原発ゼロ」政策を転換する。

 素案では、原発について「優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時に温室効果ガスの排出もない」と評価。その上で「エネルギー需給構造の安定性を支える重要なベース電源である」とし、安全性の確保を前提に引き続き活用するとの方針を明記した。

 原発の新増設については具体的な記述を見送った。民主党政権が昨年9月にまとめた革新的エネルギー・環境戦略では「新増設は行わない」としていたが、将来的な新増設の可能性については含みを持たせた。

 将来の原発を含む電源の構成比率(総発電量に占める比率)についても明示せず、原発の再稼働状況などを見極めて「速やかに示す」ことを盛り込んだ。

 再生可能エネルギーの拡大などで、エネルギーの原発依存度は「可能な限り低減させる」とした。

 茂木敏充経産相は6日の記者会見で「実現可能でバランスの取れた責任ある計画としてまとめることが必要だ」と強調。12月中旬に計画を策定し、来年1月に閣議決定する方針を示した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131206/plc13120620130028-n1.htm

実際、経済産業省の出した文書でみてみよう。「エネルギー基本計画に対する意見(とりまとめ)」と出された文書(実際には12月6日の素案を基本政策分科会の意見によって修正したものとみられる)において、原発については、次のように指摘されている。

大きく変化する国際的なエネルギー需給構造の中で、深刻なエネルギー制約を抱える我が国が、エネルギー安全保障の強化、経済性のあるエネルギー源の確保、温室効果ガス排出の抑制という重大な課題に対応していくためには、多様かつ柔軟な電源オプションを確保することが必要である。
原子力発電は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで供給が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく。
原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国のエネルギー制約を考慮し、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する。
いかなる事情よりも安全性を最優先し、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、世界で最も厳しい水準の新規制基準の下で原子力規制委員会によって安全性が確認された原子力発電所について再稼動を進める。
また、万が一事故が起きた場合に被害が大きくなるリスクを認識し、事故への備えを拡充しておくことが必要である。
さらに、原子力利用に伴い確実に発生する使用済核燃料は、世界共通の悩みであり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を着実に進めることが不可欠である。
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/report-1.pdf

原発依存度を低減させるといいながらも、結局のところ、安全性が確認された原発を再稼働させるというところが主要な主張になっている。全体において矛盾した、わかりにくい文章である。詳細な内容については、ご一読してほしい。

さて、同日(12月6日)、2014年1月6日を期限として、エネルギー基本計画策定に向けてパブリックコメントが募集された。正式には「新しい『エネルギー基本計画』策定に向けた御意見の募集について」と題されており、あて名は資源エネルギー庁長官官房総合政策課となっている。募集のサイトについて、下記に示しておこう。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620213015&Mode=0

このパブリックコメントに、本日(2014年1月2日)に応じてみた。その内容を次に示しておこう。

骨子:エネルギー供給減としての原子力発電は即刻廃止すべきである。

2013年3月11日の福島第一原発事故は、原子力発電の危険性を如実に示した。それまでも、放射能もれ、被曝労働、実現性のない核燃料サイクル計画や放射性廃棄物処分など、原子力発電の問題性は露呈していたが、福島第一原発事故は、原子力発電における過酷事故が、周辺地域社会全体の存立を脅かし、さらには国家や地球全体にも多大な影響を与えることを提示した。原子力発電によって得られるとされるいかなるリターンも、想定される過酷事故のリスクには見合わない。さらに、原子力発電は、実際に原子力発電に携わる労働者や立地している地域社会への構造的差別の上に成り立っている。ゆえに、エネルギー供給としての原子力発電は廃止し、それに携わってきた人員・施設・予算は、福島第一原発事故の処理を中心として、今までの原子力発電によってもたらされきた問題の解決へ振り向けられるべきである。以下、原子力発電の問題性を箇条書きで示しておく。
1、現在のエネルギー基本計画案の基調は「経済負担の最小化を図りつつ、エネルギーの安定供給と環境負荷の低減を実現していくことは、既存の事業拠点を国内に留め、我が国が更なる経済成長を実現していく上での前提条件となる」(「エネルギー基本計画に対する意見」)という観点が中心となっていると考えられる。つまり経済成長のためには多くのエネルギーを供給しなくてはならないとする高度経済成長期と変わらない意識が前提とされているといえる。それゆえに、原子力発電も必要とされることになっている。しかし、前述してきたように、原子力発電のリスクは、どのような経済成長の可能性でも補えないものである。これは、単に、原子力発電だけではない。中国におけるPM2.5による大気汚染のように、経済成長のためにやみくもにエネルギーを確保することは、深刻な環境破壊をひき起こし、人間社会を破壊することになるだろう。それは、地球温暖化全体がそうである。新しいエネルギー基本計画の基調は、環境破壊を惹起しない程度のエネルギー供給はどの程度であるかを示し、それに見合った省エネルギー的な経済成長を促進していくということでなくてはならないと考える。
2、「エネルギー基本計画についての意見」では、「シェール革命 」によって低コストのエネルギー源が見いだされる可能性に言及しながらも、海外依存率を低めるという名目のもと、現在輸入済み核燃料があまっているとして「準国産」のエネルギー源として原子力発電を推奨している。長期的にいえば、ほとんど輸入に頼っているウランを燃料としている原子力発電は「国産」とよぶことはできない。短期的には、低コストとされるシェールガスにエネルギー源を転換しつつ、中長期的には再生可能エネルギーによる供給をめざすべきであろう。
3、核燃料サイクル計画は、その核である高速増殖炉もんじゅは事故によってほとんど稼働せず、六ヶ所村核燃料再処理工場の竣工も遅れている状況であり、頓挫しているといえる。高速増殖炉開発については世界のほとんどの国で断念されており、その場合、再処理工場が本格稼働しても、ウラン燃料よりもコストが高く、核兵器への転用のおそれがあるプルトニウムが蓄積されるだけになるだろう。すでに破たんした核燃料サイクル計画は他に先駆けて廃止し、それらに費やしてきた予算・人員・施設・技術は、福島第一原発事故処理などに転用すべきである。
4、高レベル放射性廃棄物処分については、現在、地層処分をもっとも有効なものとして検討されている。しかし、地層処分の安全性について十分信頼されているとはいえず、特に、日本においては、万年単位で安全な地層が得られる保証は得られない。現時点における高レベル放射性廃棄物は当然なんらかの形で処分されなくてはならないが、原発の再稼働によりより放射性廃棄物を増やすべきではない。
5、原子力発電は、従事する労働者や立地する地域社会に対する構造的差別の上で成り立っている。原子力発電において、なんらかの被ばく労働はさけられないが、それらの被ばく労働は、長期的に働く社員ではなく、待遇の悪い下請け労働者や日雇労働者によってなされている。また、原発は、近代的産業の中心地ではなく、人口が少ない地域に立地されており、事故の際には、立地地域の人びとの犠牲によって社会的・経済的影響を小さくさせている。労働者や地域間における構造的差別を是正していくことはエネルギー対策の観点からのみできることではないが、原子力発電を維持することで、このような構造的差別を温存・助長すべきではないと考える。

このパブリックコメントは2000字が限度とされている。私のコメントは1900字を超えているので、分量的には限界に近い。「エネルギー基本計画に対する意見」へのコメントであり、その内容ついて項目ごとに反論していく手法もあるとは思ったが、字数が限られており、さらに、かなり専門的内容に反論していくことは、かなり困難だと考えた。そして、結局、「骨子:エネルギー供給減としての原子力発電は即刻廃止すべきである」として、その理由をあげていくことにした。今考えると、他にも書くことがあったなと思ったりもする。ご参考になれば幸いである。

前述したように、期限は1月6日である。こんなに長文でなくても、ほんの少しの文章でもかまわないそうである。なるべく、コメントしてほしいと思う。

なお、本パブリックコメントを呼びかけているサイトを最後に紹介しておきたい。

http://publiccomment.wordpress.com/

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さて、もう一度、現在の参議院選挙における自由民主党の公約の中で、原発再稼働問題がどのように扱われているかみておこう。自民党の公約では、次のように述べられている。

●原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。
その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします。
●次世代への責任を果たすべく、高レベル放射性廃棄物の「大幅な有害期間の短縮・毒性の低減化」の研究開発を加速させます。

まず、上段では、原子力規制委員会に安全性の判断を委ねるとしながらも、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体を説得するなど積極的に動くとしている。このことについては、そもそも、原子力規制委員会の安全審査自体が十分なのかということがある。

他方で、例え原発の運転は安全だとしても、その結果生じる放射性廃棄物はどうするのかということがある。現在、使用済み核燃料については、再処理してプルトニウムやウランを取り出し、普通の軽水炉(プルサーマル)か高速増殖炉で再び燃料とするという核燃料サイクルが方針として打ち出されている。しかし、現在、核燃料再処理工場、高速増殖炉もんじゅなどは安定して稼働できる保障はない。プルサーマルについては、再処理して再び燃料とするコストを考えると、そのまま廃棄処理するほうが経済的ではないかといわれている。

そして、例え、再処理したとしても、そこで再利用できるのは、プルトニウムやウランだけにすぎない。その他のセシウム137(半減期約30年)、ストロンチウム90(半減期約28年)などはもちろん残る。より問題なことは、ネプツニウム237(半減期214万年)など、長期間にわたって放射線を出すものも残ってしまう。これらについては、放射線が出ないようにガラスで固めて(ガラス固化)、地中深く埋める(地層処分)ことになっている。しかし、放射性廃棄物の種類によっては、それこそ数万年以上も放射線を出し続けることになり、何かのメカニズムで再び地上に出て来ることが懸念されている。その意味で、原発の稼働を続けるということは、人類自体が処理不可能な放射性廃棄物を増やしていくといわれているのである。

そのことに対して、自民党の公約は「次世代への責任を果たすべく、高レベル放射性廃棄物の『大幅な有害期間の短縮・毒性の低減化』の研究開発を加速させます」といっている。これを読んで、最初は何を言っているのかわからなかった。知人に「消滅処理ー核変換処理」のことを言っているのだろうと教示をうけた。何らかの形で、放射性物質の原子核の核種を変換させて、別の物質にするということである

この「消滅処理ー核変換処理」の現状については、デイリー東北がネット配信した記事が要領よくまとめている。

核燃料サイクル

注目の研究「核変換技術」 現状と課題探る
(2013/01/20)
 原発の使用済み核燃料を再処理した際に出る高レベル放射性廃棄物。放射能レベルが非常に高く、人体への毒性が天然ウラン並みに下がるまで約1万年かかるとされる。この核のゴミを、「核変換技術」を用いて毒性を低減させる研究が国内で進められている。政府も2013年度、本腰を入れて取り組む姿勢を示し、注目が集まる。確立すれば毒性低減の時間を1万年から300年に短縮できる「夢の技術」だが、技術的や時間的な課題も多く、実用化は未知数。核のゴミ問題を解決する突破口になるか、現状と課題を探った。

■核変換の仕組み
 核変換は原子核に中性子を当てて、異なる元素や同位体に変換する技術。廃棄物の場合、長時間、強い放射線を出す原子核を短時間で弱い核種に変換するという考え方だ。
 全ての放射性核種には、固有の「半減期」があり、例えば半減期30年のセシウム137は、30年ごとに放射能が半減し、300年で1千分の1になる。
 高レベル廃棄物にはさまざまな核種が存在するが、中でも半減期の長いネプツニウム237(半減期214万年)とアメリシウム243(同7370年)がやっかいだ。
 これらの長寿命放射性原子核はマイナーアクチノイド(MA)と呼ばれ、重さ1トンの使用済み核燃料にわずか1キロしか含まれていないが、放射線を長時間出すため、毒性低減の妨げとなっている。
 核変換では、MAに中性子を当て、半減期の短いセシウム137(同30年)やストロンチウム90(同28年)などの短寿命放射性原子核に変える。どの核種に変化するかは、中性子の当たり具合で異なり、繰り返すことで効果を高められる。

■研究の現状
 廃棄物の核変換技術は現在2種類の研究が行われている。一つは加速器駆動未臨界システム(ADS)を使った研究、もう一つは高速中性子を使った高速炉で発電しながら核変換を行う「高速炉サイクル」の研究だ。
 ADSの研究は原子力機構が茨城県で実施。毒性低減に特化した装置で、専用炉に冷却材の鉛・ビスマスとMAを入れ、加速器で加速させた陽子を照射。炉内で発生した中性子で核変換を行う。
 大量のMAを処理できるほか、臨界(核分裂の連鎖反応)を伴わないため安全性が高いとされるが、装置は未完成で基礎研究にとどまっている。
 一方、高速炉を使った核変換は「もんじゅ」(福井県、原子力機構)で今後、本格的な研究が進められる見通し。
 経済産業省は国の13年度予算の概算要求で、高速炉を使った廃棄物の毒性低減や減容化の研究費として新規で32億円を要求、本格的な研究に着手する方針を示している。

■課題と見通し
 ADSはさまざまな技術的課題がある。まず陽子を照射する加速器を高出力に変えることが不可欠で、超電導装置の研究開発に時間がかかる。
 冷却材に使用している鉛・ビスマスも重い上、さびやすいため酸素濃度の調整が必要なほか、炉内に入れるMAの加工技術も重要な研究課題となる。
 もんじゅは、トラブル続きで現在も運転を停止しており、再開の見通しが立っていない。経産省は「コンピューターのシミュレーションなどで研究はできる」としているが、先行きは不透明だ。
 技術的な課題は、プルトニウム・ウラン混合(MOX)燃料などにMAを混ぜて燃焼させた際の安全性の確保や、以前から指摘されている冷却用ナトリウムの安定性などが挙げられる。
 「もんじゅ」を再稼働させることに対する国民の反発も根強く、今後の研究に影響する可能性がある。http://cgi.daily-tohoku.co.jp/cgi-bin/tiiki_tokuho/kakunen/news/news2013/kn130120a.htm

具体的には、高速増殖炉もんじゅと、東海村の大強度陽子加速器(J-PARC)を使い、そこで、長寿命放射性元素をより寿命の短いセシウムやストロンチウムに変換することが現在研究されているということである。

朝日新聞は、この「核変換」を「現代の錬金術」とよんだネット記事を2013年7月1日に配信している。

核のごみ、毒性消す「錬金術」 実用化には高い壁

 【小池竜太】原発の使用済み核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物」が、たまり続けている。国は地下深くに埋めて捨てる方針だが場所は未定。処分場を造っても、放射能が強く、数万年は社会から隔離する必要がある。この「核のごみ」の寿命を短くしたり量を減らしたりする「核変換」という技術がある。実現できるのか。

     ◇

 「核変換はある意味、現代の『錬金術』です」。京都大原子炉実験所の三澤毅教授(原子炉物理学)はいう。中世の錬金術師たちは卑金属から金を作り出そうと試みたが、かなわなかった。だが、今は中性子を使って物質を変えられる。

 実は核変換は珍しいことではない。原発で起きている核分裂反応もその一つ。ウランが中性子を取り込んで分裂、ヨウ素やセシウムなどに変わる。

 核変換技術を原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」対策に役立てる研究がある。毒性が長く続く放射性核種の寿命を短くしたり、毒性を消したりするのが目的。使用済み核燃料をそのまま捨てると、放射線の強さが天然ウランと同じレベルに下がるまで約10万年、高レベル放射性廃棄物は数千年かかる。核変換ができれば数百年に短縮できるとされる。
http://www.asahi.com/special/news/articles/TKY201306300096.html

「核変換処理」でも、危険期間が万年単位から百年単位になるだけのことだが、画期的な技術ではあろう。朝日新聞は、たぶん、評価する意味で「錬金術」とよんでいる。そもそも、原発のエネルギー源となっている核分裂反応は、人の手で新しい物質を作り出すことでもある。そう考えると、全く不可能なことではないともいえよう。

しかし、現状において、そもそも、このような処理は可能なのか。まず、この核変換処理が、使用済み核燃料再処理と、高速増殖炉・プルサーマルによって再処理した核燃料を再利用する核燃料サイクルを前提にして立案されていることに注目しなくてはならない。前述したように、日本の核燃料再処理工場や高速増殖炉もんじゅは、安定的に稼働できる状態ではない。つまり、核変換処理自体の前提がクリアされていないのである。

そして、核変換処理研究の一方の柱として、高速増殖炉もんじゅがあげられている。そもそも、通常運転すらおぼつかないもんじゅで、このような研究が可能なのか。その点、やはり疑問なのである。

もう一つの柱が、茨城県東海村の大強度陽子加速器(J-PARC)である。この陽子加速器を使って核変換させることが現在計画されている。しかし、この陽子加速器をつかったハドロン実験施設で5月23日に放射能漏れ事故が起きたことは記憶に新しい。そもそも、こんな状態で、より危険度の高い放射性廃棄物が扱えるのかとも思うのである。報道の一例として、ここでは毎日新聞のそれをあげておこう。

茨城・放射能漏れ:被ばく 新たに24人確認 計30人に
毎日新聞 2013年05月26日 21時53分(最終更新 05月27日 00時11分)

 茨城県東海村の加速器実験施設「J−PARC」(ジェイパーク)の放射性物質漏れで、日本原子力研究開発機構などは26日、新たに24人の被ばくを確認したと発表した。被ばくしたのはこれまでの6人と合わせ計30人になった。被ばく量は最大で1.7ミリシーベルトだった。6人が未検査で、さらに増える可能性もある。

 同機構などによると、事故は23日正午ごろ発生。当時施設にいた測定対象者55人のうち、49人を測定した。被ばくが確認されたのは22〜55歳の男女計30人で、線量は1.7〜0.1ミリシーベルト。最大被ばく量は、22歳の男性大学院生と29歳の原子力機構の男性職員の計2人だった。女性は、36歳の大学職員(0.1ミリシーベルト)と51歳の研究機関職員(0.4ミリシーベルト)の計2人だった。いずれも放射線業務従事者の年間被ばく限度の50ミリシーベルトを下回っており、「健康に影響する可能性はかなり低い」としている。

 19人は検出限界値未満。残りの6人については27日以降に測定する。

 被ばく者数が多くなった理由について、J−PARCの担当者は「放射性物質が遮蔽(しゃへい)材の隙間(すきま)などを通して漏えいしたが、気付くまでに時間がかかり、退避が遅れたのでは」と説明している。

 事故は、金に陽子線を当てて素粒子を発生させる実験中に照射装置が誤作動し、通常より400倍の強さで陽子線が当たり、高温になった金の一部が蒸発。原子核が崩壊し、放射性物質が漏れた。【斎藤有香】
http://megalodon.jp/2013-0527-0023-09/mainichi.jp/select/news/20130527k0000m040048000c.html

現状でもかなり放射性廃棄物があり、それを処理するための有効な方法を可能な限り研究することはよいだろう。しかし、いかに理論上可能であったとしても、破綻した核燃料サイクルを前提に立案している限り、実施は困難だと考えられる。良い意味でも、悪い意味でも「核変換」とは「現代の錬金術」としかいえないだろう。

その上で、自民党の参院選公約に、「核変換」と思われることが推進されている意味を考えたい。もちろん、これは、原発再稼働において、増え続ける放射性廃棄物の処理につき、ある意味で「前向き」な印象を与えることを目的としていると思われる。そして、それは、破綻した核燃料サイクル事業にさらに資金をつぎ込むことを正当化するものでもあろう。しかし、現状においては、とても実現できるものではない。しかし、逆に、この実現困難性は放射性廃棄物処理を遠い将来の課題として先送る論拠にもなっている。その上で、まさに「核変換処理」という、現状では「幻想」でしかない「錬金術」についての期待と夢をかきたてることにもつながっていく。そして、「錬金術」についての「科学信仰」が強化されていく。実現困難なことへの「期待」と「夢」をかきたてるということは、経済の面におけるアベノミクスにもつながるだろう。その意味で、この一文は、安倍政権全体のあり方にもつながっていると思う。

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ウルリヒ・ベックの『危険社会』の紹介を続けようと思ったのだが、見過ごしえない問題が発生した。東日本大震災において発生したがれきを、他地域に運び処理しようとするがれきの広域処理が、多くの自治体の難色を押し切って野田首相が受け入れることを要請するようになったのだ。

この問題は、もちろん、震災当初からあった問題である。ある意味では、人道上受け入れるべきと考えられるのかもしれない。しかし、この問題の本質はそこにはない。放射性物質を無用に拡散させるということなのである。

まず、2012年3月11日、野田首相が述べたがれき処理についての方針をみてみよう。朝日新聞朝刊(3月12日付け)で確認してみよう。

がれきの広域処理 法に基づき要請へ

 野田佳彦首相は11日、首相官邸で記者会見し、被災がれきの広域処理を進めるため、法律を根拠に自治体に受け入れを求める考えを明らかにした。基準や処理方法も政権が明確に示す。13日に関係閣僚による会議を立ち上げ、処理を加速させる方針だ。
   ▼4面=発言要旨
 被災がれきの広域処理は各地で強い反発を受け、3月11日までに全体の6%程度しか進んでいない。野田首相は「国が一歩も二歩も前に出ないといけない」と強調。「がれきの種類、量を明示した上で、協力をお願いする」と述べた。
 被災地以外の都道府県には、災害廃棄物処理特別措置法に基づき文書で正式に協力を要請。基準や処理方法もこの法律を根拠に定める。すでに表明している財政支援と併せ、自治体の理解を求める考えだ。
 がれき処理後の焼却灰の埋め立て可能な基準は、1キロ当たり8千ベクレル以下とすることも政権が近く告示。セメントや製紙業界など民間企業に協力を求めることも表明した。

「法律に基づいた要請」、「財政支援」という硬軟とりまぜて、被災がれきを受け入れさせようということだが…問題は、8000ベクレル以下の焼却灰は通常通り埋め立てさせる、さらに、そのリサイクルも考えるということなのだ。

そして、3月13日には、このようなことが関係閣僚会議で議論された模様である。

東日本大震災で発生したがれき処理を進めるため、野田政権は13日、第1回の関係閣僚会合を開いた。野田佳彦首相は「今までの発想を超えて大胆に活用してほしい」と要請。関東大震災のがれきで横浜市に山下公園を整備したエピソードを引き、将来の津波から住民を守る防潮林の盛り土や避難のための高台の整備、道路などの材料として、被災地のがれきを再利用していく考えを示した。

 細野豪志環境相は会合後、「鎮魂の気持ちとともにがれきを処理していく」と述べ、まず防潮林としてがれきを利用する準備に取りかかる方針を示した。環境省は、復興のシンボルとして三陸地方の自然公園を再編する「三陸復興国立公園」(仮称)の整備にも活用する方針だ。

 このほか、セメントや製紙業など、焼却設備を持つ民間企業にも協力を求める方針を確認。経済産業省はこの日、関係する業界団体に要請文書を送った。同省によると、汚泥をセメントの原料にしたり、木くずなどを製紙業のボイラー燃料にしたりして、2月20日現在、企業が約10万トンのがれきを処理したという。
(朝日新聞3月13日ネット配信)
http://www.asahi.com/politics/update/0313/TKY201203130197.html

どうやら、ただ埋め立てるだけではないのである。被災がれきやその焼却灰は、公園や避難所さらに防災林などの整備や、さらにセメントなどにも混ぜられ、「有効利用」されることが話し合われた模様である。

さらに、本日(3月16日)、野田首相は、実際に文書によって「要請」を行った。

東日本大震災で発生したがれきの広域処理を拡大するため、政府は、東北の被災3県とすでにがれきを受け入れている東京都などを除いた45の県や政令指定都市に、野田総理大臣の名前で受け入れを正式に要請する文書を一斉に送付しました。
被災地のがれきの広域処理を巡っては、15日に静岡県島田市が正式に受け入れを表明するなど、徐々に前向きに検討する自治体が増えてきていますが、こうした自治体からは国の積極的な関わりを求める声が相次いでいます。
これを受けて、政府は特別措置法に基づいて、東北の被災3県と、すでに受け入れを始めたり、受け入れを表明していたりする東京や山形、静岡、神奈川など9つの都府県を除く35の道府県と横浜市や大阪市などを除く10の政令指定都市に、がれきの受け入れを正式に要請する文書を一斉に送付しました。
文書は、野田総理大臣名で「災害廃棄物の処理は復旧復興の大前提であることから、現地では全力を挙げて処理を進めていますが、処理能力が大幅に不足しています」としたうえで「広域処理の緊要性を踏まえ、私としても積極的な協力を要請します」と記されています。
政府はすでに受け入れを表明している自治体には、処理を要請するがれきの具体的な量や種類を記した文書を来週以降に送り、具体的な協力を求めることにしています。
(3月16日NHKネット配信)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120316/t10013778441000.html

一方、受け入れを拒否している自治体側はどうみているのか。ここで、徳島県の例をみておこう。徳島県のホームページに以上のようなやりとりが掲載されている。

ご意見
登録・更新日:2012-03-15
60歳 男性
タイトル:放射線が怖い? いいえ本当に怖いのは無知から来る恐怖
 東北がんばれ!!それってただ言葉だけだったのか?東北の瓦礫は今だ5%しか処理されていない。東京、山形県を除く日本全国の道府県そして市民が瓦礫搬入を拒んで
いるからだ。ただ放射能が怖いと言う無知から来る身勝手な言い分で、マスコミの垂れ流した風評を真に受けて、自分から勉強もせず大きな声で醜い感情を露わにして反対している人々よ、恥を知れ!!
 徳島県の市民は、自分だけ良ければいいって言う人間ばっかりなのか。声を大にして正義を叫ぶ人間はいないのか? 情け無い君たち東京を見習え。

回答
 【環境整備課からの回答】
 貴重なご意見ありがとうございます。せっかくの機会でございますので、徳島県としての見解を述べさせていただきます。
 このたびの東日本大震災では,想定をはるかに超える大津波により膨大な量の災害廃棄物が発生しており,被災自治体だけでは処理しきれない量と考えられます。
 こうしたことから,徳島県や県内のいくつかの市町村は,協力できる部分は協力したいという思いで,国に対し協力する姿勢を表明しておりました。
 しかしながら,現行の法体制で想定していなかった放射能を帯びた震災がれきも発生していることから,その処理について,国においては1kgあたり8000ベクレルまでは全国において埋立処分できるといたしました。
(なお,徳島県においては,放射能を帯びた震災がれきは,国の責任で,国において処理すべきであると政策提言しております。)
 放射性物質については、封じ込め、拡散させないことが原則であり、その観点から、東日本大震災前は、IAEAの国際的な基準に基づき、放射性セシウム濃度が1kgあたり100ベクレルを超える場合は、特別な管理下に置かれ、低レベル放射性廃棄物処分場に封じ込めてきました。(クリアランス制度)
 ところが、国においては、東日本大震災後、当初、福島県内限定の基準として出された8,000ベクレル(従来の基準の80倍)を、その十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理の基準にも転用いたしました。
(したがって、現在、原子力発電所の事業所内から出た廃棄物は、100ベクレルを超えれば、低レベル放射性廃棄物処分場で厳格に管理されているのに、事業所の外では、8000ベクレルまで、東京都をはじめとする東日本では埋立処分されております。)
 ひとつ、お考えいただきたいのは、この8000ベクレルという水準は国際的には低レベル放射性廃棄物として、厳格に管理されているということです。
 例えばフランスやドイツでは、低レベル放射性廃棄物処分場は、国内に1カ所だけであり、しかも鉱山の跡地など、放射性セシウム等が水に溶出して外部にでないように、地下水と接触しないように、注意深く保管されています。
 また、群馬県伊勢崎市の処分場では1キロ当たり1800ベクレルという国の基準より、大幅に低い焼却灰を埋め立てていたにもかかわらず、大雨により放射性セシウムが水に溶け出し、排水基準を超えたという報道がございました。
 徳島県としては、県民の安心・安全を何より重視しなければならないことから、一度、生活環境上に流出すれば、大きな影響のある放射性物質を含むがれきについて、十分な検討もなく受け入れることは難しいと考えております。
 もちろん、放射能に汚染されていない廃棄物など、安全性が確認された廃棄物まで受け入れないということではありません。安全な瓦礫については協力したいという思いはございます。
 ただ、瓦礫を処理する施設を県は保有していないため、受け入れについては、施設を有する各市町村及び県民の理解と同意が不可欠です。
 われわれとしては国に対し、上記のような事柄に対する丁寧で明確な説明を求めているところであり、県民の理解が進めば、協力できる部分は協力していきたいと考えております。
 (※3/13に公表しておりました回答文に、配慮に欠ける表現がありましたので、一部訂正して掲載いたします。)
http://www.pref.tokushima.jp/governor/opinion/form/652

 徳島県のいっている「クリアランス基準」とは、それ以下ならば放射性廃棄物として扱わないという基準で、セシウム137なら、1キロあたり100ベクレルということにされている。それ以上ならば、本来放射性廃棄物として扱うべきであるとしたのである。

環境省は、次のようなマニュアルを出している。「災害廃棄物の広域処理の推進について(東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン)」(平 成 2 3 年 8 月 1 1 日付)http://www.env.go.jp/jishin/attach/memo20120111_shori.pdf

これにしたがってみておこう。まず、100ベクレルという基準は何か。このマニュアルでは、次のように説明している。

(1)再生利用におけるクリアランスレベルの考え方
再生利用については、原子力安全委員会の示す考え方を踏まえて整理された処理方針により、「市場に流通する前にクリアランスレベルの設定に用いた基準(0.01mSv/年)以下になるよう、放射性物質の濃度が適切に管理されていれば再生利用が可能」との考え方が示されている。さらに、「クリアランスレベルを超える場合であっても、被ばく線量を 0.01m Sv/年以下に低くするための対策を講じつつ、管理された状態で利用することは可能」との考え方が示されている。
この場合のクリアランスレベルの考え方については、原子力安全委員会の報告書5に基づき、次のように整理できる。
① クリアランスレベルを算出するための線量の目安値 0.01m Sv/年は、「自然界の放射線レベルに比較して十分小さく、また、人の健康に対するリスクが無視できる」線量として定められており、この目安値に相当する放射能濃度をクリアランスレベルとしている。
② クリアランスレベルは、「放射性物質として扱う必要がないもの」として定められるものであり、我が国では、原子炉施設等の解体等に伴って大量に発生する金属、コンクリート等について定められ、放射性セシウム濃度で 100Bq/kg とされている。
③ この数値は、IAEA 安全指針 RS-G-1.7(2004 年 8 月)6の規制免除レベルの数値を採用しており、IAEA 安全指針は、対象物を特に限定しない一般的なものとして設定されているので、これを金属、コンクリート等以外の木質等に適用しても差し支えないものと考えられる。
④ 国際的整合性などの立場から、我が国のクリアランスレベルは、IAEA安全指針の規制免除レベルを採用しているものの、原子力安全委員会における検討に当たっては、原子炉の解体に伴って生じる金属及びコンクリート等について、現実的に起こりうると想定される全ての評価経路(埋設処分、再利用)を考慮した上で、詳細な評価を行っており、その結果算定されたクリアランスレベルは、セシウム 134 で 500 Bq/kg、セシウム 137 で 800 Bq/kg である。
⑤ IAEA 安全指針の規制免除レベルは、それぞれの国が規制免除レベルを決める際の参考値として示されたものであり、この値の 10 倍を超えない範囲であれば、国によって、規制対象行為や線源の特徴に応じてランスレベルを別途定めることができるという性格のものであることから、我が国で実際に採用された 100 Bq/kg という値は相当程度保守的であり、安全側の値であると言える。
⑥ クリアランスレベルは、大量に発生するものを対象としており、上記の詳細な評価においても、少なくとも 10t 程度の物量ごとに平均化された放射能濃度として算出、評価されていることから、少量の部分的な濃度により評価すべきではないことに留意が必要である。

以上の考え方を踏まえ、以下の安全性の検討においては、木質等を含む災害廃 棄 物を 再 生 利 用 し た 製 品の放 射 性 セ シ ウ ム 濃 度 のクリアランスレベルを、100Bq/kg と考えるものとする。ただし、この値は一種の「目安」であり、この値を上回る場合でも桁が同じであれば、放射線防護上の安全性について必ずしも大きく異なることはないと考えられる。7

要するに、「クリアランスレベル」とは、焼却灰などを再生した場合の基準である。このマニュアルでは、セメントなどに焼却灰をまぜて使うことを推奨している。一部でかなり高い汚染度を示した場合でも、それ以外の材料をまぜて使えば、100ベクレル以下になるということになる。「クリアランス」というのは放射性廃棄物扱いをしないということであるから、低レベル放射性廃棄物があっても、特別な処理をせず、他の物にまぜて使えばゼロになるという考え方なのであろう。

では、8000ベクレルとは何か。これは、焼却灰や下水汚泥を含む廃棄物を通常の埋め立て処分する基準なのである。

※1 8,000Bq/kg の設定の考え方
検討会において、原子力安全委員会が6月3日に定めた「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理処分等に関する安全確保の当面の考え方」に示された次の目安を満足するよう適切な処理方法を検討した結果、埋立処分の際
の目安として示された焼却灰等の濃度。
① 処理に伴って周辺住民の受ける追加被ばく線量が1mSv/年を超えないようにする。
② 処理を行う作業者が受ける追加被ばく線量についても可能な限り1mSv/年を超えないことが望ましい。比較的高い放射能濃度の物を取り扱う工程では、「電離放射線障害防止規則」(昭和 47 年労働省令第 41 号)を遵守する等により、適切に作
業者の受ける放射線の量の管理を行う。
③ 処分施設の管理期間終了以後、周辺住民の受ける追加被ばく線量が 0.01mSv/年5 以下とする。

別添3に示すシナリオ計算等に基づき、安全評価を実施し、廃棄物処理の各工程における追加被ばく線量が 1mSv/年(公衆被ばくの線量限度と同値)となる放射能濃度と、最終処分場の管理期間終了後、一般公衆の追加被ばく線量が 0.01mSv/年(人の健康に対する影響が無視できる線量)となる放射能濃度を確認したところ、表Ⅰ-1に示すように、8,000Bq/kg 以下の廃棄物については、周辺住民、作業員のいずれにとってもこれらの追加被ばく線量を満足し、安全に処理することが可能であることが確認されている。
なお、IAEA のミッションにおいても「放射性セシウム 8,000Bq/kg 以下のものについて、追加的な措置なく管理型処分場で埋立てをすることについて、既存の国際的な方法論と完全に整合性がとれている」と評価されており9、国際的にみても適切な手法であると考えられる。

なお、8000ベクレルというのは、「脱水汚泥埋立処分」の作業者が受ける放射線量が1mSv/年ということから定められている。いずれにせよ、「埋立処分」なのであって、がれき自体の再利用ではない。

焼却灰や不燃物につき8000ベクレル以下であれば、放射性廃棄物の扱いをせずに埋立処分ができるとするものなのである。なお、8000ベクレル以上は、放射性物質として扱われ、国の管理下になるというのである。

まあ、いずれにせよ、放射性廃棄物を放射性廃棄物としてではなく処理しようということなのである。最終製品が100ベクレル以下であれば、焼却灰やがれき自体(コンクリート破片など)をセメントなどにまぜて使えということがある。さらに、そういうことができないものでも、8000ベクレル以下のものは、放射性物質の扱いをせず、埋め立て処分をするということになるのである。

それでは、がれき処理で実際にはどのようになるのだろうか。本マニュアルでいくつか例がのっている。岩手県陸前高田市で104ベクレルのものを焼却した際、飛灰で3456ベクレル検出されたそうである。また宮城県女川町の133ベクレルのがれきを処理した際、飛灰で2300ベクレル、スラグ(鉄屎)に141ベクレルの検出になったそうである。飛灰は、もちろん灰の一部でしかなく、全体量からみれば少ないのであるが、それでもセシウム137が濃縮されたことには違いない。しかし、このマニュアルでは、8000ベクレル以下だから無害だというのである。

環境省では、宮城県・岩手県の無害のがれきを広域処理するとしている。

広域処理をお願いする災害廃棄物は放射性セシウム濃度が不検出又は低く※、岩手県と宮城県の沿岸部の安全性が確認されたものに限ります。可燃物の場合は、対象とする災害廃棄物の放射性セシウム濃度の目安を焼却炉の型式に応じて240ベクレル/kg以下又は480ベクレル/kg以下のものとしています。http://kouikishori.env.go.jp/faq/#anch02

しかし、放射性物質による汚染は、岩手県や宮城県のがれきですら免れてはいないのである。133ベクレル程度のものでも部分的にはかなり高い濃度の焼却灰が生成される。そして、本来は低レベル放射性廃棄物として扱うべきもの(少なくとも焼却灰は)が、放射性廃棄物として扱われていない。しかも、あろうことか、「無害な材料」とまぜて使うことが推奨されている。それを公園などに使うということーこれは、放射性廃棄物が遍在していることを「否認」するということなのである。そして、無用に放射性物質を拡散することにつながるのである。

放射性廃棄物は、放射性廃棄物として取り扱うこと。その原則をまげてはならないと思う。これは、何も東北だけのことではない。関東地方も放射性物質で汚染され、放射性セシウムを含有したごみ焼却灰や下水汚泥は一般的にみられる。そして、福島県はどうなのだろうか。除染ででた廃棄物はどのように扱われているのだろうか。

なお、ここで出した環境省のマニュアルを一読することをおすすめしておく。

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