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Posts Tagged ‘復興加速の新指針’

さて、特定秘密保護法制定や猪瀬直樹東京都知事辞職などの報道の背後で、福島第一原発や原発再稼働のことについても、いろんな動きがみられる。今回は、12月20日に政府が閣議決定した「復興加速の新指針」についてみることにしたい。

まず、大枠について、NHKが一番わかりやすい記事を12月20日にネット配信しているので、それで把握しておこう。

政府 復興加速の新指針を決定
12月20日 19時12分

政府は原子力災害対策本部を開いて、東京電力福島第一原子力発電所の事故で帰還できない住民が移住先で生活を始める場合の住宅の取得費用を賠償の対象に加えることなどを盛り込んだ、福島の復興の加速に向けた新たな指針をまとめ、閣議決定しました。

総理大臣官邸で開かれた対策本部には、安倍総理大臣や茂木経済産業大臣ら関係閣僚が出席し、原発事故からの復旧や復興の加速に向けた新たな指針をまとめました。
安倍総理大臣は指針について「福島の復興なくして日本の再生はない。関係閣僚は今回の決定に従って、地元と十分に協議しながら、被災者の生活再建と関係自治体の再生の道筋を具体化していってもらいたい」と述べました。
閣議決定された新たな指針では、できるだけ早い帰還を望む人と、故郷を離れて新しい生活拠点を定めざるをえない人への、2つの支援策を提示しています。
このうち、避難指示が解除され、できるだけ早い帰還を望む人には、住宅の修繕や建て替えについて賠償を追加するとしていますが、精神的な損害の賠償は、避難指示の解除後1年間までと明記しています。
一方、避難指示が続き帰還できない人が新しい生活を始める場合は、移住先での住宅取得に必要な費用を賠償に加えるとともに、事故から6年後以降の精神的損害を一括で賠償することが盛り込まれています。
また、帰還に向けた対応として、▽住民の被ばく線量は年間1ミリシーベルト以下にすることを長期的な目標とし、▽住民の被ばく線量の評価をこれまでの環境中の線量から推定する方法ではなく、住民に線量計を配り実際に測る方法に変えるとしています。
一方で、賠償や除染費用が膨らむ見通しになっているため、東京電力の支払いが滞らないよう、国が無利子で貸し付ける資金の枠を、今の5兆円から9兆円に拡大するとしています。
賠償は引き続き、東京電力と原子力事業者の負担金で賄う一方、将来的には除染費用などに国が保有する東京電力の株式の売却益も充てられることが盛り込まれています。(後略)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131220/k10013988231000.html

この新指針の要点は主に三つある。まず、第一には、従来、福島全員帰還させる方針であったことを転換させ、早期帰還者と移住者の二つにわけて対応するということである。現状で空間線量が年間20mSvをこえている帰宅困難区域や居住制限区域に帰還するということは中期的には難しいことであり、年間20mSv未満の避難指示解除準備区域にせよ、かなり多くの人が帰還を望まない状況であるので、しかたのないことかと思う。ただ、問題は、これが精神的賠償の打ち切りと結びついているということである。現在、避難者には月10万円が精神的賠償として払われているが、避難指示解除1年後には打ち切るとしている。また、移住した場合、事故から6年以降の精神的賠償を一括で支払うとされている。たぶん、これは、避難指示解除ができない帰宅困難区域や居住制限区域を対象としているのであろう。さらに、帰還した場合でも、移住した場合でも、住宅の修繕、建て替え、取得費用は賠償に含めるとしている。いずれにせよ、賠償金の支払いは打ち切られるのである。

第二には、住民の被ばく線量の測定を、空間線量ではなく、個人ごとの線量にかえるということである。除染の基準が年間1mSvであることはかえないが、このことによって、除染対象はかなり少なくなることが想定される。さらに、将来的には、帰宅困難区域や居住制限区域の線引きも変更されることも予想されるであろう。そして、これもまた、除染や賠償費用の減少につながるということになるといえる。

第三には、東電への政府からの支援額を5兆円から9兆円に拡大するということである。賠償については、建前的には東電と原子力事業者が負担すべきとしているが、除染については、政府が保有する東電株式の売却益をあてるということにしているのである。少なくとも除染については、東電に負担させることを政府はあきらめたということになるだろう。

すでに述べてきたように、帰宅困難な被災者も多く、このような方針転換はしかたのないところもある。ただ、これらの復興加速とは、それぞれの項目で賠償や除染の全体額を縮小することで、東電とその費用を肩替りしている国の負担を軽減することにつながっているといえる。特に、東電の場合、支援額が2倍近くになるとともに、除染費用は国の負担にされているのである。賠償にせよ、除染にせよ、本来は被災者が当然受け取るべき権利である。しかし、それが切り捨てられ、東電は手厚く保護されている。もちろん、現状の費用全体を東電が払うことはできず、何らかの公的支援は必要であった。しかし、東電に出資した株主や銀行の責任は問われることは過去も現在もない。「東電復興加速の新指針」というのが、今回の方針といえよう。

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