Feeds:
投稿
コメント

Posts Tagged ‘廃炉’

本日(2015年1月30日)、NHKの19時のニュースを見ていたら、次のような報道があった。

首相 福島第二原発の廃炉は事業者判断
1月30日 17時35分

安倍総理大臣は、衆議院予算委員会の基本的質疑で、福島第二原子力発電所の廃炉について、「第一原発の5号機と6号機は事故処理の観点から廃炉を要請したが、第二原発は状況が違う」と述べ、今後のエネルギー政策などを総合的に勘案して、事業者が判断するという認識を示しました。
このあと委員会では、今年度の補正予算案の採決が行われ、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。

この中で、共産党の高橋国会対策副委員長は、東京電力福島第二原発の廃炉について、「原発事故の収束に集中すべきで再稼働などあってはならない。去年の福島県知事選挙で、与党も支援して当選した内堀知事は、福島県内に10基あるすべての原発の廃炉を要請しており、政府としても全基の廃炉を決断すべきだ」と指摘しました。これに対し、安倍総理大臣は「福島県から福島第二原発の廃炉を要望する声があることは承知している。福島第一原発の5号機と6号機は、事故を起こした1号機から4号機の近くにあり、事故処理に集中する現場体制を構築する観点から廃炉を要請したが、遠く離れた第二原発は状況が違う。今後のエネルギー政策の状況や新規制基準への対応、地元のさまざまな意見なども総合的に勘案し、事業者が判断する」と述べました。
(後略)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150130/k10015095871000.html

これを視聴して、えっと思った。福島第一原発事故の処理は、汚染水処理を筆頭にして、ほとんど停滞し、多くの予定を先送りせざるをえない状態にある。そのような中で福島県側は福島にあるすべての原発の廃炉が求めている。それなのに、「事業者」=「東京電力」に福島第二原発稼働の判断をまかせるということを、首相が述べてよいのだろうかと思ったのだ。

しかし、この報道は、NHKの報じ方にも問題があったようだ。ロイターは、同じやりとりをこのように伝えている。

福島第1原発事故、収束という言葉を使う状況にない=安倍首相
2015年 01月 30日 16:10 JST

 1月30日、安倍晋三首相は午後の衆議院予算委員会で、東京電力福島第1原子力発電所の事故について、「収束」という言葉を使う状況にはないとの認識を示した。

[東京 30日 ロイター] – 安倍晋三首相は30日午後の衆議院予算委員会で、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所の事故について、「収束」という言葉を使う状況にはないとの認識を示した。

高橋千鶴子委員(共産)の質問に答えた。

安倍首相は福島第1原発の状況について「汚染水対策を含め、廃炉、賠償、汚染など課題が山積している」としたうえで「今なお厳しい避難生活を強いられている被災者の方々を思うと、収束という言葉を使う状況にはない」と語った。

また同原発で死亡事故が連続して発生していることについて「極めて遺憾だ。政府としても再発防止策の徹底を図り、安全確保を大前提としつつ、迅速に汚染水対策を進めるよう東電を指導していく」と語った。

福島第2原発を廃炉とするかどうかについては「今後のエネルギー政策の状況や新規制基準への対応、地元の意見などを総合的に勘案しながら、事業者が判断するものだ」との見解を示した。

(石田仁志)
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0L30GD20150130

ロイターの報道では、NHKの報道にはなかった、安倍晋三首相自身が福島第一原発事故は収束にいたっていないと認めざるを得なかったことを強調している。衆議院議事録で確認しなくてはならないが、たぶん、そのように安倍晋三首相は答えたのであろう。

もちろん、このように報道されても、安倍晋三首相が福島第二原発については「事業者」=東京電力にまかせると発言した問題性は変わらない。福島第一原発事故の影響は、福島第二原発の立地地域を含めた広範囲にも及んでいる。廃炉作業も進まず、さらにその作業自体が新たな汚染を引き起こす可能性がある。補償や帰還の問題もある。そのような状況の中で、福島第二原発の存続を東京電力の判断に委ねるということは、当事者責任の放棄である。そして、そもそも、東京電力の最大株主は、今や国なのである。

しかし、NHKの報道姿勢もまた問題である。結局、安倍晋三首相は福島第一原発事故の処理は進んでいないと認めざるを得なかった。これは、安倍政権の失点といえるのだが、そのことをNHKは報道しなかったのである。私も、外電であるロイターが報道したから、ようやく知ったのである。国内メディアよりも、外電の方が信用にたるということになる。政権の失点は最大限隠蔽するーそれは、戦時期の大本営発表の特徴であった。。

広告

Read Full Post »

東京電力は4月30日に3年ぶりに「黒字」になったと発表した。ここでは、毎日新聞のネット配信記事をあげておく。

東京電力:3年ぶり黒字 料金値上げとコスト削減で
毎日新聞 2014年04月30日 20時47分(最終更新 04月30日 20時55分)

 東京電力が30日発表した2014年3月期連結決算は、経常損益が1014億円と3年ぶりの黒字を確保した。電気料金値上げに伴う収入増やコスト削減効果が大きかった。しかし、今年1月に策定した新たな総合特別事業計画(再建計画)で前提とした柏崎刈羽原発(新潟県)の今夏の再稼働は見通せず、15年3月期の業績見通しは「未定」とした。原発の再稼働が進まなければ、火力燃料費の増大に伴う収支悪化は確実で、電気料金再値上げの検討も避けられない。

 売上高は前年同期比11.0%増の6兆6314億円。電気料金の値上げで収入が約2430億円増えたことが主な要因だ。賠償費用分として原子力損害賠償支援機構から交付された1兆6657億円を特別利益に計上し、最終(当期)損益は4386億円の大幅な黒字となった。原子力損害賠償支援機構への返済に当たる特別負担金500億円も支払った。

 14年3月期の経常黒字達成は、金融機関が東電に融資を継続する前提条件だった。東電は工事や点検の見直しなどの修繕費で1653億円、人件費の削減で1103億円など、ギリギリの経費削減を進め、3期連続の経常赤字を何とか回避した。東京都内で記者会見した広瀬直己社長は「社員全員が頑張ってきた結果だ」と述べた。

 しかし、今後の再建計画達成の見通しは厳しい。計画では、今年度中に柏崎刈羽原発で最低4基が再稼働することを前提に、毎年1500億円程度の経常黒字を確保する青写真を描く。だが、原発の安全審査では原発直下の活断層調査が長引き、地元自治体の再稼働への反対も根強い。

 一方、原発の再稼働をせずに東電の収益改善を維持するには、電気料金の再値上げ以外、抜本的な方法が見いだせないのが現状だ。すでに東電の電気料金は、過去の値上げや燃料費の高騰に伴い、震災前に比べて標準的世帯で3割以上値上がりしている。広瀬社長は「できれば値上げしないですむようコストダウンをしていく。できるところまで頑張る」と述べるにとどめ、再値上げに関する明言を避けた。【安藤大介】
http://mainichi.jp/select/news/20140501k0000m020069000c.html

この記事を読んでみると、電気料金値上げやコスト削減により経常損益は1014億円の黒字になったことがわかる。他方、それよりもはるかに大きな黒字を稼いでいるのが、原子力損害賠償支援機構から「賠償費用分」として交付された1兆6657億円である。東電はこの交付金を「特別利益」と計上して、最終損益の黒字額が4386億円にふくらんだのである。そして、そもそもこの「特別利益」は「賠償費用分」なのであり、福島第一原発事故の被害者に支払うべきもののはずなのである。最終的には被害者に支払う予定の資金を、一時的であれ東電の「利益」に計上するという「マジック」によって、ようやく「黒字」と称しているにすぎない。しかも、原子力損害賠償支援機構からの交付金は「借金」であり、返済されなくてはならないものなのである。

結局、「14年3月期の経常黒字達成は、金融機関が東電に融資を継続する前提条件」とされており、この黒字は、銀行向けのものとしかいえないのである。

さて、東電の経常損益が「黒字」を達成したということは、銀行などにとってはよいニュースなのだろう。しかし、社会に対してはどうなのだろうか。資本主義社会において、それぞれの企業が公正さを前提にして利潤を獲得することは正当な行為である。しかし、福島第一原発事故を引き起こした東電は、利潤確保が許されるのだろうか。賠償金については原子力損害賠償機構から当面融資されるが、廃炉費用はどうなのか。福島第一原発の廃炉作業については、労働者が集まらないということを聞く。結局、非正規雇用で待遇もよくなければ、集まらないのも当然であろう。また、汚染水タンクにしても、安上がりにしようとして、結局、汚染水漏れを引き起こしている。黒字が出ているならば、本来は、廃炉費用や、十分とはいえない賠償費用に充当すべきであろう。

もちろん、東電に融資している銀行や、最終的には融資していることになるはずの原子力損害賠償支援機構に返済する関係上、利潤を出す必要が経営上あるだろう。しかし、そもそもの問題は、賠償費用にせよ廃炉費用にせよ、到底東京電力では支払うことができなくなったのに、破綻処理もされずに、この会社が存続しているということなのだ。その結果、無理に黒字を出さなければ営利会社としては存立しないが、そのことは、この会社が社会的に背負っているはずの責務と相反するのである。東電は黒字が許される会社ではないのだ。

これは、たぶん、東電だけのことではない。営利会社として「黒字」経営を行うことは当然である。しかし、そのために、いわゆるコスト削減として、労働者の待遇を著しく悪化させたり、修理などを先送りしたりすることは、社会的な意味で許されなくなってきているといえよう。東電は、ある意味で、先端的に、そのことを示しているのである。

Read Full Post »

福島第一原発の汚染水問題が議論されていた8月末、福島第一原発・第二原発が所在している立地自治体では、もう一つ大きな動きがあった。まずは、河北新報の次のネット配信記事(2013年8月30日付)をみてほしい。

福島第1・第2の立地4町 全基廃炉方針 東電に要求へ
 福島第1、第2の両原発が立地する福島県双葉、大熊、富岡、楢葉4町は29日、両原発の全10基の廃炉を国と東京電力に求める方針を確認した。全基廃炉は県と県議会が求めているが、立地町の要求は初めて。
 同県広野町であった4町の原発所在町協議会で各町長、町議会議長が確認した。各町議会に議論を促し、同意を取り付ける。
 東電の相沢善吾副社長は4町の意向を受け、「重く受け止める。原発の安定化を最優先に取り組み、エネルギー施策を見極めて国の判断に従う」と話した。
 廃炉が決まっているのは、事故を起こした第1原発の1~4号機。第1原発の5、6号機、第2原発の1~4号機の計6基は方針が定まっていない。
 協議会は第1原発の放射能汚染水漏れの再発防止を求める要望書を相沢副社長に渡した。

2013年08月30日金曜日
http://jyoho.kahoku.co.jp/member/backnum/news/2013/08/20130830t61038.htm

この記事の中で述べているように、事故を起こした福島第一原発1〜4号機の廃炉はすでに決定されている。しかし、福島第一原発5〜6号機、福島第二原発1〜4号機は、事故が起きたわけではなく、再稼働可能である。この再稼働可能な原発も含めて、原発が所在している双葉、大熊、富岡、楢葉の4町の原発所在町協議会は、福島にあるすべての原発の廃炉を東電に求めることにしたのである。

なお、この記事にもあるように、すでに福島県知事と福島県議会は、県内すべての原発の廃炉を要求していた。本ブログの「福島県知事による県内全原発廃炉を求める方針の発表ー東日本大震災の歴史的位置」(2011年11月30日)によると、紆余曲折をへながら、福島第一原発・第二原発の廃炉を求める請願を採択する形で、2011年10月20日に福島県議会は県内すべての原発の廃炉要求に同意する旨の意志表示を行った。この廃炉請願採択を受けて、11月30日に県内すべての原発廃炉を求めていくことを正式に表明している。

その点からいえば、これらの原発所在地において県内原発すべての廃炉を求めるというのは、かなり遅かった印象がある。しかし、それも無理からぬところがあるといえる。福島県全体とは相違して、原発立地自治体においては、雇用、購買力、補助金、税収などさまざまな面で原発への依存度は大きい。それゆえ、福島第二原発など再稼働可能な原発を維持すべきという声は、福島県議会以上に大きかったといえる。例えば、楢葉町長であった草野孝は、『SAPIO』(2011年8月3日号)で次のように語っていた。

双葉郡には、もう第二しかないんだ……。
 正確に放射線量を測り、住民が帰れるところから復興しないと、双葉郡はつぶれてしまう。第二が動けば、5000人からの雇用が出てくる。そうすれば、大熊町(第一原発の1~4号機が立地)の支援だってできる。
(本ブログ「「遠くにいて”脱原発”なんて言っている人、おかしいと思う」と語った楢葉町長(当時)草野孝とその蹉跌ー東日本大震災の歴史的位置」、2012年5月22日より転載)

福島第二原発という再稼働可能な原発が所在し、また、比較的放射線量が低い楢葉町と他の三町とは温度差はあるだろう。しかし、いずれにせよ、福島第二原発などの再稼働によって地域経済を存立していこうという考えが、福島第一原発事故により広範囲に放射性物質に汚染され、ほぼ全域から避難することを余儀なくされていた原発立地自治体にあったことは確かである。

そのような声があった原発立地自治体においても、再稼働可能な原発も含めた全ての原発の廃炉を要求することになったということは画期的なことである。しかし、これは、他方で、福島第一原発事故で避難を余儀なくされ、復興もままならず、多くの避難者が帰郷することはできないと意識せざるを得なくなった苦い経験によるものでもあろう。そして、また、この当時さかんに議論されていた汚染水問題が県内全原発廃炉要求を後押しすることになったとも考えられる。

ただ、河北新報の記事にあるように、この要求はいまだ、町長・町議会議長たちだけのものであり、各町議会で同意をとるとされている。このことに関連しているとみられる富岡町議会の状況が9月21日の福島民報ネット配信記事にて報道されている。

第二原発廃炉議論本格化 富岡町議会 一部に慎重論、審議継続
 富岡町議会は20日、町内に立地する東京電力福島第二原発の廃炉に関する議論を本格化させた。一部町議から「廃炉の判断を現時点で行うのは時期尚早」という意見が出て、継続的に審議することを決めた。
 20日に郡山市で開かれた町議会の原発等に関する特別委員会で塚野芳美町議会議長が「廃炉に関し町議会の考え方をまとめたい」と提案した。
 町議からは「原発に代わる再生可能エネルギーの担保がない」「原発に代わる雇用の場を確保しなければならない」など現時点で廃炉の姿勢を示すことに慎重な意見が出た。
 一方で「県内原発全基廃炉は当然」「廃炉と雇用の問題は別に議論すべきだ」など立地町として廃炉の姿勢を明確にすべきという意見があった。
 特別委員会の渡辺英博委員長は「重要な問題。今後も議論を続けて方向性を定めたい」と述べた。
 富岡の他、楢葉、大熊、双葉の4町でつくる県原子力発電所所在町協議会は8月、国と東電に対し、県内原発の全基廃炉を求める認識で一致している。

( 2013/09/21 08:59 カテゴリー:主要 )
http://www.minpo.jp/news/detail/2013092111011

ここでは富岡町議会のことしか報道されていないが、やはり「全県内原発廃炉」という方針には抵抗のある議員がいることがわかる。つまり、町議会レベルでは、いまだ流動的なのである。

他方、福島原発立地自治体における県内原発全機廃炉の声はそれなりに政府においても考慮せざるを得ない課題となった。9月30日、茂木敏充経済産業相は、東京電力福島第1原発の汚染水問題を巡る衆院経済産業委員会の閉会中審査において、福島第二原発廃炉を考慮せざるをえないと述べた。そのことを伝えている毎日新聞のネット配信記事をあげておこう。

福島第2原発:廃炉検討の考え示す 茂木経産相
毎日新聞 2013年09月30日 20時10分(最終更新 09月30日 22時40分)

 茂木敏充経済産業相は30日、東京電力福島第1原発の汚染水問題を巡る衆院経済産業委員会の閉会中審査で、福島第2原発について「福島県の皆さんの心情を考えると、現状で他の原発と同列に扱うことはできない」と述べ、廃炉を検討すべきだとの考えを示した。福島県は県内全原発の廃炉を求めており、県民感情に配慮した形だ。

 茂木氏は同時に、廃炉にするかどうかの判断について「今後のエネルギー政策全体の検討、新規制基準への対応、地元のさまざまな意見も総合的に勘案して、事業者が判断すべきものだ」と述べ、最終的には東電が判断するとの立場を強調した。

 福島県内には、福島第1、第2で計10基の原発があり、福島第1原発1〜4号機は既に廃炉が決定。同原発5、6号機については、安倍晋三首相が東電に廃炉を要請しており、これを受けて東電が年内に判断する。

 閉会中審査は27日に続いて2日目の開催。茂木氏のほか、原子力規制委員会の田中俊一委員長らが参考人として出席した。

 福島第2原発1〜4号機を全て廃炉にした場合、東電の損失額は計約2700億円。会計制度の見直しで、一度に発生する損失は1000億円程度まで減る見込みだが、福島第1原発5、6号機の廃炉でも数百億円の損失が一度に出る見通し。同時に福島第2の廃炉も行うと決算に与える影響は大きい。

第2原発廃炉については東電内でも「再稼働に必要な地元同意が見込めない以上、いずれ判断をする時期が来る」との意見が多いが、第1原発5、6号機の廃炉は1〜4号機の廃炉作業や汚染水対策に集中する目的があるのに対し、第2の廃炉は「仕事が増えるだけ。将来はともかく、今やれる話ではない」(東電幹部)との声もある。【笈田直樹、浜中慎哉】
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20131001k0000m010035000c.html

安倍政権は、原子力規制委員会が安全と判断した原発は再稼働していくというものであった。しかし、茂木経産相としては、「福島県の皆さんの心情を考えると、現状で他の原発と同列に扱うことはできない」として、再稼働可能な福島第二原発も含めて福島県内の全原発の廃炉を考慮せざるをえないと言わざるを得なくなったのである。

もちろん、今後の推移については、まだまだ紆余曲折があるだろう。地元ではいまだに原発による雇用などに依存しようとする声は小さくないと思われる。また、安倍政権は全体として原発再稼働を求めており、福島第二原発も再稼働対象に含めようとすることも今後あるかもしれない。といいつつ、やはり、地元自治体すらもすべての原発の廃炉を求めるようになったということの意義は大きい。やはり「時計の針は元には戻せない」のである。

Read Full Post »

2013年9月19日、安倍首相は、自身が「状況はコントロールされている」と9月7日のIOC総会で述べていた福島第一原発の視察を行った。とりあえず、全体の商況については、フジテレビがネット配信した、次の記事でみておこう。

安倍首相、福島第1原発5・6号機の廃炉を決定するよう東電に要請

安倍首相は19日、福島第1原発を訪れ、自ら汚染水漏れの状況などを視察した。
今回の視察には、海外メディアも同行し、世界が注目している。
安倍首相は19日午後2時ごろ、「事後処理に集中するためにも、停止している5号機・6号機の廃炉を決定してもらいたい」と述べた。
安倍首相は19日午後、福島第1原発の5・6号機について、廃炉を決定するよう、東京電力に要請した。
19日、安倍首相は、汚染水漏れの現状と対応を確認するため、福島第1原発を視察した。
福島第1原発を訪れるのは、2012年12月以来、2回目となる。
7日のIOC(国際オリンピック委員会)総会で、安倍首相は自ら、「状況はコントロールされている」と明言していた。
19日は、海外メディアも同行し、世界から注目される中、視察が行われた。
安倍首相は「皆様ご苦労さまです。大変過酷な仕事ですが、まさに廃炉に向けての仕事。日本の未来は皆さんの双肩にかかっています。国としても前面に出て、しっかりと皆さんと使命を果たしていきたい」と述べた。
まず、免震重要棟で汚染水の貯蔵タンクを管理している作業員たちを激励した安倍首相。
バスに乗り、次に向かった先は、ALPSと呼ばれる汚染水から放射性物質を取り除くための装置。
そして、いよいよ汚染水が漏れた貯蔵タンクへ向かった。
福島第1原発では、8月にタンクから汚染水およそ300トンが漏れ、一部が海に流出したおそれもある。
タンクの底のつなぎ目から漏れたとみられているが、原因はわかっておらず、抜本的な対策が打てないのが現状。
そうした中、安倍首相は汚染水が漏れたタンクを視察し、東電の関係者から、汚染水対策の説明を受けた。
安倍首相は「これそのものに、(水が)1,000トン入っているんですよね」と述べた。
およそ2時間に及んだ視察を終え、19日午後、安倍首相は「国が前面に出て、われわれも責任を果たしていかなければいけない。この汚染水の影響は、湾内の0.3平方km以内の範囲内において、完全にブロックされているわけであります」と述べた。
(09/19 16:53)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00254206.html

この視察についての報道で、関心がひかれるのは福島第一原発5号機6号機の廃炉を安倍首相が東電に要請したということである。しかし、5号機6号機は確かにメルトダウンはまぬがれて原型を保っているとはいえ、現実には稼働困難であることはすでに多くの人により周知されていたことだ。これは、結局、現状を追認したものでしかない。そして、この視察の結論は、「国が前面に出て、われわれも責任を果たしていかなければいけない。この汚染水の影響は、湾内の0.3平方km以内の範囲内において、完全にブロックされているわけであります」という安倍首相の発言に集約されるであろう。

さて、このフジテレビの記事には言及されていないが、興味深い出来事があった。共同通信が9月20日に配信した次の記事をみてみよう。

汚染水の影響範囲知らず発言か 首相「0・3平方キロはどこ?」

 東京電力福島第1原発の汚染水問題をめぐり、安倍晋三首相が19日に現地を視察した際、放射性物質による海洋への影響が抑えられていると説明する東電幹部に、「0・3(平方キロ)は(どこか)」と尋ねていたことが20日、分かった。

 首相は東京五輪招致を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会で「汚染水の影響は港湾内0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と説明していたが、実際の範囲がどの程度か理解しないまま発言していた可能性がある。

 安倍首相は東電の小野明所長から放射性物質の海への流出や海中での拡散を防ぐ対策の説明を受けた際に「0・3は?」と質問した。

2013/09/20 19:50 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201309/CN2013092001002086.html

つまり、安倍首相は、実際視察するまで、汚染水の影響がその内部でブロックされているという0.3平方キロメートルの範囲を理解せず、IOC総会で「汚染水の影響は港湾内0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」と述べていた可能性があるのである。

まずは、もう一度、福島第一原発の汚染水の海洋流出についてみておこう。9月20日付朝日新聞朝刊には、次のような図が描かれている。汚染水がブロックされているという「港湾」は、福島第一原発建設にともなって建設された港湾全体である。そのうち、汚染地下水が流出しているとみられる原子炉の排水口付近の入口についてはシルトフェンスをはって海水の行き来をおさえているが、何分フェンスであり、完全に抑えることはできない。特に、トリチウムは、基本的には水素のアイソトープであり、それをフェンスで抑えることはできない。シルトフェンス内側では放射性物質が多く検出されているが、外側でも検出されている。そして、この港湾内の海水は、封鎖されているわけではなく。外側の海水と出入りしている。港湾外の海水から放射性物質は検出されていないが、大量にある海水によって稀釈されているだけとみることができるのである。

福島第一原発港湾内の流出防止策と周辺の海水データ

福島第一原発港湾内の流出防止策と周辺の海水データ

「0.3平方キロはどこか」という首相の質問は、こうした細かな事情を十分認識していなかったことを意味するといえる。結局、IOC総会では「0.3平方キロ」という数字のみが強調されていた。もちろん、私のような理系の素養がない一般人でも把握できることが、IOC総会直前の首相に対するレクチャーで言及されていなかったとは思えない。しかし、安倍首相は、視察して始めて0.3平方キロの範囲を「理解」したともいえるのである。

「状況はコントロールされている」「汚染水の影響は港湾内の0.3平方キロで完全にブロックされている」という首相の発言は「虚偽」などと批判されていた。しかし、意図的に虚偽を述べていたよりもはるかに恐ろしい状況なのかもしれない。つまり、安倍は、具体的な状況を自分の頭で把握しようとせず、東電・経産省・原子力規制委員会などの当事者=原子力ムラの主張の楽観的側面のみしかみていないのかもしれないのである。その上で、IOC総会でのスピーチのレトリックとして、ああいうことをいったともいえるのである。

もちろん、これは、安倍首相の個人的資質によるところが大きいだろう。しかし、そればかりではない。彼のような人がトップにいれば、実質的な状況についてはまるで理解しないで、楽観論をたれながしてくれる。当事者たちがそのような楽観論を主張すれば、「隠蔽」「虚偽」という批判を免れない。しかし、安倍首相の場合は、そもそも事態を認識していないのであるから「隠蔽」「虚偽」と批判されても本人はこたえない。安倍首相は、原子力ムラを含めた現代日本の統治者たちにとって、「期待される人間像」なのである。

しかし、楽観論ですむのだろうか。事態に根本的な対策をたてようとせず、根拠の薄い楽観論に基づいて、その場しのぎの対策をしか出さない状況は、まるで、太平洋戦争中のようである。当時の陸海軍は、自分たちの立場に不利になる戦局の悪化については、国民はおろか自分たち以外の政府機関にも隠蔽しようとした。ゆえに、全体的な戦争指導としては、楽観論に終始し、より戦局の悪化を招いていった。同じような状況は、福島第一原発でもみられる。コントロールしていないのは「汚染水」だけではない。福島第一原発に関わる東電や政府の組織もコントロールできていないのである。

Read Full Post »

さて、福島第一原発汚染水問題についての政府の方針が9月3日に発表された。まず、次の毎日新聞がネット配信した記事をみておこう。

福島第1原発:政府の汚染水対策 柱は「アルプス」増設
毎日新聞 2013年09月03日 19時42分(最終更新 09月03日 20時29分)

 政府が3日決めた東京電力福島第1原発の汚染水対策の柱は、地下水が原子炉建屋に流入するのを防ぐ「凍土遮水壁」の建設と、汚染水から放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS(アルプス)」の増設・改良だ。両事業に計470億円の国費を投入し、汚染水問題収拾へ「国が前面に出る」(安倍晋三首相)姿勢をアピールする。

 事業費の内訳は遮水壁320億円、除去装置150億円。今年度予算の予備費(総額約3500億円)から遮水壁に140億円、除去装置に70億円を充て、事業を前倒しで進める。

 組織体制も強化。経済産業省や原子力規制庁に加え、国土交通省や農林水産省も入る関係閣僚会議を設け、汚染水を増幅している地下水対策などに政府一丸で取り組む。また、福島第1原発近くに現地事務所を設けて国の担当者が常駐、東電や地元との連携を強める。風評被害防止を狙いに海洋での放射性物質の監視を強めるほか、在外公館を通じた国際広報体制も充実させる。
http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130904k0000m010040000c.html

結局、国が前面に出るといっても、「凍土遮水壁」建設と多核種除去装置(ALPS)の増設・改良に国費を投じるというだけだ。問題の汚染水貯蔵タンクの改修については、いまだ東電まかせだ。9月4日のロイターのインタビューにおいて、茂木経産相は、次のように語っている。

(前略)
ただ、8月下旬に汚染水貯蔵タンクから約300トンの高濃度汚染水の漏えいが発覚するなど、事態は予断を許さない。タンク問題について茂木経産相は「(東電の)管理態勢の問題。パトロールの強化、漏えいの検出装置の設置など5つの強化策を指示した。東電もより緊張感をもって仕事に当たってくれると思っている」などと述べ、東電側の改善を見守る考えを示した。

その上で、汚染水問題を含む福島第1の廃炉作業における東電と政府の役割分担について「国が前面に出て、廃炉の問題や汚染水問題も(対応を)加速化させていきたいと思っているが、日々のオペレーションは原発を所有している東電が責任を持つことになる」と語り、作業の主体は一義的には東電だという政府としての見解をあらためて強調した。

<「廃炉庁」は否定>

未曽有(みぞう)の原発事故から2年半が経過し、失態を重ねてきた東電に対する国内外の不信感は根深い。廃炉の作業自体を国が全面的に引き受けるべきと指摘する声も少なくない。

ただ茂木経産相は、受け皿となる「廃炉庁」のような新しい組織を作る考えについては否定した。「エネルギー政策をどうするのか、大きな視野で(検討を)やらないといけない。1つの分野に限った新しい組織を作ることで作業が加速化していくかというと、必ずしもそうではないなと思っている」と語った。

(インタビュアー:ケビン・クロリキー)
http://jp.reuters.com/article/jp_energy/idJPTYE98307920130905?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0

結局、長期的にも、東電に日々のオペレーションをまかすということであり、東電の責任ー株主や金融機関の責任をただす姿勢はない。この国費投入もまた、破たん企業東電に対する法外な支援なのである。そして、汚染水タンクの設置・管理すらできない東電に日々のオペレーションをまかすという体制こそ、一番の問題である。

さて、政府が国費を投じて行うという凍土遮水壁の設置と多核種除去装置(ALPS)の改良・増設についてみておこう。凍土遮水壁とは、原子炉建屋への地下水の流入や、そこからの汚染地下水の流出を防ぐために、凍土による遮水壁を建屋周辺の地下に設置するというものである。この凍土遮水壁がそもそも実現可能なものか、そして実現されたとしても十分機能をはたすのか、いろいろと疑問がある。また、とりあえず、これらの疑問はおいておくとしても、その設置は年単位でかかり、急場の汚染水対策には寄与できない。ただ、今は、可能と思われることを何でもするということは必要だろうとは考えられるだろう。

他方、多核種除去装置(ALPS)の改良・増設であるが、これは、大きな問題をはらんでいる。多核種除去装置(ALPS)は、従来の除去装置がセシウムだけしか汚染水から除去できないものだったのに対し、ストロンチウムその他、多くの放射性物質を放出限界以下まで除去することができるというものである。この装置は東芝製で、すでに福島原発に設置されていたが、これすらも汚染水もれを起こして、現在は稼働できないものとなっている。多核種除去装置(ALPS)の改良・増設とは、現在ある装置の不備を修繕して、さらに、増設して、どんどん東電に汚染水処理を進めさせようということを意味する。

そして、処理済みの汚染水をどうするのか。田中俊一原子力規制委員会委員長は9月2日の日本外国特派員協会における講演で次のように語っている。ここではロイターのネット配信記事を出しておく。

原子力規制委員長、低濃度汚染水の海洋放出の必要性強調
2013年 09月 2日 16:55 JST

9月2日、原子力規制委員会の田中委員長は、福島第1原発における汚染水問題が深刻化していることについて「(東電の対応は)急場しのぎで様々な抜けがあった」と指摘。

[東京 2日 ロイター] – 原子力規制委員会の田中俊一委員長は2日、日本外国特派員協会で講演し、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所における汚染水問題への対応で、放射能濃度を許容範囲以下に薄めた水を海に放出する必要性をあらためて強調した。

政府や東電よると、福島第1原発1─4号機に流入してくる地下水(推定日量1000トン)の一部が、配管や電線を通す地下の坑道にたまっている汚染源に触れ、海に日量約300トンが放出されている。また、8月19日には、汚染水を貯蔵している地上のタンクから約300トンの高濃度の汚染水が漏れていることがわかり、これが排水溝を通じて外洋に流れた可能性も否定できないとしている。

田中委員長は講演で、 汚染水の海洋への影響について「おおむね港の中で、(港湾の)外に出ると(放射性物質は)検出限界以下だ」と指摘。その上で田中氏は、「必要があれば、(放射性濃度が)基準値以下のものは海に出すことも検討しなければならないかもしれない」と述べた。

多核種除去設備(ALPS)で処理した汚染水を一定濃度に薄めて海洋に放出する必要性については、田中氏が過去の記者会見でも言及した。ただ、ALPSに通してもトリチウムは取り除けない。東電は2011年5月から今年7月までに20兆から40兆ベクレルのトリチウムが海に出たと試算している。

この数値について、田中氏は「とてつもなく大きな値に見えるが、トリチウム水としてどれくらいか計算すると最大で35グラムくらいだ」と述べ、十分に低い水準であるとの認識を示した。

一方で田中氏は、タンクからの汚染水漏れなど対応が後手に回る東電の対応について、「急場しのぎで様々な抜けがあった」と指摘。田中氏は「福島第1は今後も様々なことが起こり得る状況。リスクを予測して早めに手を打つことが大事だ」と強調した。

(浜田健太郎;編集 山川薫)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE98103M20130902

ここでは、多核種除去装置(ALPS)で処理した低濃度汚染水(もちろん、完全には取り除けない)を、海洋に放出する必要があると田中は述べた。重要なことは、この装置では、トリチウム(三重水素)は除去できないということだ。

つまり、この国費投入による多核種除去装置(ALPS)の改良・設置は、ある意味では、海洋へのトリチウム汚染水の放流につながりかねないものなのである。まさしく、技術的においても、そのような危険性をはらんでいる。このようなことがなされれば、福島県周辺の漁業者だけでなく、日本列島すべての人の脅威となろう。さらに、海洋への汚染は、広くいえば全世界の問題ともなる。オリンピック招致への影響を懸念して、国会審議もなく、このような重大な問題が決められてしまった。しかし、このことは、これではすまないだろうと考える。

Read Full Post »

さて、今まで何度となく述べてきたが、東電は福島第一原発に対する処理能力を失っているようにみえる。それならば、国が責任をもって福島第一原発を処理していかねばならないといえるだろう。しかし、その場合、東電が現在の体制のまま、存続することの当否が問われることになるだろう。

そもそも、東京電力が民間会社のまま存続することになったのは、3.11後の菅政権の政治判断によるものである。すでに2011年3月末、震災によって被害を受けた発電所の修理、原子力にかえて火力にするための燃料費、既発行の社債償還などのため東電は資金不足に陥っていた。特に、信用力が低下したため、社債の新規発行ができず、金融機関から2兆円もの借金をすることになった。さらに、原発事故に対する多額の補償金支払いがこの当時から予想されていた。

東電は、原子力損害賠償法における「異常に巨大な天災地災」などによって生じた場合、事業者ではなく政府が損害を補償するという特例条項の適用を求めた。しかし、当時の菅政権はそれを認めず、東電が全額補償するという建前を崩さなかった。しかし、多額に及ぶと見積もられていた補償金の支払を東電が行えば、それだけでも債務超過となり、東電はつぶれるしかなかった。そのため、菅政権としては、東電救済のシステムを造らざるを得なかった。

そのために造られたのが原子力損害賠償支援機構であった。元々の案は大手銀行が作成したといわれている。原子力損害賠償支援機構を新設し、そこに他の電力会社や政府が資金を提供し、東電はそこから借金して、賠償金にまわすという仕組みがつくられた。もちろん、東電は、この借金を返さなくてはならない。政府としては、一時資金を融通するが、最終的には東電が返済するので税金は投入されないとしたのである。

この機構の新設を定めた原子力損害賠償支援機構法は2011年8月3日に成立したが、その直後の2011年8月4日に出された朝日新聞朝刊では、「政府支援の前提となるのは東電のリストラだ」と述べられている。つまり、まずは、大幅なコストカットが東電に義務付けられたのである。しかし、同紙では「最終的な負担は電気料金に回る可能性が高い」としている。実際、2012年に東電の電力料金は値上げされた

他方で、同紙は「東電の株主や金融機関など、利害関係者の責任追及は先送りされた」と報道している。倒産や破産などの法的破たん処理においては、株主や貸し手の金融機関なども損害を蒙ることになるが、破たん処理されなかった東電では、それらに直接的な損害は及ばなかったのである。結局、株主や金融機関の利益は保護されるとともに、政府は税金を投入するという責任をとらず、それらのつけは、リストラと料金値上げにまわされることになったのである。そして、今の時点で回顧してみると、この「リストラ」は、福島第一原発の廃炉費用にも及んでいたと考えられる。

そして、この矛盾は、野田政権下で2012年7月31日に決定された東電の実質国有化においても解消されなかった。東電の国有化は、前述の原子力損害賠償支援機構が1兆円もの株式投資を行う形で行われた。しかし、2012年7月31日付の朝日新聞朝刊は、まず、原子力損害賠償支援機構による東京電力救済を批判して、次のようにいっている。

 

普通なら会社更生法の適用を申請するなどして、つぶれる。「つぶさない」と決めたのは民主党政権だ。
 昨年8月、原子力損害賠償支援機構法をつくり、政府が東電に賠償のための資金を貸したり、出資したりして支える仕組みをつくった。政府が賠償の責任を持ちたくないので、東電に賠償をすべて負わせるためにつぶさなかったのだ。
 この結果、つぶれれば、「債権放棄」で貸したお金が返ってこない銀行や、株が何の価値もなくなる株主が守られ、ほとんど損をしなかった。逆に、東電の生き残りのために利用者や国民が負担を強いられる。

そして、次のように主張している。

 

さらに、賠償費用や除染費用が予想よりふくらめば、東電がつぶれるなどして政府の出資金や賠償のための支援金が返ってこないおそれもある。その時は国民の税金で穴埋めすることになる。

加えて、東電の実質的国有化は、新たな矛盾をうむことになった。前述の朝日新聞朝刊では、「一方、政府は、電力会社を監督する立場と、東電の筆頭株主という立場になり、大きな矛盾を抱える」と指摘している。そして、東電が予定している柏崎刈谷原発の再稼働を事例にして、「政府は本来、原発が安全かどうかをしっかり審査し、再稼働を認めるかどうかを決めなくてはならない」という立場と、「原発が動けば、火力発電の燃料費が抑えられるという。筆頭株主としては東電再建に黄信号がともるため再稼働しなくては困る」という立場が矛盾していることを示すのである。その上で、同紙は、東電の言い分を認めて電力料金の値上げを認可した枝野経産相(当時)の態度をあげながら「政府はこれから、常に東電の側に立つのではないか。そんな疑念を抱かせた」と述べている。つまり、この段階で東電の筆頭株主となった政府は、東電を存続させ、経営を安定させたいという意識が強まったといえる

このような形で東電が存続しているのは、菅・野田という民主党政権の責任である。しかし、その後継となった自民党の安倍政権も、他の分野でさかんに民主党政権の政策見直しを主張しているにもかかわらず、民主党政権が定めた形で東電を維持している。補償費用、除染費用、廃炉費用など、全く利益にならない支出が何兆円(いや十兆円こえて…それより多くとも不思議はない)もあると想定される東電は、到底自分で資金をまかなうことができるとは思えない。長期間かけても、返済することは難しいだろう。実質的には破たんしているのだが、この会社はいまだ「原子力損害賠償支援機構」のもとに存続している。しかし、東電のやっていることは、補償金支払い一つとっても、被災者の意にそったものとは思えない。東電の救済が、被災者への補償金支払いの形で行われているのである。どの道、税金で、補償費用、除染費用、廃炉費用などをまかなうことになるであろうが、営利会社の形をとることで、政府は税金投入の責任を免れ、さらに補償費用、除染費用、廃炉費用などを「安上がり」で行わせることができる。さらに、表面上の責任を東電にとらせることで、株主や金融機関への責任追求をかわせるということになる。

福島第一原発の汚染水漏れは、そのような矛盾の中で発生しているのである。急ごしらえの汚染水のタンクや、先送りされた遮水壁建設などは、しょせん、コストをカットして、国などへの返済金を確保するという意識が背景になっているといえる。もはや、東電自体の当事者能力はないが、その責任は株主でもあり規制者でもある政府がとらなくてはならない。そして、福島第一原発の危機は、当面、コスト意識を捨てて考えなくてはならない。そのような形での税金投入は、民主党政権で免罪された、東電の株主や金融機関にも責任をとってもらうことにもつながっていくといえよう。

Read Full Post »

さて、最近、福島第一原発の廃炉作業の工程表が見直しされ、一部作業が前倒しされると報道があった。代表的なものとして、NHKが2013年6月10日にネット配信した記事をここで掲げておくことにする。

廃炉工程表 作業一部前倒しへ
6月10日 18時45分

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉の工程表について、政府と東京電力は、これまで個別に示していなかった、溶け落ちた核燃料の取り出しの開始時期を、号機ごとの状況で差をつけ、1号機と2号機では最大1年半前倒し、7年後の平成32年度とするなどの見直し案をまとめ公表しました。

福島第一原発の廃炉の工程表は、政府と東京電力が透明性をもって廃炉を進めるため、核燃料の取り出し時期などの目標を定めて公表しているもので、茂木経済産業大臣の前倒しの指示を受けて、新たに見直された案が10日公表されました。
それによりますと、まず溶け落ちた核燃料の取り出しの開始時期については、これまで個別に示さずに冷温停止状態の宣言から10年以内としていましたが、今回の見直しでは1号機から3号機の号機ごとの状況で差をつけ、技術開発の不確かさなどを考慮して複数の計画を示しています。
具体的には、1号機と2号機では、最も早いケースで、これまでより1年半早い平成32年度上半期の開始となっています。
ただ、この時期は、燃料を取り出すための設備の設置状況や建屋内の除染の進捗などによって変わり、1号機の場合、遅いケースでは、平成34年度下半期、2号機では平成36年度上半期となっています。
一方、3号機は、建屋の上にあるがれきによって放射線量が非常に高い状態だなどとして、今回の見直しでは前倒しはなく、早いケースでも平成33年度下半期と、これまでと変更はありません。
このほか、使用済み燃料プールからの核燃料の取り出しについては、1号機と2号機で初めて具体的な開始の時期が示され、1号機では平成29年度、2号機では平成29年度から35年度、一方、3号機は、去年、プールに鉄骨が落下してがれきの撤去が遅れている影響で、半年遅れの平成27年6月の開始となっています。
最も早い4号機については、予定どおり、ことし11月からの取り出しとなっています。
3つの原子炉でメルトダウンするという、世界でも例のない福島第一原発の廃炉の現場は、今も高い放射線量にさらされ、核燃料の取り出しなどの重要な作業は、ロボットに頼らざるをえないなど、今後の技術開発によって工程が大きく左右される可能性があります。
廃炉の実現は、福島の復興とも大きく関わることから、政府と東京電力は、これらの見直し案について地元の自治体に意見などを聞いたうえで今月中に決定する方針です。

廃炉への詳しい工程表
福島第一原発の廃炉の工程表は、おととし12月、当時の政府が冷温停止状態の宣言と合わせて公表しました。
工程を3つに分けて、4号機の使用済み燃料プールからの核燃料の取り出し開始までを第1期、溶け落ちた核燃料の取り出しの開始までを第2期、建屋の解体など廃炉を終えるまでを第3期とし、冷温停止状態の宣言を起点に、第2期については、10年以内の平成33年末、第3期は、最長40年後までに終えるとしていました。
今回、完了時期の見直しはなく、大きな変更点は、第2期の溶け落ちた燃料の取り出しの開始時期が、号機ごとに複数提示され、具体的になっている点です。
これは、事故から2年以上がたち、がれきの撤去作業の進捗や、建屋の放射線量の値に違いがあることを踏まえて、号機ごとに差をつけたものです。
具体的に見ていきます。
溶け落ちた燃料を取り出すには、建屋の上部に燃料を取り出すための設備を新たに設ける必要がありますが、水素爆発で建屋が壊れたかや、がれきの撤去が進んでいるかどうかなどでその方法の選択肢に違いがあります。
まず、1号機です。
建屋全体がカバーで覆われていてがれきの撤去作業が進んでいません。
このため、一度、カバーを解体し、がれきを撤去したうえで、燃料を取り出す設備を設置する方針です。
最も早いケースは、建屋の上部に設備を設置する場合で、1年半前倒しの平成32年度上半期、しかし、建屋の耐震性が十分でない場合、建屋に荷重をかけないよう建屋を覆うように新たな構造物を設置する必要があり、その場合は平成34年度下半期と逆に遅れます。
次に、2号機です。
水素爆発しなかったため建屋は壊れていませんが、建屋上部の放射能の汚染が特にひどく、除染の進み具合などによって3つの計画が示されています。
1つが、除染が進んだケース。
そのまま建屋を使うため、最も早い開始と見込んでいて、平成32年度上半期、一方、除染が進まない場合、1号機と同じパターンになり、建屋の上部に設備を設置する場合は平成33年度上半期、建屋全体で設備を支える場合は、平成36年度上半期と、開始時期に大きな幅があります。
3号機は、すでにがれきの撤去作業が始まっていて、4号機の次にプールからの燃料の取り出しが始まる予定で、最も早い想定では、プールからの燃料取り出し用の設備を改造して使用できる場合は平成33年度下半期、改造がうまくできなかった場合は、平成35年度下半期と、2つの計画が示されています。

廃炉実現には難しい課題も
福島第一原発の廃炉の実現は、福島の復興とも密接に関わっており、その道筋や見通しを示す工程表は、国民、世界の人たちにとっても関心が高く、透明性をもって作業を進めるうえでも重要な意味を持ちます。
特に今回の工程表の見直しでは、作業が順調に進む場合や、計画どおりに進まない場合などを事前に織り込んで複数の計画を示し、途中段階でどの計画に進むか、判断ポイントを設けて柔軟な対応ができるようにしています。
これは、裏返していうと、福島第一原発の廃炉作業が、それだけ先を見通せないさまざまな不確定要素を含んでいるといえます。
廃炉作業で最も重要な溶け落ちた核燃料の取り出しは、世界でも例のない技術的にも難しい作業です。
かつて福島と同じメルトダウンを経験したアメリカ、スリーマイル島原発事故の場合、溶け落ちた燃料は、原子炉内にとどまりましたが、福島の場合、原子炉の底を突き破ってメルトスルーし、格納容器のどこに、どのような状態で存在しているのか分かっていません。
さらに、核燃料の取り出しには、高い放射線量を遮るために格納容器を水で満たすことが最も有力だとされていますが、格納容器の損傷か所の特定すらできていない状況です。
ロボットや炉内を観察するテレビカメラなど新たな技術開発が不可欠で、廃炉工程は、こうした技術開発の動向によって大きく左右されることになります。
さらに福島第一原発の現場は、仮設の設備が多く、今も不安定な状態で、事前に予期できていなかったトラブルが相次いでいます。
去年、3号機の燃料プールに鉄骨が落下したトラブルでは、原因究明などに時間がかかり、がれきの撤去作業に大幅な遅れが出ました。
このほかにも、電源設備にねずみが侵入し、プールの冷却システムが長時間にわたって停止したり、地下の貯水槽から水漏れが見つかったりと、今後も思いもよらぬトラブルで廃炉工程に影響が出るおそれがあります。
40年かかとされる廃炉を1日でも早く実現することは、誰もが望んでいます。
想定されるリスクを事前に洗い出し、トラブルが起きた時にすぐに対応できる準備を整える、廃炉に向けた備えの充実が求められます。

専門家「一日も早く人が管理できる状態に」
今回の見直し案について、原発の安全対策に詳しい東京大学大学院の岡本孝司教授は「工程表は、一度作ったらそのとおりに進まないといけないものではなく、現場の状況を踏まえつつ、見直しながら前に進むことが重要だ。今回、うまくいかなかった場合のバックアップを示したのは分かりやすくてよいと思う」と述べました。
また廃炉作業を進めるにあたって「高い放射線量」が最大の課題になるとして、「人が近づけないと、ロボットで作業をしないといけなくなるが、ロボットも万能ではない。線量が低ければ、すぐに終わる作業も線量が高いために1年、2年と時間がかかることもありうる。そういう遅れも踏まえながら着実に進めることが求められる」と指摘しました。
そのうえで、「福島第一原発の事故はまだ収束していない。一応の安定状態にはあるが、一日も早く人の手で管理できる状態にしないといけない。国と東京電力は、公開の原則で、今、どういう状況にあり何が問題なのか、国民や国際社会に説明していく必要がある」と述べ、福島第一原発の現状をリスクも含めてしっかりと社会に示す重要性を強調しました。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130610/k10015202101000.html

まず、一つ確認しておこう。これまでの工程表では、ステップ2=「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」から10年以内に、各原子炉からメルトダウンした核燃料の取り出しを開始するとしていた。とりあえず、建前的には(実質は不明だが)野田首相が「収束宣言」をした2011年12月がステップ2ということになっている。つまり、2021年度ー平成33年度には原子炉からメルトダウンした核燃料の取り出しが遅くとも開始されるということになっていたのである。なお、それまでの工程表でもステップ2より10年以内となっていたので、別に可能なら前倒しして作業してもかまわなかったのである。

今回、何がかわったのいうのだろうか。NHKなど中心的な報道を読んでみると、メルトダウンした核燃料を取り出す装置をどのように各原子炉につけるかということが検討されただけなのである。この工程表の見直しを行った廃炉対策推進会議事務局が作成し「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4 号機の廃止措置等に向けた 中長期ロードマップの改訂のための検討のたたき台」(2013年6月10日発表)の中で、 1号機についてふれているところをみておこう。

(1)1 号機
1 号機原子炉建屋は、水素爆発により原子炉建屋上部が破損したため、建屋からの放射性物質の飛散抑制を目的として 2011 年 10 月に建屋カバーを設置した。その後、原子炉の安定冷却の継続により、放射性物質の発生量は減少した。今後、建屋カバーを撤去し、オペレーティングフロア上部のガレキ撤去を実施する予定である。
【プラン①】建屋カバーを改造し、オペレーティングフロア上に燃料取り出し作業のための燃料取扱設備を設置し燃料を取り出す計画。燃料デブリ取り出しは、建屋カバーを撤去後に本格コンテナ を設置し実施する。
(目標工程)
・ 燃料取り出し開始(2017年度上半期)
・ 燃料デブリ取り出し開始(2022 年度上半期)
【プラン②】建屋カバーの改造が実施できない場合に、燃料取り出しに必要な機能を持たせた上部コンテナ を設置して燃料を取り出す計画。その後、上部コンテナを改造し、燃料デブリ取り出しに必要な機能を持たせた上で燃料デブリを取り出す。
(目標工程)
・ 燃料取り出し開始(2017年度下半期)
・ 燃料デブリ取り出し開始(2020 年度上半期)
【プラン③】建屋カバーの改造の成立性、コンテナの設計条件の整備及び原子炉建屋の耐震安全性の評価において、プラン①とプラン②が成立しない場合の計画。
(目標工程)
・ 燃料取り出し開始(2017年度下半期)
・ 燃料デブリ取り出し開始(2022 年度下半期)
<プラン①~③を決める HP>
(HP1-1)燃料取り出し計画、燃料デブリ取り出し計画の選択(2014 年度上半期) 燃料取り出し計画、燃料デブリ取り出し計画は、上部コンテナ及び本格コンテナを設計する上で必要となる条件の検討を進めるとともに、建屋カバー改造の成立性、既存原子炉建屋の耐震安全性の評価結果を踏まえ決定する。
<燃料デブリ取り出し開始の時期を判断する HP>
(HP1-2)燃料デブリ取り出し方法の確定
1 号機の燃料デブリ取り出し設備設置が可能となるよう、燃料デブリ取り出し工法・装置の開発を行い、プラン①においては 2020 年度下半期、プラン②においては2019年度上半期、プラン③においては 2020 年度下半期までに取り出し方法を確定する。
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/130606/130606_01c.pdf

この中でも、時期については、3つの場合が想定されている。たぶん、プラン①が推奨されていると思われるが、その場合、2022年度上半期と、今までの工程表からみても遅れた時期(といっても半年程度だが)になっている。プラン②が可能になった場合のみ、2020年度上半期着手となり1年半程度作業が前倒しされるにすぎない。そして、プラン①もプラン②も成り立たない可能性もあり、その際は2022年度下半期と従来の工程表から1年ほど遅れることになっている。

2号機についてみてみよう。

(2)2 号機
2 号機原子炉建屋は、水素爆発による損傷はないが、建屋内の線量が非常に高い状況である。今後、オペレーティングフロアの汚染状況調査を実施する予定。
【プラン①】除染・遮へいによりオペレーティングフロアの線量を低減した上で、既存の燃料取扱設備の復旧を行い、燃料デブリ取り出しは、既存原子炉建屋内に燃料デブリ取り出し装置を設置して行う計画。
(目標工程)
・ 燃料取り出し開始(2017年度下半期)
・ 燃料デブリ取り出し開始(2020 年度上半期)
【プラン②】オペレーティングフロアの除染と既存燃料取扱設備の復旧が成立しない場合に、燃料取り出しに必要な機能を持たせた上部コンテナを設置して燃料を取り出す計画。
(目標工程)
・ 燃料取り出し開始(2020年度上半期)
・ 燃料デブリ取り出し開始(2021 年度上半期)
【プラン③】オペレーティングフロアの除染、既存の燃料取扱設備の復旧及び原子炉建屋の耐震安全性の評価において、プラン①とプラン②が成立しない場合の計画。
(目標工程)
・ 燃料取り出し開始(2023年度上半期)
・ 燃料デブリ取り出し開始(2024 年度上半期) 8
<プラン①~③を決める HP>
(HP2-1)燃料取り出し計画、燃料デブリ取り出し計画の選択(2014 年度上半期)
燃料取り出し計画、燃料デブリ取り出し計画は、上部コンテナ及び本格コンテナ設計条件の整備を進めるとともに、オペレーティングフロアの汚染状況調査、燃料取扱設備の復旧可能性及び既存原子炉建屋の耐震安全性の評価
結果を踏まえ決定する。
<燃料デブリ取り出し開始の時期を判断する HP>
(HP2-2)燃料デブリ取り出し方法の確定
2 号機の燃料デブリ取り出し設備設置が可能となるよう、燃料デブリ取り出し工法・装置の開発を行い、プラン①においては 2018 年度上半期、プラン②においては 2018 年度上半期、プラン③においては 2021 年度上半期まで
に取り出し方法を確定する。
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/130606/130606_01c.pdf

とりあえず、放射線量が高く、除染・遮蔽などによって線量低減が課題だとしている。その上で、プラン①では、既存の核燃料取り出し装置を修復して利用するものとして、2020年上半期に核燃料取り出しに着手するとしている。それ以外の場合は、いずれにせよ、当初の工程表が想定していた2021年度という時期から遅れるのである。

これらのことからみて、原子炉からの核燃料取り出しについては作業の一部前倒しの可能性があると提起しただけで、実際には遅れる可能性のほうが多く記載されているといえるのである。

しかも、これらは、純粋に、原子炉から核燃料を取り出すかということだけが検討されているにすぎない。例えば、2号機における放射線量の低減は、いまだにめどがたっていない。そもそも、2011年12月21日の「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(概要版)」では、核燃料の取り出しについては、次のように規定されていた。

⑥ 燃料デブリ取り出し計画
 初号機での燃料デブリ取り出し開始の目標をステップ2完了後10年以内に設定。
 以下のステップで作業を実施する。作業の多くには遠隔技術等の研究開発が必要であり、これらの成果、現場の状況、安全要求事項等を踏まえ、段階的に進めていく。
a)技術開発成果を順次現場に適用し、原子炉建屋内除染を進め、2014 年度末までに漏えい箇所調査等に本格着手。
b)2015 年度末頃に格納容器補修技術(下部)の現場実証を終了し、当該技術を現場に適用することにより、a)において特定された漏えい箇所(下部)を補修し、止水する。その後、格納容器下部の水張りを行う。
c)格納容器下部の水張り後、格納容器内部調査技術の現場実証を 2016 年度末頃に終了し、本格的な内部調査を行う。
d)格納容器(上部)の補修を実施し、格納容器に更なる水張りを実施する。その後、原子炉建屋コンテナ(又はカバー改造)を設置し、閉じ込め空間を形成した上で、原子炉圧力容器の上蓋を解放する。
e)原子炉圧力容器内部調査技術の現場実証を 2019 年半ば頃に終了し、原子炉圧力容器内部調査を本格的に実施する。
f)これまで実施した格納容器、原子炉圧力容器内部調査結果等も踏まえ、燃料デブリ取り出し方法を確定することに加え、燃料デブリ収納缶開発、計量管理方策の確立が完了していること等も確認した上で、ステップ2完了から10年以内を目途に燃料デブリ取り出しを開始する。http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111221c.pdf

まず、前提において、遠隔技術等の研究開発が必要とされている。メルトダウンした核燃料がある原子炉という放射線量の高い場所での作業が要求されているのだから、それは当然である。そして、原子炉を補修し、漏洩個所をなくしてから水をはり、それから、燃料取り出し作業をするということになっている。そういうことが、現状の技術で可能なのだろうか。NHKが指摘するように、核燃料がどこにどんな形で存在しているのかということすらわかっていないのである。ある意味で、これは未知の領域なのである。そのような未知の領域に属する技術を前提にしなければ、このような工程表自体が成り立たないのである。

もちろん、こういう検討をしなくていいということはない。これ以外にも廃炉の各作業が検討されており、部分的には前倒し可能なものもあろう。しかし、少なくとも、廃炉作業における核燃料取り出し作業については、今までの技術で想定されてきた燃料取り出し装置のことのみが検討され、「前倒し」の可能性が提起されているにすぎない。そして、それさえ、従来の工程表よりも遅延する可能性も指摘されているのである。

結局のところ、この件について、さほど意味があるとは思えない「前倒し」の可能性を強調するべきではないと思われる。むしろ、社会においても、国家においても、東電においても、報道においても、未知の領域に属する技術を開発しなくてはならない廃炉作業の「困難さ」を直視することが必要とされているといえるのである。

Read Full Post »

Older Posts »