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今回は、柏市行政において、年間被曝線量を1mSvにする除染基準が確立した経過について、まとめておこう。柏市民の、放射線量低減を求める声に後押しされた形で、2011年8月頃より柏市行政の放射線対策は本格化していく。8月19日に、柏市は放射線対策室を設置し、その頃より、各学校での除染作業も開始された。

しかし、柏市行政の方針は、当初不十分なものであった。柏市などの東葛六市は、2011年7月8日の第1回東葛地区放射線量対策協議会において被曝線量限度を年間1mSvとすることをめざすとした。しかし、柏市の場合、実際の学校などの除染対象の基準は、文科省が補助するとした毎時1μSvとなっていた。だが、すでに始まった学校の除染作業において、実際に作業を担当した教職員や住民は、毎時0.3μSvでも高すぎると考え、市の基準よりも低い放射線量の場所も除染作業対象としていた。自発的に、年間1mSv未満をめざす動きが地域社会に定着していったといえよう。

そして、同時期には、年間1mSv未満に被曝線量をおさえることをめざした除染作業を行う自治体もあらわれてきた。朝日新聞夕刊2011年9月3日号では、東京都足立区で小学校・幼稚園・砂場などにおいて被曝線量毎時0.25μSv以上の場所を対象とする除染作業が8月10日より開始され、葛飾区でも同じ基準で除染することにしていると報道されている。そして、同記事には、千葉県北西部に隣接し、放射線量も比較的高い、茨城県守谷市で、次のような動きがあったことを伝えている。

 

茨城県守谷市は8月22日から、市内の公立小学校や保育所11カ所でグラウンドの土を入れ替えた。文部科学省が主に福島県内の学校向けに示した除染基準の毎時1マイクロシーベルトを超える地点はなく、当初、本格的な除染はしてこなかった。
 しかし6月、市民ら1千人余から文科省基準より低い放射線量でも対応できるよう、「子供の被曝を年間1ミリシーベルトに近づける」ことを求める請願が出され、市議会が採択した。
 橋本孝夫副市長は「少しでも放射線量を下げてほしいと思う親たちが安心してくれるのであればと考え、方針転換した」。土の入れ替えの費用は私立幼稚園などへの補助も含め約6千万円かかったという。

このように、住民たちの請願という形で示された要望に依拠して、守谷市は、年間1mSvを被曝線量限度にすることをめざした除染作業を自治体独自で行うことになったのである。

他方、政府においても、8月には除染推進方針が定められた。8月26日に開催された政府の原子力災害対策本部は、「除染推進に向けた基本的考え方」を決定した。その中では、次のように規定されている。

東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故から 5 ヶ月が経過しましたが、発電所の事故を原因として発生した放射性物質による汚染によって、今なお、多くの方々は、不便な避難生活、不安な日常生活を強いられています。
この放射能による不安を一日でも早く解消するため、国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方にのっとり、国は、県、市町村、地域住民と連携し、以下の方針に基づいて、迅速かつ着実な除染の推進に責任を持って取り組み、住民の被ばく線量の低減を実現することを基本とします。

① 推定年間被ばく線量が20ミリシーベルトを超えている地域を中心に、国が直接的に除染を推進することで、推定年間被ばく線量が20ミリシーベルトを下回ることを目指します。
② 推定年間被ばく線量が20ミリシーベルトを下回っている地域においても、市町村、住民の協力を得つつ、効果的な除染を実施し、推定年間被ばく線量が1ミリシーベルトに近づくことを目指します。
③ とりわけ、子どもの生活圏(学校、公園等)の徹底的な除染を優先し、子どもの推定年間被ばく線量が一日も早く1ミリシーベルトに近づき、さらにそれを下回ることを目指します。

上記の方針を基本としつつ、この度決定する「除染に関する緊急実施基本方針」は、今後2年間に目指すべき当面の目標、作業方針について取りまとめるものです。
今後、国は、当面の対応として、「緊急実施基本方針」にのっとり、県、市町村、住民と連携しつつ、迅速かつ効果的な除染を推進してまいります。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku/dai19/19_03_gensai.pdf

この日は、菅直人首相の辞意表明報道と重なり、あまり、この内容は報道されていないが、少なくとも除染基準線量を定めた点で画期的なものであった。特に②が重要である。ここで、年間20mSv未満の被曝線量地域でも、年間1mSvをめざして除染を推進することが決められたのである。すでにみてきたように、いわゆる「専門家」の多くは、年間1mSv未満を被曝線量限度とした除染作業の必要性を認めようとはしなかった。しかし、柏市などの地域住民は、せめて年間1mSvにすることを要望していた。この中で、地域住民サイドにそって、除染の基準(実際の除染作業は、当初住民のボランティアにたよるなど不十分なものであったが)が定められたのである。

そして、9月1日には、それまで毎時1μSvを除染作業の基準としていたが、ここで、年間1mSvを除染作業の基準とする方針を柏市行政は決めた。現在の基準であると毎時0.23μSvになる。そのことは、前述した朝日新聞夕刊2011年9月3日号の記事の中で、次のように報道されている。

 

政府の原子力災害対策本部は8月26日、除染の方針を示した。福島の避難対象地区以外でも「推定年間被曝線量が1ミリシーベルトに近づくことをめざす」とした。市町村の除染は国が支援するとしているが、福島県外のどこが対象になるのかは、はっきりしていない。
 局所的に放射線量が高くなる「ホットスポット」現象が起きた千葉県北西部。柏市はこれまで、近隣の5市と歩調を合わせ、文科省基準の毎時1マイクロシーベルトで側溝や雨どいなどの局所的な除染を進めてきた。
 だが、原子力災害対策本部の方針を受け、9月1日に年1ミリシーベルトに基準を引き下げて、表土を削るなど本格的な除染を進めることに決めた。
 同市放射線対策室の松澤元・担当リーダーは「安全の基準を探すのに注力してきたが、100%の安全は証明できず、多くの市民が不安に思っている」。今後、国の補助が受けられるかどうかを確認し、学校や公園など市全域を対象にした除染計画を作るとしている。

このように、2011年8〜9月、柏市行政において被曝線量年間1mSvという除染基準が確立されていったのである。しかし、対照的に、2011年9〜10月、柏市内において高い放射線量を示す地域が発見され、柏市行政は対応におわれていくのである。

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