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日本のマスコミは、世界各国で日本人が活躍していることを探し出し、称揚することにやっきになっているようにみえる。オリンピック、サッカーW杯、スポーツ選手、ノーベル賞受賞候補者、アメリカアカデミー賞ノミネートなど、枚挙に暇がない。そんな中、世界各国で上映され、評価も得ているのに、日本国内ではまったく報道も上映もされなかったアニメがある。3.11以後の福島の状況を描いたアニメ「Abita」である。あまり長いものではないので、まずはみてほしい。

このアニメは、次のことをテーマにしている。題名の「Abita」はラテン語で暮らしとか生命とかを意味するそうである(なお、
後で 辞書にて確認してみたところ、「abita」は、イタリア語動詞の「abitare」の直説法現在三人称単数であるようである。「住む」「暮らす」「棲息する」という意味であった。また、日本語の「(放射能を)浴びた」とかけているのではないかと友人から指摘があった)。

福島の子供たちが、放射能のため外で遊ぶことができない。
彼らの夢と現実について。

内容は、テーマそのものである。水墨画のタッチで描かれた画面のなかで、家に籠もっている少女はお絵描きをしながら福島の山林を飛び回ることを夢見ている。しかし、一歩外に出てみると、福島の山林は放射性物質で汚染されており、少女は飛び回ることはできず、防護服を着用した大人に連れ戻され、マスクを強制される「現実」があった。

この作品は、Shoko Haraという在独日本人学生がPaul Brennerという学生とともに、バーデン=ヴュルテンベルク・デュアルシステム大学レーヴェンスブルグ校の卒業作品として制作したものである。海外では、次の二つの賞を受けた。

Best Animated Film, International Uranium Filmfestival, Rio de Janeiro, 2013
Special Mention, Back-up Filmfestival, Weimar, 2013

上記のうち、国際ウラニウムフィルムフェスティバルは、核問題を焦点にしたものであるといえる。バックアップ・フィルムフェスティバルは、ドイツのバウハウス大学が主催するものである。

このアニメは、世界各地で上映された。下記は、上映リストである。

Screenings:
International Festival of Animated Film ITFS 2013, BW-Rolle
Japanese Symposium, Bonn, 2013
Nippon Connection, 2013
International Uranium Filmfestival, Rio de Janeiro, 2013
International Uranium Filmfestival, Munich, 2013
International Uranium Filmfestival, New Mexico, 2013
International Uranium Filmfestival, Arizona, 2013
International Uranium Filmfestival, Washington DC, 2013
International Uranium Filmfestival, New York City, 2013
Back-up Filmfestival, Weimar, 2013
Mediafestival, Tübingen, 2013
zwergWERK – Oldenburg Short Film Days, 2013
Konstanzer Filmfestspiele, 2013
Green Citizen’s Action Alliance GCAA, Taipei, Taiwan, 2013
Stuttgart Night, Cinema, 2013
Yerevan, Armenien, ReAnimania, 2013
Minshar for Art, The Israel Animation College, Tel Aviv, Israel, 2013
IAD, Warschau, Gdansk, Wroclaw/Polen, 2013
IAD (BW-Rolle, Best of IC, Best of TFK) Sofia, Bulgarien, 2013
05. November 2013: Stuttgart Stadtbibliothek (BW-Rolle) , 2013
PISAF Puchon, Southkorea, (BW-Rolle, Best of IC, Best of TFK) , 2013
Freiburg, Trickfilm-Abend im Kommunalen Kino (BW-Rolle), Freiburg, 2013
Zimbabwe, ZIMFAIA (BW-Rolle, Best of IC, Best of TFK), Zimbabwe, 2013

Upcoming Screenings:
18. Dezember 2013: Böblingen – Kunstverein Böblingen (BW-Rolle)
21.-22. Dezember 2013: Schorndorf – Kino Kleine Fluchten (BW-Rolle, Best of IC, Best of TFK)
27. August 2014: Künzelsau – Galerie am Kocher (BW-Rolle)
Movie Night for the anniversary of the Fukushima desaster,Zurich, 2014

このリストでは、ドイツの地名が多い。アメリカのワシントンやニューヨークなどでも、国際ウラニウムフィルムフェスティバルが開催された関係で上映されている。アルメニア・ポーランド・イスラエル・ジンバブエも上映地である。台湾や韓国でも上映されている。しかし、日本では一回も上映されていないのである(Japanese Symposium, Bonn, 2013はボンで開催されており、Nippon Connection, 2013は、フランクフルトで開催されたドイツの日本映画祭である)。

通常であれば、「日本人学生の快挙!」などといって報道しているだろう。しかし、このアニメに関しては、報道もされていないし、映画祭などに招待して上映することもなかったのである。そして、このアニメに関する限り、日本の人びとよりも、ドイツ・アメリカ・韓国・台湾の人びとのほうがより認識するようになったといえる。

背景には、原発再稼働をねらう政財界の動向があるだろう。ただ、それ以上に、3.11はなかったことにしたいという一般的な意識があるといえる。アニメであるがゆえに直接的な表現ではないが、3.11直後、福島だけでなく、放射性物質が拡散されたとされる東北・関東地方において、子どもたちが外で遊ぶことは避けられていた。その後、「復興」の名の下に、放射性物質の影響はないものとされ、福島において、今度はマスクを着用することが避けられるようになった。そして、福島第一原発事故は克服されるべき課題というよりも、日本の弱さをさらけだす直視しがたいものとして意識されてきているのである。そのような中、福島第一原発事故における子どもの問題を扱っているこのアニメについては、報道も紹介もされないことになってしまったといえる。結局、日本人の活動であっても、日本の弱さを現していると考えられるものは「見たくない」のである。現状の政治動向の裏側には、そのような日本社会の意識があるだろう。

他方で、世界各国の日本についての関心は、福島第一原発事故へのそれが大きな部分をしめている。このアニメが制作されたドイツだけでなく、欧米、アジア、アフリカの各地では、日本については福島第一原発事故から考えようとしている。それゆえに、このアニメが国際的に評価・紹介されることになったといえる。このような日本の内と外との認識のギャップは、福島第一原発事故だけではなく、靖国参拝や従軍慰安婦問題でもみることができる。

そして、2014年時点でみると、福島第一原発事故における子どもの問題は、より複雑で、深刻さをましている。確かに、2011年時点からみれば、相対的に放射線量は下がっている。しかし、除染については、学校・住宅地・農地などが主であり、効果自体が限定的である。山林を面的に除染する試みはなく、結局、自然の減衰・流出をまつしかない。そのような中、マスク着用すら忌避された福島の子どもたちの半分程度は甲状腺に異常があり、通常よりも多く、甲状腺がんが発生する状況になっている。福島の子どもたちの悲惨を描いた本アニメよりも厳しい状況なのである。

*制作者側の情報については、下記サイトによった。

*なお、本アニメについては、下記サイトに紹介されている。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-1519.html

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