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Posts Tagged ‘大飯原発’

もう旧聞になるが、2015年8月11日、九州電力の川内原発が再稼働した。同日、菅義偉官房長官は次のようにコメントしている。

川内原発再稼働、菅官房長官「判断するのは事業者」
 
[東京 11日 ロイター] –
は11日の記者会見で、九州電力(9508.T)の川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)について「再稼働を判断するのは事業者であり、政府は万が一事故が起きた場合に先頭に立って対応する責任がある」と述べた。川内1号は同日午前10時半に原子炉が再稼働した。

菅長官は、国際原子力機関(IAEA)の基本原則に「安全の一義的責任は許認可取得者にある」と明記されていると指摘。政府は、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合に、原発の再稼働を進めることを閣議決定していることから、災害の際には国が迅速に対応する責任があると語った。

その上で、「再稼働にあたっては地元の理解が得られるよう丁寧に取り組んでいくことが極めて重要」との見方を示した。http://jp.reuters.com/article/2015/08/11/suga-sendai-nuclear-idJPKCN0QG08U20150811

それ以来、伊方原発他、日本各地の原発再稼働への動きがさかんに報道されている。つい最近は、安倍改造内閣で新規に復興担当大臣となった福井県選出衆議院議員である高木毅が、10月7日の就任記者会見で東北の被災地にある女川原発と福島第二原発を再稼働させることもありうると話している。

「被災地原発 基準適合なら再稼働」 就任会見で高木復興相

2015年10月8日 朝刊(東京新聞)

 高木毅復興相(衆院福井2区)は七日夜の首相官邸での就任記者会見で、東日本大震災で被災した東北三県にある東京電力福島第二原発(福島県楢葉町、富岡町)と東北電力女川原発(宮城県女川町)を再稼働させる可能性について「原子力規制委員会が世界で最も厳しい水準の新規制基準に適合すると認めたもののみ、再稼働を進めるのが政府の一貫した方針で、私もそうした考えだ」と述べた。被災地以外の原発と同様に新規制基準を満たせば、再稼働することもあり得るとの考えを示した。
 安倍政権が進める原発再稼働路線を踏まえた発言。福島第一原発事故で大きな被害を出し、現在も多くの避難者がいる福島などの復興を担う閣僚の発言に対し被災地の住民や野党から批判が出る可能性がある。
 高木氏は原発が数多く立地する福井県選出。自民党では原発の早期再稼働を求める議連の事務局長も務めてきた。
 高木氏は会見で「私の地元は、原発とともに生きてきたといって過言ではない地域。非常に残念な福島の事故が起きてしまったことは、本当に重く受け止めなければならない」とも述べた。
 再稼働の手続きは、女川原発1~3号機のうち2号機のみ規制委の審査中。福島県議会は原発事故後の二〇一一年、福島第二原発の廃炉を求める請願を採択している。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201510/CK2015100802000127.html

これらの報道を見聞きするにつけ、政府側は原子力規制委員会の規制基準に適合するから再稼働を認めるというばかりで、なぜ再稼働が必要なのかということはほとんど言っていないという印象を受ける。菅官房長官にいたっては「再稼働を判断するのは事業者」と言い切っている。しかし、「政府は万が一事故が起きた場合に先頭に立って対応する責任がある」といっている。事故が起きたとき、責任をとるのは、事業者でなくて、政府なのだ。全く割に合わない。

野田政権が2012年に大飯原発の再稼働を決めたときは、電力不足により国民生活・国民経済に支障を来すためと、偽善的ではあったが、とにかく理由を述べて、人々の合意を得ようとしていた。安倍政権における再稼働については、原子力規制委員会により「安全」の保証が得られたというばかりで、人々の合意を得ようとは全くしていないのだ。今でも、半数程度が再稼働に反対という民意が各世論調査で示されているにもかかわらず、だ。

原発再稼働についての問題は重大事故時の安全性の確保だけではない。放射性廃棄物はどう処理するのか、老朽原発はどうするのか、平常の運転時でもまぬがれない労働者の被曝についてどのように対処するのか、いろいろな問題がある。そして、そもそも、汚染水、賠償、除染、避難、廃炉など、福島第一原発事故の処理はどうなっているのだろう。「政府は万が一事故が起きた場合に先頭に立って対応する責任がある」と口ではいうが、実際はこの通りだ。

そういうことすべてに、偽善的な言い訳すらしないのだ。安保法制制定過程でみられた、対話による合意獲得の努力を一切しない安倍政権の姿勢が、再稼働問題でも顕在化しているのである。

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さて、本ブログでは、「東日本大震災の歴史的位置」というテーマのもとで、度々福島原発の建設過程について検討し、それをもとに、昨年『戦後史のなかの福島原発ー開発政策と地域社会』(大月書店)という著書を上梓した。

本ブログでは、これから「福井県の人びとはなぜ原発建設に賛成/反対したのか」というテーマのもとに、福島県を凌駕する原発集中立地地帯である福井県の原発についてみていこうと考えている。私は、まず、福井県の原発の現状をみておきたい。周知のことだが、福井県の嶺南地方には日本原子力発電の敦賀原発(2基)、関西電力の美浜原発(3基)・大飯原発(4基)・高浜原発(4基)が立地している。都合13基となり、敦賀市にある高速増殖炉もんじゅなどを含めると、福島県以上(福島第一原発6基・福島第二原発4基)の原発集中立地地帯である。しかし、現状は、他の地域の原発同様、この地域の原発も2013年9月以降すべて停止している。次の福井新聞のネット配信記事をみてほしい。

 

福井県内原発、初の発電量ゼロ 14年度実績、全13基停止で
 (2015年4月7日午後5時30分)

 福井県が発表した2014年度の県内原発の運転実績によると、総発電電力量は県内で最も古い日本原電敦賀原発1号機が運転を開始した1969年度以降で初めてゼロとなった。商業炉13基(合計出力1128・5万キロワット)の全基が停止しているため。

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、県内の商業炉は定期検査などで次々止まり、12年2月に全基が停止。同年7月に関西電力大飯3、4号機が国内で唯一再稼働したが、13年9月に13カ月間の営業運転を終え、再び全原発が停止した。

 再稼働に向け関電高浜1~4号機、大飯3、4号機、美浜3号機の計7基が原子力規制委員会に安全審査を申請している。高浜3、4号機は審査に事実上合格したが、残りの認可手続きなどがあり再稼働時期は見通せていない。

 輸送実績はウラン新燃料集合体が計140体、低レベル放射性廃棄物は8千体(200リットルドラム缶)、使用済み核燃料は大飯4号機の14体だった。

 安全協定に基づき連絡のあった異常事象は1件で、法律に基づく国への報告対象になった事象や、保安規定に基づく運転上の制限の逸脱はなかった。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/nuclearpower/68306.html

この原発群のうち、もっとも古いのは敦賀原発1号機と美浜原発1号機で、ともに1970年に営業運転が開始された。特に敦賀原発1号機については、1970年に大阪で開催された万国博覧会に電力を供給したことでよく知られている。この両原発は、福島第一原発1号機(1971年営業運転開始)とともに、日本国内において軽水炉による原子力発電所とはもっとも古いものである。他方、その古さにより、この両原発は、美浜原発2号機(1972年営業運転開始)とともに廃炉にされることになった。次の福井新聞のネット配信記事をみていただきたい。

 

美浜と敦賀の原発3基廃炉決定 老朽化、福井県知事に報告
 (2015年3月17日午後0時05分)

 関西電力は17日、臨時取締役会を開き、運転開始後40年以上たち老朽化した美浜原発1、2号機(福井県美浜町)の廃炉を正式決定した。八木誠社長は福井県庁を訪れて西川一誠知事と面談し、2基の廃炉方針を報告した。日本原子力発電も同日、敦賀原発1号機(同県敦賀市)の廃炉を決定。午後に浜田康男社長らが福井県と敦賀市を訪れ、方針を説明する。

 東京電力福島第1原発事故後、原発の運転期間を原則40年とする規定に従って、電力会社が廃炉を決めるのは初めて。古い原発の選別を進めることで政府は安全重視の姿勢を強調する一方、一定程度の原発は今後も活用していく方針だ。日本の原発行政は、大きな転換点を迎えることになる。

 関電は一方、運転開始から40年前後たった美浜3号機と高浜原発1、2号機(福井県高浜町)について、17日午後、再稼働に向けて原子力規制委員会に新規制基準の適合性審査の申請をする。

 八木社長は美浜廃炉について西川知事に「将来の(電力)供給力などを総合的に勘案した結果、廃炉を決定した」と説明した。

 関電は美浜原発2基に関し、40年を超えて運転できるか検討していた。だが、出力がそれぞれ34万キロワット、50万キロワットと比較的小さいため運転を続ける場合に必要な安全対策の工事費用などを回収できない可能性が高く、廃炉決定に傾いたとみられる。

 関電は福井県に対し、廃炉工事に当たって地元企業を積極的に活用することや、使用済み核燃料の福井県外への搬出に最大限努力することなどを報告した。

 老朽原発をめぐっては、中国電力と九州電力も、島根原発1号機(島根県)と玄海原発1号機(佐賀県)の廃炉を、それぞれ18日に開く取締役会で決める見通し。関電と日本原電を含む4社は19日に経済産業省に報告する方向で調整している。

 関電と日本原電は当初18日に取締役会を開いて廃炉を決定する運びだったが、地元自治体などとの日程調整を経て1日前倒ししたもようだ。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/66497.html

なお、日本原子力発電の敦賀原発2号機についても、活断層の直上に建設されていたとされ、廃炉がとりざたされている。次の毎日新聞のネット配信記事をみてほしい。

 

敦賀原発:2号機直下「活断層」 原電、再稼働厳しく
 毎日新聞 2015年03月25日 22時34分

 日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)、東北電力東通原発1号機(青森県)の敷地内断層について、原子力規制委員会の有識者調査団は25日、いずれも「将来活動する可能性がある」として新規制基準で定める活断層と認める報告書を規制委に提出した。規制委は今後、原発の再稼働に必要な安全審査で、この報告書を「重要な知見の一つ」と位置付け、活断層かどうかを判断する。両社は廃炉や大規模な改修工事などの重大な決断を迫られる公算が大きい。

 報告書は、敦賀2号機の原子炉建屋直下を通る断層と、東通1号機の原子炉建屋から最短200メートルにある2本の断層を活断層と認定した。新規制基準では、活断層の真上に原子炉などの重要施設を造ることは許されない。

 原電は報告書について「重大かつ明白に信義則、適正手続きに反し、無効」と反論し、敦賀2号機の安全審査を申請する方針。審査で敦賀2号機直下の断層が活断層だと判断されれば、廃炉に追い込まれる公算が大きいが、原電は訴訟も辞さない姿勢を見せている。

 東通1号機については、昨年12月にまとめた報告書案では「活動性を否定できない」との表現だったが、外部専門家からの意見聴取などを経て、一歩踏み込んだ。原子炉冷却用の海水取水路の直下にある別の断層については判断を保留した。東北電は既に審査を申請しており、規制委は近く審査を本格化させる。判断を保留した断層についても規制委の田中俊一委員長は「審査の大きなテーマになる」と述べた。合格には大幅な耐震補強や取水路の付け替えなどが必要になる可能性がある。【酒造唯】
http://mainichi.jp/select/news/20150326k0000m040142000c.html

関西電力は、前掲新聞記事のように、高浜原発1−4号機、大飯原発1−4号機、美浜原発3号機の再稼働をめざし、原子力規制委員会の安全審査を申請していた。そして、高浜原発3・4号機については、原子力規制委員会の安全審査を事実上パスし、地元への同意を求める手続きに入っていた。次の中日新聞のネット配信記事をみてほしい。

 

2015年3月20日 夕刊

 高浜再稼働に町議会が同意

 関西電力が十一月の再稼働を想定している高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐり、高浜町議会は二十日、全員協議会で再稼働に同意した。議会の判断を受け、野瀬豊町長は四月以降、町として再稼働への同意を表明する方針。町議会の同意で、再稼働に必要な「地元同意」手続きの最初の関門を通った形だ。

 全員協議会には全町議十四人が出席。的場輝夫議長によると、「安全対策が不十分」などの反対意見は一人だけで、再稼働同意を議会の意思として取りまとめた。同意文書を手渡された野瀬町長は「3・11以降の議論を積み重ねた議会の判断であり、大きな判断要素として承る」と応じた。

 再稼働で先行する九州電力川内原発(鹿児島県)の地元説明会が混乱したことを踏まえ、同町では説明会の代わりに町内ケーブルテレビで安全審査の解説ビデオ(原子力規制庁制作)を放映するにとどめた。的場議長は、事前に議会の同意条件として挙げていた町民の意見集約ができたと考える根拠を報道陣から問われ「ビデオへの反応は鈍かったが、議員の日々の活動の中で町民と接して、原発の安全対策について、町民は理解していると判断した」と答えた。

 野瀬町長も取材に「他府県との広域避難計画の調整や、原子力政策や避難計画に関する町民向けの説明会の日程の調整が必要」とした上で、県知事・県議選の投開票日(四月十二日)以降に町として同意を表明する考えを示した。

 高浜3、4号機をめぐっては、原子力規制委員会が二月、新規制基準に「適合」と判断した。

 野瀬町長が同意を表明すると、地元同意の手続きは、福井県議会と西川知事の判断に移る。
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015032002000257.html

このような原発再稼働の動きにストップをかけたのが、福井地裁の司法判断である。2014年5月21日、福井地裁は大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる判決を出した。福井新聞の次のネット配信記事をみてほしい。

 

大飯原発の運転差し止め命じる 福井地裁が判決
 (2014年5月21日午後3時15分)

 安全性が保証されないまま関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させたとして、福井県などの住民189人が関電に運転差し止めを求めた訴訟の判決言い渡しが21日、福井地裁であり、樋口英明裁判長は関電側に運転差し止めを命じた。

 全国の原発訴訟で住民側が勝訴したのは、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の設置許可を無効とした2003年1月の名古屋高裁金沢支部判決と、北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止めを命じた06年3月の金沢地裁判決(いずれも上級審で住民側の敗訴が確定)に続き3例目。

 大飯3、4号機は昨年9月に定期検査のため運転を停止。関電は再稼働に向け原子力規制委員会に審査を申請し、新規制基準に基づく審査が続いている。

 審理では、関電が想定した「基準地震動」(耐震設計の目安となる地震の揺れ)より大きい地震が発生する可能性や、外部電源が喪失するなど過酷事故に至ったときに放射能漏れが生じないかなどが争点となった。

 大飯原発3、4号機をめぐっては、近畿の住民らが再稼働させないよう求めた仮処分の申し立てで、大阪高裁が9日、「原子力規制委員会の結論より前に、裁判所が稼働を差し止める判断を出すのは相当ではない」などとして却下していた。

 脱原発弁護団全国連絡会(事務局・東京)などによると2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、全国で住民側が提訴した原発の運転差し止め訴訟は少なくとも16件あり、福井訴訟が事故後初めての判決となった。
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/50555.html

さらに、2015年4月14日、福井地裁は、原子力規制委員会の安全基準を批判しつつ、高浜原発3・4号機の再稼働を認めない仮処分決定を下した。NHKの次のネット配信記事をみてほしい。

高浜原発 再稼働認めない仮処分決定
4月14日 14時04分

福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機について、福井地方裁判所は「国の新しい規制基準は緩やかすぎて原発の安全性は確保されていない」という判断を示し、関西電力に再稼働を認めない仮処分の決定を出しました。
異議申し立てなどによって改めて審理が行われ決定が覆らなければ、高浜原発は再稼働できなくなりました。
関西電力は異議を申し立てる方針です。
福井県高浜町にある関西電力の高浜原発3号機と4号機について、福井県などの住民9人は、安全性に問題があるとして福井地方裁判所に仮処分を申し立て、再稼働させないよう求めました。これに対して、関西電力は、福島の原発事故も踏まえて対策をとったと反論しました。
福井地方裁判所の樋口英明裁判長は、関西電力に対して高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めない仮処分の決定を出しました。
決定では「10年足らずの間に各地の原発で5回にわたって想定される最大の揺れの強さを示す『基準地震動』をさらに超える地震が起きたのに、高浜原発では起きないというのは楽観的な見通しにすぎない」と指摘しました。
そして原子力規制委員会の新しい規制基準について触れ、「『基準地震動』を見直して耐震工事をすることや、使用済み核燃料プールなどの耐震性を引き上げることなどの対策をとらなければ、高浜原発3号機と4号機のぜい弱性は解消できない。それなのに、これらの点をいずれも規制の対象としておらず、合理性がない」という判断を示しました。
そのうえで、「深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないと言えるような厳格な基準にすべきだが、新しい規制基準は緩やかすぎて高浜原発の安全性は確保されていない」と結論づけました。
今回の仮処分はすぐに効力が生じるもので、関西電力の異議申し立てなどによって改めて審理が行われ、決定が覆らなければ、高浜原発は再稼働できなくなりました。
異議申し立てなどによる審理は福井地裁で行われ、決定が覆れば、仮処分の効力は失われます。
福島の原発事故後に起こされた裁判では、14日の決定と同じ樋口英明裁判長が去年、大飯原子力発電所3号機と4号機の再稼働を認めない判決を言い渡し、現在、名古屋高等裁判所金沢支部で審理が行われています。

 仮処分手続きと決定の効力
仮処分の手続きは、正式な裁判をしていると時間がかかって間に合わない、緊急の場合などに使われるもので、今回の仮処分の決定は直ちに効力が生じます。
決定の是非については異議申し立てなどによる審理で最高裁判所まで争うことができ、その過程で取り消されなければ決定の効力は続きます。逆に決定が覆れば仮処分の効力は失われます。
ただ、仮処分はあくまで正式な裁判が行われるまでの暫定的な措置で、再稼働を認めるべきかどうかについて正式な裁判が起こされれば、改めて司法の判断が示されることになります。
住民側代表「脱原発へ歴史的な一歩」
仮処分の決定のあと、住民側の代表が記者会見を開きました。
このなかで住民側の弁護団の共同代表を務める河合弘之弁護士は、「司法が原発の再稼働を止めたきょうという日は、日本の脱原発を前進させる歴史的な一歩であるとともに司法の歴史でも、住民の人格権、ひいては子どもの未来を守るという司法の本懐を果たした輝かしい日であり、大きな喜びとともに大きな責任を感じている」と述べました。
そのうえで、「この決定は、国の新規制基準の不備を厳しく指摘し、その無効性を明らかにしたもので、これを機に日本中の原発を廃炉に追い込まねばならない」と述べました。
関電「速やかに異議申し立てを検討したい」
14日の決定について関西電力側の弁護士は「会社の主張を裁判所に理解してもらえず、まことに遺憾で、到底承服できない。決定内容を精査したうえ、準備ができ次第、速やかに異議の申し立てと執行停止の申し立ての検討をしたい」と述べました。
そのうえで「会社としては十分な安全性を確保しているとして科学的・専門的・技術的な知見に基づいて十分な主張・立証をしているつもりなので、引き続き、裁判所に理解を求めたい」と話しました。

 高浜町長「再稼働の同意は現在の規制基準で判断」
高浜原子力発電所がある福井県高浜町の野瀬豊町長は、「司法の判断は重いが、関西電力から求められている再稼働の同意の判断にあたっては、現在の規制基準で安全が十分なのかという点で判断していく。行政としての手続きは進めていきたい」と述べ、今回の決定が同意の判断には大きく影響しないという考えを示しました。
そのうえで、「住民は困惑すると思うので、エネルギー政策を決める国が覚悟を持った姿勢を改めて示してほしい」と話していました。

 地震の専門家「誤った理解」
地震による揺れの予測について詳しい日本地震学会の元会長で、京都大学名誉教授の入倉孝次郎さんは「原発の基準地震動は地震の平均像ではなく、個別の敷地の不確かさも考慮して設定されており、決定で『実績や理論の面で信頼性を失っている』としているのは誤った理解だ。一方で、決定の中で原発に外部から電力を供給する送電線なども安全上重要であり、ふさわしい耐震性が求められると指摘しているのはそのとおりだと思う」と話しました。
そのうえで、「原発の安全性を検討するには地震の揺れだけでなく福島で見られたような津波による被害や火山、人為ミスなどさまざまな面を総合的に考慮する必要があるが、今回の決定ではこうした点については科学的な見地で正確な分析がされていない」と話しています。

 官房長官「再稼働の方針変わらない」
菅官房長官は午後の記者会見で、「独立した原子力規制委員会が十分に時間をかけて世界で最も厳しいと言われる新基準に適合するかどうかという判断をしたものであり、政府としてはそれを尊重して再稼働を進めていくという方針は変わらない」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「国は本件の当事者ではなく、あくまで仮処分であり、当事者である事業者の今後の対応を国としては注視していきたい」と述べました。
また、菅官房長官は、記者団が「ほかの原子力発電所の再稼働やエネルギー政策への影響はないか」と質問したのに対し、「そこはないと思う。そこは『粛々と』進めていきたい。法令に基づいてということだ」と述べました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150414/k10010047951000.html

福井県の原発の現状をネット配信記事からみたものだが、古いもしくは問題のある原発の廃炉という方針が打ち出されるとともに、関西電力・国・立地自治体は原発再稼働をめざしており、他方でその阻止をめざして裁判が行われているなど、複雑な動きがみられる。原則的には建設後40年を経過した原発は廃炉となることになっている。20年の運転延長は認められているが、追加の安全対策なども必要となっており、敦賀原発1号機や美浜原発1・2号機は廃炉が決定された。一方、より新しい原発である高浜原発3・4号機は、原子力規制委員会の安全審査も事実上パスし、スムーズに再稼働されるだろうと関西電力や国などは想定していたが、福井地裁の仮処分決定でストップがかけられた形となった。これが、2015年4月時点の福井県の原発の現状なのである。。

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1960年代、福島原発建設と同時期に、福井においても原発建設が進められていた。福井が公式に原発建設の候補地となったのは1962年で、初めは福井県嶺北地方の坂井郡川西町(現福井市)の三里浜地区が候補になったが、岩盤が脆弱なために放棄され、嶺南地方の敦賀半島に所在する、敦賀市浦底地区と美浜町丹生地区が原発建設の候補地となった。結局、前者に日本原子力発電株式会社敦賀発電所、後者に関西電力美浜発電所が建設され、双方とも1号機は1970年に営業運転が開始されている。この二つの原発は、福井県への原発集中立地のさきがけとなり、敦賀原発自体が二つ、美浜原発自体が三つの原子炉を有するとともに、近接して実験炉のふげん(廃炉作業中)、もんじゅが建設されることになった。さらに、若狭地方には、それぞれ四つの原子炉を有する高浜原発と大飯原発が建設され、福島を凌駕する日本最多の原発集中立地がなされることになった。

福井の場合、福島と違って、1960年代初めから、原発建設に対する懸念が強かった。福井県の労働組合やそれを基盤とする社会党・共産党の県議・市議たちは、原子力の平和利用ということは認めつつ、具体的な原発建設についてはさまざまな懸念の声をあげていた。また、地元においても、美浜町丹生などでは比較的反対する声が強かった。

他方、思いもかけない方面で懸念の声があがっていた。懸念の意を表明したのは、昭和天皇である。このことを報道した福井新聞朝刊1966年10月14日付の記事をここであげておこう。

原電、西谷災害など 北知事、陛下にご説明

町村北海道知事ら十二道府県知事は、十三日午前十時半から、皇居で天皇陛下に各県の情勢などを説明した。これは数年前から恒例の行事になっているもので、陛下を中心に丸く輪になってすわった各知事が、五分間ずつ各地の現状と最近のおおきなできごとを話した。陛下は北海道、東北地方などの冷害や台風被害などにつき質問されていた。
正午からは陛下とともに仮宮殿の別室で昼食をとった。
北知事の話 電源開発と昨年秋の集中豪雨禍で離村する西谷村の現状について申しあげた。電源開発計画は、九頭竜川上流に四十三年六月を目標に三十二万二千キロの水力発電が完成するほか、原子力発電は現在敦賀半島で六十七万キロの開発が進んでおり、このほかの計画も合わせると数年後には百二十万キロ以上の発電能力を持つ全国屈指の電力供給県になるとご説明した。陛下からは非常によい計画だが、これによって地盤変動などの心配はないかとのご質問があったが、じゅうぶん考慮しており大じょうぶですとお答えした。
また昨年九月の集中豪雨で大きな被害を出した西谷村について、防災ダム建設などもあって全村離村する計画をお話ししたが、これについてはご下問はなかったが、ご心配の様子がうかがえた。
(福井新聞朝刊1966年10月14日付)

「北知事」とされているのは、原発誘致を積極的にすすめた当時の北栄造福井県知事のことである。かいつまんでいうと、北知事は、当時の福井県で進められていた水力発電所と原発建設を中心とする電源開発について説明したのだが、その際、昭和天皇から「非常によい計画だが、これによって地盤変動などの心配はないか」と質問され、北知事は「じゅうぶん考慮しており大じょうぶです」と答えたということなのである。

ここで、昭和天皇は、福井県の電源開発について「地盤変動などの心配はないか」と懸念を表明している。あげられている文章からでは、水力発電を含めた電源開発全体についてなのか、原発に特化したものなのか判然としないのだが、「地盤変動」をあげていることから原発のことなのだろうと推測できる。

このように考えてみると、原発開発の創設期である1960年代において、昭和天皇は、原発について「地盤変動」ー具体的には地震などを想定できるのだがーを「心配」していたとみることができよう。

原発が建設される地元の人びとや、さらに昭和天皇ですら表明していた原発に対する「懸念」に、国も県も電力会社も正面から答えることはなかった。結果的に福井県の原発はいまだ大事故を起していない。しかし、それは、「地盤変動」が原因でおきた福島第一原発事故をみて理解できるように、「たまたま」のことでしかないのである。

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2013年2月28日、国会において安倍晋三首相は施政方針演説を行い、その中で、原発再稼働を明言した。

このことは、朝日新聞などはほとんど論評していない。ある程度論評している、東京新聞2013年3月1日朝刊の記事をここであげておこう。

原発再稼働を首相明言 施政方針演説「安全確認後に」
2013年3月1日 朝刊
 
安倍晋三首相は二十八日午後、衆参両院の本会議で行った施政方針演説で、エネルギー政策に関し、原子力規制委員会で安全が確認された原発は再稼働する方針を国会で初めて明言。原発維持の基本方針をあらためて示した。
 首相はこれまで、再稼働については「科学的安全基準のもとで判断していく」などと国会で答弁。NHK番組では「最終的な判断は政府で責任を持つ。原子力規制委が安全と決定したら、(原発の地元の)住民への説明責任は政府が負う」と述べていた。
 施政方針演説では「原子力規制委のもとで安全性を高める新たな安全文化をつくり上げる。その上で、安全が確認された原発は再稼働する」と強調した。
 同時に、省エネルギーや再生可能エネルギーを最大限に進めることで「できる限り原発依存度を低減させていく」と約束。発送電分離などを念頭に「電力システムの抜本的な改革にも着手する」と述べた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013030102000132.html

なお、朝日新聞2013年3月1日朝刊は、安倍首相の施政方針演説全文を論評ぬきで掲載している。その部分を抜き出して「味読」してみよう。

 

世界の優れた企業は、日本に立地したいと考えるでしょうか。
 むしろ、我が国は、深刻な産業空洞化の課題に直面しています。
 長引くデフレからの早期脱却に加え、エネルギーコストの低減に向けて、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。
 東京電力福島第一原発事故の反省に立ち、原子力規制委員会の下で、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創り上げます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します。
 省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、できる限り原発依存度を低減させていきます。同時に、電力システムの抜本的な改革にも着手します。
 「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指します。

ある意味では、非常に正直である。「安全」が確認された原発は再稼働するというのである。しかも、それは、野田政権が大飯原発再稼働決定時に偽善的に述べた「国民の生活を守る」云々ということを目的としていない。「世界の優れた企業は、日本に立地したいと考えるでしょうか。むしろ、我が国は、深刻な産業空洞化の課題に直面しています。」という観点から「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指します。」ということを目的にしているのである。その点からすると、「省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、できる限り原発依存度を低減させていきます」ということも、「世界で一番企業が活躍しやすい国」をつくるということに支障がない程度にということなろう。

そして、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指すということは、単に原発問題だけに限らないであろう。たぶん、雇用の一段の「非正規化」と「賃下げ」、外国企業の国内市場参入を促すTPP交渉参加、大衆課税である消費税増税を前提とした法人税減税など、いろいろ考えられるのである。

新聞ではほとんど論評されていないが、この「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指します。」という安倍首相の発言は、この政権のスタンスを雄弁に語っているように思われる。

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フランスの新聞 “Le Monde”は、2012年7月30日に、レンヌ大学教授Marc Humert(立命館大学留学中)執筆による「日本人のトランペットは原子力の要塞に打ち勝つだろうか?」という記事をネット配信した。このことは、フェイスブックを通じて、フランスに留学している友人から教えてもらった。この記事は、現在行われている官邸前抗議行動や国会大包囲などの反原発の抗議行動を論評したものだ。その冒頭の文は「福島事故以来1年半以上たった日本における民衆の結集は、一見親しげで温和にみえるが、ジェリコのトランペットの様相を帯びている」としている。(なお、翻訳には自信がないので、フランス語を解する人は、http://www.lemonde.fr/idees/article/2012/07/30/les-trompettes-japonaises-auront-elles-raison-de-la-citadelle-du-nucleaire_1739039_3232.htmlを参照してほしい)

「ジェリコのトランペット」とは何だろうか。これは、旧約聖書のヨシュア記にある、「エリコ(ジェリコのこと)の戦い」から想起されたものである。ウィキペディアに、「エリコの戦い」がこのように概括されている。

エリコの戦い

ヨシュア5:13
エリコの戦い(エリコのたたかい、英:Battle of Jericho)は、ヨシュア記6:1-27にあるイスラエルの戦闘。エリコの周囲をめぐりながら吹き鳴らされた角笛が有名である。イスラエルの指導者である預言者モーセの後継者、ヨシュアの最初の戦闘。
イスラエルの神、主は約束の地を与えるとヨシュアに告げる。 「わが僕モーセは已に死り然ば汝いま此すべての民とともに起てこのヨルダンを濟り我がイスラエルの子孫に與ふる地にゆけ」(ヨシュア1:2[1]) 「我なんぢに命ぜしにあらずや心を強くしかつ勇め汝の凡て往く處にて汝の神 主偕に在せば懼るる勿れ戰慄なかれ」(ヨシュア1:9[1])
ヨシュアは斥候を遣わし、ラハブという遊女の家に潜伏する。イスラエルの勝利を見て取った売春婦ラハブは、「父、母、兄弟、姉妹、また、すべて彼らに属する者」(ヨシュア2:12-13[2])と自分のいのちの助命を懇願し、認められる。斥候はヨシュアに報告した。「誠に主この國をことごとく我らの手に付したまへりこの國の民は皆我らの前に消うせんと」(ヨシュア2:24[1])。
エリコに近づいたヨシュアの前に、抜き身の剣を持った主の軍の将が現れ、告げた。[2]「主の軍旅の將ヨシユアに言けるは 汝の履を足より脱され汝が立をる處は聖きなりと ヨシユア然なしぬ」(ヨシュア5:13-15[1])
城塞都市エリコは城門を閉ざした。主なる神に命じられた通り、イスラエルの民は契約の箱を担ぎ、7人の祭司が、7つの角笛をもって、主の箱の前を行き、6日間町の周囲を一回まわり、7日目だけは7回まわった。
民がときの声をあげ、角笛を吹き鳴らすと、城壁が崩れ落ちたので、イスラエルは主の命令に従ってエリコを聖絶した。ラハブとその家族、親戚のいのちは助けられた。(ヨシュア6:20-25[2])
ヨシュアは呪いを宣言する。「ヨシユアその時人衆に誓ひて命じ言けるは凡そ起てこのヱリコの邑を建る者は主の前に詛はるべし 其石礎をすゑなば長子を失ひその門を建なば季子を失はんと」(ヨシュア6:26[1])。これは周囲に知れ渡った。「主、ヨシユアとともに在してヨシユアの名あまねく此地に聞ゆ」(ヨシュア6:27[1])。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84

概括すると、モーゼの後継者であるイスラエル人の指導者ヨシュアが城塞都市ジェリコを攻撃したが、その際、イスラエルの民のときの声と祭司たちの吹き鳴らす角笛(トランペットを含む金管楽器の源流)によって城壁が崩れ落ちたというのである。それを念頭に「日本人のトランペットは原子力の要塞に打ち勝つだろうか?」としているのである。ユダヤ・キリスト教の素養が一般的ではない日本においては思いつかない比喩である。

しかし、この比喩は的をついていると思う。脱原発デモや官邸前の抗議行動においては、ドラムや吹奏楽器などがリズムを刻みながら、人びとは「再稼働反対」「原発いらない」などとリズミカルにコールしている。このような、サウンドとコールの一体化は、20世紀の日本のデモにはみられなかったものだ。そして、そこに人びとは集まり、踊りながら、より大きな声で発していくのである。もう一度、旧約聖書をみておこう。

角笛が鳴り渡ると、民は鬨の声をあげた。民が角笛の音を聞いて、一斉に鬨の声をあげると、城壁が崩れ落ち、民はそれぞれ、その場から突入し、この町を占領した。

実際、6月29日も7月29日も、人びとがたくさん寄り集まったというだけで、車道にいれまいとした警察の規制線は崩壊したのである。そして、解放された車道でも、人びとはトランペットを吹き鳴らし、ドラムをたたき、踊りながら、「再稼働反対」などとコールした。次の動画において、人びとがこの出来事にいかに熱狂したかということを見て取ることができる。

多くの人びとの声とトランペットの音は、少しづつであるが、官邸や国会などという「原子力の要塞」を壊しつつあるとも思えるのだ。

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2012年7月18日、中日新聞は「関電、大飯再稼働なくても電力供給に余力」という記事をネット配信した。まず、ここで紹介したい。

関電、大飯再稼働なくても電力供給に余力 
2012年7月18日 09時49分

 政府の節電要請から16日までの2週間の関西電力管内の電力需給で、最大需要は2301万キロワットにとどまり、出力118万キロワットの大飯原発3号機(福井県おおい町)が再稼働しなくても、供給力を9%下回っていたことが分かった。猛暑となり17日の最大需要はこの夏一番の2540万キロワットに達したが、10%以上の供給余力があった。政府は夏場の電力不足を理由に強引に大飯原発の再稼働に踏み切ったが、節電効果など需要の見通しの甘さが浮き彫りになった。
 関電は5月にまとめた試算で、原発ゼロのままなら7月前半は8・2%の供給力不足が生じるとし、再稼働の必要性を強調した。政府は大飯の再稼働を決めた上で、関電管内に猛暑だった2010年夏比で15%の節電を求め、3号機のフル稼働後も節電目標を10%に設定している。
 政府は2日に節電要請を開始。関電の資料などによると、16日までの2週間の最大需要は10年同時期と比べて平均で12%低下。最大需要の2301万キロワットを記録した瞬間は供給力を344万キロワット下回り、大飯3号機の118万キロワットを差し引いても余裕があった。需給が最も逼迫(ひっぱく)した時間帯でもさらに209万キロワットの供給が可能だった。
 一方、関電に平均36万キロワットを融通している中部電力も2週間の最大需要は2139万キロワットで、供給力を9%下回った。中電管内の節電目標は当初は5%で、現在、4%に設定されているが、安定した供給体制を確保している。
 関電広報室の担当者は「雨や曇りの日が多く供給が安定したが、今後は気温が平年より高くなるとの予報がある。大飯原発4号機が稼働しても需給の見通しは厳しい」とコメント。中電広報部の担当者も「火力発電所のトラブルリスクなどがあり、電力供給は厳しい」と話した。
 千葉商科大の三橋規宏名誉教授(環境経済学)は「政府や電力会社が、原発を再稼働させるため、電力需要を恣意(しい)的に過大に見積もった結果だ。今後、猛暑になっても電力は足りると思うが、脱原発の機運を高めるため、引き続き企業と家庭で節電の努力が必要」と話した。
(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012071890094758.html

以前、本ブログでも、原発再稼働がなくても関西電力の需要をまかなえたのではないかと指摘した。個人的に、根拠が薄いのではないかと意見がよせられたこともあるのだが、中日新聞の報道が本ブログの記事を裏打ちした格好となった。一日の需要のピークが2540万kwであり、10%の供給能力があったというのである。

ただ、これでも、多少わかりにくいので、関西電力の「でんき予報」に掲載されている7月18日の使用電力状況から、もう一度検討しておきたい。7月18日の最高気温は33.4度で、かなり高い。ピーク時供給力は2902万kwで、実際の最大使用電力は2555万kw(16時台)、347万kwの余力があり、使用率は88%である。関西電力管内では10%の節電目標がかかげられており、もし、全く節電されないならば、電力最大需要は約2810万kwとなることになる。大飯原発3号機の発生電力は118万kw。原発による揚水発電増加分が不明なので概算にとどまるが、大飯原発3号機発生電力118万kwをさしひくならば、原発がない場合のピーク時供給力は2784万kwとなる。原発がない場合。全く節電しなかったら不足することになるが、余裕をみて10%の余剰電力を見込むならば、需要電力は2529万kwに節電すればいいのである。これは、実際の電力需要とほぼ一致しているといえよう。

5月19日に関電が発表した電力需給予想によると、7月後半から8月中の最大電力需要は2987万kwであり、実際の需要とは432万kwも多いのである。この最大電力需要は、猛暑といわれた2010年を基準にしており、ある意味では過大になるようになっているといえる。他方、8月の想定供給力は2542万kwとされており、現在のピーク時供給力とは360万kwも少なく見積もられている。そのうち大飯原発3号機118万kwを除外しても242万kwも少ないのである。現実の需給とはほぼ逆転していたといえよう

このように、関西電力の電力需給予想においては、電力需要は過大に、電力供給は過小にみつもられていたといえよう。そして、大飯原発3号機の再稼働がなくても、節電努力があれば電力は賄えたと考えられる。まして、大飯原発4号機の再稼働は必要ないといえよう。結局は、コストの高い火力発電所の稼働をおさえたいととする関電の経営問題でしかなかったといえるだろう。そのことを、繰り返して確認していかねばならないと思う。

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たぶん、このブログを読んでいる皆さんはご存じだと思うが、自由民主党所属の衆議院議員河野太郎は、熱心に脱原発を主張している。この前、「現代ビジネス」というサイト(『週刊現代』などの記事が転載されている)に「核心対談 河野太郎(衆議院議員)×小熊英二(慶応大学教授)『この国のかたちを考える』」という記事が6月29日に掲載されており、興味深く読んだ。

この対談の冒頭で、河野は、このように、野田首相による大飯原発再稼働決定を批判している。

河野 大飯原発がとうとう再稼働することになりましたね。福島の過酷事故でこの国の原子力行政がいかにデタラメだったかが明白になり、国民の信頼が地に堕ちたにもかかわらず、野田佳彦総理は一貫して再稼働に前のめりだった。

 では、その安全性を誰が判断したかというと、総理を含めた4大臣だというわけです。科学的知見など持ち合わせていない素人の政治家に原発の安全性などわかるはずがないのに・・・。本来、政治が決めるべきことと政治で決めてはいけないことを完全に混同していますよ。

小熊 おっしゃるとおりだと思います。

河野 車と同じだという理屈を持ち出したりもしますよね。事故も起こすけど、便利だから使っているじゃないか、と。でも、自動車には酔っぱらっているときは運転しちゃいけないというルールがある。それと同じで、原発だって安全基準が確立されていない場合は、稼働しちゃいけないんですよ。

 しかも、関西の電力が足りなくなるから再稼働するという。でも、その理由も怪しいんですよ。だって、関西電力の需給調整契約を見ると、去年3月末には260件あったのに、今年3月末にはわずか24件。需給調整契約とは、企業との間で、電力が不足する場合は節電に協力する代わりに料金を割り引く契約です。

 つまり、今年の夏に電力不足になることは去年からわかっていたんですから、需給調整契約を増やしておくべきだったのに、逆に減っている。これは「再稼働しないと大変な事態になる」とアピールするための瀬戸際作戦じゃないかと思う。

 関西電力も、経産省もわざと手を打たなかったんです。こんなことを許しちゃいけない。これでは原子力行政の信頼性がさらに失墜するだけです。ひょっとしたら、原発から撤退したくてこんなことしてるんですかと皮肉を言いたくなるくらい、酷い仕事ぶりですよ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32875(以下引用同じ)

そして、やはり、脱原発を主張している小熊英二とともに、原発の安全基準、原発輸出、原発のコスト、核燃料サイクルなどについて、批判を加えていっている。これらについては、このサイトを一読することをすすめておきたい。

しかし、私が興味を覚えたのは、どのように脱原発をすすめていくかについて、河野が後半で述べているところである。河野は、このように主張している。

河野 原発事故で多くの国民に政治参加の意識が出てきたのは事実だと思うんです。実際、たくさんの人から「わたしたちは何をすればいいの?」というメールももらいました。そうした人のなかには、確かにデモに参加した人もいる。しかし、彼らの話を聞くと、デモに行っただけで終わっているんですね。脱原発は国政マターですから、政治家に働きかけをしなければいけないのに、そこには思いが至らない。

「デモに行くのもいいけど、地元の政治家事務所に行ってあなたの考えを伝えてください。そうしないと何も変わりませんよ」と言ったんです。ブログにも「日本はシリアとは違うから、乗り込んでいっても銃で撃たれることはありませんよ」と書いたら、「本当にそんなことをしてもいいんですか」というメールが大量に来た。

小熊 それは逆にいえば、日本はシリア並みに政治家が市民から遠い国だ、ということですね。

河野 私にしてみれば、政治家のところに行かないでどうするんだと思うんです。だって、東京電力は事故の後、しかるべき立場の人が議員会館を回って、「東電が潰れれば停電が起きます」とか「東電が破綻したら日本の金融市場が崩壊します」と言って歩いた。そうやって政治を動かし、破綻処理を回避したんです。それに対抗しなきゃいけないのに、「日曜日にデモに行って風船持って歩いてきました」では、なにも変えられない。

それに対して、小熊は、デモの重要性を指摘し、河野も、とりあえず同意した。

小熊 おっしゃることはよくわかります。政治家に圧力をかけなきゃいけないのも確かでしょうし、一方で国民の側に「そんなことをやってもいいのか」という自主規制があって、なかなか行動に移せないのも現実です。ただ、デモに参加することの意味は決して小さくないと思う。

 政治的影響力という点では直接的ではないかもしれませんが、デモを体験することで政治的行動に慣れ、その後の行動を広げていくきっかけになるという効果は馬鹿になりません。そういう人のなかから議員に働きかける行動も起こってくると思う。

 デモは古い、ロビイングしたりNPOを作ったりしなければ意味がない、という意見もあるでしょうが、デモが起きないような国に、ロビイング活動やNPOが生まれるでしょうか?

河野 それは、その通りだ。デモが盛んになれば、その次の段階に進む人も増えるでしょうしね。

小熊 ロビイングも大切でしょうが、デモに行くとそれなりに面白い。参加した人が元気になる。その効果は、侮れないと思いますよ。

しかし、やはり、河野は、脱原発運動の進め方について、やはり、いわゆる狭義の政治活動の枠組みを重視している。河野は、原発住民投票運動の意義を疑問としながら、このように述べている。

河野 私は原発問題が国政マターである以上、やはり総選挙で1票投じることが実質的な住民投票ではないかと思うんですね。そして、次の選挙は、もちろん消費税も重要問題ですけど、まず日本のエネルギーをどうするのかが一番の争点にならないといけない。

このように、河野は、脱原発運動において、公選制議員たちへの陳情や、公選制議員たちを選ぶ選挙を重視している。公選で選ばれた代表である議員たちを選出したり働きかけを行ったりすることが、脱原発を実現する道としての王道なのである。その意味で、議会制民主主義の教科書通りの発言であるといえるであろう。

このような進め方が、ある意味で効力があることは否定できない。特に、今まで原発に全面的に依拠してきた官僚・電力会社・原子炉メーカー・立地地域などに対して、部分的・段階的であってもなんらかの進展を求めていこうとするならば、公選制議会における交渉が必要となるだろう。現状において、すべての人びとが直接に統治を行う直接民主主義ではなく、公選代表を通じて統治が行われる間接民主主義が政治運営の原理となっているのである。

といって、では、公選された代表ー議員たちが真に人びとを「代表」するシステムなのかといえば、大いに疑問を抱かざるをえない。確かに、間接民主主義が、人びとの選挙による審判を前提としている以上、例えば封建制のような、家柄によって統治者になるようなシステムよりは、より「民主的」ではあるだろう。しかし、それでも、やはり少数者による寡頭制的統治であることにはかわらない。いわば、「選挙」によって付託された寡頭制的な政治システムが、間接民主主義といえる。

それは、少なくとも国政の場合、やはり、資金・地盤・組織などを有する有力者が有利になるシステムである。そして、消費増税法案における民主党のマニュフェスト違反問題に象徴的に現れているように、選挙の際の民意は無視されても制度的には問題にならないシステムでもある。いわば、選挙による代表ー議員選出は、彼らに白紙委任状を与える行為なのだ。その意味で、人びとの要求は、本来彼らの代理人であったはずの議員たちに「お願い」しなくてはならないことになる。河野を批判してもしかたがないが、間接民主主義とは、そのような矛盾を抱えているシステムなのである。

その意味で、何らかの形で、議会とは別の形で、人びとの主張を直接あげていく直接行動が必要となるだろう。その手段の一つが、いわゆるデモということになる。デモは、人びとの主張を直接あげていく営為である。それは、基本的には二つの対象に向けられることになるだろう。一つは、今デモに参加している人びとよりも多くの人びとに向けての主張であり、彼らに賛同を求めるものである。もう一つは、首相・国会・経産省・電力会社などにむけてのものであり、彼らの行為に抗議し、翻意を促すものである。いずれにせよ、いわば、間接民主主義にあって、その矛盾を、とりあえず埋めていくものとして、デモを位置づけることができよう。そして、このようなデモがあればこそ、国会内で少数派であった河野などが、より活動しやすくなってきているともいえるのだ。

そして、このようなデモは、遠い将来において、間接民主主義という矛盾のあるシステムを「より民主化」し、直接民主主義へ向かっていく方向性の兆しともいえるのだ。

河野を批判するわけではない。彼は、良心的な政治家であろう。しかし、やはり、まさに「職業的」な見地において、限界を有しているといえる。人びとの声を社会の運営に反映させることが最大の課題であり、選挙も陳情もその手段にすぎないのだと私は思う。

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