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Posts Tagged ‘大雪’

前回のブログでは、2月14〜15日の大雪で被災した住民・ドライバーたちの間で、生存を保障しあう共同性が成立していたことを述べた。幹線国道などで大雪で立ち往生した車両のドライバーたちに、住民や自治体は食料を差し入れたり、避難所を提供した。毎日新聞によると、次のような状況が現出されたという。

大雪:渋滞の国道、助け合い…軽井沢
毎日新聞 2014年02月16日 21時13分(最終更新 02月17日 12時08分)

 長野県軽井沢町の国道18号では、30時間以上立ち往生するドライバーに、沿道の市民が温かい食事や飲み物などを差し入れた。

 同町の喫茶店「鐵音(くろがね)茶房」店主、羽山賢次郎さん(70)は、妻静さん(66)と共に、冬季閉鎖中の店を開放。羽山さんによると、15日午前1時ごろから、店の前の国道の車が動かなくなった。「みんな食べものがないだろう」と思い、15日朝から、うどんやカレー、お雑煮を無料で提供した。軽井沢に住んで約45年。食べた人が16日朝、店の前の雪かきをしてくれた。「一宿一飯の恩義と言ってくれた」と羽山さんは話す。【小田中大】
http://mainichi.jp/select/news/20140217k0000m040066000c.html

さて、政府はどのような対応していたのだろうか。もちろん、知事の要請によって自衛隊が出動し、道路除雪や物資輸送などの営為を15日頃より行っていたことは間違いない。しかし、政府の豪雪対策本部が設置されたのが2月18日になったことに象徴されているように、初動が遅れたことは否めない。そもそも、高速道路の通行止めやチェーン規制の徹底自体が遅れている。また、15日にはそれぞれの地域に駐屯している自衛隊が出動しているが、そもそも豪雪地帯ではないため、装備・人員ともに不十分であったと考えられる。通常は政府よりの報道をしている読売新聞や産經新聞も「初動の遅れ」を指摘せざるえなかったのである。

そんな中、政府・与党より、高速道路・国道などの通行が早期に回復できないのは、立ち往生している「放置車両」のためであり、災害対策基本法の改正が必要だという主張が出された。まず、2月17日の政府・与党協議会についてのFNNの報道をみてみよう。

17日に開かれた政府・与党協議会で、政府は、今回の大雪で多くの車が立ち往生するなどして放置され、自治体の除雪作業が難航しているケースがあると報告した。
これを受けて、政府と与党は、大雪などの災害時に、放置された車両の撤去を可能にする法整備が必要かどうかも含め、対応を検討することを確認した。
菅官房長官は「今回の大雪の災害においてですね、多く立ち往生している車両がありますよね。それに対して、除雪の車両が入ることができない。基本的には、災害対策基本法という法の見直しだというふうに思っています」と述べた。
与党内からは「放置車両を壊してもいいということにしないといけないのではないか」との意見も出ているが、自民党の石破幹事長は、放置車両の撤去は必要だとの認識を示しつつ、「車の所有権はどうなるのか。財産権もからみ、難しい話になる」と指摘した。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00263293.html

その後、菅官房長官は定例の記者会見で、車両の強制撤去が可能になるように法整備を進めることを述べた。下記のテレビ朝日の報道をみてほしい。

“立ち往生車両は強制撤去”大雪受けて法整備検討(02/17 16:56)

 今回、道路で立ち往生した車のために除雪車や緊急車両が通れなくなったケースが相次いだことを受けて、政府は、車を強制的に撤去できるように法整備を検討する方針です。

 菅官房長官:「(移動車両の)損失補償の問題もあり、今まで手が付けられずにいたが、緊急の場合にどうするかは大きな課題で、これ以上、先送りすべきではない」
 菅長官は、災害などの緊急時に道路をふさぐ車は所有者の許可がなくても破壊・撤去出来るようにし、後で所有者に損失補償が出来るよう災害対策基本法を早急に見直す方針を明らかにしました。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000021617.html

しかし、この対応は、全く当を得ないものである。阪神淡路大震災の教訓をふまえて、1995年においてすでに災害対策基本法は改正され、緊急通行車両の通行の妨害となる車両などについて警察官はその移動を命じることができ、それができない場合は、強制撤去が可能になっているのである。警察官がいない場合は、自衛隊・消防も同様の措置がとれることになっている。まずは、下記の災害対策基本法の条文をみてほしい(なお、自衛隊・消防についての条文は省略した)。

第七十六条の三  警察官は、通行禁止区域等において、車両その他の物件が緊急通行車両の通行の妨害となることにより災害応急対策の実施に著しい支障が生じるおそれがあると認めるときは、当該車両その他の物件の占有者、所有者又は管理者に対し、当該車両その他の物件を付近の道路外の場所へ移動することその他当該通行禁止区域等における緊急通行車両の円滑な通行を確保するため必要な措置をとることを命ずることができる。
2  前項の場合において、同項の規定による措置をとることを命ぜられた者が当該措置をとらないとき又はその命令の相手方が現場にいないために当該措置をとることを命ずることができないときは、警察官は、自ら当該措置をとることができる。この場合において、警察官は、当該措置をとるためやむを得ない限度において、当該措置に係る車両その他の物件を破損することができる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO223.html#1000000000005000000004000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

この条文をどのようにみても、警官・自衛官・消防吏員による車両の強制撤去が可能であることはあきらかである。法的に車両が強制撤去できないから大雪対策が進まなかったというのは、災害対策基本法を承知していなかったとしたらファンタジーであり、承知していたとしていたら嘘もしくはデマの類である。最近、安倍政権の周辺で、どうみても事実誤認の発言が相次いでいるが、これもその一つであろう。

前回のブログで、立ち往生した車両のドライバーたちに沿線住民・自治体が温かく支援したことを述べた。立ち往生した車両から一時離れて、避難所にいったり、食事のもてなしを受けたり、食料やガソリンの買い出しをしたりすることは、ドライバーからすれば「自助」であり、沿線住民からすれば「共助」である。初動の対応は遅れたとはいえ、警官・自衛隊・消防・県や市町村の職員は、彼らの生存を保障するために除雪や物資輸送などで働いたといえる。いわばこれらの権力機関は「共同性」を保障するために必要とされたといえる。政府はそれを速やかにサポートすることが求められている。にもかかわらず、避難せざるを得なかったドライバーたちの車両を「放置車両」よばわりし、すでに法的に可能になっている車両の強制撤去が必要だとして、やみくもに私権を制限することばかりを政府・与党は提起している。そもそも、彼らにとって、高速道路・国道などの国家的大動脈の通行が「国民」個人の車両のために妨害されていると認識されていたといえるだろう。もちろん、現実には、法的規制のためなどではなく、想定外の大雪のため、初動が遅れたことに起因するのではあるが。政府・与党は、結局のところ、道路の通行止めが長引いたことを、「放置車両」のためだと責任転嫁したと考えられる。それは、いわば、立ち往生した車両をめぐるドライバーたちの「自助」、沿線住民たちの「共助」からなる共同性の世界を否定し、国家的強制を強めることに結果しているのである。

さらに、大雪対策の議論は、憲法改正問題にまで波及した。2月24日にネット配信された毎日新聞の記事をみてほしい。

安倍首相:緊急事態規定を検討 大雪被害受けて
2日前
 安倍晋三首相は24日の衆院予算委員会で、記録的大雪の被害に関連し、大規模災害に備えた緊急事態規定を盛り込むための憲法改正について「大切な課題だ。国民的議論が深まる中で、制度についてしっかりと考えていかなければならない」と述べ、検討を進める考えを示した。自民党は憲法改正草案で緊急事態宣言に基づく首相権限強化などを盛り込んでいる。日本維新の会の小沢鋭仁氏への答弁。

 首相は大雪被害対策について「災害対応は不断の見直しや改善が必要だ。さまざまな指摘に真摯(しんし)に耳を傾け、野党の指摘にも対応していきたい」と強調した。14日の降り始め以降、政府の対応が後手に回ったとの批判をやわらげる狙いもあるとみられる。

 小沢氏は大雪で孤立集落が相次いだ山梨県出身。予算委では小沢氏のほか、被害の出た地元議員が相次ぎ要望した。埼玉県出身の小宮山泰子氏(生活の党)は、体育館の屋根崩落を受けた構造基準見直しの必要性を指摘。太田昭宏国土交通相は「調査結果を踏まえ、見直しが必要かできるだけ早期に見極め検討したい」とした。【影山哲也】
http://sp.mainichi.jp/select/news/20140225k0000m010115000c.html

これは、2012年の自由民主党の日本国憲法改正草案の一節に関連している。この草案では、武力攻撃・内乱・自然災害などの緊急事態において、「緊急事態の制限」を出すことができ、その場合は、法律と同一の効力をもつ「政令」が出せるのである。その場合、「何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」となる。事後に国会の承認が必要となるが、これは、一種の「授権法」といってよいだろう。

第九章 緊急事態

(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

(緊急事態の宣言の効果)
第九十九条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
http://www.geocities.jp/le_grand_concierge2/_geo_contents_/JaakuAmerika2/Jiminkenpo2012.htm#2

大雪対策が「授権法」的憲法改正への動きに結果するということが、現在の安倍政権である。今回の大雪対策の問題は、これは安倍政権ばかりではなく、豪雪地ではない自治体や駐屯自衛隊も含めての「初動」の遅れにあるのであって、別に法律や憲法の不備にあるわけではない。しかしながら、安倍政権は、自らの対応の不備をたなにあげ、人びとが「自助」「共助」のなかでとった行為へと責任転嫁し、私権の制限をはかる法律・憲法改正の必要性を主張する。別に、現行法でも車両の強制撤去はできるにもかかわらずである。そもそも、15〜16日と、公表された範囲では、ソチオリンピックで金メダルをとった羽生結弦選手に祝福の電話をかけ、さらに天ぷらを食べることしかしていないようにみえる安倍首相に「緊急事態宣言」を出す権限を与えても、どのような意味があるのか。現行法の中でも、まともな政治的判断がなされれば、より適切な対応がとれたのではないかと思うし、その点を反省することが、責任者としての安倍晋三首相の行うべきことであろう。大雪対策が憲法改正論議に発展する現在の状況は、現行法でも「国家機密」は保護されているにもかかわらず、憲法のかかげる基本的人権に抵触する可能性が高い「特定秘密保護法」が成立した状況と同様の構図をもっているのである。

*なお、災害対策基本法については、以下のサイトを参考にした。
http://matome.naver.jp/odai/2139331899701944301

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最早、かなり多くの人が月日はうろおぼえだろうが(私もその一人であった)、2012年12月26日は、安倍晋三衆議院議員が首相に就任した日であった。その日に開かれた就任記者会見の中で、安倍首相は次のように述べている。

国家、国民のために目前の危機を打ち破っていくという覚悟において、本日、危機突破内閣を組織いたしました。総裁や代表経験者あるいは次世代を担うリーダー候補に入閣をしていただきました。人物重視、実力重視の人事を行いました。危機突破のために十分にその力を発揮していただきたいと思います。

 この危機突破内閣の発足に当たって、全ての閣僚に対しまして、経済再生、復興、危機管理の3つに全力で取り組むよう、指示をいたしました。特に危機管理に対しましては、現在も北日本の日本海側では劇的な大雪となっており、大きな被害の発生も懸念されます。先ほど内閣危機管理監に対して、人命の保護を第一に警戒対応に万全を尽くし、今後の大雪対策に万全を期すべく、対策室の設置を指示いたしました。政権を担うことになった以上、その瞬間から、油断することなく、全力で危機管理に当たる責任があります。そのことを閣僚全員に徹底をいたしました。
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2012/1226kaiken.html

安倍首相は自分の内閣を「国家、国民のために目前の危機を打ち破っていく」という意味で「危機突破内閣」と名づけた。そして、危機管理上の第一の課題として、北日本の日本海側の「劇的な大雪」への対策をあげた。安倍首相は、人命保護を第一にし、今後の大雪対策に万全を期すべく、内閣危機管理監に対策室(官邸対策室)の設置を指示し、さらに油断なく全力で危機管理にあたる責任があることを閣僚全員に指示したと述べた。この就任記者会見で具体的な政策として次にあげられているのが東日本大震災からの復興、さらにその次がデフレ脱却である。この就任会見では、内閣の第一の課題は大雪対策であったのである。

今になって回想してみると、2012〜2013年の冬は「平成25年豪雪」(Wikipedia)とよばれるほど大雪がふった。例えば青森市酸ヶ湯で歴代1位の566センチ(2013年2月26日)の積雪を観測した。とはいえ、各地域の最大積雪は2013年1〜2月に観測されており、2012年12月の段階では、まだそれほど中央のマスコミは報道していなかった。例えば、読売新聞夕刊2012年12月26日付では次のように報道しているが、みればわかる通り、非常に小さい扱いである。あまり中央のマスコミが報道していなかったことを、安倍首相は内閣の重要課題に位置づけていたのである。

 

北海道で大雪
 強い冬型の気圧配置と寒気の影響で、日本列島は26日、北日本を中心に大雪や強風に見舞われた。北海道は前夜から、ほぼ全域で暴風雪となり、幹線道路の通行止めや列車の運休などが続いた。気象庁は、この冬型の気圧配置は28日頃まで続くとしており、猛吹雪による交通機関の乱れや高波などに警戒するように呼びかけている。
 24時間の降雪量は、青森、山形、福島県で50センチ以上を記録した。

北日本の大雪に対処するために官邸対策室を設置したことにつき、多くのマスコミは関心を示していなかったようであるが、産經新聞はこのことをネット配信した(なお、現在、この記事はネットから削除されている)。そして、この記事を引用しながら、安倍晋三首相の支持者たちは、民主党政権にはみられない、素早い災害対応だと大いに評価していた(そのようなサイトは、検索すれば現在でもすぐに発見できる)。

さて、それから1年余たって、産經新聞は次のような記事をネット配信している。

記録的大雪、政府初動遅れ 除雪障害、車撤去へ法改正を検討
産経新聞 2月18日(火)7時55分配信

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は17日の記者会見で、大雪で道路に立ち往生した車が除雪の障害となり孤立するドライバーや集落が相次いだことを受け、災害緊急時に車両などを行政側が排除できるよう災害対策基本法改正に着手する意向を表明した。

 菅氏は「(除雪のため)車両所有者の意向確認や車両を損壊した場合の損失補償など法的根拠がない」と指摘した上で、「早急に検討する必要がある」と強調した。この方針は17日昼の政府与党協議会でも確認している。

 政府は、今回の大雪への対応について、降雪が本格化する前の14日に災害警戒会議を開き、国民に警戒を呼びかけたほか、関係省庁には除雪態勢の確保や交通障害への対応を指示。15、16両日は山梨や長野などの各県知事から要請を受け、自衛隊を災害派遣したと強調している。

 しかし、予想を上回る大雪で、死傷者数など被害状況の把握は難航した。山梨県に亀岡偉民内閣府政務官を団長とする政府調査団を派遣したのも17日になってから。片側1車線の道路などで取り残された車両が道路をふさぎ、除雪車が入れないケースも目立った。

 政府の対応が後手に回ったことは否めない。

 民主党の松原仁国対委員長は17日の記者会見で、安倍晋三首相が16日夜に支援者と天ぷら料理店で会食していたことから、「緊張感が乏しい。16日の段階で雪の中で孤立している集落や車があった。残念だ」と批判。海江田万里代表も会見で「初動が遅れたというそしりを免れない」と指摘した。

 こうした状況を受け、安倍首相は17日の衆院予算委員会で、「関係自治体と連携を密にし、関係省庁一体となって国民の生命、財産を守るため、対応に万全を期す」と強調した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140218-00000093-san-pol

産經新聞は、安倍政権を支持する姿勢が強い。1年前、大雪対策の官邸対策室設置を報道したのも、その一環であろう。しかし、そんな産經新聞ですら「政府の対応が後手に回ったことは否めない」といわざるをえないのが、今回の安倍内閣の大雪対策なのである。

1年前、マスコミがあまり報道していなかった大雪対策につき官邸対策室をいち早く設置し、あまつさえ内閣の重要課題としたことは何だったのだろうか。そして、なぜ、「後手に回った」のだろうか。その時の安倍内閣と、今の安倍内閣、この二つは違っているのかいないのか。「政権を担うことになった以上、その瞬間から、油断することなく、全力で危機管理に当たる責任」はどこにあるのだろうか。とにかく、微妙な思いにかられるのである。

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2月8日に続き、2月14〜15日も、関東甲信地方は記録的な大雪に襲われた。まず、朝日新聞のネット配信記事をみてほしい。

東日本の広範囲で記録的大雪 甲府で114センチ
2014年2月15日12時25分

 日本の南海上を進む発達した低気圧の影響で、東日本は14日夜から15日にかけて広範囲で記録的な大雪となった。甲府市や前橋市では積雪が観測記録を大幅に更新し、首都圏各地の交通網は混乱した。東急東横線の元住吉駅(川崎市)では電車同士の衝突事故も発生し、19人が軽傷を負った。

 甲府市では15日午前、先週の残雪分も含め114センチの積雪を記録し、1998年1月の49センチを大幅に上回り、1894年からの観測記録を更新。埼玉県秩父市は98センチ、同熊谷市62センチ、前橋市73センチといずれも観測史上1位となった。東京都心も歴代8位タイとなった8日と同じ27センチ。横浜市も28センチを記録した。

 気象庁は14日夕には東京23区の降雪量の予測を10センチとしていたが、低気圧からの暖気が予想よりも入り込まず気温が低くなり、雪の量が増えたという。

 16日午前6時までの24時間降雪量は、いずれも多い所で東北70センチ、関東北部山沿いと甲信60センチ、関東南部20センチ、関東北部の平野部10センチと予想されている。

 群馬県富岡市では同日朝、雪の重みで車庫の屋根が崩れ、男性(79)が下敷きになり死亡した。

 関東南部の平野部では同日未明に雨に変わったが、内陸や山沿いでは16日にかけて雪や強風が続く見込みで、気象庁は警戒を呼びかけている。最大風速はいずれも陸上で東北20メートル、関東18メートル、東海15メートルと予想されている。
http://www.asahi.com/articles/ASG2H1RB8G2HUTIL008.html

甲府・秩父・熊谷・前橋と、軒並み記録更新という状態で、特に甲府では、これまでの記録の2倍以上の114センチを記録した。そして、これは、単に記録というだけでなく、この記事にもあるように、この大雪によって、首都圏の交通網は大混乱に陥ったのである。

私事になるが、本日(15日)、私個人は群馬県館林市の会議に出席することを予定していた。何もなければ、東北道などを経由して自動車で行くことにしていたが、スノータイヤなどの装備がなく、前日(14日)の時点で断念し、鉄道で行くことにしていた。

しかし、東京にいても、夜が深まるにつれて積雪がましており、翌朝起きてもとんでもない深さの積雪だった。とにかく、館林まで鉄道は動いているだろうか。どのくらいの積雪だろうか。そのような情報を求めて、NHK総合テレビの7時台のニュースをみてみた。ところが、大雪情報は少しばかりで、多くは、ソチオリンピックの男子フィギュアスケートで金メダルを獲得した羽生結弦選手のことばかりであった。やや後の配信だが、こんな調子である。

金メダルの羽生「復興に役立ちたい」
2月15日 12時55分

ソチオリンピック、フィギュアスケートの男子シングルで金メダルに輝いた羽生結弦選手は、試合後の記者会見で、東日本大震災で出身地の仙台市が被災した経験に触れ、「復興に役立ちたい」という強い思いを口にしました。

羽生選手は会見で、報道陣から試合後にあまり笑顔を見せない理由を問われて、「金メダルの実感が沸かないこともありますが、震災からの復興のために自分に何ができたのか分からない。複雑な気持ちです」と答えました。
そして、震災の当時を振り返って、「スケートができなくて、本当にスケートをやめようと思いました。生活するのが精いっぱいというなかで、大勢の人に支えられてスケートを続けることができました。金メダルを取れたのは、被災した人たちや支えてくれた人たちの思いを背負ってやってきたからです」と語りました。
そのうえで今後について、羽生選手は「将来、プロになったとき、震災からの復興のために何かできればと思っています。金メダリストになれたからこそ復興のためにできることがあるはずです。これがスタートになると思います」と真剣な表情で話していました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140215/k10015261821000.html

後述するように、私個人は「オリンピック報道」が好きではない。ただ、それは報道のやり方がきらいなだけであって、オリンピックのそれぞれの種目でメダルを獲得すること自体、選手個人にとってかけがえないものであり、一般の「日本国民」においても、喜びを分かち合いたいと思う人が多く存在することは当然だと思う。しかし、その時の私は、何よりも、大雪とそれによる交通網への影響についての最新で詳細な情報を欲していた。とにかく、NHKニュースからの情報収集をあきらめ、民放各局のニュースをみることにした。民放ニュースも「羽生結弦の金メダル」一色であったが、それでも、NHKのニュースよりは、大雪情報を伝えていた。結局、NHKにはたよらず、民放ニュースとネットで収集した情報をもとに、館林までの交通網が混乱しているだろうと判断して出発時間を自主的におくらせた。その後、電話で連絡をとりあって、館林出張をとりやめた。

しかし、こんなことは、実は初めての経験である。地震・津波・台風などの災害時において、私は、CMがあり、視聴率に拘束されている民放各局のニュースよりも、公共放送であり、CMは入らず、視聴率に拘束されず、全国的な支局網をもつNHKのニュースのほうを、速報性・確実性という観点から評価していた。東日本大震災の時もそうであった。もちろん、その情報自体が信頼に値するかいなかは別だが。今回の場合は、逆に、NHKのニュースのほうが「役に立たない」と判断したのである。

もちろん、NHKニュースをずっと見ていた訳ではないので、いわば印象批評でしかないといえる。しかし、この大雪のニュースについてNHKが速報性においても確実性においても劣っていたことは、次の記事でもうかがえるように思う。

記録的大雪 なだれなど注意

県内は低気圧の影響で14日から雪が降り続き、甲府市では、積雪が1メートルを超えるなど記録的な大雪となっています。
気象台では、大雪の峠は越えたとして県内全域に出していた大雪警報は解除しましたが、引き続き雪崩や強風に注意するよう呼びかけています。
甲府地方気象台によりますと低気圧の影響で、県内は14日から雪が降り続き、記録的な大雪になりました。
午前11時の積雪は、▼富士河口湖町で1メートル38センチ▼甲府市で1メートル8センチなどとなっています。
甲府市では、これまでの記録の倍以上となり、120年前の明治27年に記録を取り始めてから最も多くなりました。
気象台は大雪の峠は越えたとして県内全域に出していた大雪警報を午前11時すぎに解除しました。気象台では引き続き16日までなだれに注意するよう呼びかけています。
また、これから16日昼前にかけて県内では風が強まる見込みで強風にも注意するよう呼びかけています。
02月15日 12時59分
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kofu/1045254843.html

これは、NHK甲府地方局の地方ニュースだが、朝日新聞の先のニュースよりもやや遅い時間に配信されたにもかかわらず、甲府の積雪を1メートル8センチとしている。些細なことなのだが、速報性・確実性という点で、NHKは劣っていたといえるのである。

まさに印象でしかないが、公共放送としてのNHKは、オリンピックでの金メダル獲得を重視し、私個人を含めた関東圏の多くの人に影響を与えた大雪情報を軽視しているように思える。私個人は、交通網の混乱で館林に行けない程度のことであるが、大雪のため、屋根などが倒壊して死傷者も出ているそうである。

さて、この「公共放送」における「公共」とは何だろう。私は「公共」には三つの含意があると考えている。一つは「国家的」であり、もう一つは共同利益などの意味での「共同的」であり、最後の一つは言論などを通じた「公開性」である。NHKの籾井勝人会長が、従軍慰安婦への言及だけでなく、「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいかない。国際放送にはそういうニュアンスがある」となどと発言し、物議を醸しているが、これは、まさに、言論の自由などの「公開性」の原則に対し、「国家的」に傾斜した形で「公共」を再定義しようということになるだろう。他方で、今回のようなことは、大雪情報を提供するという人びとの「共同利益」を、「国威発揚」をめざすオリンピック報道によって抑圧したものとみることができる。オリンピックに携わる選手たちのひたむきさを否定はしないし、彼らの活動を伝える報道も必要だろう。しかし、現時点での日本のオリンピック報道は、スポーツを通じて行われる国家間競争の側面が強調され、その中で、「国民」のアイデンティティを再確認することが中心となっていると思われる。その意味でオリンピック報道は「国家的」なものといえる。いわば、ここでは「国家的」なものが「共同的」なものを抑圧したものといえるのである。

このようなことは「ニュースバリュー」という形で、民放各局も含めて内面化されていると考えられる。しかし、視聴率競争に縛られている民放とは別個な形で、「公益」を実現することが「公共放送」であるNHKに期待されていたことである。最初に述べたように、災害時により信頼性の高い情報を提供するというイメージがNHKにはあった。それがふみじられていくこと、これもまたNHKの「国営放送局」化の一側面としてみることができよう。

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