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12月6日、多くの反対や懸念を押し切って成立した特定秘密保護法案については、国連の人権担当者たちも、大きな懸念を抱いていた。11月22日、国連人権理事会から共に任命された、表現・言論の自由保護の特別報告者フランク・ラ・ルー(グアテマラ出身)と、健康の権利の特別報告者であるアナンド・グローバーは、ジュネーブで特定秘密保護法案について懸念を表明した。国連のサイトに掲載された彼らの意見表明をみておこう。

ジュネーブ(2013年11月22日) – 2名の国連の独立人権専門家は11月22日、国が保有する情報の機密指定に関する根拠と手続きを定める日本の特定秘密保護法案につき、深刻な懸念を表明しました。

表現の自由と健康の権利をそれぞれ担当する国連特別報告者たちは、法案に関する詳しい情報の提供を日本の当局に要請するとともに、その人権基準への適合について懸念があることを明らかにしました。

「透明性は民主的なガバナンスの核心をなす要件のひとつです」。表現の自由を担当するフランク・ラ・ルー特別報告者はこのように述べています。「この法案は、秘密保護について極めて広範かつ曖昧な根拠を定めるだけでなく、内部告発者、さらには機密に関して報道するジャーナリストにとっても深刻な脅威を含んでいると見られます」

ラ・ルー氏は、公務に関する秘密保護が認められるのは、重大な被害が及ぶ危険が実証でき、かつ、その被害が、機密とされた情報の閲覧がもたらす全体的な公益よりも大きい場合だけだという点を強調し、次のように述べました。

「当局が秘密保護の必要性を確認できる例外的な場合でも、当局の決定を独立機関が審査することは不可欠です」

ラ・ルー特別報告者は、情報の漏えいについて法案が定める罰則について、特別の注意を喚起し、「誠意により、公的機関による法律違反や不法行為に関する機密情報を漏らした公務員は、法的制裁から守られるべき」であることを強調しました。

「その他、ジャーナリストや市民社会の代表を含め、それが公益にかなうという信念から、機密情報を受け取ったり、拡散したりした個人も、それによって深刻な被害という差し迫った状況に個人が陥ることがない限り、制裁を受けるべきではありません」。ラ・ルー特別報告者はこのように語りました。

一方、昨年訪日し、福島第一原発事故への対応について調査したアナンド・グローバー 健康への権利に関する特別報告者は、災害時に全面的な透明性を常に確保する必要性を強調し、次のように述べました。「特に大災害の場合には、人々が自分の健康について情報に基づく決定を下せるよう、一貫性があり、かつタイムリーな情報提供をすることが不可欠です」

「日本を含め、ほとんどの民主主義国は、国民の知る権利をはっきりと認識しています。例外的な状況では、国家安全保障の保護に機密性が必要になりうるとしても、人権基準は、最大限の開示という原則を常に公務員の行動指針としなければならないことを定めています」。両特別報告者はこのように発言を締めくくりました。

以上
http://www.unic.or.jp/news_press/info/5737/

ラ・ルーはジャーナリズム擁護の観点から、グローバーは、災害時の情報の透明性を確保しようとする観点から、日本の特定秘密保護法案の問題点を指摘し、両者共に「日本を含め、ほとんどの民主主義国は、国民の知る権利をはっきりと認識しています。例外的な状況では、国家安全保障の保護に機密性が必要になりうるとしても、人権基準は、最大限の開示という原則を常に公務員の行動指針としなければならないことを定めています」としているのである。

民主主義国家においては国民の知る権利を尊重しており、情報の最大限の開示が公務員の行動指針であって、国家安全保障の保護に機密性が必要である場合も、それは例外措置であるということは、安倍政権他、この特定秘密保護法制定を推進した人びとには全く欠けた視点である。そして、見ている範囲では、国連の特別報告者たちの懸念について、安倍政権は全く考慮した形跡はないのである。結局、11月26日には、特定秘密保護法案は、衆議院を通過した。

そして、このような状況は、国連の「懸念」をより深めたと思われる。12月2日には、国連人権保護機関のトップであるピレイ人権高等弁務官が、国内外で懸念がある状況下で成立を急ぐべきではないと記者会見で述べた。朝日新聞が12月3日付で配信した記事をここであげておく。

国連人権高等弁務官「急ぐべきでない」 秘密保護法案
2013年12月3日01時37分

 【ジュネーブ=野島淳】国連の人権保護機関のトップ、ピレイ人権高等弁務官が2日、ジュネーブで記者会見し、安倍政権が進める特定秘密保護法案について「何が秘密を構成するのかなど、いくつかの懸念が十分明確になっていない」と指摘。「国内外で懸念があるなかで、成立を急ぐべきではない」と政府や国会に慎重な審議を促した。

 ピレイ氏は同法案が「政府が不都合な情報を秘密として認定するものだ」としたうえで「日本国憲法や国際人権法で保障されている表現の自由や情報アクセス権への適切な保護措置」が必要だとの認識を示した。

 同法案を巡っては、国連人権理事会が任命する人権に関する専門家も「秘密を特定する根拠が極めて広範囲であいまいだ」として深刻な懸念を示している。

http://www.asahi.com/articles/TKY201312020479.html

さて、さすがに、特定秘密保護法案制定を推進する人びとでも、国連の人権高等弁務官の発言には無関心ではいられなかった。毎日新聞2013年12月06日付東京朝刊に掲載した、自民党内の発言を伝える記事をあげておこう。

◇自民・城内氏「国連人権弁務官に謝罪させよ」

 国会の内外で高まる特定秘密保護法案への反対論に対する自民党内のいら立ちが5日朝、党本部で開かれた外交・国防合同部会で噴き出した。矛先が向けられたのは「『秘密』の定義が十分明確ではない」と特定秘密保護法案に懸念を表明した国連の人権部門のトップ、ピレイ国連人権高等弁務官。

 「なぜこのような事実誤認の発言をしたのか、調べて回答させるべきだ。場合によっては謝罪や罷免(要求)、分担金の凍結ぐらいやってもいい」。安倍晋三首相に近い城内実外交部会長は怒りをぶちまけた。ピレイ氏は2日の記者会見で「表現の自由に対する適切な保護措置を設けず、法整備を急ぐべきではない」とも語っており、議員からは「そもそも内政干渉」「弁務官という立場は失格だ」などと強硬意見が相次いだ。

 5日の合同部会は、中国の防空識別圏を中心に議論する予定だったが、党側の意向で急きょ議題に加わった。国連では従軍慰安婦問題で日本批判がたびたび持ち上がり、自民党を刺激してきた経緯もある。中堅議員は「従軍慰安婦問題でも『日本はけしからん』と検証せず発言することが少なくない」と日ごろの鬱憤を晴らした。

 国連総会が指名する弁務官への罷免要求は現実的ではない。発言を理由に分担金をカットするのも先進国の対応としてはありえない。議論は終始、脱線気味だった。
http://mainichi.jp/shimen/news/20131206ddm005010074000c.html

この中で、自民党の外交部会長をしている衆議院議員城内実は人権高等弁務官の発言を「事実誤認」としている。そればかりか、謝罪や罷免を国連に要求し、さらには国連分担金の凍結まで主張しているのである。その他の議員たちも、「内政干渉だ」とか「弁務官という立場では失格だ」とか、同様の発言をしているようである。この記事でも書かれているように、国連総会で指名した高等弁務官に罷免要求することは現実的ではないし、このような発言を理由に分担金をカットするのも先進国の対応ではありえないのだが…。これが、特定秘密保護法案を推進する人びとの感覚なのである。

そして、これは、単に安倍政権だからということではない。刑事訴訟・ヘイトスピーチ禁止・福島の健康被害など、たびたび日本政府は国連より人権上の問題点を指摘されているが、その多くにまとも答えようとはしていないのである。そして、5月22日には、日本の「人権大使」が国連の拷問禁止委員会の対日審査の席上で「笑うな、黙れ」と発言する事態が起きている。産經新聞のネット配信記事から、この状況をみてみよう。

国連で「シャラップ」日本の人権大使、場内の嘲笑に叫ぶ
2013.6.14 08:14 [外交]
 国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会の対日審査が行われた5月22日、日本の上田秀明・人権人道担当大使が英語で「黙れ」を意味する「シャラップ」と大声で発言していたことが13日までに分かった。「シャラップ」は、公の場では非礼に当たる表現。

 日本の非政府組織(NGO)によると、対日審査では拷問禁止委の委員から「日本の刑事司法制度は自白に頼りすぎており、中世のようだ」との指摘が出た。上田大使は「日本の人権状況は先進的だ。中世のようではない」と反論したところ、場内から笑いが起き、上田大使は「何がおかしい。黙れ」と大声を張り上げたという。

 委員会は、警察や国家権力による拷問や非人道的な扱いを禁止する拷問禁止条約に基づき1988年に設置された。国連加盟国の審査を担当し、対日審査は2007年に続き2回目。前回審査でも日本政府側から「(委員は)日本の敵だ」との発言が出たという。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130614/erp13061408180002-n1.htm

国内の選挙民たちを相手にする国会議員だけでなく、ある意味では国外のいろんな発言に冷静に対応しなくてはならない外交官ですら、この始末である。このような、ゆがんだ「先進国」意識を外して考えると、結局のところ、日本は「人権小国」でしかない。そして、そのことを指摘されると、国連であろうとなんだろうと激昂するというのが、現在この国を「統治」している人たちのレベルなのである。

それにしても、前のブログでアメリカ国務省のハーフ副報道官が、特定秘密保護法成立を「歓迎」するとともに、その内容については「懸念」を示していることを紹介した。この人たちは、アメリカ国務省には「抗議」をするのだろうか。知りたいものである。

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