Feeds:
投稿
コメント

Posts Tagged ‘原町高校’

昨日(2012年1月16日)、NHKの「クローズアップ現代」において「子どもが語る大震災(1) 高校生が伝える福島」という番組を視聴した。まずは、内容についての紹介分を紹介しておこう。

東日本大震災で被災した状況を自ら記録し続けている高校生たちがいる。福島県立原町高校放送部の生徒たちだ。原町高校は福島第一原発から30キロ圏内の南相馬市にあり、震災直後から学校は閉鎖。5月に2か所の「サテライト校」に分かれ授業は再開したが、転校を余儀なくされた生徒も全校の半数に及ぶ。放送部の2年生7人は震災と原発事故に翻弄される自分や家族の姿を記録。ドキュメンタリー作品にまとめ、6月のNHK杯放送コンテストで発表した。今も、刻々と変化する暮らしや学校生活を記録し続けている。作品作りのために互いの本心をぶつけあい、困難を乗り越え、心の成長も見せる生徒たち。彼らの姿を通じて「見過ごされてきた等身大の被災地の姿」「子供たち自身が記録し伝える意味」を探る。
(中略)
出演者
江川 紹子さん(ジャーナリスト)
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=3141

この番組のサイトで、原町高校放送部ーつまり高校生が実際に撮影・編集された映像「原発30km圏内からの報告」と「原町高校紹介2011」が紹介されている。この二つの映像、特に前者は、NHKの番組よりも興味深いものだった。「原発30km圏内からの報告」は、NHK杯全国高校放送コンテストでテレビドキュメント部門制作奨励賞となったものである(http://www.haramachi-h.fks.ed.jp/bukatudo/bukatudo.htm)。NHKが、この映像を知ったのは、たぶん、この経緯からのであろう。
 

「原発30km圏内からの報告」は、このようなナレーションから開始されている。

5月9日、原発30km圏内にあるわが原町高校のサテライト校での授業が始まった。
http://www9.nhk.or.jp/gendai/material/img/movie/video_480.html?flv=Genpatu_kurogen_001.flv&autostart=1

このナレーションは男子生徒が行っているが、とにかく淡々として、感情を交えず、事実経過を伝えていくことに徹している。震災・原発報道で、よくセンセーショナルな口ぶりで伝える職業的アナウンサーがいたが、それとは正反対である。しかし、このような感情を押し殺したアナウンスは、逆に、事態の深刻さ、その底にうごめく恐怖を伝えているといえる。

そして、それから、映像は、3.11に遡って、原町高校にどのような運命がふりかかったのかを回想していく。ナレーションでは「東日本大震災2日目、日曜日から混乱が始まった。」と語り、20km圏内が強制避難地域になり、30km圏内が屋内退避という「どうしたらよいのかはっきりわからない地域」に指定されてしまったと述べる。

学校は閉鎖され、そのこと自体がテレビでしか発表されなかった。情報はテレビでしか入手できない状況になった。放送部員たちもばらばらになっていく。30km圏内の原町地区の農家出身の部員は、すぐもどってくるつもりで避難した。50kmは原発から離れている部員の生活には大きな変化はなかった。一方、まさに20km圏内の浪江町に住んでいた二人の部員については「最悪」だと語られている。そして、「おじいちゃんやお父さんなどの上の世代の人たちは、大丈夫だ、爆発なんかしないといっていたけれど、そんなことなかったね」と語る回想などが挿入されている。

結局、しばらく学校は閉鎖された。先生や生徒も学校にこれない状態になった。常に情報不足の状態であったようである。そして、5月に、ようやく、「30km」外の相馬高校と福島西高校にサテライト(仮校舎)を設置して、そこで授業を行うことになった。

それは、高校が二つに分断されたことを意味する。南相馬市などから避難しなかったり、また近隣に避難した高校生たちは、北隣の相馬高校(確か相双サテライトといったと思う)で授業を受けることになった。他方、原発20km圏内に住んでいて、福島などの福島県中通りに避難した高校生たちは、福島西サテライトで授業を受けることになった。特に、飯館村に住んでいる生徒は、計画的避難区域に編入されてしまったため、自身も避難することになってしまったのである。

「原発30km圏内からの報告」の終局部には、このような高校生の分断を前提にして、次のようなフレーズがある。

原発は私たちをばらばらにした。原発はなくなればいいと思った。でも

しかし、このナレーションで「でも」と発言した直後、この発言を覆い隠すように、原町高校の教師が、このように諭している。

東電に直接関連のない会社や個人経営の商店でも、東電関連の人たちがお買いものをするわけですから、東電と全く縁がないということはなかなか難しいかもしれませんね。

これは、たぶん、原町高校放送部が、「両論併記」という形ではあるが、原発問題に対する主張としてみることができる。これは、別に、原町高校の生徒だけの問題ではない。日本のいや世界の課題ということができる。

しかし、NHKの「クローズアップ現代」では、この部分をカットしている。この高校生の映像を紹介したNHKの努力は了とする。NHKがなければ、この高校生たちの映像に接することはできなかった。しかし、このことは黙視しがたい。情報隠蔽である。高校生たちに、「自分の意見は公共番組では伝えるべきものではない」と教え諭しているようなものではなかろうか。

もちろん、「クローズアップ現代」自身の取材を総否定するつもりはない。10月になり、相双サテライトから原町高校に生徒たちが移り、他方で福島西サテライトは今年度限りで廃止することなった。「クローズアップ現代」では、互いの状況がかわり、今後の身の振り方に迷う高校生たちの葛藤を繊細に描いている。そして、「スタッフの部屋」というブログでは、このように語られている。

プレビュー(試写)をのぞいてきました。

取材VTRは高校生の日常のリアルが伝わってくるものでした。
もちろん、原町高校を離れてサテライト校での授業をうけることになってしまう生徒や、
学校を離れていく生徒、
今後の不安など、厳しい状況はいくつも出てきます。
ただ、それでも、高校生らしさを失わないというか、
VTRを見ながら、
自分の高校時代を思い出してしまうような感じもいくつも出てきます。

先にご紹介した原町高校のホームページには、
校内の放射線の線量まで記載されています。
生徒はきっと、不安も心配もいろいろとあって、
「震災さえなければ…、原発事故さえなければ…」という思いは本当に強いと思います。
それでも、原町高校放送部のメンバーは今後も”みずから記録”することを続けていくそうです。
わたしたちマスコミによる”記録”では決して見えない、
“リアルな部分”に、すこしホッとするというか、
がんばってほしいと感じたプレビューでした。
http://www.nhk.or.jp/gendai-blog/100/106364.html

つまりは、「震災さえなければ…、原発事故さえなければ…」(なお、この発言は、原町高校放送部の顧問の教師によるもの)という気持ちを全くわかっていなかったわけではないのである。しかしながら、NHKは、放送では、「原発はなくなればいい」という発言をカットし「高校生の人間ドラマ」という面を強調したのである。

インターネットにて、この放送をみた人たちの声を検索してみた。評価する人たちがいる一方、「高校生たちは放射線問題にふれていない」と批判する人もいた。ただ、これは、高校生たちのせいではない。NHKの責任であることを、ここでは主張しておこう。

それにしても、こんな番組まで、歴史学の王道である「史料批判」をしないとはみられないということに、正直驚いている。メディアの「透明性」とは、今はないらしい。もちろん、こんな番組が作成され、そのソースまで公開されているのであるから、NHKでも良心的な人びとはいるのだろう。しかし、高校生の、今や当たり前の主張ーしかも両論併記という形で彼ら自身が公平性を担保しようとしているーまで封殺することが当たり前と思っている人たちが、NHKの主流なのであろう。

こういう、高校生たちの取り組みに感心したことを、このブログでは伝えたかった。今もその思いは強くある。しかし、情報操作・情報隠蔽は、こんな番組までおよび、史料批判をしないと感動もできない状態になっていることに、私の心は沈んでいる。

*なお、原町高校放送部の映像はNHKの「クローズアップ現代」のサイトからみることができる。他方、NHKが製作した「子どもが語る大震災(1) 高校生が伝える福島」という番組は、NHKオンデマンドで視聴が可能である。有料だが105円なので、できたら、両方の映像比較してみてほしい。

広告

Read Full Post »