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東京電力は4月30日に3年ぶりに「黒字」になったと発表した。ここでは、毎日新聞のネット配信記事をあげておく。

東京電力:3年ぶり黒字 料金値上げとコスト削減で
毎日新聞 2014年04月30日 20時47分(最終更新 04月30日 20時55分)

 東京電力が30日発表した2014年3月期連結決算は、経常損益が1014億円と3年ぶりの黒字を確保した。電気料金値上げに伴う収入増やコスト削減効果が大きかった。しかし、今年1月に策定した新たな総合特別事業計画(再建計画)で前提とした柏崎刈羽原発(新潟県)の今夏の再稼働は見通せず、15年3月期の業績見通しは「未定」とした。原発の再稼働が進まなければ、火力燃料費の増大に伴う収支悪化は確実で、電気料金再値上げの検討も避けられない。

 売上高は前年同期比11.0%増の6兆6314億円。電気料金の値上げで収入が約2430億円増えたことが主な要因だ。賠償費用分として原子力損害賠償支援機構から交付された1兆6657億円を特別利益に計上し、最終(当期)損益は4386億円の大幅な黒字となった。原子力損害賠償支援機構への返済に当たる特別負担金500億円も支払った。

 14年3月期の経常黒字達成は、金融機関が東電に融資を継続する前提条件だった。東電は工事や点検の見直しなどの修繕費で1653億円、人件費の削減で1103億円など、ギリギリの経費削減を進め、3期連続の経常赤字を何とか回避した。東京都内で記者会見した広瀬直己社長は「社員全員が頑張ってきた結果だ」と述べた。

 しかし、今後の再建計画達成の見通しは厳しい。計画では、今年度中に柏崎刈羽原発で最低4基が再稼働することを前提に、毎年1500億円程度の経常黒字を確保する青写真を描く。だが、原発の安全審査では原発直下の活断層調査が長引き、地元自治体の再稼働への反対も根強い。

 一方、原発の再稼働をせずに東電の収益改善を維持するには、電気料金の再値上げ以外、抜本的な方法が見いだせないのが現状だ。すでに東電の電気料金は、過去の値上げや燃料費の高騰に伴い、震災前に比べて標準的世帯で3割以上値上がりしている。広瀬社長は「できれば値上げしないですむようコストダウンをしていく。できるところまで頑張る」と述べるにとどめ、再値上げに関する明言を避けた。【安藤大介】
http://mainichi.jp/select/news/20140501k0000m020069000c.html

この記事を読んでみると、電気料金値上げやコスト削減により経常損益は1014億円の黒字になったことがわかる。他方、それよりもはるかに大きな黒字を稼いでいるのが、原子力損害賠償支援機構から「賠償費用分」として交付された1兆6657億円である。東電はこの交付金を「特別利益」と計上して、最終損益の黒字額が4386億円にふくらんだのである。そして、そもそもこの「特別利益」は「賠償費用分」なのであり、福島第一原発事故の被害者に支払うべきもののはずなのである。最終的には被害者に支払う予定の資金を、一時的であれ東電の「利益」に計上するという「マジック」によって、ようやく「黒字」と称しているにすぎない。しかも、原子力損害賠償支援機構からの交付金は「借金」であり、返済されなくてはならないものなのである。

結局、「14年3月期の経常黒字達成は、金融機関が東電に融資を継続する前提条件」とされており、この黒字は、銀行向けのものとしかいえないのである。

さて、東電の経常損益が「黒字」を達成したということは、銀行などにとってはよいニュースなのだろう。しかし、社会に対してはどうなのだろうか。資本主義社会において、それぞれの企業が公正さを前提にして利潤を獲得することは正当な行為である。しかし、福島第一原発事故を引き起こした東電は、利潤確保が許されるのだろうか。賠償金については原子力損害賠償機構から当面融資されるが、廃炉費用はどうなのか。福島第一原発の廃炉作業については、労働者が集まらないということを聞く。結局、非正規雇用で待遇もよくなければ、集まらないのも当然であろう。また、汚染水タンクにしても、安上がりにしようとして、結局、汚染水漏れを引き起こしている。黒字が出ているならば、本来は、廃炉費用や、十分とはいえない賠償費用に充当すべきであろう。

もちろん、東電に融資している銀行や、最終的には融資していることになるはずの原子力損害賠償支援機構に返済する関係上、利潤を出す必要が経営上あるだろう。しかし、そもそもの問題は、賠償費用にせよ廃炉費用にせよ、到底東京電力では支払うことができなくなったのに、破綻処理もされずに、この会社が存続しているということなのだ。その結果、無理に黒字を出さなければ営利会社としては存立しないが、そのことは、この会社が社会的に背負っているはずの責務と相反するのである。東電は黒字が許される会社ではないのだ。

これは、たぶん、東電だけのことではない。営利会社として「黒字」経営を行うことは当然である。しかし、そのために、いわゆるコスト削減として、労働者の待遇を著しく悪化させたり、修理などを先送りしたりすることは、社会的な意味で許されなくなってきているといえよう。東電は、ある意味で、先端的に、そのことを示しているのである。

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さて、今まで何度となく述べてきたが、東電は福島第一原発に対する処理能力を失っているようにみえる。それならば、国が責任をもって福島第一原発を処理していかねばならないといえるだろう。しかし、その場合、東電が現在の体制のまま、存続することの当否が問われることになるだろう。

そもそも、東京電力が民間会社のまま存続することになったのは、3.11後の菅政権の政治判断によるものである。すでに2011年3月末、震災によって被害を受けた発電所の修理、原子力にかえて火力にするための燃料費、既発行の社債償還などのため東電は資金不足に陥っていた。特に、信用力が低下したため、社債の新規発行ができず、金融機関から2兆円もの借金をすることになった。さらに、原発事故に対する多額の補償金支払いがこの当時から予想されていた。

東電は、原子力損害賠償法における「異常に巨大な天災地災」などによって生じた場合、事業者ではなく政府が損害を補償するという特例条項の適用を求めた。しかし、当時の菅政権はそれを認めず、東電が全額補償するという建前を崩さなかった。しかし、多額に及ぶと見積もられていた補償金の支払を東電が行えば、それだけでも債務超過となり、東電はつぶれるしかなかった。そのため、菅政権としては、東電救済のシステムを造らざるを得なかった。

そのために造られたのが原子力損害賠償支援機構であった。元々の案は大手銀行が作成したといわれている。原子力損害賠償支援機構を新設し、そこに他の電力会社や政府が資金を提供し、東電はそこから借金して、賠償金にまわすという仕組みがつくられた。もちろん、東電は、この借金を返さなくてはならない。政府としては、一時資金を融通するが、最終的には東電が返済するので税金は投入されないとしたのである。

この機構の新設を定めた原子力損害賠償支援機構法は2011年8月3日に成立したが、その直後の2011年8月4日に出された朝日新聞朝刊では、「政府支援の前提となるのは東電のリストラだ」と述べられている。つまり、まずは、大幅なコストカットが東電に義務付けられたのである。しかし、同紙では「最終的な負担は電気料金に回る可能性が高い」としている。実際、2012年に東電の電力料金は値上げされた

他方で、同紙は「東電の株主や金融機関など、利害関係者の責任追及は先送りされた」と報道している。倒産や破産などの法的破たん処理においては、株主や貸し手の金融機関なども損害を蒙ることになるが、破たん処理されなかった東電では、それらに直接的な損害は及ばなかったのである。結局、株主や金融機関の利益は保護されるとともに、政府は税金を投入するという責任をとらず、それらのつけは、リストラと料金値上げにまわされることになったのである。そして、今の時点で回顧してみると、この「リストラ」は、福島第一原発の廃炉費用にも及んでいたと考えられる。

そして、この矛盾は、野田政権下で2012年7月31日に決定された東電の実質国有化においても解消されなかった。東電の国有化は、前述の原子力損害賠償支援機構が1兆円もの株式投資を行う形で行われた。しかし、2012年7月31日付の朝日新聞朝刊は、まず、原子力損害賠償支援機構による東京電力救済を批判して、次のようにいっている。

 

普通なら会社更生法の適用を申請するなどして、つぶれる。「つぶさない」と決めたのは民主党政権だ。
 昨年8月、原子力損害賠償支援機構法をつくり、政府が東電に賠償のための資金を貸したり、出資したりして支える仕組みをつくった。政府が賠償の責任を持ちたくないので、東電に賠償をすべて負わせるためにつぶさなかったのだ。
 この結果、つぶれれば、「債権放棄」で貸したお金が返ってこない銀行や、株が何の価値もなくなる株主が守られ、ほとんど損をしなかった。逆に、東電の生き残りのために利用者や国民が負担を強いられる。

そして、次のように主張している。

 

さらに、賠償費用や除染費用が予想よりふくらめば、東電がつぶれるなどして政府の出資金や賠償のための支援金が返ってこないおそれもある。その時は国民の税金で穴埋めすることになる。

加えて、東電の実質的国有化は、新たな矛盾をうむことになった。前述の朝日新聞朝刊では、「一方、政府は、電力会社を監督する立場と、東電の筆頭株主という立場になり、大きな矛盾を抱える」と指摘している。そして、東電が予定している柏崎刈谷原発の再稼働を事例にして、「政府は本来、原発が安全かどうかをしっかり審査し、再稼働を認めるかどうかを決めなくてはならない」という立場と、「原発が動けば、火力発電の燃料費が抑えられるという。筆頭株主としては東電再建に黄信号がともるため再稼働しなくては困る」という立場が矛盾していることを示すのである。その上で、同紙は、東電の言い分を認めて電力料金の値上げを認可した枝野経産相(当時)の態度をあげながら「政府はこれから、常に東電の側に立つのではないか。そんな疑念を抱かせた」と述べている。つまり、この段階で東電の筆頭株主となった政府は、東電を存続させ、経営を安定させたいという意識が強まったといえる

このような形で東電が存続しているのは、菅・野田という民主党政権の責任である。しかし、その後継となった自民党の安倍政権も、他の分野でさかんに民主党政権の政策見直しを主張しているにもかかわらず、民主党政権が定めた形で東電を維持している。補償費用、除染費用、廃炉費用など、全く利益にならない支出が何兆円(いや十兆円こえて…それより多くとも不思議はない)もあると想定される東電は、到底自分で資金をまかなうことができるとは思えない。長期間かけても、返済することは難しいだろう。実質的には破たんしているのだが、この会社はいまだ「原子力損害賠償支援機構」のもとに存続している。しかし、東電のやっていることは、補償金支払い一つとっても、被災者の意にそったものとは思えない。東電の救済が、被災者への補償金支払いの形で行われているのである。どの道、税金で、補償費用、除染費用、廃炉費用などをまかなうことになるであろうが、営利会社の形をとることで、政府は税金投入の責任を免れ、さらに補償費用、除染費用、廃炉費用などを「安上がり」で行わせることができる。さらに、表面上の責任を東電にとらせることで、株主や金融機関への責任追求をかわせるということになる。

福島第一原発の汚染水漏れは、そのような矛盾の中で発生しているのである。急ごしらえの汚染水のタンクや、先送りされた遮水壁建設などは、しょせん、コストをカットして、国などへの返済金を確保するという意識が背景になっているといえる。もはや、東電自体の当事者能力はないが、その責任は株主でもあり規制者でもある政府がとらなくてはならない。そして、福島第一原発の危機は、当面、コスト意識を捨てて考えなくてはならない。そのような形での税金投入は、民主党政権で免罪された、東電の株主や金融機関にも責任をとってもらうことにもつながっていくといえよう。

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