Feeds:
投稿
コメント

Posts Tagged ‘公約’

さて、もう一度、石破ブログにもどってみよう。現在のところ、石破茂のブログ記事「沖縄など」の終わりは、このように書かれている

今も議員会館の外では「特定機密保護法絶対阻止!」を叫ぶ大音量が鳴り響いています。いかなる勢力なのか知る由もありませんが、左右どのような主張であっても、ただひたすら己の主張を絶叫し、多くの人々の静穏を妨げるような行為は決して世論の共感を呼ぶことはないでしょう。
 主義主張を実現したければ、民主主義に従って理解者を一人でも増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術は「テロ行為とその本質においてあまり変わらない」「本来あるべき民主主義の手法とは異なる」ように思います。
http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/

「テロ行為とその本質においてあまり変わらない」を「本来あるべき民主主義の手法とは異なる」と書き換えたのである。いずれにせよ、デモを民主主義にそぐわないものとしてみていることはあきらかだ。

では、石破のいう「民主主義」とはどんなものだろう。まず、この文章が「沖縄など」と題されていることに注目したい。そもそも、この文章は「沖縄問題」から書き起されているのである。その部分をみておこう。

 

沖縄・普天間移設問題に明け、それに暮れた1週間でした。
 その間に特定秘密保護法案の衆議院における可決・参議院への送付という難事が挟まり、いつにも増して辛い日々ではありましたが、沖縄県選出自民党議員や自民党沖縄県連の苦悩を思えばとてもそのようなことは言っておれません。
 多くの方がご存知のことと思いますが、沖縄における報道はそれ以外の地域とは全く異なるものであり、その現実を理解することなくして沖縄問題は語れません。沖縄における厳しい世論にどう真剣かつ誠実に向き合うのか。私は現地の新聞に「琉球処分の執行官」とまで書かれており、それはそれであらゆる非難を浴びる覚悟でやっているので構わないのですが、沖縄の議員たちはそうはいきません。
 繰り返して申し上げますが、問われているのは沖縄以外の地域の日本国民なのです。沖縄でなくても負うことのできる負担は日本全体で引き受けなくてはならないのです。

この文章だけを読むと、何を書いているかさっぱりわからないが、ここで、石破が書いていることは、沖縄普天間基地の辺野古移転計画を、県外移設を主張していた沖縄県選出自民党議員や沖縄県連に認めさせたことである。その状況について、沖縄タイムス社説は、次のように指摘している。

社説[菅・石破発言]沖縄への露骨な恫喝だ
2013年11月20日 09:21

 「このまま県連の要望を聞いていると、普天間の固定化がほぼ確実になる」「県外移設なんてとんでもない。党本部の方針に従うべきだ」

 菅義偉官房長官と自民党の石破茂幹事長が18日、自民党県連の翁長政俊会長らとそれぞれ会談した中で、県連側に伝えた言葉だ。

 米軍普天間飛行場の県外移設を公約に掲げている県連に対し、両氏はそれぞれ「恫喝(どうかつ)」としか受け取れない激しい言葉で、辺野古移設容認への転換を促した。

 県外移設を求める県民世論に支えられ、公約を堅持してきた県連に対し、辺野古移設か固定化か-と「二者択一」を迫るような姿勢は、強権的な安倍政権の「脅し」でしかない。

 権力をあからさまに振りかざし、問答無用で政府や党本部の方針に従わせようとするやり方は、とうてい容認できない。政治家に対し、支持者との契約ともいえる公約の破棄を求めるのは、有権者を愚弄(ぐろう)するものである。

 そもそも「県外はあり得ない」とする根拠は何か。辺野古以外を検討したのか。そうならば検討した内容を明らかにすべきだ。沖縄の民意を置き去りにして、当初から辺野古ありきなのではないか。

 政府首脳や公党の幹部が、普天間の固定化に言及するのは無責任きわまりない。普天間返還の原点は市街地のど真ん中に位置し、「世界一危険な飛行場」の危険性除去である。「固定化」は自らの不作為を認めるようなもので、とても口にするべきことではない。

    ■    ■

 戦後、米軍基地が沖縄に集中したのは、日本政府が安保の負担を過重に沖縄に負わせた結果である。

 1950年代、山梨や岐阜に駐留していた海兵隊が沖縄に移駐したが、それは本土での反基地感情の高まりが背景にあったからだ。

 本土復帰直後の72年には、米国防総省が沖縄を含む太平洋地域からの海兵隊の撤退を検討していたが、日本政府が海兵隊の駐留維持を求め、在沖米軍基地の大幅縮小の機会が失われた。

 菅氏は自民党県連との会談で「辺野古移設は米軍による抑止力を考えて日米両政府で決めたことだ」とも述べたという。

 しかし、民主党政権で防衛相を務めた森本敏氏は、普天間の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよい」と述べている。菅氏の発言は沖縄に対する「構造的差別」以外の何ものでもない。

    ■    ■

 ことし1月、県内全市町村長と議会議長、県議会全会派などが連名で、普天間飛行場の閉鎖・撤去と県内移設の断念を求める「建白書」を安倍晋三首相に手渡した。

 安倍政権はそれを一顧だにすることなく、3月には辺野古埋め立て申請を提出。県民世論を無視したまま、辺野古移設を進めようとしている。17年も続く迷走は、当事者である沖縄の頭越しに決められているからだ。稲嶺進名護市長が言うように「基地はできてしまえば100年も残る」。一体いつまで沖縄に過重負担を強いるつもりなのか。http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=57006

そして、結局、沖縄県連などは、辺野古移設を認めさせられた。次の読売新聞のネット配信記事をみてほしい。

普天間の辺野古移設、自民沖縄県連が容認へ

 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題を巡り、県外移設を掲げていた自民党県連は26日、同県名護市辺野古への移設を容認する方針を固めた。

 県連所属の国会議員5人が容認に転じた上、県連内でも同飛行場の固定化回避には辺野古移設を否定すべきではないとの意見が大勢を占めたことから、方針転換する。政府・党本部と地元の足並みがそろうことで、政府が申請した移設先の埋め立てについて、仲井真弘多ひろかず知事が承認しやすい環境が整う。

 辺野古容認の方針は、自民党の石破幹事長と国会議員団が25日に確認した「普天間基地の危険性を一日も早く除去するために、辺野古移設を含むあらゆる可能性を排除しない」との文言を踏襲する方向で調整する。ただ、県外移設の主張を堅持すべきだとする一部の声にも配慮し、「あらゆる可能性には、県外も含む」(県連幹部)との考え方をとる方針だ。

(2013年11月27日03時21分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131126-OYT1T01555.htm?from=navr

石破の言っていることは、沖縄県連などに辺野古移設を認めさせたが、その際、軍事施設全般の県外移設をすすめるというリップサービスをしたということなのである。石破のやったことは、沖縄の世論を背景に県外移設を公約としてきた沖縄県選出の国会議員や自民党沖縄県連を説得して、「公約」を破らせたということにほかならない。

結局、ここにあるのは、民意を尊重するというのではなく、公選された代表たちを「説得」して「合意」させて正当性を得ようという政治手法である。沖縄の場合、保守的な自民党ですらも選挙においては普天間基地の県外移設を公約にしないと議員当選は難しかった。それが「民意」であるといえよう。

もちろん、代表制民主主義において、すべてのことを選挙民と合意して政治を進めていくことは難しい。しかし、沖縄において普天間基地を県内に移設させないことは、保守・革新という政治的立場をこえた「世論」となっており、ゆえに自民党の沖縄県連も公約に掲げていたといえる。その意味で「民意」はここでも踏みにじられたのである。

公選された代表である議員たちは、本来主権者である国民の代理人として存在すべきものといえる。しかし、ここでは、公選された議員たちに決定権があり、民意は無視されてもかまわないことになるだろう。たぶん、沖縄で公選された議員たちに対し、石破は形式的には「暴力」的でない形で「合意」をとったといえるだろう。しかし、それは、結局のところ、沖縄の人びとそれぞれの合意ではないといえる。つまり、いわば、公選された議員たちだけが、民意とは無関係に政治を決定できるというシステムになっているといえる。議員主権とでも評価できようか。それが、石破のいう「民主主義」なのである。

広告

Read Full Post »

さて、もう一度、現在の参議院選挙における自由民主党の公約の中で、原発再稼働問題がどのように扱われているかみておこう。自民党の公約では、次のように述べられている。

●原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。
その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします。
●次世代への責任を果たすべく、高レベル放射性廃棄物の「大幅な有害期間の短縮・毒性の低減化」の研究開発を加速させます。

まず、上段では、原子力規制委員会に安全性の判断を委ねるとしながらも、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体を説得するなど積極的に動くとしている。このことについては、そもそも、原子力規制委員会の安全審査自体が十分なのかということがある。

他方で、例え原発の運転は安全だとしても、その結果生じる放射性廃棄物はどうするのかということがある。現在、使用済み核燃料については、再処理してプルトニウムやウランを取り出し、普通の軽水炉(プルサーマル)か高速増殖炉で再び燃料とするという核燃料サイクルが方針として打ち出されている。しかし、現在、核燃料再処理工場、高速増殖炉もんじゅなどは安定して稼働できる保障はない。プルサーマルについては、再処理して再び燃料とするコストを考えると、そのまま廃棄処理するほうが経済的ではないかといわれている。

そして、例え、再処理したとしても、そこで再利用できるのは、プルトニウムやウランだけにすぎない。その他のセシウム137(半減期約30年)、ストロンチウム90(半減期約28年)などはもちろん残る。より問題なことは、ネプツニウム237(半減期214万年)など、長期間にわたって放射線を出すものも残ってしまう。これらについては、放射線が出ないようにガラスで固めて(ガラス固化)、地中深く埋める(地層処分)ことになっている。しかし、放射性廃棄物の種類によっては、それこそ数万年以上も放射線を出し続けることになり、何かのメカニズムで再び地上に出て来ることが懸念されている。その意味で、原発の稼働を続けるということは、人類自体が処理不可能な放射性廃棄物を増やしていくといわれているのである。

そのことに対して、自民党の公約は「次世代への責任を果たすべく、高レベル放射性廃棄物の『大幅な有害期間の短縮・毒性の低減化』の研究開発を加速させます」といっている。これを読んで、最初は何を言っているのかわからなかった。知人に「消滅処理ー核変換処理」のことを言っているのだろうと教示をうけた。何らかの形で、放射性物質の原子核の核種を変換させて、別の物質にするということである

この「消滅処理ー核変換処理」の現状については、デイリー東北がネット配信した記事が要領よくまとめている。

核燃料サイクル

注目の研究「核変換技術」 現状と課題探る
(2013/01/20)
 原発の使用済み核燃料を再処理した際に出る高レベル放射性廃棄物。放射能レベルが非常に高く、人体への毒性が天然ウラン並みに下がるまで約1万年かかるとされる。この核のゴミを、「核変換技術」を用いて毒性を低減させる研究が国内で進められている。政府も2013年度、本腰を入れて取り組む姿勢を示し、注目が集まる。確立すれば毒性低減の時間を1万年から300年に短縮できる「夢の技術」だが、技術的や時間的な課題も多く、実用化は未知数。核のゴミ問題を解決する突破口になるか、現状と課題を探った。

■核変換の仕組み
 核変換は原子核に中性子を当てて、異なる元素や同位体に変換する技術。廃棄物の場合、長時間、強い放射線を出す原子核を短時間で弱い核種に変換するという考え方だ。
 全ての放射性核種には、固有の「半減期」があり、例えば半減期30年のセシウム137は、30年ごとに放射能が半減し、300年で1千分の1になる。
 高レベル廃棄物にはさまざまな核種が存在するが、中でも半減期の長いネプツニウム237(半減期214万年)とアメリシウム243(同7370年)がやっかいだ。
 これらの長寿命放射性原子核はマイナーアクチノイド(MA)と呼ばれ、重さ1トンの使用済み核燃料にわずか1キロしか含まれていないが、放射線を長時間出すため、毒性低減の妨げとなっている。
 核変換では、MAに中性子を当て、半減期の短いセシウム137(同30年)やストロンチウム90(同28年)などの短寿命放射性原子核に変える。どの核種に変化するかは、中性子の当たり具合で異なり、繰り返すことで効果を高められる。

■研究の現状
 廃棄物の核変換技術は現在2種類の研究が行われている。一つは加速器駆動未臨界システム(ADS)を使った研究、もう一つは高速中性子を使った高速炉で発電しながら核変換を行う「高速炉サイクル」の研究だ。
 ADSの研究は原子力機構が茨城県で実施。毒性低減に特化した装置で、専用炉に冷却材の鉛・ビスマスとMAを入れ、加速器で加速させた陽子を照射。炉内で発生した中性子で核変換を行う。
 大量のMAを処理できるほか、臨界(核分裂の連鎖反応)を伴わないため安全性が高いとされるが、装置は未完成で基礎研究にとどまっている。
 一方、高速炉を使った核変換は「もんじゅ」(福井県、原子力機構)で今後、本格的な研究が進められる見通し。
 経済産業省は国の13年度予算の概算要求で、高速炉を使った廃棄物の毒性低減や減容化の研究費として新規で32億円を要求、本格的な研究に着手する方針を示している。

■課題と見通し
 ADSはさまざまな技術的課題がある。まず陽子を照射する加速器を高出力に変えることが不可欠で、超電導装置の研究開発に時間がかかる。
 冷却材に使用している鉛・ビスマスも重い上、さびやすいため酸素濃度の調整が必要なほか、炉内に入れるMAの加工技術も重要な研究課題となる。
 もんじゅは、トラブル続きで現在も運転を停止しており、再開の見通しが立っていない。経産省は「コンピューターのシミュレーションなどで研究はできる」としているが、先行きは不透明だ。
 技術的な課題は、プルトニウム・ウラン混合(MOX)燃料などにMAを混ぜて燃焼させた際の安全性の確保や、以前から指摘されている冷却用ナトリウムの安定性などが挙げられる。
 「もんじゅ」を再稼働させることに対する国民の反発も根強く、今後の研究に影響する可能性がある。http://cgi.daily-tohoku.co.jp/cgi-bin/tiiki_tokuho/kakunen/news/news2013/kn130120a.htm

具体的には、高速増殖炉もんじゅと、東海村の大強度陽子加速器(J-PARC)を使い、そこで、長寿命放射性元素をより寿命の短いセシウムやストロンチウムに変換することが現在研究されているということである。

朝日新聞は、この「核変換」を「現代の錬金術」とよんだネット記事を2013年7月1日に配信している。

核のごみ、毒性消す「錬金術」 実用化には高い壁

 【小池竜太】原発の使用済み核燃料から出る「高レベル放射性廃棄物」が、たまり続けている。国は地下深くに埋めて捨てる方針だが場所は未定。処分場を造っても、放射能が強く、数万年は社会から隔離する必要がある。この「核のごみ」の寿命を短くしたり量を減らしたりする「核変換」という技術がある。実現できるのか。

     ◇

 「核変換はある意味、現代の『錬金術』です」。京都大原子炉実験所の三澤毅教授(原子炉物理学)はいう。中世の錬金術師たちは卑金属から金を作り出そうと試みたが、かなわなかった。だが、今は中性子を使って物質を変えられる。

 実は核変換は珍しいことではない。原発で起きている核分裂反応もその一つ。ウランが中性子を取り込んで分裂、ヨウ素やセシウムなどに変わる。

 核変換技術を原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」対策に役立てる研究がある。毒性が長く続く放射性核種の寿命を短くしたり、毒性を消したりするのが目的。使用済み核燃料をそのまま捨てると、放射線の強さが天然ウランと同じレベルに下がるまで約10万年、高レベル放射性廃棄物は数千年かかる。核変換ができれば数百年に短縮できるとされる。
http://www.asahi.com/special/news/articles/TKY201306300096.html

「核変換処理」でも、危険期間が万年単位から百年単位になるだけのことだが、画期的な技術ではあろう。朝日新聞は、たぶん、評価する意味で「錬金術」とよんでいる。そもそも、原発のエネルギー源となっている核分裂反応は、人の手で新しい物質を作り出すことでもある。そう考えると、全く不可能なことではないともいえよう。

しかし、現状において、そもそも、このような処理は可能なのか。まず、この核変換処理が、使用済み核燃料再処理と、高速増殖炉・プルサーマルによって再処理した核燃料を再利用する核燃料サイクルを前提にして立案されていることに注目しなくてはならない。前述したように、日本の核燃料再処理工場や高速増殖炉もんじゅは、安定的に稼働できる状態ではない。つまり、核変換処理自体の前提がクリアされていないのである。

そして、核変換処理研究の一方の柱として、高速増殖炉もんじゅがあげられている。そもそも、通常運転すらおぼつかないもんじゅで、このような研究が可能なのか。その点、やはり疑問なのである。

もう一つの柱が、茨城県東海村の大強度陽子加速器(J-PARC)である。この陽子加速器を使って核変換させることが現在計画されている。しかし、この陽子加速器をつかったハドロン実験施設で5月23日に放射能漏れ事故が起きたことは記憶に新しい。そもそも、こんな状態で、より危険度の高い放射性廃棄物が扱えるのかとも思うのである。報道の一例として、ここでは毎日新聞のそれをあげておこう。

茨城・放射能漏れ:被ばく 新たに24人確認 計30人に
毎日新聞 2013年05月26日 21時53分(最終更新 05月27日 00時11分)

 茨城県東海村の加速器実験施設「J−PARC」(ジェイパーク)の放射性物質漏れで、日本原子力研究開発機構などは26日、新たに24人の被ばくを確認したと発表した。被ばくしたのはこれまでの6人と合わせ計30人になった。被ばく量は最大で1.7ミリシーベルトだった。6人が未検査で、さらに増える可能性もある。

 同機構などによると、事故は23日正午ごろ発生。当時施設にいた測定対象者55人のうち、49人を測定した。被ばくが確認されたのは22〜55歳の男女計30人で、線量は1.7〜0.1ミリシーベルト。最大被ばく量は、22歳の男性大学院生と29歳の原子力機構の男性職員の計2人だった。女性は、36歳の大学職員(0.1ミリシーベルト)と51歳の研究機関職員(0.4ミリシーベルト)の計2人だった。いずれも放射線業務従事者の年間被ばく限度の50ミリシーベルトを下回っており、「健康に影響する可能性はかなり低い」としている。

 19人は検出限界値未満。残りの6人については27日以降に測定する。

 被ばく者数が多くなった理由について、J−PARCの担当者は「放射性物質が遮蔽(しゃへい)材の隙間(すきま)などを通して漏えいしたが、気付くまでに時間がかかり、退避が遅れたのでは」と説明している。

 事故は、金に陽子線を当てて素粒子を発生させる実験中に照射装置が誤作動し、通常より400倍の強さで陽子線が当たり、高温になった金の一部が蒸発。原子核が崩壊し、放射性物質が漏れた。【斎藤有香】
http://megalodon.jp/2013-0527-0023-09/mainichi.jp/select/news/20130527k0000m040048000c.html

現状でもかなり放射性廃棄物があり、それを処理するための有効な方法を可能な限り研究することはよいだろう。しかし、いかに理論上可能であったとしても、破綻した核燃料サイクルを前提に立案している限り、実施は困難だと考えられる。良い意味でも、悪い意味でも「核変換」とは「現代の錬金術」としかいえないだろう。

その上で、自民党の参院選公約に、「核変換」と思われることが推進されている意味を考えたい。もちろん、これは、原発再稼働において、増え続ける放射性廃棄物の処理につき、ある意味で「前向き」な印象を与えることを目的としていると思われる。そして、それは、破綻した核燃料サイクル事業にさらに資金をつぎ込むことを正当化するものでもあろう。しかし、現状においては、とても実現できるものではない。しかし、逆に、この実現困難性は放射性廃棄物処理を遠い将来の課題として先送る論拠にもなっている。その上で、まさに「核変換処理」という、現状では「幻想」でしかない「錬金術」についての期待と夢をかきたてることにもつながっていく。そして、「錬金術」についての「科学信仰」が強化されていく。実現困難なことへの「期待」と「夢」をかきたてるということは、経済の面におけるアベノミクスにもつながるだろう。その意味で、この一文は、安倍政権全体のあり方にもつながっていると思う。

Read Full Post »

私は、昨年度(2012年度)の歴史学研究会大会特設部会において「原発災害に対する不安・批判の鎮静化と地方利益ー電源交付金制度の創設」という報告を行い、その冒頭で、次のような主張を行った。

 

本報告の目的は単純である。ひと言でいえば、原発災害に対する、原発が立地する地域社会でのリスク意識をいかに鎮静化してきたということについて、リターンとしての「地方利益」の問題から検討し、そのことが災害リスクを一層拡大していくシステムを確立していったことについて、歴史的段階をふまえて考察することを目的としている。(『歴史学研究』第898号、2012年10月、p177)

この報告では、1974年の電源交付金制度の成立過程を中心に検討したが、翻ってみると、日本の原子力開発のすべての過程で、このようなリスクとリターンのバーターはみられた。日本の原子力開発が始まった1954年は、ビキニ環礁における水爆実験によって第五福竜丸などが被曝した年でもあった。この第五福竜丸の被曝は、広島・長崎における原爆投下の記憶を有していた日本の人びとに放射能汚染の恐怖を再認識させたものであり、核兵器の廃絶を求める原水禁運動の出発点となった。しかし、このように、原子力におけるリスクを意識していたにもかかわらず、原水禁運動に携わっている人びとですら、原子力の「平和利用」によって、リターンー利益を得ることを期待していたのである。

といっても、原子炉事故によって生じる放射能への恐怖というリスク認識は払拭しがたいものであった。結局のところ、1950〜1960年代の政府も、原子炉事故によって多くの人びとが被曝し、生産活動に多大な支障をあたえる危険性がある大都市圏に原発のような大容量の原子炉を置くことを忌避し、人口の少ない過疎地に原発を立地することを志向した。いわば、原発のリスクは公言されなくても、意識されていた。

原発を受け入れた福島県においても、原発による放射能汚染のリスクは全く意識されていなかったわけではない。しかし、地域開発というリターンを期待して、原発を受け入れたのである。さらに、1970年代になり、原発建設反対運動が立地地域で盛んに展開されると、それを鎮静化するために、電源交付金制度を1974年に創設したのである。その後も、度重なる原発事故によってリスクが強く意識されることはあったが、安全策をとってリスクを軽減しようという試みよりも、原発によるリターンを過大に意識させることで乗り切ろうとしていたのである。

今、安倍政権が行っている、アベノミクスという名において経済成長政策を行い、その中に原発の積極的再稼働を位置づけるという営みは、日本全国の人びとを相手に、リスクとリターンのバーターを行おうとするものにほかならない。安倍政権の与党である自民党の現在の参議院選挙の公約における経済の項目をみてみよう。まず、経済の項目における冒頭の「総論」にあたる部分をみてみよう。

さあ、経済を取り戻そう。

「瑞穂の国」の資本主義は、開かれた市場における自由な競争と長期的な国内投資によりダイナミックな経済活動を創出するとともに、勤勉を尊び、道義を守ることです。
頑張る方々に、広く成長の果実が行き渡る経済を実現します。

日本経済の新しい姿
●「再生の10年」へ。自民党は、「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」への転換をお約束しました。安倍政権発足後、速やかに大胆に政策方針を転換し、日本は再起動しました。
●まずは、アベノミクスの「3 本の矢」を一体的に推進するとともに、「経済再生と財政健全化の両立」に向けた取組みを通じて、デフレからの早期脱却とともに、持続的成長への道筋を確かなものにします。
●「世界で一番企業が活動しやすい国」「民間の活力と個人の能力が、常に最大限に発揮される社会」を実現します。絶え間なくイノベーションが起き、日本列島の隅々まで活発な経済活動が行き渡り、雇用と所得が増え、一人ひとりが景気回復を実感でき、共に日本の未来に大きな希望を抱ける日まで、強力に迅速に改革を進めます。
●国際リスクなど内外の環境変動に強い新しい経済モデルを確立します。「産業投資立国」と「貿易立国」の双発型エンジンが互いに相乗効果を発揮する「ハイブリッド型経済立国」を目指しています。
●今後10年間の平均で、名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の成長実現を目指します。

ここで、「アベノミクス」自体の詳細は省くが、安倍政権は「成長による富の創出」をめざすとし、名目GDP成長率年3%、実質GDP成長率年2%を「公約」としている。そして、「世界で一番企業が活動しやすい国」とすることを実現することを目的とするとしている。

続いて、資源・エネルギーのところをみておこう。

資源・エネルギー大国への挑戦

●資源小国(輸入国)から資源大国(資源・エネルギー技術を活かしたシステム等の輸出国)へ転換させ、地球規模での安全・安心なエネルギー供給体制の普及拡大に貢献します。
●わが国のエネルギー安全保障上、資源・エネルギーの多様で多角的な供給構造を確立します。
今後3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入促進を行います。
また、海洋産業を育成し、自国経済水域内の天然ガス、メタンハイドレート、レアアース泥等の探査・技術開発・利用の促進を集中的に行い、さらに、北米のシェールガス等の新規輸入等により調達コストを低減させます。
●省エネ・再エネ・蓄電池・燃料電池等を活かした分散型エネルギーシステムの普及拡大を図るとともに、世界最高水準のスマート・コミュニティや原子力技術等のインフラ輸出の支援体制を強化します。2020 年に約 26 兆円(現状8兆円)の内外のエネルギー関連市場を獲得することを目指します。
●これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、「電力システム改革」(広域系統運用の拡大・小売参入の全面自由化・発送電分離)を断行します。
●原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。
その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします。
●次世代への責任を果たすべく、高レベル放射性廃棄物の「大幅な有害期間の短縮・毒性の低減化」の研究開発を加速させます。
●次世代自動車については、2030 年までに、新車販売に占める割合を5割から7割とすることを目指し、研究開発支援や効率的なインフラ整備等を進めます。
●国際宇宙ステーション「きぼう」における宇宙太陽光発電システムの実証計画を策定します。

まず、最初のところで、資源・エネルギー技術の輸出大国になるとし、その後で、原発輸出を主張している。もちろん、再生可能エネルギー開発や、メタンハイドレート・シェールガスなどの新たなエネルギー資源の利用、電力システム改革にも言及している。しかし、原発再稼働については、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします。」と、「安全と判断された」原発の再稼働について、地元自治体を積極的に説得していると述べているのである。

現在、世論調査では、大体のところ、半数程度が原発再稼働に反対している。原発再稼働に賛成している割合は少ない。ここでは、共同通信のネット配信記事(7月17日付)をあげておこう。

共同通信社は13、14両日、参院選での有権者の動向を探るために全国電話世論調査(第4回トレンド調査)を実施した。政府が「安全性は確認された」とした原発の再稼働について、反対が50・6%、賛成40・0%だった。比例代表の投票先政党の1位は自民党で前回調査の29・8%に比べ30・6%とほぼ横ばいだった。安倍内閣の支持率は前回の64・2%に対し65・3%で堅調に推移した。
 原発再稼働への反対が半数を超えたことで、原発政策が参院選終盤の論争の焦点となりそうだ。積極姿勢の安倍政権はあらためて慎重な判断が迫られることになる。
http://www.47news.jp/47topics/e/243507.php

このように、安倍政権は、有権者の多くが支持しない政策を実施しようとしているのだが、それでも、世論調査によると、有権者の多くが安倍政権を支持しているとしている。毎日新聞が7月14日にネット配信した記事をみておこう。

毎日世論調査:参院比例投票先、自民減少37%
毎日新聞 2013年07月14日 20時04分(最終更新 07月15日 02時41分)

 21日投開票の参院選を控え、毎日新聞は13、14の両日、全国世論調査を実施した。参院比例代表の投票先を聞いたところ、自民党が37%とトップで、公明党、日本維新の会、みんなの党が各8%で続いた。自民党の「1強」状態が続くが、自民は6月の前回調査と比べ8ポイント減少した。安倍内閣の支持率は55%で、前回から5ポイント減。ただ参院での自公過半数を望む声は前回に続いて半数を超えた。

 ◇安倍内閣支持率は55%
 参院の比例投票先は、自公の与党で45%(前回は51%)となった。維新の会は前回(5%)から3ポイント増加し、橋下徹共同代表の慰安婦発言による落ち込みがやや回復した。民主党は7%、共産党は4%。前回同様、男女ともすべての年齢層で、自民党を投票先として挙げた人がもっとも多かった。

 また、内閣支持率は55%で発足時(2012年12月)の52%に近づいた。3月調査(70%)▽4月(66%)▽5月(66%)▽6月(60%)で、2回連続の下落は内閣発足以来初めて。

 安倍内閣の高支持率を支える「アベノミクス」は期待先行の側面がある。首相の経済政策によって景気回復が期待できると思うかを聞いたところ「期待できる」は50%で、「期待できない」の41%を上回った。ただ、期待できるとした人の割合は3月調査(65%)▽4月(60%)▽5月(59%)▽6月(55%)と減少傾向。さらに「生活する上で、景気がよくなっていると実感しているか」と尋ねたところ「実感していない」は78%にのぼり、「実感している」の16%を大きく上回った。

 安倍内閣の支持層では「景気回復が期待できる」が82%を占めたのに対し、不支持層では「期待できない」が88%にのぼった。また景気回復を「実感していない」とした人は安倍内閣の支持層では68%なのに対し、不支持層では96%にのぼった。

 景気回復への期待感は内閣支持率と強い相関関係があり、内閣支持率下落はアベノミクスへの期待がややはがれ落ちていることを示しているとみられる。

 一方で自公の与党が参院で過半数の議席を獲得した方がいいと思うかを尋ねたところ、「思う」と答えた人は52%(前回は57%)で、「思わない」の39%(同37%)を大きく上回った。【鈴木美穂】
http://senkyo.mainichi.jp/news/20130715k0000m010047000c.html

毎日新聞によると、やや下がりながらではあるが、内閣支持率は55%あることになっている。そして、その大きな要因が、アベノミクスに対する期待であり、これも約50%の人が期待できるとしているのである。景気回復について、実感がないという人が78%もいるにもかかわらずである。結局、経済成長というリターンへの「期待」が内閣支持率をおしあげているのである。

毎日新聞の記事が書いているように、今回の参院選においては、安倍政権の与党である自由民主党・公明党が優位であるといえる。そして、参院選後において、安倍政権は、これまで以上に原発再稼働に積極的になっていくと考えられる。そうなった場合、究極のところ、原発に対するリスク認識が、経済成長というリターンによってバーターされるということになろう。もちろん、こうなることは望ましい未来ではない。こうならないように努力している人たちも多くいる。その上で、結局、安倍政権が参院選で勝利するということは、そういう意味があるということをここでは指摘しているのである。

しかし、これでは、あまりに悲観的なので、もう少し、希望のあることを述べておこう。安倍政権がなりふりかまわずに、「経済成長」を旗印にしているが、それは、結局のところ、「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざすことにすぎない。企業が一番活動しやすいことと、人びとが暮らしやすいことが相反することが、アベノミクスの進行の中で、より鮮明になってくると思われる。今後、「企業が一番活動しやすい」という「経済成長」を至上の価値として信奉することから脱却することが、いろんな課題ー脱原発、生活保障、自国産業保護などーを解決することの前提にあるということ、このことがより一般的に理解されてくると思うのである。つまり、「経済成長」という「リターン」自体が「無意味」なものであることがしだいに認識されてくると私は考えている。それは、引用した毎日新聞のネット記事の内閣支持率の相対的低下ということにも徴候は現れていると思う。

Read Full Post »

自由民主党政調会長の高市早苗が、6月17日に福島第一原発事故で死亡者は出ておらず、原発は再稼働して活用するしかないと発言し、安倍首相を含めた多くの批判をあびて、19日に謝罪して撤回した。

結局、謝罪して撤回したとはいえ、この高市の発言は、現在の安倍政権の原発政策の基調を可視化したものといえる。今回、そういった観点で、高市発言についてみていくことにする。

まず、第一報をみてみよう。東京新聞6月18日付朝刊では、次のように報道されている。

「福島事故で死者なし」 自民・高市氏が原発再稼働主張

2013年6月18日 朝刊

 自民党の高市早苗政調会長は十七日、神戸市で講演し、原発の再稼働問題について「福島第一原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」と述べた。
 同時に「原発は廃炉まで考えると莫大(ばくだい)なお金がかかるが、稼働している間はコストが比較的安い。エネルギーを安定的に供給できる絵を描けない限り、原発を利用しないというのは無責任な気がする」と指摘した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013061802000122.html?ref=rank

この高市発言のうち、「福島第一原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。」ところに、与野党の批判が集中した。6月19日付東京新聞朝刊は、次のように伝えている。

高市氏「原発事故で死者なし」発言 与野党から批判噴出

2013年6月19日 朝刊

 自民党の高市早苗政調会長は十八日、原発の再稼働について「東京電力福島第一原発事故で死者が出ている状況ではない」として、原発再稼働を主張した自らの発言について「誤解されたなら、しゃべり方が下手だったのかもしれない」と釈明した。ただ、震災関連死を無視するような言葉だけに、与野党から厳しい批判を浴びている。 (清水俊介)
 高市氏は十八日、十七日の講演での言及について「被ばくが直接の原因でなくても体調を崩し亡くなられ、なりわいを失い、自ら命を絶たれた方がいる。(死亡者がいないから)再稼働するなんて考え方は、そもそも持っていない」と記者団に説明した。
 菅義偉官房長官も記者会見で「前後(の文脈)を見ると問題になるような発言ではなかった」と擁護。「被災者に寄り添う形で東日本大震災復興を加速させるとの政府方針を高市氏も理解していると思う」と語った。
 しかし、被災者への配慮を欠いた発言に対する擁護論は少ない。
 自民党の溝手顕正参院幹事長は、夏の参院選への影響を懸念し「この期に及んで余計なことを言わなくてもよい」と指摘。公明党の山口那津男代表は「今なお故郷に帰れない方々が大勢いる中、被災者に共感を持たなければならない。被災者の苦労や苦痛をいかに解消するかに全力を挙げなければならない」と苦言を呈した。
 野党では、民主党の細野豪志幹事長が、福島県内で大勢の震災関連死者が出ていることを挙げて「この数字の重さを理解できない人は政権を担う資格がない」と厳しく批判。
 みんなの党の江田憲司幹事長も「深刻な原発事故への影響の認識が甚だ薄い。政治家を辞めるべきだ」と述べた。みどりの風の谷岡郁子代表は「事故を小さく見せるための無理な考えだ」と発言の撤回を求めた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013061902000104.html?ref=rank

特に、自民党の福島県関係者の批判は強かった。6月20日に福島民報は次の記事をネット配信している。

県連「現状認識乏しい」 森少子化相も直接抗議
 自民党の高市早苗政調会長が東京電力福島第一原発事故で死者は出ていないと発言した問題で、同党県連は19日午前、発言の撤回と謝罪を求める抗議文を党執行部に提出した。
 党県連の抗議文は、「本県では原発事故の影響で過酷な避難により亡くなった方や、精神的に追い詰められ自殺をされた方など現在1400人を超える災害関連死が認定されている」と指摘。「(高市氏の発言は)現状認識に乏しく、亡くなられた方々、ご遺族、避難をされている方々をはじめ、県民に対しての配慮も全くなく、不適切なものであり、強い憤りを感じる」と強く批判した。
 党県連の平出孝朗幹事長、吉田栄光筆頭副幹事長が党本部で党東日本大震災復興加速化本部の大島理森本部長に抗議文を手渡した。大島氏は「(高市)政調会長にもしかと伝える。(抗議文を提出した県連と県民の)思いに対しては申し訳ない思いでいる」と陳謝。さらに「(被災者の)皆さんが地元で苦しんでいる時に、(抗議文を受けたことを)真摯(しんし)に受け止め、(復興に向けて)党を挙げて努力していく」と強調した。平出幹事長らは高市氏と「予定が取れない」との理由で直接面会できなかった。
 また、森少子化担当相も党本部で記者団の取材に応じ、「大変怒っている」として高市氏に直接抗議したことを明らかにした。
http://www.minpo.jp/news/detail/201306209113

結局、安倍首相(というよりも自民党総裁としての立場だが)、高市に「注意喚起」をせざるをえなくなった。結局、6月19日、高市は、発言を撤回し、謝罪せざるをえなくなった。それを伝える東京新聞のネット配信記事をあげておこう。

高市氏撤回し謝罪 「原発事故で死者なし」発言

2013年6月20日 朝刊

 自民党の高市早苗政調会長は十九日、東京電力福島第一原発事故で死者が出ていないとして原発再稼働を主張した自らの発言について「福島県の方に不愉快で悔しい、腹立たしい思いをさせた。撤回し、おわび申し上げる」と陳謝した。党本部で記者団に語った。
 高市氏は野党側からの辞任要求について、進退を安倍晋三首相に委ねる考えを示したが、外遊中の首相は菅義偉官房長官を通じ「今後、発言には注意し、政調会長としての職務はしっかり務めてほしい」と辞任の必要はないとの考えを伝えた。
 問題の発言は、十七日に神戸市で講演した際「福島第一原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。(原発は)最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」と述べたもの。
 高市氏は十八日に「(発言が)誤解されたのであれば、しゃべり方が下手だったのかもしれない」と釈明したが、震災関連死を無視したような発言に、与野党から批判が続出。十九日には自民党福島県連の平出孝朗幹事長らが党本部を訪れ「発言は現状認識に乏しく、県民への配慮もない、不適切なものだ。強い憤りを感じる」と発言撤回と県民への謝罪を求める抗議文を提出。福島県選出の森雅子少子化担当相も国会内で高市氏に直接抗議した。
 菅氏は問題が長引けば、参院選に悪影響を与えかねないと判断。高市氏に「誤解を招いていることは事実だからしっかり対応すべきだ」と要請し、高市氏は発言撤回を決めた。
◆止まらない批判 滋賀知事「許せない」
 滋賀県の嘉田由紀子知事は十九日、自民党の高市政調会長の発言について「震災関連死を無視することは、やってはいけない。いくら再稼働を急ぐからといって、被害をないものにすることは許せない」と批判した。県庁で記者団の取材に答えた。
◆福島県民「どうせ人ごとなんだ」
 多数の「震災関連死」が既に認定されている福島県に対し「原発事故で死者は出ていない」と発言した自民党の高市政調会長。今も約十五万人が避難生活を続ける福島県では「政治家は、どうせ人ごととしか思っていない」との声が広がっている。
 「形だけ取り繕っても意味がない。謝るなら、福島に来て避難者の前で謝ってほしい」
 福島県楢葉町からいわき市に避難している男性(51)は十九日、突き放すように話した。
 第一原発が立地する福島県双葉町に住んでいた七十代の叔父は、埼玉県加須市の避難所で体調を崩し、事故から約三カ月後の二〇一一年六月、入院先で亡くなった。「避難中に亡くなった人は、他にもいっぱいいる。そんなことも分かっていない政治家を相手にするのも疲れた。どうせ人ごとなんだ」
 ことあるごとに「復興が使命」とうたう政権与党幹部の事実認識が欠けた発言に、男性は諦めたような口調だった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013062002000111.html

この高市発言でもっとも問題になったのは、前述したように、福島県で1300人以上にのぼるといわれている「震災関連死」の無視である。確かに、狭義の意味での放射線障害での死亡者は報道されていないが、震災や原発事故後の避難中などになくなったり、自殺した人びとは確実に存在する。市町村によっては、原発事故の影響かいなかを記録している場合もある。3月11日付の東京新聞は、原発事故関連の場合について「原発関連死」として、少なくとも福島県内789人にのぼることを報道した。なお、南相馬市といわき市は原発関連であるかどうかを記録しておらず、東京新聞によれば、それらをいれれば、1000人以上になるだろうとしている。そして、震災後2年たっても増え続けているのである。

原発関連死789人 避難長期化、ストレス 福島県内本紙集計

2013年3月11日

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難やストレスによる体調悪化などで死亡したケースを、本紙が独自に「原発関連死」と定義して、福島県内の市町村に該当者数を取材したところ、少なくとも七百八十九人に上ることが分かった。死者・行方不明者一万八千五百四十九人を出した東日本大震災から十一日で二年。被災三県のうち福島では、宮城、岩手よりも多くの人が今も亡くなり続けている。原発事故は、収束していない。(飯田孝幸、宮畑譲) 
 地震や津波の直接の犠牲者だけでなく、震災や事故後の避難中などに亡くなった人に対し、市町村は「震災関連死」として災害弔慰金(最高五百万円)を給付している。福島では二十二市町村が計千三百三十七人(十日現在)を関連死と認定。二十市町村はこのうちの原発事故に伴う避難者数を把握しており、本紙で「原発関連死」として集計したところ七百八十九人に上った。南相馬市といわき市は把握していない。
 南相馬市の担当者は「事故後、市全域に避難指示を出した。震災関連死と認定した三百九十六人の大半は原発避難者とみられる」と話しており、これを合わせると原発関連の死者は千人を超えるとみられる。
 二百五十四人が原発関連死だった浪江町では、申請用紙の「死亡の状況」欄に「原子力災害による避難中の死亡」という項目がある。町の担当者は「全員がこの項目にチェックしている。自殺した人もいる」と話す。
 震災関連死の認定数は、福島より人口が多い宮城で八百五十六人(八日現在)、岩手が三百六十一人(一月末現在)で、福島が突出している。復興庁は「福島は原発事故に伴う避難による影響が大きい」と分析している。
 認定数の多さだけではなく、影響が長期に及んでいるのも福島の特徴だ。震災後一年間の震災関連死の認定数は福島が七百六十一、宮城六百三十六、岩手百九十三。その後の一年の認定数は福島が五百七十六、宮城が二百二十、岩手が百六十八。今も申請は続き「収束が見えない」(浪江町)という状況だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013031102100005.html

福島原発事故がもたらした、広範囲における長期的避難とそれによる生活破壊、その結果として多数生じている「震災関連死」、これらを無視したとして、高市発言は自民党内からも批判されたといえよう。

さて、それでは、この高市発言が、どのような文脈でなされたかということをみておこう。高市発言の詳細についてはあまり報道されていない。6月19日付東京新聞朝刊が比較的詳細に伝えている。

■高市氏発言の要旨
 【十七日】日本に立地したい企業が増えているが、電力の安定供給が不安要因だ。原発は廃炉まで考えると莫大(ばくだい)なお金がかかるが、稼働中のコストは比較的安い。東日本大震災で悲惨な爆発事故を起こした福島原発も含めて死亡者が出ている状況にない。そうすると、最大限の安全性を確保しながら(原発を)活用するしかないのが現状だ。火力発電も老朽化し、コストがかかる。安いエネルギーを安定的に供給できる絵を描けない限り、原発を利用しないというのは無責任な気がする。(神戸市での講演で)
 【十八日】趣旨を取り違え報道されている。安全基準は最高レベルを保たなければいけないと伝えたかった。誤解されたのであればしゃべり方が下手だったのかもしれない。被ばくが直接の原因でなくても、体調を崩し亡くなられ、なりわいを失い自ら命を絶たれた方がいる。(死亡者がいないから)再稼働するなんて考え方は、そもそも持っていない。(国会内で記者団に)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013061902000104.html

17日の発言において、高市は、企業立地をすすめるために、電力の安定供給が必要であり、そのために比較的安価なコストの原発を利用すべきとしている。その文脈において原発事故において死亡者は出ていないとしているのである。企業を中心として日本社会を運営する、そのためには安い電力が必要であり、ゆえに原発を利用し続けるというのが、高市発言の骨子なのである。18日には、死亡者云々については、取り違えられて報道していると(橋下徹をはじめとした失言した政治家の常套句だ)と述べたが、その骨子は何もかえていない。

企業を中心に日本社会を運営するということは、安倍政権の基調であるといってよい。例えば、2月28日の施政方針演説で安倍首相は次のように述べている。

 

世界のすぐれた企業は、日本に立地したいと考えるでしょうか。
 むしろ、我が国は、深刻な産業空洞化の課題に直面しています。
 長引くデフレからの早期脱却に加え、エネルギーの安定供給とエネルギーコストの低減に向けて、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。
 東京電力福島第一原発事故の反省に立ち、原子力規制委員会のもとで、妥協することなく、安全性を高める新たな安全文化をつくり上げます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します。
 省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、できる限り原発依存度を低減させていきます。同時に、電力システムの抜本的な改革にも着手します。
 世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

もちろん、安倍の施政方針演説においては、「原発依存度の低減」など、ある程度配慮した表現はみられる。しかし、高市発言とそれほど変わらないといえる。高市発言は、ある意味では安倍首相自身がいえない「本音」を代弁しようとしたといえるのである。

 そして、19日に「発言」を「撤回」したはずの高市早苗は、「政調会長」として、翌20日に自民党参院選公約をとりまとめ、その中に「原発再稼働」を明記した。そのことを伝えるテレビ朝日のネット配信記事を次にあげておく。

自民党きょう公約決定 「原発再稼働」を明記(06/20 11:51)

「原発事故による死者はいない」と発言し、福島県などから批判された自民党の高市政調会長。19日に自らのこの発言を撤回・謝罪し、幕引きを図りました。その高市氏は20日、党の公約をまとめますが、そのなかには「原発再稼働」が盛り込まれていて、またしても福島県からの反発が予想されます。

 (政治部・鈴木久嗣記者報告)
 公約を巡っては、普天間基地の問題など地方の県連と足並みがそろわなかった部分もありましたが、高市氏は「全員野球で作り上げた」と胸を張りました。
 自民党・高市政調会長:「ギリギリまで調整を続けて頂き、本当に多くの国会議員が参加して、全員野球で作り上げた公約でございます」
 このなかでは、安全性が確認された原発の再稼働について、地元自治体の理解が得られるよう「最大限の努力をする」として、再稼働が明記されました。再稼働に意欲的な議員の会議では、「原発は地域経済への影響が大きいので、速やかな安全確認を進めてほしい」「再稼働は悪だとする風潮が問題だ」といった意見が出ました。自民党は夕方に公約を正式決定しますが、福島県連や女性支持者など慎重論も出ているなかで原発再稼働への舵を切ることになります。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000007452.html

それこそ、「昨日の今日」である。企業を中心に社会を運営するという安倍政権の方針においては、原発事故による死者の存在はやはり無視されて、原発の本格的再稼働がめざされていくのである。高市早苗の個人的問題ではないのである。

Read Full Post »