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安倍晋三首相が「年頭所感」を1月1日に発表した。たいして長い文章ではないが、ほとんどのマスコミがテクスト自体を報道していないので、ここで全文を紹介しておく。

安倍内閣総理大臣 平成27年 年頭所感

 新年あけましておめでとうございます。

 総理就任から2年が経ちました。この間、経済の再生をはじめ、東日本大震災からの復興、教育の再生、社会保障改革、外交・安全保障の立て直しなど、各般の重要課題に全力で当たってまいりました。さらには、地方の創生や、女性が輝く社会の実現といった新たな課題にも、真正面から取り組んできました。

 そして先の総選挙では、国民の皆様から力強いご支援を頂き、引き続き、内閣総理大臣の重責を担うこととなりました。

いずれも戦後以来の大改革であり、困難な道のりです。しかし、信任という大きな力を得て、今年は、さらに大胆に、さらにスピード感を持って、改革を推し進める。日本の将来を見据えた「改革断行の一年」にしたい、と考えております。

 総選挙では全国各地を駆け巡り、地方にお住いの皆さんや、中小・小規模事業の皆さんなどの声を、直接伺う機会を得ました。こうした多様な声に、きめ細かく応えていくことで、アベノミクスをさらに進化させてまいります。

経済対策を早期に実施し、成長戦略を果断に実行する。今年も、経済最優先で政権運営にあたり、景気回復の暖かい風を、全国津々浦々にお届けしてまいります。

今年は、戦後70年の節目であります。

日本は、先の大戦の深い反省のもとに、戦後、自由で民主的な国家として、ひたすら平和国家としての道を歩み、世界の平和と繁栄に貢献してまいりました。その来し方を振り返りながら、次なる80年、90年、さらには100年に向けて、日本が、どういう国を目指し、世界にどのような貢献をしていくのか。

私たちが目指す国の姿を、この機会に、世界に向けて発信し、新たな国づくりへの力強いスタートを切る。そんな一年にしたいと考えています。

 「なせば成る」。

上杉鷹山のこの言葉を、東洋の魔女と呼ばれた日本女子バレーボールチームを、東京オリンピックで金メダルへと導いた、大松監督は、好んで使い、著書のタイトルとしました。半世紀前、大変なベストセラーとなった本です。

 戦後の焼け野原の中から、日本人は、敢然と立ちあがりました。東京オリンピックを成功させ、日本は世界の中心で活躍できると、自信を取り戻しつつあった時代。大松監督の気迫に満ちた言葉は、当時の日本人たちの心を大いに奮い立たせたに違いありません。

 そして、先人たちは、高度経済成長を成し遂げ、日本は世界に冠たる国となりました。当時の日本人に出来て、今の日本人に出来ない訳はありません。

国民の皆様とともに、日本を、再び、世界の中心で輝く国としていく。その決意を、新年にあたって、新たにしております。

 最後に、国民の皆様の一層の御理解と御支援をお願い申し上げるとともに、本年が、皆様一人ひとりにとって、実り多き素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

平成27年1月1日
内閣総理大臣 安倍晋三
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/0101nentou.html

この「年頭所感」の冒頭は、昨年までの安倍内閣の「業績」を語っている。経済の再生、東日本大震災からの復興、教育の再生、社会保障改革、外交・安全保障の立て直し、地方創成、女性が輝く社会の実現という課題ー安倍首相によれば「戦後以来の大改革」ーに取り組んできたとし、昨年末の総選挙で国民の信任を得たと述べている。

そして、今年は日本の将来をみすえた「改革断行の年」にしたいとして、二つの課題を提起している。第一の課題は「アベノミクスのさらなる進化」である。安倍首相は、「経済対策を早期に実施し、成長戦略を果断に実行する。今年も、経済最優先で政権運営にあたり、景気回復の暖かい風を、全国津々浦々にお届け」するとしている。といっても、具体策が提起されているわけではない。

安倍首相のあげている第二の課題は、戦後70年を迎えて平和国家としての戦後日本を前提としながら、「日本が、どういう国を目指し、世界にどのような貢献をしていくのか」を世界に発信し、新しい国づくりのスタートを切るということである。これは、一見、今までの「平和国家」としての日本を維持していくかにみえる。しかし、たぶん、安倍首相の心底では「新しい国づくり」のほうに力点があるのだろう。

さて、後半は、安倍政権の業績とも政策課題とも違った、「ポエム」のような「心情告白」である。安倍首相は、東京オリンピックの際の日本女子バレーボールチームの大松監督が使った言葉「なせば成る」を声高らかに宣言している。安倍首相は、「戦後の焼け野原の中から、日本人は、敢然と立ちあがりました。東京オリンピックを成功させ、日本は世界の中心で活躍できると、自信を取り戻しつつあった時代。大松監督の気迫に満ちた言葉は、当時の日本人たちの心を大いに奮い立たせたに違いありません。そして、先人たちは、高度経済成長を成し遂げ、日本は世界に冠たる国となりました」と主張している。このなかでは東京オリンピックと戦後復興ー高度経済成長の課程が二重写しにされているのである。

そして、「当時の日本人に出来て、今の日本人に出来ない訳はありません。国民の皆様とともに、日本を、再び、世界の中心で輝く国としていく。その決意を、新年にあたって、新たにしております。」と語りかけているのである。

いわば、「東京オリンピック」を象徴として、戦後復興ー高度経済成長の過程が、過去の「成功体験」として認識されており、「なせば成る」というスローガンのもとに、現在の日本人でもそのような成功が可能なのだとハッパをかけているのである。

ある意味で、安倍首相が考えている、「戦後日本」で受け継ぐべきものとは、この心情告白によって十二分に語られているといえよう。そして、このことは、みずからの親族ー祖父岸信介、大叔父佐藤栄作を継承することでもあるのだ。

しかし、このことは、単に安倍首相の個人的なパーソナリティに還元するだけではとどまらない。安倍首相を積極的であれ消極的であれ支持する人びとはいるのだ。先行きが見えないままー特に民主党政権の「挫折」と3.11以降ー、過去の「成功体験」に依拠するしか未来の展望をもてないということが普遍化していることが問題なのである。

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たぶん、2011年は、二つの意味で日本社会のターニングポイントになったと評されることであろう。一つは、2011年3月11日の東日本大震災とそれによる福島第一原発事故である。そして、もう一つは、中国のGDPが日本のそれを追い越し、中国が世界第二の経済大国となったということがあきらかにされたことである。

ここでは、後者のことをみておこう。次に日本経済新聞が2011年1月20日にネット配信した記事を掲載する。

中国GDP、世界2位確実に 日本、42年ぶり転落
10年2ケタ成長
2011/1/20 11:00 (2011/1/20 13:32更新)

 【北京=高橋哲史】中国国家統計局は20日、2010年の国内総生産(GDP)が実質で前年比10.3%増えたと発表した。年間の成長率が2桁になったのは07年以来、3年ぶり。公共投資や輸出がけん引し、世界的な金融危機の後遺症から抜け出せない日米欧とは対照的な高成長を実現した。名目GDPが日本を抜いたのは確実で、日本は42年間にわたり保ってきた世界第2位の経済大国の地位を中国に譲る。

 10年10~12月期のGDPは実質で前年同期比9.8%増だった。

 10年のGDPは国際比較に用いられる名目ベースで39兆7983億元。1~9月はドル換算で中国が日本をわずかに下回ったが、10~12月期を加えた通年では逆転したとみられる。

 大和総研の試算によると、中国の10年の名目GDPはドル換算で5兆8895億ドル。日本が中国と肩を並べるには内閣府が2月14日に発表する10年10~12月期の名目GDPが前期比27%増になる必要があり、「10年の日中逆転は確実」(熊谷亮丸チーフエコノミスト)になった。同社の推計では日本の10年の名目GDPは5兆4778億ドルで、中国を約4000億ドル下回る。

 中国の高成長の原動力となったのは、公共事業を柱とする投資だ。10年の都市部の固定資産投資(設備投資や建設投資の合計)は前年比24.5%増。伸び率は09年の30.4%を下回ったが、引き続き高水準を保った。景気刺激策に伴う公共事業の拡大が生産を刺激し、経済全体を押し上げた。

 10年3月までは成長を押し下げる要因だった外需も、年央から急速に回復している。10年の輸出額は31.3%増の1兆5779億ドルに達し、09年に続きドイツを抜いて世界一になったもよう。低めに抑えられた人民元相場が輸出を後押しし、経済成長を支える構図は大きく変わっていない。

 10年の社会消費品小売総額(小売売上高)は18.4%増。新車販売台数が32.4%増の1806万台と2年連続で世界一になるなど、個人消費は堅調に推移した。ただGDPに占める消費の割合は4割弱にとどまり、7割の米国、5割強の日本に比べなお小さい。中国政府は「投資、外需、消費のバランスの取れた成長」をスローガンに掲げ、消費の拡大を最重要課題と位置付けている。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1905R_Q1A120C1000000/

すでに、2010年のGDPにおいて、中国は日本を追い越した。そして、それがあきらかになったのは、2011年1月であり、3.11の直前のことであった。3.11の衝撃によって、一時あまり意識されなくなったが、その時の衝撃は大きかったといえる。

なぜなら、日本が世界第二ーアジアでは第一の経済大国であるということは、東アジアにおける日本の威信の源泉であったからである。すでに、中国史研究者の溝口雄三は、2004年に出版された『中国の衝撃』の中で、「中国の農村問題と日本の空洞化現象は、明らかにリンクしている問題である以上、われわれはこれを一面的な『脅威論』から抜け出して、広い歴史の視野で国際化し、また広い国際的視野で歴史化し、対立と共同という緊張関係に『知』的に対処していかねばならない」と指摘し、近代化過程における西洋中心主義的な先進ー後進図式からの脱却と、中華文明圏ー環中国圏という関係構造の持続に注目しながら、「とくに明治以来、中国を経済的・軍事的に圧迫し刺激しつづけてきた周辺国・日本ー私は敢えて日本を周辺国として位置づけたいーが、今世紀中、早ければ今世紀半ばまでに、これまでの経済面での如意棒の占有権を喪失しようとしており、日本人が明治以来、百数十年にわたって見てきた中国に対する優越の夢が覚めはじめていることに気づくべきである」と主張した。溝口によれば、近代以降、日本は中国に優越していると意識してきたが、経済面での優位の喪失は、そのような意識の現実的基盤が失われることを意味するだろうとしているのである。これは、まったく、予言的な発言であったといわざるをえない。

今、翻って、第二次安倍政権の政策展開を回想してみると、中国の台頭による東アジアでの日本の優位性の喪失への「対抗」としての側面が非常に強いと感じられる。経済的優位の喪失は、経済ではなく政治的・軍事的優位によって代替えしようという志向につながった。尖閣諸島・竹島などの国境線における強硬姿勢、戦前の侵略問題や靖国神社参拝さらに従軍慰安婦問題などの歴史問題における緊張関係の醸成は、中国・韓国などの「介入」を許さないという形で、象徴的に日本の優位性を確保しようという試みにほかならない。そして、日米同盟を強調しつつ(ただ、このこと自体が日米摩擦の原因になっているが)、解釈改憲・明文改憲によって、「平和主義」を放棄し、「積極的平和主義」の名のもとに、自衛隊による軍事介入を進めようとしていることは、まさに軍事的な優位を確保しようという動きといえよう。もちろん、このような動きは、戦後一貫して自由民主党などに存在していた。しかし、この動きが、自由民主党内部ですら戸惑いの声があがるほど加速しているのは、アジアにおいて、経済的優位に変わる政治的・軍事的優位を確保しようする、いわば換言すれば、政治的・軍事的な手段によってアジアにおける「大国」としての地位を維持しようという焦燥感に根ざしているのではなかろうか。

他方で、アベノミクスの名の下に、再び「高度経済成長」が可能であるという「幻想」をふりまきつつ、実際には、生活保護費・年金の削減や消費増税などを行い、資本蓄積の最適化をめざしている。安倍政権や経団連にとって、今や「世界の工場」となっている中国と比較すると、労働者賃金においても、社会福祉を中心とした税負担においても、環境保護対策においても、資本蓄積における日本のコストは高すぎると感じられているのだろう。そして、彼らからすれば、現状においては、日本企業においてもコストの低い中国に生産拠点を移転することが合理的なのであり、もし、日本の「空洞化」を阻止するのであれば、中国なみにコストを下げることが必要なのだと思っているに違いない。もちろん、これも、グローバリゼーション化において、「新自由主義」という形で、日本だけではなく、全世界でみられることである。先進資本主義国から、コストの安い新興国に生産拠点が移され、空洞化した先進資本主義国において、国内における「コスト」削減ー賃金・社会保障・教育など広範囲の分野でーをはかる新自由主義は世界のどころでもみることができる。ただ、この動きが、3.11以降、日本国内で加速していることも事実である。この動きのなかでは、かなり高い経済成長を続けて世界第二位の経済大国となった中国への「対抗」が強く意識されているとみることができる。

第二次安倍政権は、第一次安倍政権も含めた歴代保守政権の政策志向を受け継いでいる。改憲論、平和主義の放棄、歴史修正主義、経済成長推進、社会保障切り捨て、等々。しかし、これらの志向が、既存の国際秩序への軋みも考慮せず、国内での社会的反発も等閑視して進められていくことは、これまでなかったことである。そのような「加速」の背景として、中国が世界第二の経済大国となり、日本がアジアにおける優位性を主張できなくなったことへの焦燥感があると考えられるのである。そして、これは、政権内部だけでなく、日本社会の多くの人びとが意識的もしくは無意識的に共有していることなのではなかろうか。むしろ、このような共通感覚にささえられて、大国主義的な第二次安倍政権が存在しているともいえよう。

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私は、昨年度(2012年度)の歴史学研究会大会特設部会において「原発災害に対する不安・批判の鎮静化と地方利益ー電源交付金制度の創設」という報告を行い、その冒頭で、次のような主張を行った。

 

本報告の目的は単純である。ひと言でいえば、原発災害に対する、原発が立地する地域社会でのリスク意識をいかに鎮静化してきたということについて、リターンとしての「地方利益」の問題から検討し、そのことが災害リスクを一層拡大していくシステムを確立していったことについて、歴史的段階をふまえて考察することを目的としている。(『歴史学研究』第898号、2012年10月、p177)

この報告では、1974年の電源交付金制度の成立過程を中心に検討したが、翻ってみると、日本の原子力開発のすべての過程で、このようなリスクとリターンのバーターはみられた。日本の原子力開発が始まった1954年は、ビキニ環礁における水爆実験によって第五福竜丸などが被曝した年でもあった。この第五福竜丸の被曝は、広島・長崎における原爆投下の記憶を有していた日本の人びとに放射能汚染の恐怖を再認識させたものであり、核兵器の廃絶を求める原水禁運動の出発点となった。しかし、このように、原子力におけるリスクを意識していたにもかかわらず、原水禁運動に携わっている人びとですら、原子力の「平和利用」によって、リターンー利益を得ることを期待していたのである。

といっても、原子炉事故によって生じる放射能への恐怖というリスク認識は払拭しがたいものであった。結局のところ、1950〜1960年代の政府も、原子炉事故によって多くの人びとが被曝し、生産活動に多大な支障をあたえる危険性がある大都市圏に原発のような大容量の原子炉を置くことを忌避し、人口の少ない過疎地に原発を立地することを志向した。いわば、原発のリスクは公言されなくても、意識されていた。

原発を受け入れた福島県においても、原発による放射能汚染のリスクは全く意識されていなかったわけではない。しかし、地域開発というリターンを期待して、原発を受け入れたのである。さらに、1970年代になり、原発建設反対運動が立地地域で盛んに展開されると、それを鎮静化するために、電源交付金制度を1974年に創設したのである。その後も、度重なる原発事故によってリスクが強く意識されることはあったが、安全策をとってリスクを軽減しようという試みよりも、原発によるリターンを過大に意識させることで乗り切ろうとしていたのである。

今、安倍政権が行っている、アベノミクスという名において経済成長政策を行い、その中に原発の積極的再稼働を位置づけるという営みは、日本全国の人びとを相手に、リスクとリターンのバーターを行おうとするものにほかならない。安倍政権の与党である自民党の現在の参議院選挙の公約における経済の項目をみてみよう。まず、経済の項目における冒頭の「総論」にあたる部分をみてみよう。

さあ、経済を取り戻そう。

「瑞穂の国」の資本主義は、開かれた市場における自由な競争と長期的な国内投資によりダイナミックな経済活動を創出するとともに、勤勉を尊び、道義を守ることです。
頑張る方々に、広く成長の果実が行き渡る経済を実現します。

日本経済の新しい姿
●「再生の10年」へ。自民党は、「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」への転換をお約束しました。安倍政権発足後、速やかに大胆に政策方針を転換し、日本は再起動しました。
●まずは、アベノミクスの「3 本の矢」を一体的に推進するとともに、「経済再生と財政健全化の両立」に向けた取組みを通じて、デフレからの早期脱却とともに、持続的成長への道筋を確かなものにします。
●「世界で一番企業が活動しやすい国」「民間の活力と個人の能力が、常に最大限に発揮される社会」を実現します。絶え間なくイノベーションが起き、日本列島の隅々まで活発な経済活動が行き渡り、雇用と所得が増え、一人ひとりが景気回復を実感でき、共に日本の未来に大きな希望を抱ける日まで、強力に迅速に改革を進めます。
●国際リスクなど内外の環境変動に強い新しい経済モデルを確立します。「産業投資立国」と「貿易立国」の双発型エンジンが互いに相乗効果を発揮する「ハイブリッド型経済立国」を目指しています。
●今後10年間の平均で、名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の成長実現を目指します。

ここで、「アベノミクス」自体の詳細は省くが、安倍政権は「成長による富の創出」をめざすとし、名目GDP成長率年3%、実質GDP成長率年2%を「公約」としている。そして、「世界で一番企業が活動しやすい国」とすることを実現することを目的とするとしている。

続いて、資源・エネルギーのところをみておこう。

資源・エネルギー大国への挑戦

●資源小国(輸入国)から資源大国(資源・エネルギー技術を活かしたシステム等の輸出国)へ転換させ、地球規模での安全・安心なエネルギー供給体制の普及拡大に貢献します。
●わが国のエネルギー安全保障上、資源・エネルギーの多様で多角的な供給構造を確立します。
今後3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入促進を行います。
また、海洋産業を育成し、自国経済水域内の天然ガス、メタンハイドレート、レアアース泥等の探査・技術開発・利用の促進を集中的に行い、さらに、北米のシェールガス等の新規輸入等により調達コストを低減させます。
●省エネ・再エネ・蓄電池・燃料電池等を活かした分散型エネルギーシステムの普及拡大を図るとともに、世界最高水準のスマート・コミュニティや原子力技術等のインフラ輸出の支援体制を強化します。2020 年に約 26 兆円(現状8兆円)の内外のエネルギー関連市場を獲得することを目指します。
●これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、「電力システム改革」(広域系統運用の拡大・小売参入の全面自由化・発送電分離)を断行します。
●原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。
その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします。
●次世代への責任を果たすべく、高レベル放射性廃棄物の「大幅な有害期間の短縮・毒性の低減化」の研究開発を加速させます。
●次世代自動車については、2030 年までに、新車販売に占める割合を5割から7割とすることを目指し、研究開発支援や効率的なインフラ整備等を進めます。
●国際宇宙ステーション「きぼう」における宇宙太陽光発電システムの実証計画を策定します。

まず、最初のところで、資源・エネルギー技術の輸出大国になるとし、その後で、原発輸出を主張している。もちろん、再生可能エネルギー開発や、メタンハイドレート・シェールガスなどの新たなエネルギー資源の利用、電力システム改革にも言及している。しかし、原発再稼働については、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。その上で、国が責任を持って、安全と判断された原発の再稼働については、地元自治体の理解が得られるよう最大限の努力をいたします。」と、「安全と判断された」原発の再稼働について、地元自治体を積極的に説得していると述べているのである。

現在、世論調査では、大体のところ、半数程度が原発再稼働に反対している。原発再稼働に賛成している割合は少ない。ここでは、共同通信のネット配信記事(7月17日付)をあげておこう。

共同通信社は13、14両日、参院選での有権者の動向を探るために全国電話世論調査(第4回トレンド調査)を実施した。政府が「安全性は確認された」とした原発の再稼働について、反対が50・6%、賛成40・0%だった。比例代表の投票先政党の1位は自民党で前回調査の29・8%に比べ30・6%とほぼ横ばいだった。安倍内閣の支持率は前回の64・2%に対し65・3%で堅調に推移した。
 原発再稼働への反対が半数を超えたことで、原発政策が参院選終盤の論争の焦点となりそうだ。積極姿勢の安倍政権はあらためて慎重な判断が迫られることになる。
http://www.47news.jp/47topics/e/243507.php

このように、安倍政権は、有権者の多くが支持しない政策を実施しようとしているのだが、それでも、世論調査によると、有権者の多くが安倍政権を支持しているとしている。毎日新聞が7月14日にネット配信した記事をみておこう。

毎日世論調査:参院比例投票先、自民減少37%
毎日新聞 2013年07月14日 20時04分(最終更新 07月15日 02時41分)

 21日投開票の参院選を控え、毎日新聞は13、14の両日、全国世論調査を実施した。参院比例代表の投票先を聞いたところ、自民党が37%とトップで、公明党、日本維新の会、みんなの党が各8%で続いた。自民党の「1強」状態が続くが、自民は6月の前回調査と比べ8ポイント減少した。安倍内閣の支持率は55%で、前回から5ポイント減。ただ参院での自公過半数を望む声は前回に続いて半数を超えた。

 ◇安倍内閣支持率は55%
 参院の比例投票先は、自公の与党で45%(前回は51%)となった。維新の会は前回(5%)から3ポイント増加し、橋下徹共同代表の慰安婦発言による落ち込みがやや回復した。民主党は7%、共産党は4%。前回同様、男女ともすべての年齢層で、自民党を投票先として挙げた人がもっとも多かった。

 また、内閣支持率は55%で発足時(2012年12月)の52%に近づいた。3月調査(70%)▽4月(66%)▽5月(66%)▽6月(60%)で、2回連続の下落は内閣発足以来初めて。

 安倍内閣の高支持率を支える「アベノミクス」は期待先行の側面がある。首相の経済政策によって景気回復が期待できると思うかを聞いたところ「期待できる」は50%で、「期待できない」の41%を上回った。ただ、期待できるとした人の割合は3月調査(65%)▽4月(60%)▽5月(59%)▽6月(55%)と減少傾向。さらに「生活する上で、景気がよくなっていると実感しているか」と尋ねたところ「実感していない」は78%にのぼり、「実感している」の16%を大きく上回った。

 安倍内閣の支持層では「景気回復が期待できる」が82%を占めたのに対し、不支持層では「期待できない」が88%にのぼった。また景気回復を「実感していない」とした人は安倍内閣の支持層では68%なのに対し、不支持層では96%にのぼった。

 景気回復への期待感は内閣支持率と強い相関関係があり、内閣支持率下落はアベノミクスへの期待がややはがれ落ちていることを示しているとみられる。

 一方で自公の与党が参院で過半数の議席を獲得した方がいいと思うかを尋ねたところ、「思う」と答えた人は52%(前回は57%)で、「思わない」の39%(同37%)を大きく上回った。【鈴木美穂】
http://senkyo.mainichi.jp/news/20130715k0000m010047000c.html

毎日新聞によると、やや下がりながらではあるが、内閣支持率は55%あることになっている。そして、その大きな要因が、アベノミクスに対する期待であり、これも約50%の人が期待できるとしているのである。景気回復について、実感がないという人が78%もいるにもかかわらずである。結局、経済成長というリターンへの「期待」が内閣支持率をおしあげているのである。

毎日新聞の記事が書いているように、今回の参院選においては、安倍政権の与党である自由民主党・公明党が優位であるといえる。そして、参院選後において、安倍政権は、これまで以上に原発再稼働に積極的になっていくと考えられる。そうなった場合、究極のところ、原発に対するリスク認識が、経済成長というリターンによってバーターされるということになろう。もちろん、こうなることは望ましい未来ではない。こうならないように努力している人たちも多くいる。その上で、結局、安倍政権が参院選で勝利するということは、そういう意味があるということをここでは指摘しているのである。

しかし、これでは、あまりに悲観的なので、もう少し、希望のあることを述べておこう。安倍政権がなりふりかまわずに、「経済成長」を旗印にしているが、それは、結局のところ、「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざすことにすぎない。企業が一番活動しやすいことと、人びとが暮らしやすいことが相反することが、アベノミクスの進行の中で、より鮮明になってくると思われる。今後、「企業が一番活動しやすい」という「経済成長」を至上の価値として信奉することから脱却することが、いろんな課題ー脱原発、生活保障、自国産業保護などーを解決することの前提にあるということ、このことがより一般的に理解されてくると思うのである。つまり、「経済成長」という「リターン」自体が「無意味」なものであることがしだいに認識されてくると私は考えている。それは、引用した毎日新聞のネット記事の内閣支持率の相対的低下ということにも徴候は現れていると思う。

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