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Archive for the ‘反貧困’ Category

日刊ゲンダイ2012年12月12日号に、次のような記事が掲載された。

笹子トンネル崩落は猪瀬直樹が招いた悲劇 道路公団民営化で「コスト3割減」を主張

 笹子トンネルの天上(ママ)板崩落事故は、小泉時代の道路公団民営化の大幅なコストカットが招いた悲劇だ。それが鮮明になってきた。
 当初、「接合部の打音検査をした記録はない」としていた中日本高速道路はその後、「00年にはトンネル上部のボルトや付近のコンクリートの劣化を打音検査で点検した」と説明を一転させている。その検査ではボルトを締めるナットに緩みが見つかった。ところが、同社は「補修で健全性が回復した」と判断。なぜか05年の定期検査から打音が省略されたのである。
 普通なら「補修が必要な状態」が1回でも見つかれば、それからは入念な検査を行う。ところが中日本の動きは逆だから理解に苦しむ。ポイントは00年と05年の検査の間に何があったかだ。この期間に道路公団は民営化されたのである。
 民営化推進の過程で議題に上ったのはコスト削減だった。民営化すればムダが削れる。そういう方向で議論が交わされたのである。議事録によると、当時、道路関係四公団民営化推進委員会の委員だった猪瀬直樹氏はこんな意見書を提出している。
〈新会社は道路本体業務にかかる維持補修等の管理コストの徹底した合理化を行い削減することが求められている〉〈現在の四公団の維持管理に要する費用の合計から概ね3割以上の縮減を目指す〉
 最終的にまとめられた委員会の意見書にも「管理費の徹底的な見直し」「概ね3割の縮減を目指す」などと書かれていて、猪瀬氏の意見が反映されたことがハッキリわかる。当時の道路公団にはファミリー企業がいくつもぶら下がっていた。猪瀬氏はそこにメスを入れようとしたのだろうが、安全性まで置き去りにされた印象は拭えない。
 日航機墜落事故の被害者代理人だった海渡雄一弁護士はこう言った。
 「人の生命に関わる公共性の高い事業の維持管理では削っても大丈夫なもの、削減したら深刻な事故を引き起こしかねないものの2通りがあります。日航機事故は十分な検証をせず、飛行機の修理と検査費用をカットしたことで起きました。猪瀬氏は何を根拠に『3割縮減』を提案したのでしょうか。打音検査が省略化されるに至った経過と、民営化との関連を遡って検証しなければなりません。
 民営化の”成果”を繰り返す猪瀬氏。この人物が都知事でいいのか。有権者はしっかり考えるべきである。

このような指摘は、日刊ゲンダイだけではない。ここで意見を求められている海渡雄一氏は、「レイバーネット日本」というサイトに、12月5日付で「笹子トンネル事故と道路公団民営化」という記事を寄稿している。この中で、打音検査を実施しないことがこの事故につながったとし、高速道路公団の民営化について触れ、「この民営化を推進したのが小泉内閣下での民営化推進委員会である。猪瀬直樹氏はこの委員会で舌鋒鋭くマスコミを巻き込んで民営化を主導した。今も、民営化を成し遂げたことを自らの功績としている。」と指摘している。

そして、「民営化と安全コストの削減は表裏」として、次のように主張している。

公共事業の民営化は国鉄の分割民営化などを見てもわかるとおり、赤字対策として提起される。他方で、民営化に際しては「政治主導」で決定された事業への投資が押し付けられる場合も多い。高速道路についても、儲からない新たな高速道路の建設が押しつけられた。経営収支や財務状況が悪化した民営企業は民営化のメリットを社会的に示すために、設備の改装など目に見えるところには投資を迫られ、目立たないところには投資が控えられる。目立たないところの最たるものが、安全のための投資である。設備のメンテナンス予算が削減される。
 中日本によると、点検は各社ごとに要領を定めて実施。同社は民営化後の06年4月に点検マニュアル「保全点検要領」を策定したが、天井板の点検について「目視による確認をするなどの配慮が必要」としただけで、打音検査は定めなかったとされる。
 中日本高速は今年9月を含む過去の点検で、トンネル最上部の内壁とつり金具のボルト接合部については双眼鏡による目視にとどめ、打音検査は「一度もした記録がない」ことを明らかにしている。同社幹部は「笹子トンネルの場合は(足場となる)天井板から最上部まで高さ5メートルもあり、打音が困難だった」と釈明している。
 しかし、同じ道路公団を分割して民営化された他の各社では打音検査がなされていたことからすると、このような説明には疑問がある。道路公団時代の点検要領を明らかにし、民営化後に検査が省略された可能性の有無を含めて、徹底した捜査がなされるべきである。
 国交省道路局の幹部は「元は旧道路公団の同一組織なのに、中日本が他社同様の点検をしていなかったことは驚きだ。インフラの安全確認は常に強化すべきで、問題を精査する必要がある」と話していたという。
http://www.labornetjp.org/news/2012/1205kaito/view

なお、この記事は、今からみると事実誤認がある。笹子トンネル事故直後の12月2日、中日本高速道路会社は打音検査を一度も行っていないとしたが、12月5日には、2000年に打音検査を実施し、その後行っていないと改めたのである。しかし、このことにより、さらに2005年の高速道路分割民営化と打音検査中止との関連性が強まったといえる。

そして、海渡氏は最後に「民営化政策の是非も都知事選の争点に」として、次のように述べている。

東京都知事選の争点は命を大切にする政治かどうかである。脱原発も福祉も命の問題である。
 猪瀬候補は、都営地下鉄と東京メトロの一元化」=「都営地下鉄の民営化」を政策として掲げている。民営化された高速道路で、このような大きな犠牲が生じたことについて、民営化を推し進めた政治家や都知事候補はどのように考えているのだろうか、説明する責任があるだろう。
http://www.labornetjp.org/news/2012/1205kaito/view 

その後、12月7日に、海渡氏は「道路公団民営化と高速道路の維持管理コストの大幅削減を主張したのは誰か」というメールを「転載可能」という形で出した。猪瀬直樹氏の発言自体をここでは検証している。

さらに、海渡氏が望んでいたように、この問題は都知事選の争点にもなった。12月9日、フジテレビの「新報道2001」(7:30〜8:55)という番組で、都知事選候補者の討論会が行われた。その時、この問題も取り上げられた。ほとんど報道がなく、選挙違反を恐れて動画などもアップされていないので、とりあえず、見ていた人たちのツイッターをまとめたものから、内容を再構成するしかない。少し読みづらいので、時間のない方は、この後にある私のまとめをみてほしい。

猪瀬氏の求めた管理縮減費の削減と笹子トンネルの打音検査の中止は無関係か

新報道2001(フジテレビ2012年12月9日7:30~)における宇都宮けんじ候補と猪瀬直樹候補のやりとりについて

・道路関係四公団民営化推進委員会は2002年から2003年にかけて52回開催。メンバーは今井敬、中村英夫、大宅映子、猪瀬直樹、川本裕子http://www.kantei.go.jp/jp/singi/road/index.html

・道路関係四公団民営化推進委員会第34回委員会(平成14 年11 月30 日)猪瀬委員提出資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/road/dai35/35siryou2-3.pdf
「現在の四公団の維持管理に要する費用の合計額から概ね3 割以上の縮減を目指す(p.5)」
▼続きを読む(残り8行)
by mu0283

宇都宮けんじさん「笹子トンネル事故の背景には打音検査の省略があった。猪瀬氏らが進めた道路公団民営化で、管理コストが三割カットされた影響もある。」
inabatsuyoshi 2012/12/09 08:59:25

報道2001 宇都宮さんの民営化以降、検査していていないという。猪瀬さん、検査していないのは2000年から、民営化は2005年から、事実に基づかない発言はデマになると反論。事故が起こると民営化に結びつける人が必ずでてくる。関係ないことが多いけどね
YoichiTakahashi 2012/12/09 08:52:57

#新報道2001 宇都宮さん「道路公団が民営化する際、猪瀬さんは維持管理費の3割カットを提言し、結果的に取り入れられた。」 (確かに、H14のこの資料にも「維持管理に要する費用の合計額から概ね 3 割以上の縮減を目指す」と書いてある http://t.co/icqzkkmc )
geophysics 2012/12/09 08:56:18

#新報道2001 宇都宮「民営化以降打音検査をやってない」猪瀬「民営化は2005年。最後の打音検査は2000年。事実に基づいて発言しないとデマになる」と反論。宇都宮発言に嘘はないが、打音検査の実施間隔がわからないと微妙。それをあたかもデマのように印象付けようとする猪瀬話法はさすが
geophysics 2012/12/09 09:05:58

@geophysics ご参考。「笹子と同じ構造ながら高さが半分以下の恵那山トンネル(長野、岐阜県)と都夫良野トンネル(神奈川県)では、5年に1回の点検で打音検査をしていたとしている」 http://t.co/k76GtzhM
KutaroMichikusa 2012/12/09 09:50:06

笹子トンネル事故 打音検査せず 県警捜査「予見可能性」が焦点http://t.co/4w18YzhU 「問題視されているのは、中日本高速が平成12年を最後に、ボルトや周辺をハンマーでたたいて異常を確認する「打音検査」を実施していなかったことだ」
mu0283 2012/12/09 09:40:54

笹子トンネル事故 打音検査せず 県警捜査「予見可能性」が焦点http://t.co/4w18YzhU 「こうした事情(平成12年を最後に、打音検査が行われなかったこと)の背景に、17年の民営化で生まれた「利益追求」の姿勢が影響した可能性があるとみる専門家もいる。」
mu0283 2012/12/09 09:42:12
Content from Twitter
↓ コメント欄に記したとおり、録画を確認したところ、猪瀬氏の発言は次の通り。「違う。打音検査は2000年にやめてるから。民営化は2005年ですから。事実関係を、正確に言わないといけません。」

笹子トンネルで打音検査が行われなくなったのは2000年、民営化は2005年だと猪瀬氏反論。しかし、最後の打音検査が2000年、詳細検査が5年ごとだとすると、次の詳細検査は2005年。猪瀬氏は数字は正確に言わないとデマになると宇都宮氏をたしなめたが、反論になっていない。(続)
mu0283 2012/12/09 09:51:03

(続き)猪瀬氏が推進委員会の中で「維持管理に要する費用の合計額から概ね 3 割以上の縮減を目指す」と求めたのは2002年。 そのころから既に、維持管理費のコストカット圧力は強かったはず。http://t.co/uPYDXjSF …
mu0283 2012/12/09 09:51:50

【同社(中日本高速)は「点検は目視が基本」と釈明。ただ、同様の構造を持つ別のトンネルでは打音を行っていたほか、マニュアルを共有する東日本、西日本両高速とも「5年ごとの詳細点検では必ず打音をやる」という。】笹子トンネル事故 打音検査せずhttp://t.co/4w18YzhU
mu0283 2012/12/09 09:57:49
http://togetter.com/li/420014

このまとめは、私大教員である「mu0283」氏が作成したようである。この中で、名前が特定できるのはNPO法人自立生活サポートセンター・もやい所属の稲葉剛氏と、経済学者で元官僚、そして大阪市特別顧問である高橋洋一氏である。

このやりとりから復元すると、都知事候補者である宇都宮健児氏が、「道路公団が民営化する際、猪瀬さんは維持管理費の3割カットを提言し、結果的に取り入れられた。確かに、H14のこの資料にも「維持管理に要する費用の合計額から概ね 3 割以上の縮減を目指す」と書いてあると述べ、猪瀬氏に迫った。そして、猪瀬氏は「違う。打音検査は2000年にやめてるから。民営化は2005年ですから。事実関係を、正確に言わないといけません。」と反論したということのようである。つまり、猪瀬氏は、笹子トンネル事故の原因となった打音検査の中止と民営化は無関係だといいたいのだ。

 しかし、猪瀬氏は、2000年には打音検査が行われていたことを故意か間違いかはわからないが、無視している。大体5年おきで検査していると考えられるので、猪瀬氏の言い方では民営化と打音検査中止の関連性を否定できないといえよう。

もちろん、笹子トンネル事故については、設計上もしくは施工上の問題も原因としては考えられる。そして、中心的な責任者としては、当然のことだが、中日本高速道路会社の幹部にある。しかし、道路関係四公団民営化推進委員会が無責任にコスト削減を目的とした分割民営化を主張し、その結果として、コスト削減を目的として笹子トンネルにおける打音検査が中止され、今回の事故を招いたとみることができる。

そこで問われているのは、コスト削減を目的とした民営化の是非ということである。ほとんど、マスコミの多くは報道しないが、このことは、都知事選における大きな争点になっているといえるのである。

参考
http://kongojia.exblog.jp/17382739/
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/road/index.html
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/road/dai35/35siryou2-3.pdf
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/incident/snk20121209063.html
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0404U_U2A201C1CC1000/?dg=1

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朝日新聞2012年12月9日付朝刊の東京版(29面 東京北部)に、次のような記事が掲載された。東京都知事選も対象とした記事なので、全国版には掲載されず、ネット配信もされていない模様である。ここで、まず、全文を掲載しよう。

届けダブル選@派遣村 生活保護 怠けて来たんじゃない

 芋と野菜がゴロゴロ入った汁。プラスチックの器から白い湯気が立っていた。
 8日、京王線府中駅にほど近い府中公園。市民グループ「府中緊急派遣村」が9日まで開く「年末困り事相談会」の炊き出しを訪ねた。
 テントの中。職を失った人たちが、弁護士や看護師にとつとつと打ち明けている。突然の解雇のこと、健康面の不安ー。通りの向こうでは、選挙カーが候補者名を連呼していた。
 派遣村の村長が松野哲二さん(63)がつぶやいた。「人々が今、不安に思っていることや、困っていることは、今回の選挙では何一つ反映されていないような気がします」
 松野さんが定年後に仲間と派遣村を立ち上げたのは09年。自公政権の社会保障費抑制を強く批判した民主党政権の誕生に期待した。
 あれから3年。世の中では生活保護へのバッシングが高まり、与野党は、引き上げや現物支給案さえ話題にし始めている。もう、どこにも期待できない。
 炊き出しの手伝いをしていた女性(64)に話を聞くことができた。昨春から生活保護を受け、アパートで暮らしているという。
 中学卒業と同時に、育った施設を出て以来、働きづめの50年だった。サウナやラーメン屋の住み込み店員、子どもをおんぶしてのヤクルトの配達…。夫は早くに亡くなり、昨年2月まで市内の建設会社で住み込みの炊事係をしていた。だが男性作業員からの暴力や嫌がらせを受けて退職。住むところも失った。
 そこへ、東日本大震災が起きた。身を寄せるところもなく、公園で凍え、飢えた。結婚して家族との暮らしを必死で守っている子どもには頼りたくない。そんな時、松野さんに会った。
 生活保護を受けるように勧められた。でも、不安だった。軽蔑されるんじゃないか。決心がついたのは、体臭を気にする野宿生活者に、松野さんがかけたという言葉を人づてに聞いた時だ。「臭くないですよ。人間のにおいがします」ー。涙が止まらなかった。
 「政治家で、そんな風に思ってくれる人がどこにいると思いますか? 怠けて生きて、ここに来たんじゃない。私たちの人生をほんの少しでも聞いてほしい」
(市川美亜子)

この記事を読んで、どのように思われるだろうか。まず、第一番に言わねばならないことは、現時点で府中緊急派遣村が行っている「年末相談会」は緊急になさねばならない課題であるということだ。そして、この記事を、純粋に、府中緊急派遣村の「年末相談会」を社会に紹介し、貧困者に冷たい社会に対してその是正を訴えるものとして読むならば、それなりの価値をもつといえるだろう。特に、最後の「政治家で、そんな風に思ってくれる人がどこにいると思いますか? 怠けて生きて、ここに来たんじゃない。私たちの人生をほんの少しでも聞いてほしい」という女性の主張には共感を覚える人もいるだろう。府中緊急派遣村のサイト自体も、次のように評価している。純粋に宣伝としての意味があったということであろう。

昨日は、朝日新聞から別な企画で二名の記者が取材にきました。市川記者は社会部で選挙の連続記事で、松浦記者は経済部でサンキューハウスの集会で高見さんの話を聞いてやがて特集記事を書くために、一緒に炊き出し食べたりインタビューしたり長時間取材をされました。
市川さんは、早速今朝の東京版に大きく書いています。こんなこと言ったかな?と気恥ずかしい内容もありますが、相談に行こうと思う方々の目にふれていただければと思います。
http://blogs.yahoo.co.jp/peace19th/MYBLOG/yblog.html

しかし、これは、「届けダブル選」と題され、衆議院議員選挙と東京都知事選挙を扱った選挙報道なのである。そのことを考慮にいれて、この記事を読むと様相は一変する。最初の場面で、選挙カーと「年末相談会」は対比的に示される。そして、府中緊急派遣村村長松野哲二氏の「人々が今、不安に思っていることや、困っていることは、今回の選挙では何一つ反映されていないような気がします」という発言が挿入される。そして、さらに「自公政権の社会保障費抑制を強く批判した民主党政権の誕生に期待した。あれから3年。世の中では生活保護へのバッシングが高まり、与野党は、引き上げや現物支給案さえ話題にし始めている。もう、どこにも期待できない。」と要約した形で松野氏の主張が述べられる。そして、最後に「政治家で、そんな風に思ってくれる人がどこにいると思いますか? 怠けて生きて、ここに来たんじゃない。私たちの人生をほんの少しでも聞いてほしい」という女性の言葉で締められるのである。

単純にいえば、政治家たちの選挙と反貧困の活動を対比的にのみとらえ、前者は、後者の思いを全く受けとめていないとして「糾弾」するという姿勢を有しているのである。

これは、確かに、生活保護費の圧縮を主張している「与野党」ー民主党・自民党・日本維新の会についてなら該当するといえよう。しかし、これらだけが政党なのか。すべての政党の公約にふれることはできないが、少なくとも、日本共産党や社会民主党は、生活保護制度の拡充を主張している。反貧困の活動と、衆議院議員選挙は無縁ではないのだ。

さらに、東京都知事選挙については、完全に次のことを無視している。都知事選の候補者の一人である宇都宮健児氏は、「会の目的は、人間らしい生活と労働の保障を実現し、貧困問題を社会的・政治的に解決することにある。」(規約第四条)として、反貧困運動を展開している反貧困ネットワークの代表であるということである。つまり、反貧困の問題は、都知事選の大きな争点の一つなのである。全く、そのことを看過して、一般的な「選挙不信」を募らせているのが、この記事なのである。

それでは、府中緊急派遣村自体はどのように言っているのだろうか。彼らのサイトからみてみよう。

府中緊急派遣村「年末相談会」開会宣言
2012年12月8日

 本日より、年末困り事相談会を開始します。
 今回で6回目となる相談会は、生活と労働に悩む人びとに一層厳しい状況下で開きます。世界を見ても、グローバル化が豊さをもたらすどころか貧富の格差を拡大させ中間層の下層への地滑りが広がっています。
 国内においても、底冷えの経済、殺伐とした社会状況が長期に続き、庶民の我慢と苛立ちを領土や国家へと向けさせ、さらに社会的弱者、とりわけ外国人労働者や生活保護者への攻撃に転嫁する政治勢力が暗雲のごとく覆っています。まるで戦前への回帰か、新たな戦前か、それとも大衆動員フアッシズムの到来というべき危険な状況です。そもそも金持ち勢力の彼らが、生活保護費をやり玉にあげるのは、単にお金の問題ではなく、社会をどこに向けさせるのかという価値観から政策として出されているのです。派遣労働や使い捨て労働者の蔓延も、彼らが企業中心社会を堅持し、働く者には知的文化的な暮らしをあきらめさせ、食うためにのみ働く従順な労働者になること、それができないのならば一生どん底に居ろという彼らの政策なのです。
 さらに、福島の原発犯罪で、製造企業東芝、日立、GE、運営管理会社の東電の社長は逮捕されることなく、原発の持続、輸出、拡大路線をひた走りしています。被曝労働、廃棄物、プルトニウム生産を見るまでもなく、原発は人類に敵対する一握りの富のかたまりです。
 私たちは、福島を思い、寄り添い、忘れずこれまで11回の福島現地支援を行動してきました。
 しかし、この選挙で予想される新たな政権は、原発拡大路線です。原発ゆるすまじの民意は反映されず動員煽動された投票が多数派を形成するという矛盾を許してはなりません。
 生き辛い人びとが一層生きにくくなるこの年末に、大切な選挙のさなかにあえて私たちは相談会を開きます。すべてが選挙に向かい、今困っている人びとが選挙に埋もれ窒息してはなりません。
 私たちは派遣村を地域で日常化する活動をしてきました。そこから自覚できたことは、第1に、森居さんが毎日新聞で語っているように本当に困窮している人たちの生活を知ることです。第2に、どんな人間も地域で仲間と共に健康で文化的に生きる権利があるということです。第3に人間は何度でもやり直すことが出来る。しかし、1人でできないことは仲間と共にすること。
 だからこそ、私たちは、決して仲間を貧困ビジネス施設に追いやらない。決して孤立の深みに追いやらない。決して国家の弱者、野宿者排除を許さない。決して健康と文化を奪う生活保護改悪を許さない。決して被曝労働を許さない。決して働く者の困窮化を許さない。
 そして、新たな仲間との出会いを求めてここにつどう。
 今回も多くの方々からご理解とカンパをいただき準備できました。2日間の相談態勢は、多摩弁護士会から4名の弁護士と荒木弁護士、大阪から萬田司法書士が待機します。府中診療所の看護士さん2名が健康相談に待機していただけます。
 炊き出しは昨年の相談者やみんなの村の仲間たちが腕によりをかけて準備しました。
 いくつかの福祉事務所から炊き出し物資を提供いただきました。
 派遣村労働組合は何度もハローワーク前などでビラまきもしました。 東京、読売、毎日新聞各社も報道してくれました。朝日は今日会場取材し明日報道する予定です。 皆さまにあらためてお礼申し上げます。 また、寒さをついての屋外相談です。カイロを用意しています。風邪を引かないよう充分温かくしてご活躍ください。
 となりの中央文化センターに会議室も用意しています。無理をしないで屋内相談に移動してください。
 では皆さん、胸は優しく温かく、頭はおおらかに冷静に、みんな仲良く2日間を過ごしましょう。 相談には耳をかたむけ、聞くだけではなく解決を共にする具体的な対応を心がけましょう。

府中緊急派遣村 松野哲二
http://blogs.yahoo.co.jp/peace19th/MYBLOG/yblog.html

「しかし、この選挙で予想される新たな政権は、原発拡大路線です。原発ゆるすまじの民意は反映されず動員煽動された投票が多数派を形成するという矛盾を許してはなりません。生き辛い人びとが一層生きにくくなるこの年末に、大切な選挙のさなかにあえて私たちは相談会を開きます。すべてが選挙に向かい、今困っている人びとが選挙に埋もれ窒息してはなりません。」ということである。彼らは、原発拡大派が政権をとることをよしとはしていない。「大切な選挙」としているのである。彼らとすれば、選挙戦において、貧困者が「埋もれ窒息」させてはいけないとして「年末相談会」を行ったとしているのである。

そして、彼らのサイトには「藤田祐司さんからも、相談会の成功を祈りつつ、衆院選を最後までがんばるとの決意メールも今朝届いています。」という記載がある。藤田祐司氏は日本未来の党の衆議院議員候補者の一人で、東京21区から立候補した。なお、21区には府中市は含まれない。彼らは、予想される選挙結果には不信をもっているだろうが、選挙自体を無視しているわけではないのである。

結局のところ、この朝日新聞の報道は、民主党・自民党・日本維新の会のみを「選挙の参加者」とし、その他の選択を全く排除することによって成り立っているといえる。そのことを、自分の口ではなく、貧困者やそれを支援する人の口を借りて語っている。「民・自・維」しか選択肢にないならば、だれが選挙にいくのだろうか。そういった形で、選挙自体への不信を結果的にあおりたてているといえる。

例え、積極的に選挙活動ができなくても、選挙権は行使できる。それに、府中緊急派遣村のサイトにも出ているように、既存の政党からではない形で選挙に立候補する人もいる。「府中緊急派遣村」の記事に出ていた人たちも、議員などになることもあるかもしれない。そのような可能性を見出さないまま、朝日新聞の記者は「選挙への絶望」を語っている。

記事を読むと、それなりに良心的な記者だと思う。しかし、その良心をはきちがえていると思う。それは、全く「政治」の枠を「小さくみる」ことから始まっているといえるのである。

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