Feeds:
投稿
コメント

Archive for the ‘アメリカ’ Category

昨日、多くの人が反対する中で、2013年12月6日に特定秘密保護法が成立した。

この特定秘密保護法成立について、アメリカ国務省は「歓迎」の意向を示している。TBSのネット配信記事(7日付)はこのように伝えている。

アメリカ・国務省は6日、日本で特定秘密保護法が成立したことを受け、「情報保全は同盟関係において重大」と評価しました。

 「機密情報の保全は同盟関係の中の協力においても重大な役割を果たすため、機密情報の保護につながる強化策、手続きなどを歓迎します」(ハーフ副報道官)
http://news.tbs.co.jp/20131207/newseye/tbs_newseye2074523.html

特定秘密保護法は、日本政府が安全保障会議を設置し、さらに、そこに外国からの提供情報を受け入れるにあたって、その情報を保護することを本来の目的としている。この外国からの提供情報の中心は、当然ながら同盟関係にあるとされるアメリカのものであろう。この記事では、「一方、秘密保護法成立をアメリカ政府がこれまで日本に要請してきたのではとの指摘については、「特にコメントすることはない」としています。」と伝えているが、このような秘密情報保護法制設置はアメリカ側から要求されていたことでもあったといえる。その意味で、特定秘密保護法成立を「歓迎」するのは当然である。そして、このように秘密保護法制が整備されるということは、アメリカと日本が、「テロとの戦い」であれ、「紛争地帯への人道的支援」であれ、世界中に軍事介入できる体制を構築している一つの証でもある。

しかし、特定秘密保護法成立に手放しで「歓迎」しているかといえば、そうではないのである。この記事の次の個所をみておこう。

成立にあたり、日本国内で反発が強いまま強行採決に至ったことについて、「同盟関係の根幹には表現の自由、報道の自由という普遍的な価値観の共有がある」と述べ、「知る権利」に十分配慮する必要があるとの認識も示しています。

これは、かなり微妙な発言といえる。国務省のハーフ副報道官は、アメリカの同盟関係の根幹には、表現の自由、報道の自由という普遍的な価値観の共有があるとした上で、日本の特定秘密保護法については「知る権利」に十分配慮すべきとしているのである。つまり、特定秘密保護法それ自体について「自由権」を侵害しかねない性格を有するものであると「懸念」を示しているのである。

これは、かなり微妙なことだ。特定秘密保護法によってアメリカが提供する情報の機密が保たれることは「歓迎」しつつも、特定秘密保護法自体については「自由権」を侵害しかねないものとして認識されており、それは「日米同盟」の根本にある「普遍的な価値観の共有」という問題なのだと指摘しているのである。このコメント自体が、アメリカ政府の「ジレンマ」を現しているといえよう。

考えてみれば、アメリカ政府は、明文改憲や「侵略否定」など、成立当初の安倍政権の「自立大国」化には抑制的だったといえる。今年の前半期の安倍政権の姿勢は「大国化」をやみくもに志向していたが、それは、戦前の日本の体制を肯定しつつ、戦争直後の体制を根本的に変えようとするものであった。もちろん、これは、中国や韓国などの反発をうみ、東アジア全体の緊張を高める要因となっている。しかし、このような安倍政権の姿勢は、中国や韓国だけでなく、アメリカ政府自体も困惑させることになった。究極のところ、これは、アメリカが第二次世界大戦を戦った原理を否定し、さらにアメリカが主導して成立した戦後の国際秩序を「修正」することにつながっていくのである。このような安倍政権の姿勢にアメリカ政府が抑制的であったのも当然である。

結局、特定秘密保護法というものは、日本の「自立大国」化は抑制しつつも、「同盟関係」の中により強く引き込んで「戦争協力者」に日本をしてしまおうとするアメリカ政府の意向と、アメリカの「同盟」関係に恭順しながらも、アメリカの意向を体しつつ、法律の形で、憲法に規定している諸権利を制限しようとしようした日本の安倍政権の意向があわさり、この二つのベクトルがあわさることによって強力に成立が推進されたとみるべきだと思われる。みんなの党、日本維新の会、民主党が特定秘密保護法自体の制定には反対していないことは、その現れであろう。

それでも、アメリカ国務省では「「同盟関係の根幹には表現の自由、報道の自由という普遍的な価値観の共有がある」と述べ、「知る権利」に十分配慮する必要があるとの認識も示しています。」と言わざるを得なかった。そして、これはアメリカ国務省だけの見解ではない。アメリカの「オープン・ソサエティー」財団が次のように指摘していることを共同通信は配信している。

【ニューヨーク共同】民主主義の発展や人権擁護に取り組む米財団「オープン・ソサエティー」は6日までに、日本の特定秘密保護法が国家秘密の保護と開示に関する国際基準を「はるかに下回る」とし、「日本の一歩後退」を示すことになると懸念する声明を発表した。
 声明は、秘密指定の範囲が「曖昧で広すぎる」とし、指定の是非を独立機関が監視する仕組みを欠くと批判。罰則が最大懲役10年と重いこと、情報を漏らしても開示の公益が勝れば罪に問えないとする規定がない点も問題視した。
 米国のいくつかの同盟国も、秘密指定は公益との兼ね合いを考慮するよう規制し、漏えいの罰則は5年の刑が最大だと指摘した。また、各国や国連の専門家が作成し、今年6月に公表した「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)」を大幅に逸脱するとした。
 声明の中で、同財団上級顧問で米国の国防総省や国家安全保障会議(NSC)の高官を務めたハルペリン氏もコメントし、特定秘密保護法が「21世紀に民主的な政府が検討した中で最悪の部類」とした。
(共同通信)
2013/12/08 11:58

このように「21世紀に民主的な政府が検討した中で最悪の部類」とまで評されている。その他、国連人権高等弁務官が同様の懸念を示している。特定秘密保護法は、海外ではこのような見方をされているのである。さらにいえば、繰り返しになるが、アメリカ国務省も「懸念」しているのである。

別に、現在のアメリカが「自由の国」というのではない。2011年9月11日の同時多発テロ直後、「テロとの戦い」を正当性原理として、アフガニスタンなどに「戦争」をしかけるとともに、国内外を「監視社会」化し、いわゆる同盟国であるドイツ首相まで盗聴し、国内ではデモ参加者やジャーナリストを弾圧している。この特定秘密保護法についても、アメリカの国益を「保護」するという性格が強い。しかし、そのような国の国務省においても、「懸念」を示さざるを得なかったのである。

もう一度、ハーフ副報道官のコメントに戻ってみたい。「成立にあたり、日本国内で反発が強いまま強行採決に至ったことについて、「同盟関係の根幹には表現の自由、報道の自由という普遍的な価値観の共有がある」と述べ、「知る権利」に十分配慮する必要があるとの認識も示しています。」とされている。ハーフにこのように言わせた一つの要因には、「成立にあたり、日本国内で反発が強い」ことがあるといえる。つまりは、特定秘密保護法案への人びとの反対運動が、このような発言につながり、日米両政府の微妙な関係を露見させたのである。これもまた、反対運動の一つの成果ということができよう。

Read Full Post »