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Archive for 2013年4月

最近、朝鮮学校への差別的待遇が強まっている。2010年の高校無償化においては、高等学校等に対する就学支援金の対象外とされた。また、朝鮮学校への補助金支給を打ち切る地方公共団体が増加してきている。

そんな中、町田市では、市立小学校や私立小学校に通っている児童に配布している防犯ブザーを、朝鮮学校通学の児童には配布しないという決定を下した。次のNHKがネット配信した記事をみてほしい。

町田市教委 防犯ブザーを朝鮮学校に配らず
4月5日 12時54分

北朝鮮が挑発的な言動を続けるなか、東京・町田市の教育委員会は、社会情勢や国際情勢などを理由に小学校に入学する児童に配付している防犯ブザーを今年度、朝鮮学校の児童に配付しない決定をしていたことが分かりました。

町田市教育委員会は、小学校に入学する児童を対象に防犯ブザーを無償で配付する事業を9年前から行っています。
町田市にある朝鮮学校の児童に対しては学校から要望があれば配付し、ことし2月にも新入学の児童6人と在校生の故障分など合わせて45個を配付するよう要望を受けたということです。
これに対し、市教育委員会は、今年度、朝鮮学校の児童に防犯ブザーを配付しないことを決め、先月28日に伝えました。
その理由について、市教育委員会教育総務課の高橋良彰課長は「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢を踏まえて市の事業を進めるのはふさわしくないと判断した」と説明しています。
この決定に対し、町田市にある「西東京朝鮮第二幼初級学校」のリ・ジョンエ校長は「社会情勢を理由に子どもの安全を脅かすような対応で、残念に思います」と話していました。
市教育委員会には、今回の対応を疑問視する電話が4日までにおよそ40件、寄せられているということで、市教育委員会は、対応を見直すかどうか検討を進めることにしています。

「いじめに遭わないよう配慮を」
下村文部科学大臣は、閣議のあと、記者団に対し、「自治体の判断であり、コメントは差し控えたいが、子どもたちがいじめに遭わないよう配慮してもらいたい」と述べました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130405/k10013696541000.html

朝日新聞は、やや詳しく、この背景を4月5日にネット配信した。

市教委は今年2月下旬、前年度までと同様、同校にも防犯ブザー(1個299円)の必要個数を知らせるように連絡。同校から3月上旬、この春に初級部に入学する6人と在校生の故障分など計45個の要望を受けた。だが、2月中旬の北朝鮮の核実験などで安倍政権が北朝鮮への強硬姿勢を強める中、市教委の職員から「市民の理解が得られない」「今はまずい」との声が上がり、3月下旬に学校に配布の中止を伝えた。
http://www.asahi.com/national/update/0404/TKY201304040485.html

このような町田市の措置を、産經新聞はコラム「産経抄」4月6日付で擁護した。このコラムでは、前半に黒沢明の映画「夢」が原発事故を予感していたのではないかと述べている。しかし、その話と全くかかわらないかたちで、このように主張している。

▼将来は画像の再現も夢ではないそうだが、ろくな夢を見ない小欄は、夢の中身をわざわざ画像にするなぞまっぴら御免である。さりながら、あの人がどんな夢を見ているのかは、こっそり知りたい。「無慈悲な作戦」を承認し、核戦争の危機をあおりにあおっている北朝鮮の3代目である。

 ▼3代目は、ミサイルの発射ボタンを押し、ワシントンや東京が火の海になる画像を夜な夜な見ているのだろうか。東京都町田市では、教育委員会が朝鮮学校生徒への防犯ブザー配布をやめたが、当たり前の話である。かの地出身の同胞は「差別はけしからん」と騒ぐ前に、胸に手を当ててよく考えてほしい。子供に罪はないが、悪夢の発生源をいまだに崇拝している親たちの責任は重大である。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130406/plc13040603110003-n1.htm

この文章は、全体でも意味が貫徹せず、学校の作文レベルでも、たぶん評価できないと思われる。そして、引用した部分でも、論理が破綻している。北朝鮮の核兵器政策への批判がなぜ、「教育委員会が朝鮮学校生徒への防犯ブザー配布をやめたが、当たり前の話である」ということにつながるのか。「子供に罪はないが、悪夢の発生源をいまだに崇拝している親たちの責任は重大である」としているが、なぜ罪のない子供が責任をとらなくてはならないのか。

この産経抄の論理の破綻は、そもそも、このような決定を下した町田市の姿勢にも共通しているだろう。「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢を踏まえて市の事業を進めるのはふさわしくないと判断した」とするが、産経抄においても認めるように「子供に罪はない」のであり、「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢」とは別次元の話である。ある意味では、朝鮮学校通学児童は、法的に保護しないと宣言したことに等しい。他方で、朝鮮学校には婉曲な廃校を促していることになるだろう。

しかも、問題は、「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢」のために、朝鮮学校に通学する児童・生徒に対して、より危険な状態になっているということである。人種差別撤廃委員会に提出した「人種差別撤廃条約 第3回・第4回・第5回・第6回 政府報告 」(2008年8月) で、日本政府自体が、次のようにいっている。

 

(3)児童・生徒等に対する嫌がらせ等の行為への対応
26.2002 年 9 月 17 日の日朝首脳会談において、北朝鮮側が拉致事件の事実を正式に認めたこと等から、在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為が発生したため、全国の法務局・地方法務局では、各地で啓発ポスターを掲示したり、JRの駅頭や繁華街等において啓発パンフレットや啓発物品を配布する等の啓発活動を実施したほか、嫌がらせ等に対する人権相談等を通じて適切な措置を講じた。
また、2006 年 7 月、北朝鮮によりミサイル発射が行われたとの報道がされた際、及び2006 年 10 月、北朝鮮により核実験が行われたとの報道がされた際にも、在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為が発生したため、同様に適切な対応を実施した。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/pdfs/hokoku3-6.pdf

また、「人種差別撤廃条約 第7回・第8回・第9回 政府報告 」(2013年1月)でも、次のように述べている。

(4)児童・生徒等に対する嫌がらせ等の行為への対応
40.第3回・第4回・第5回・第6回政府報告パラグラフ26参照。
41.さらに、2009年4月に北朝鮮によるミサイル発射が行われたとの報道がされた際、同年5月に北朝鮮による地下核実験が行われたとの報道がされた際並びに2012年4月及び12月に北朝鮮によるミサイル発射が行われたとの報道がされた際にも、在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為の発生を防ぐため、啓発活動を実施するとともに、嫌がらせ等に対する人権相談等を通じて適切な措置を講じた。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/pdfs/houkoku_789_1.pdf

日本政府自体が、「北朝鮮を巡る社会情勢や国際情勢」によって「在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為が発生」したことを認めているのである。そして、上記の措置が有効なものかどうかは不明であるが、少なくとも、形式的には対応しなくてはならないものであることを表明しているのである。もちろん、日本政府は、高校無償化において朝鮮学校を除外しており、それ自身差別的である。しかし、そのような政府ですら、「在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の行為」は抑止しなくてはならないという姿勢を建前では方針としている。現状では、朝鮮学校通学の児童は、よりその保護を徹底すべき対象といえる。その意味で、町田市や産経抄の認識は、政府方針にすら反しているのものなのである。

1965年の国連総会で採択され、日本が1995年に加入した人種差別撤廃条約(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)の第5条は、次のように規定している。

第5条
 第2条に定める基本的義務に従い、締約国は、特に次の権利の享有に当たり、あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種、皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに、すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。

(a)裁判所その他のすべての裁判及び審判を行う機関の前での平等な取扱いについての権利
(b)暴力又は傷害(公務員によって加えられるものであるかいかなる個人、集団又は団体によって加えられるものであるかを問わない。)に対する身体の安全及び国家による保護についての権利
(c)政治的権利、特に普通かつ平等の選挙権に基づく選挙に投票及び立候補によって参加し、国政及びすべての段階における政治に参与し並びに公務に平等に携わる権利
(d)他の市民的権利、特に、
(i)国境内における移動及び居住の自由についての権利
(ii)いずれの国(自国を含む。)からも離れ及び自国に戻る権利
(iii)国籍についての権利
(iv)婚姻及び配偶者の選択についての権利
(v)単独で及び他の者と共同して財産を所有する権利
(vi)相続する権利
(vii)思想、良心及び宗教の自由についての権利
(viii)意見及び表現の自由についての権利
(ix)平和的な集会及び結社の自由についての権利
(e)経済的、社会的及び文化的権利、特に、
(i)労働、職業の自由な選択、公正かつ良好な労働条件、
   失業に対する保護、同一の労働についての同一報酬
   及び公正かつ良好な報酬についての権利
(ii)労働組合を結成し及びこれに加入する権利
(iii)住居についての権利
(iv)公衆の健康、医療、社会保障及び社会的サービスについての権利
(v)教育及び訓練についての権利
(vi)文化的な活動への平等な参加についての権利
(f)輸送機関、ホテル、飲食店、喫茶店、劇場、公園等一般公衆の使用を目的とするあらゆる場所又はサービスを利用する権利
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html

このように、「暴力又は傷害(公務員によって加えられるものであるかいかなる個人、集団又は団体によって加えられるものであるかを問わない。)に対する身体の安全及び国家による保護についての権利」「教育及び訓練についての権利」などは平等に保障しなくてはならないことになっている。先の日本政府の見解は、このことをふまえたものなのである。もちろん、日本政府は自発的にこのような見解を主張しているのではないと考えられる。人種差別撤廃委員会の勧告のもとで、このような見解を表明しているのである。

日本政府と人種差別撤廃委員会との関係はまた後述したい。ここで確認すべきことは、町田市にしても産経抄にしても、国籍などの出自に関わらず基本的人権は平等に保障しなくてはならないという意識を欠如しているということである。そして、このような欠如は、在日朝鮮人・韓国人に対するヘイト・スピーチを繰り返す「在日特権を許さない市民の会」(在特会)にも共通している。在特会のヘイト・スピーチは、日本社会のレイシズム的傾向を白日のもとにさらしたが、町田市や産経抄の言動は、このような傾向は在特会だけでなく、よりエスタブリッシュの人たちにも共有されていることを示しているのである。

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以前、原発反対派の福島県議であったが1985年に双葉町長となり原発推進を主張した岩本忠夫については、何度か紹介した。岩本は町長時代の2002年11月20日の衆議院経済産業委員会に参考人として出席し、この場で、「原子力と共生しながら生きていく」と宣言していたのである。次の部分に主要個所をかかげておく。

○岩本参考人 おはようございます。福島県双葉町長の岩本忠夫であります。
 福島県の双葉地方は、現在、第一原子力発電所が六基、さらに第二原子力発電所が四基、計十基ございます。三十数年間になりますけれども、多少のトラブルはございましたが、比較的順調に、安心、安全な運転を今日まで続けてきたわけでありますけれども、八月二十九日、突然、今平山知事の方からもお話がございましたように、東京電力の一連の不正事件が発生をし、そしてそれを聞きつけることができました。
 これまで地域の住民は、東京電力が、国がやることだから大丈夫だろう、こういう安心感を持ってやってきたわけでありますけれども、今回の一連の不正の問題は、安全と安心というふうに分けてみますと、安全の面では、当初から国やまた東京電力は、二十九カ所の不正の問題はありましても、安全性に影響はないということを言われてまいりました。したがって、安心の面で、多年にわたって東京電力、原子力との信頼関係を結んできました地域の者にとっては、まさに裏切られた、信頼が失墜してしまった、こういう思いを実は強くしたわけでありまして、この面が、何ともやりきれない、そういう思いをし続けているのが今日であります。
 ただ、住民は比較的冷静であります。それはなぜかといったら、現在、第一、第二、十基あるうちの六基が停止中であります。そして、その停止されている原子力発電所の現況からすれば、何とはなしに地域の経済がより下降ぎみになりまして深刻な状態にあります。雇用の不安もございます。
 何となく沈滞した経済状況に拍車をかけるような、そういう重い雰囲気が一方ではあるわけでありまして、原子力と共存共栄、つまり原子力と共生をしながら生きていく、これは、原子力立地でないとこの思いはちょっと理解できない面があるのではないかなというふうに思いますが、原子力立地地域として、原子力にどのようなことがあっても、そこから逃げ出したり離れたり、それを回避したりすることは全くできません。何としてもそこで生き抜いていくしかないわけであります。
 そういう面から、国も東京電力もいずれはちゃんとした立ち上がりをしてくれるもの、安全性はいずれは確保してくれるもの、こういうふうに期待をしているからこそ、今そう大きな騒ぎには実はなっておりません。表面は極めて冷静な姿に実はなっているわけであります。

この発言の背景には、1999年のプルサーマル計画におけるMOX燃料のデータ改ざん発覚、2002年の福島第一・第二原発における検査記録改ざん発覚があった。特に、後者は当時の東電首脳部の総退陣に結果したのである。引用した部分の前半の部分では、岩本忠夫は東電に対する不信感をあらわにしている。

しかし、岩本は、原発の停止は地域経済の停滞、雇用不安を招くとしている。結局、原発に依存しなくてはならなくなった地域社会では、原発の興廃はその地域社会の経済的問題に直結することになるだろう。その上で、岩本は、「原子力と共存共栄、つまり原子力と共生しながら生きていく」と主張した。その理由として、「原子力立地地域として、原子力にどのようなことがあっても、そこから逃げ出したり離れたり、それを回避したりすることは全くできません。何としてもそこで生き抜いていくしかないわけであります。」とここでは主張したのである。

3.11という結果を知っている今日からみれば、この宣言は悲劇的なものに思える。3.11は、原発に依存していた地域社会の人びとに対し、推進派も反対派も区別せず、「逃げ出したり離れたり」することを強制した。「何としてもそこで生き抜いていく」といった場合の「そこで」という条件が喪失したのである。原発周辺で地域社会が存立すること自体ができなくなってしまったのである。

3.11以前でも、原発の安全性については原発の立地する地域社会でも危惧されていた。もちろん、元反対派の岩本にとって、原発の危険性は自明のことであっただろう。この文章の中でも、東電への不信感が表明されている。しかし、岩本にとって、原発が自らの地域生活を直接侵害するものとして措定されてはいなかったのである。

3.11は、原発事故は「そこで生き抜くいていく」ことすら許さない過酷なものであったことを示したといえる。「原発と共生しながら生きていく」ことはできないのだ。結局、岩本忠夫も、避難先で死んだ。以前のブログで紹介した2011年8月25日付の毎日新聞朝刊から、その最後の姿を再度みておこう。

7月15日午前5時。岩本忠夫・前福島県双葉町長は福島市の病院で、付き添っていた長男の双葉町議、久人さん(54)に見守られ、静かに息を引き取った。82歳。原発事故の避難生活で急速に衰え、入院後の40日間は会話もできなかった。
 「本当は何か言いたかったんじゃないかな。話してほしかった」と久人さんは言う。
(中略)
 岩本氏は人工透析を週2回受けていたが、長男の久人さん一家と避難を強いられた。当初、南相馬市の避難所にいた頃は、ニュースを見ながら「東電、何やってんだ」と怒り、「町民のみんなに『ご苦労さん』と声をかけてやりたい」と話していたという。だが、次第に認知症の症状が表れる。3月末に福島市のアパート に移ってからは「ここはどこだ」「家に帰っぺ」と繰り返すようになっていった。
 なぜ原発推進という「賭け」に出たのか。古市氏(社会党の地元支部書記長だった古市三久県議…引用者注)は言う。
 「ある時は住民のために原発に反対し、ある時は町民の生活を守るために原発と共存しながら一生懸命やっていた。最後に事故になり、自ら放射能を浴び、いろんな批判をかぶって死んでいった。ただ、本心は分からない。誰にも言わず、棺おけの中に持っていってしまった」

岩本忠夫も、「そこで生き抜いていく」ことはおろか、「そこで死んでいく」ことすら許されなかった。そして、東電に怒り、避難した町民をねぎらいつつ、「家に帰っぺ」といいながら、死を迎えたのである。

 

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本ブログでもとりあげたことがあるが、在日特権を許さない会(在特会)などが主催する在日コリアンを排斥するデモが、東京の新大久保や大阪の鶴橋などを中心に行なわれている。そのことについて、新大久保も管轄している東京都の猪瀬直樹知事の2013年3月29日における記者会見で質問が飛んだ。産經新聞は3月31日付のネット配信記事で詳細に伝えているので、まず、その部分を紹介しておきたい。なおーーは記者の質問で、「 」が猪瀬の答である。

--新大久保のコリアンタウンで、在特会と称する人たちの主催による、在日コリアン排斥を目的とする街宣デモが行われている。200人ほどで練り歩き「朝鮮人は皆殺し」「首をつれ」などのプラカードを掲げ、「ゴキブリ」「日本から出て行け」といったシュプレヒコールをあげている。地元、観光客はみなおびえきっている。一部の国会議員はこれを憂慮し、民族差別デモを許可しないよう、東京都公安委員会に要請している。民族差別デモが平然と行われているこの国で、民族の祭典であるオリンピックを誘致する資格があるのかどうか。知事の見解を。

 「僕も見たことないが、品がない表現。ただ、デモは届け出をして手続きをやれば、できることはできる。人を傷つけるなどしなければ、とりあえずは合法活動ということになる」

 --ただ、外国では民族を扇動するようなデモは固く禁じる法律があるところもある

 「だからそれは法律のバックがあるからね。今のところ日本の法律では、人に危害を加えたりしなければ、警察の取り締まりの対象にならない」

 --それについて知事はどう考えているか。

 「だからそういう下品なデモで、品のない言葉を吐くわけ。でもわずか200人ぐらいの人。東京の1300万人のうちのわずか200人。もちろんそれはよろしくないとは思う」

 --知事として何か具体策をとるとか。

 「対策というのは、法律に基づかないとできないから。もちろんそういうことに対して『それはおかしいじゃないか』ということを僕は思っている」

 --東京都公安委員会は都が管轄だと思うが

 「それは公安委員会の方が判断しなければいけない問題だから」

 --知事が働きかけるとかそういうことは考えていないか

 「今のところ法律的にそれを取り締まるものがないということ」

 --都政としてはこのままか

 「都政の問題じゃなくて、警察とか法規に基づいてデモが暴走したりしたらそれは逮捕とかできるわけだが、相手に危害を加えるとか器物を破損しているとか、そういうことが起きているかどうか注意深く見守りたいと思う」

 --見守るということですね

 「見守るというか、そういうことが起きているかどうか。そういうことが起きていれば、それは犯罪になるから」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130331/lcl13033107010000-n3.htm

簡単にいれば、結局、取り締まる法律がないから、犯罪行為にならない限り、「「朝鮮人は皆殺し」「首をつれ」などのプラカードを掲げ、「ゴキブリ」「日本から出て行け」といったシュプレヒコールをあげている」在特会の人種差別的なデモを見守るということにつきるだろう。猪瀬は、「ただ、デモは届け出をして手続きをやれば、できることはできる。」としている。そして、「民族差別デモが平然と行われているこの国で、民族の祭典であるオリンピックを誘致する資格があるのかどうか」という問いについても、都民1300万人に対して、200人の集団に過ぎないと答えているのである。

まず、このような猪瀬の見解が、現在の日本政府が、人種差別に対してとっている姿勢をベースにしているということをここでは確認しておきたい。1965年に採択された「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)に、日本は1995年に批准した。しかし、この条約では、第四条で、人種差別思想の流布、人種差別の煽動、人種差別にもとづく暴力行為、それに対する資金援助、人種差別を助長・煽動する団体の組織的宣伝活動を法律で禁止することを求めているのであるが、日本政府は、この第四条に対し、次のような「留保」をつけた。

「日本国は、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約第4条の(a)及び(b)の規定の適用に当たり、同条に「世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って」と規定してあることに留意し、日本国憲法の下における集会、結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触しない限度において、これらの規定に基づく義務を履行する。」http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/99/4.html

そして、具体的には、名誉棄損その他、刑法など現行法で取り締まることができる範囲内でしか規制しないとしたのである。猪瀬の発言は、大枠では、日本政府の解釈にそったものとしてみることができる。

この日本政府の「留保」自体が問題であり、人種差別撤廃委員会から、人種差別の言動を取り締まる立法を迫られている。このことについては、別の機会にみてみたい。

ここでは、猪瀬個人にしぼってみておきたい。猪瀬は「ただ、デモは届け出をして手続きをやれば、できることはできる。」と主張している。しかし、本当に、猪瀬は、そのような対応をとっていたのであろうか。

猪瀬が副知事であった2012年11月、東京都は、日比谷公園を出発地とする反原発デモを、公園の一時使用を許可しない形で阻止した。このことを『週刊金曜日』が11月21日にネット配信した記事でみておこう。

毎週金曜日の首相官邸前デモなどを主導してきた首都圏反原発連合が一一月一一日に予定している「11・11 反原発1000000人大占拠」は、東京都が日比谷公園の一時使用を不許可としているため開催が危ぶまれる状況となっている。

 二日、衆議院第一議員会館で行なわれた会見で反原連のミサオ・レッドウルフさんらが経緯を説明した。これまでと同じやり方で日比谷公園の指定管理者に使用許可書を提出した際、「東京都から、デモの一時使用受付はしないよう言われた」という。反原連は一〇月二六日、都に対し使用許可の申請をしたが、都は三一日、「公園管理上の支障となるため」として不許可の通知を出した。

 主催者らは「(実現できなければ)運動全体にとってかなりのダメージになる」「(圧力に屈して)できなくなるという前例はつくりたくない」として東京地裁に申し立てる決断をしたという。しかし二日夕刻、東京地裁は主催者らの主張を却下。主催者側は即時抗告を出したが、五日には東京高裁が地裁判決を支持したことで一一日の日比谷公園でのデモは不可能となった。

 東京都は八月より従来の方針を切り替え、日比谷公園をデモの出発地点とする場合、日比谷公会堂や日比谷野外音楽堂の使用を条件につけることにしている。国際政治学者の五野井郁夫氏は「大きな場を借りなければ集会ができないとすれば、お金がない人間は集会ができなくなる」と訴えた。

 中東の民主化デモ「アラブの春」などを取材してきたジャーナリストの田中龍作氏は「独裁政権下にあるエジプトでもタハリール広場の使用を認めてきた。東京都の実態は異常としか思えない」と話す。

(野中大樹・編集部、11月9日号)
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=2670

もちろん、この時、猪瀬は副知事にすぎない。最大の責任者は石原慎太郎都知事(当時)である。しかし、猪瀬もまた、11月8日、彼のツイッターで次のように述べている。

亀井静香氏から1カ月ほど前に電話があり、日比谷公園を反原発デモの出発地として許可しろと言うから、あなたお巡りさん出身だから知っているでしょ、学生運動が盛んな時代、明治公園に集まり青山通りから国会付近へ行き日比谷公園は流れ解散の「一時使用」でしょ、と記憶を確かめてやりました。
日比谷公園でなく日比谷野外音楽堂はメーデーなどいろいろ利用されている。亀井さん、野音を取れば?と勧めたら、もう埋まっているのだよと言うからそれは単に不手際でしょと返して、明治公園から日比谷公園までデモする根性なくてなにが反原発だ、日比谷から国会なんてやる気があるの?です。
デモの常識。明治公園は日本青年館横のかなり広いスペース、数万人は集まれる。地面はコンクリート。休日にフリーマーケットなどで使われている。青山通りから虎ノ門経由で国会周辺、日比谷公園へ。日比谷は花壇と噴水だから流れ解散の場。集会の自由あたりまえ、やる側の根性とセット。
http://matome.naver.jp/odai/2135261591756465301より転載。

つまり、猪瀬は、このツイッターにおいて、反原発デモに介入し、阻止した石原都知事の側にたって、反原発デモの阻止を正当化しているのである。「ただ、デモは届け出をして手続きをやれば、できることはできる。」ということは、反原発デモには適用されていないのである。

このように、猪瀬は、人種差別的な在特会のデモは「見守り」、反原発デモは「阻止」しているのである。いわば、デモに対して、猪瀬は二重基準で行動しているといってよいだろう。

ただ、どのような形で、このような人種差別に対応していくかということについては、より慎重に考えていかねばならないだろう。在特会デモへの規制が、一般のデモ規制強化につながっていく危険性もあるのである。

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