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Archive for 2012年10月

2011年、福島第一原発事故で、首都圏でも相対的に高い空間放射線量を計測した地域として、千葉県西北部の柏市地域をあげることができる。まず、2011年3月時の放射線量をみてみよう。測定場所は、柏市の柏の葉地域にある国立がんセンター東病院である。

柏市における空間放射線量の推移(2011年3月)

柏市における空間放射線量の推移(2011年3月)


「国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)敷地内における放射線の測定結果」(同所サイト)より
測定場所は病院敷地境界

測定は、3月16日から開始されている。すでに、その時点で、0.10μSv /hになっている。千葉県市原市における3.11以前の最大値が0.044μSv /hとされているので、すでに平常値の2倍以上である。この表では省略したが、屋内では0.06μSv /h、施設屋上では0.07μSv /hであった。

さらに、3月22日には、0.72μSv /hとなった。3月21・22日には降雨があり、そのために多くの放射性物質が降下したと思われる。屋内では、精々0.07μSv /hにあがったくらいで、その後もほとんど変化がないが、屋上では22日、0.32μSv /hにあがった。その後も3月中の測定値は0.50μSv /h以上であった。よく、3月21・22日の降雨により、柏市地域が放射線量が比較的高いホットスポットとなったというが、この測定結果もそれを裏付けている。もちろん、これ以上の放射線量を示す地域があることが報道されているが、ここでは、長期的比較のため、この測定結果を前提に考えていきたい。

さて、その後はどうなったか。毎月上旬(具体的には各月の第一月曜日)の放射線量の推移をみておこう。

柏市における空間放射線量の推移(2011年4月〜2012年10月)

柏市における空間放射線量の推移(2011年4月〜2012年10月)


「国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)敷地内における放射線の測定結果」(同所サイト)より
測定場所は病院敷地境界
測定日時は各月第一月曜日(2012年1月のみ第一水曜日)

このように、空間放射線量は徐々に下がってはきている。2011年6月には0.32μSv /hに下がったが、その後はそれほど劇的には下がらず、2011年12月時点でも0.24μSv /hと、年間1mSvを維持できるとされている0.23μSv /hを超過している。2012年4月でも0.26μSv /hであった。

2011年後半の状況は、この国立がん研究センター東病院に隣接する東京大学柏キャンパスでも同様であった。2011年10〜11月に柏キャンパス内の空間放射線量が全面的に計測された。その結果をみると、ほとんどキャンパス全域が、0.20μSv /hをこえているのである。

東大柏キャンパスの地表面1m高さの空間線量率

東大柏キャンパスの地表面1m高さの空間線量率


http://www.kashiwa.u-tokyo.ac.jp/kankyo/ks2011_11/

そして、ようやく2012年5月以降、恒常的に0.23μSv /h未満となり、2012年6月以降は0.19〜0.17μSv /hとなった。2011年12月に成立した特別措置法によって、柏市は汚染状況重点調査地域に指定された。学校だけでなく市内全域を、年間1mSv(0.23μSv /h)未満にするとされている。ただ、放射線量の低下は、半減期が約2年のセシウム134の減少に起因することも大きいと考えられる。市内全域でも、市広報によると、年間1mSv以下にさがっているとのことである。

このように、目安である年間1mSv(0.23μSv /h)未満に放射線量を下げるという基準は柏市でも達成しつつある。しかし、現実には、放射性物質汚染の影響はいまだ深刻である。10月1日、NHKは次のような報道を行った。

原子力発電所の事故のあと、周辺地域より比較的高い濃度の放射線量が計測された柏市が、首都圏の住民を対象に意識調査を行った結果、およそ3分の1の人が柏市は周辺より放射線量が高い地域と認識していて、およそ70%の人がこうした地域では子育てや生活をすることはためらうと考えていることがわかりました。千葉県柏市は、原発事故のあと周辺よりも比較的高い濃度の放射線量が計測され、市内全域が国の支援を受けて除染を行う「汚染状況重点調査地域」に指定され、いまも除染作業が続けられています。これまでに幼稚園や学校など、子どもが集まる施設の除染はほぼ終了しましたが、市によりますと人口の減少傾向が続いているということです。こうした中、市は先月、民間の調査会社に依頼し、東京、埼玉、神奈川に住む20代から40代の既婚の男女2000人を対象に、意識調査を行いました。その結果、首都圏の36の市と区の中で周辺より放射線量が高いと思う地域として33%の人が柏市と答え、もっとも多くなっていました。さらにこうした地域の印象について聞いたところ、「小さな子どもを育てるのにふさわしくない」が「かなりそう思う」と「どちらかといえばそう思う」をあわせておよそ73%、「住むにはためらってしまう」がおよそ70%と、およそ70%の人がこうした地域で子育てや生活をすることはためらうと考えていることがわかりました。一方、放射能に関する情報の送り手の信頼度を尋ねたところ、「政府の発信」を「まったく信頼していない」、「どちらかと言えば信頼していない」と回答した人があわせておよそ50%ありました。こうした結果から柏市は、放射能の健康への影響について国の情報が必ずしも信頼されていない側面があるとして、子どもが集まる施設などは1時間あたりの放射線量が0.23マイクロシーベルトを下回る場所についても、国が費用を負担して除染を行うなどして信頼の回復に努めるよう要望していくことになりました。柏市の秋山浩保市長は「子どもが集まる場所の除染はほぼ終わったにもかかわらず、非常に厳しい見方が続いていると痛感した。このままでは市の対策が進んでも不安が残るため、国にさらなる支援を求めたい」と話しています。
http://www.nhk.or.jp/chiba-news/20121001192345_01.html

これは、柏市が実施した意識調査の結果を報道するものであるが、換言すれば、柏市地域はいまだ周辺よりも放射線量が高いと意識され、保育園・学校などの除染が進んでいても、子どもを育てたり生活をしたりする場所としては不適切と考えられ、そのために人口流失がとまらないというのである。他方、放射能情報についての「政府の発信」については、約半数の人びとが信用していないとしている。そのことからみて、たぶん、国が除染の目安とした年間1mSv(0.23μSv/h)未満という基準も信用されていないのであろう。

そこで、柏市としては、0.23μSv/h以下の地域も国の費用によって除染することを求めている。国の基準ではなく、可能な限り除染を進めることが、地域住民の課題として提起されているのである。

(なお、柏市の除染については、http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/080800/p010793_d/fil/kouen01_net.pdfが参考となる)

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