さてはて、原発が稼働しないと、供給電力が不足するという、関西電力の主張は、本当に真だったのか、大飯原発が再稼働した、今(2012年7月13日)の時点で、検証してみよう。
もう一度、関西電力の当初の主張をみておこう。2012年5月19日に発表した「今夏の需給見通しと節電のお願いについて」によると、関西電力は、7月の前半の最大電力需要を2757万kw、7月後半から8月全体のそれを2987万kw、9月1週目を2902万kw、2週目を2755万kwと想定した。そして、8月の供給予定電力を、水力203万kw、火力1472万kw、他社(自家発電等買取分)・融通(他電力会社分)644万kw、揚水223万kw、計2542万kwとして、445万kw(約14.9%)不足するとしたのである。
さて、大飯原発3号機(118万kw)が本格的に電力供給を開始した7月9日後の状況をみてみよう。関西電力が7月13日に発表した「今週の需給実績と来週以降の需給見通しについて」をみてみると、7月12日の電力供給が2564万kwであるが、最大需要は2234万kwであったとしている。もし、大飯原発が稼働しないとすると、2446万kwの供給にとどまるが、それでも需要に対して212万kw供給が上回っていることになる。もちろん、原発の稼働につれて、その余剰電力を使う揚水発電所の稼働率もあがるので、単純にはいえないが、それでも、電力不足ということはないだろう。
そして、7月第4週(7月23〜27日)の需給見通しによると、需要は2420万kwとされている。5月19日においては2987万kwと算定されており、それより567万kw(約18.9%)も少ない。他方、電力供給は、原子力が118万kw、火力が1470万kw、一般水力が281万kw、揚水が432万kw、他社・融通が633万kwで、総計で2935万kwとされている。5月19日時点では2517万kwと算出されており、417万kwも多い。原子力分をのぞいても、2817万kwも電力供給力はあることになっている。いかに原発稼働が揚水発電の稼働に関連するといっても、原発発生電力以上に寄与するとは思えない。それゆえ、節電をしなくても、電力には不足していないということになる。
つまり、そもそも、需要見込みが過大であったといえる。関西電力では、猛暑であった2010年度の最大需要3095万kwをもとに、節電効果なども考慮にいれて2987万kwとしたというが、結局、7月後半の需要見込みすら2420万kwである。たぶん、供給力も、大飯原発が稼働しない状況でも、揚水発電分は300万kwはあり、それを223万kwしか見込んでいないなど、過小評価しているように思える。
そして、電力余剰が生まれたことで、関西電力は、8基の火力発電所(384万kw)を停止するとした。7月7日に配信した読売新聞のネット記事は次のように伝えている。
関電、来週85~88%…でんき予報
関西電力は6日、節電要請期間2週目となる、来週の「週間でんき予報」(9~13日)を発表した。大飯原子力発電所3号機(福井県おおい町、出力118万キロ・ワット)の再稼働で供給力が増強されることから、電気使用率は85~88%の「安定」で推移する見通しだ。日本気象協会によると、大阪市内の最高気温は30~31度と平年並みの見通し。予想気温や直近の需要を基に、需要は2080万~2170万キロ・ワットにとどまると見込んだ。
供給力は、大飯原発3号機が9日未明にもフル稼働に達することで、2421万~2466万キロ・ワットを確保できるとし、最大8基の火力発電所(計384万キロ・ワット)の運転を停止する計画だ。
また、経済産業省が6日発表した9~13日の電力需給見通しによると、各電力会社の最大電力使用率の中で高いのは、北海道電力の91%(10日)、四国電力の85%(11、12日)、九州電力の84%(10日)、北陸電力の83%(9日)。
(2012年7月7日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120707-OYO1T00340.htm?from=main1
384万kwといえば、大飯原発3・4号機がともに稼働して236万kwであり、揚水発電の増加分もそれ以上ということはないだろう。この夏が終わればはっきりするが、関西電力は、現時点でも384万kwの供給をカットしても支障がないと見込んでいることになる。結局、電力不足というのは、ある意味で欺瞞であったことを、関西電力自身が認めてしまっているといえるのだ。
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