福島第二原発について語っていく予定であったが、福島第一原発について、受け入れた地域社会の状況を事細かに分析した『原子力発電所と地域社会』(各論編)(1970年8月)を日本原子力産業協会の電子図書室で発見した。本書は、財界が中心となってつくられた日本原子力産業会議が編集したもので、その後身が原子力産業協会である。『大熊町史』が依拠した文献であったが、国会図書館には総論編しかない。そこで、入手を断念していたのだが、偶然、日本原子力産業会議のサイトをみて、電子図書室をみつけ、そこで検索すると、PDFにて入手できたのである。
そのアクセスは、次の通りである。
これは、福島第一原発と、関西電力が同時期に建設していた美浜原発について、建設を受け入れたそれぞれの地域社会の景況を詳細に分析したものである。全体では580頁におよぶ。『大熊町史』では、立地や用地買収・漁業補償などについては本書に依拠しているが、全体としては使われていない。
一応、簡略な形で、目次を紹介しておこう。
第一部 東京電力福島原子力発電所周辺地区に関する調査報告
第一章 福島発電所設置の経緯
第二章 福島発電所の建設計画と進捗状況
第三章 地域の概況
第四章 社会的側面における影響
第五章 経済的側面における影響
第六章 自治体財政と地域関連事業
第七章 観光と地域開発問題
第二部 関西電力美浜原子力発電所周辺地区に関する調査報告
第一章 美浜発電所設置の経緯
第二章 発電所の建設計画と進捗状況
第三章 地域の概況
第四章 社会的側面における影響
第五章 経済的側面における影響
第六章 美浜町の財政と地域関連事業
第七章 観光と地域開発問題
補論
Ⅰ 住民意識と社会構造の変化に関する実態調査の結果
Ⅱ 農業への影響に関する調査報道
Ⅲ 鮮魚小売商における水産物流通構造の調査報告
Ⅳ 地元町内出身労務者アンケート調査結果
Ⅴ 福島原子力発電所建設労務者実態とその消費動向
基本的には、福島と美浜のそれぞれを、基本的には同一の項目ごとに記述することで、両者を比較し、総論編の材料としている。他方、補論では、Ⅴを除いて、福島と美浜をそれぞれ同一の章であつかっている。総論編はそれほど興味深いものではないが、各論編は、原発を受け入れたこの当時の地域社会を詳細に分析している。
原発が立地された部落の社会状況、原発への賛否、地域の建設労働者の動向、財政問題にわたるまで、詳細な分析となっている。
今後、しばらく、福島第一原発を受け入れた大熊町と双葉町について、この資料を使ってみてみたい。場合によっては、美浜なども参照したい。
なお、むしろ、この地域の人々のほうが、この資料をみたほうが、よりよいであろう。現在、強制的に避難されており、なかなかインターネット環境にも接することすら難しいと思うが、できれば、直接本資料をみていただきたい。また、福島第一原発の運命を懸念している人々にも、みてほしいと思う。
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